建設業の営業職、なぜ採用できないのか
「技術者だけでなく、営業も足りない」。
建設会社の経営者からこうした声を聞く機会が増えています。
施工管理や技能工の人手不足が注目されがちですが、実は営業職の採用も深刻です。dodaの調査(2025年2月)によると、営業職全体の転職求人倍率は2.88倍。全職種平均を大きく上回る売り手市場が続いています。
営業がいなければ案件を獲れない。案件がなければ売上が立たない。営業職の採用は、建設会社の事業継続に直結する問題です。
この記事では、建設業の営業職採用が難しい3つの構造的な理由と、中小建設会社でも実行できる5つの採用戦略をデータと事例で解説します。
建設業の営業職採用が難しい3つの理由
理由1: 建設業界全体の人材不足が営業にも波及
国土交通省のデータによると、建設業就業者数はピーク時(1997年)の685万人から2024年には477万人へ。約30%減少しています。
建設業就業者数の推移
国土交通省「建設業を取り巻く現状について」より作成
55歳以上が約35%、29歳以下はわずか12%。この高齢化は現場だけでなく、営業部門にも影響しています。
建設業の営業は「技術的な知識」と「顧客折衝力」の両方が求められるため、他業界の営業経験者でもすぐには戦力になりにくい。結果として即戦力人材の採用難易度が高いのです。
理由2: 営業職特有の長い育成期間とミスマッチ
建設業の営業は、1案件あたりの取引額が数千万〜数億円と大きく、受注までに年単位かかることもあります。
この長い営業サイクルが、2つの問題を生みます。
- 成果が出るまでの期間が長いため、新人のモチベーションが維持しにくい
- 短期的な評価が難しいため、ノルマ未達による早期離職が起こりやすい
厚生労働省「雇用動向調査」(2022年度)によると、建設業の離職率は10.5%に対し入職率は8.1%。業界全体として人材流出が続いています。
理由3: 中小企業ほど「採用に手が回らない」
中小建設会社では、営業職の採用を経営者自身が兼務しているケースが大半です。
日中は顧客対応や現場管理に追われ、求人票の更新やスカウトメールの送信まで手が回らない。応募が来ても対応が遅れ、候補者が他社に流れる。この悪循環が続いています。
営業職の採用コストは全職種平均の約1.9倍
dodaの調査によると、営業職の中途採用単価は1人あたり約53.9万円。全職種平均(28.8万円)の約1.9倍です。さらに人材紹介を利用すれば年収の30%、年収500万円なら150万円の紹介手数料がかかります。
建設業の営業職採用を成功させる5つの戦略
戦略1: 求人票で「建設営業のやりがい」を具体的に伝える
建設業の営業には他業界にない魅力があります。求人票でこれを伝えきれていない企業が多いのが現状です。
訴求すべきポイントは3つです。
- 取引規模の大きさ: 数千万〜数億円の案件を動かす達成感
- 目に見える成果: 自分が獲得した案件が建物として形に残る
- 安定した需要: 建設投資額は2024年度で73兆200億円(前年比+2.7%)と堅調
「自分が受注した建物が街に建つ。この体験は他の業界では味わえません」。建設業の営業経験者は、こうした魅力を語ることが多いです。
求人票には「案件の種類と規模」「インセンティブ制度の詳細」「入社後の研修内容」を具体的に記載しましょう。
戦略2: 異業種の営業経験者にターゲットを広げる
建設業の営業経験者だけを狙うと、母集団が極端に小さくなります。
法人営業の経験がある異業種出身者にもターゲットを広げることで、採用可能性は大きく上がります。
特に相性が良い業界は以下の通りです。
- 不動産業界: 建物・土地に関する知識がある
- メーカーの法人営業: 長期的な関係構築の経験がある
- IT・SaaS営業: 提案力・課題解決型の営業スキルがある
求人票では「建設業界の経験不問」「法人営業の経験を活かせます」と明記し、入社後の技術知識の習得サポートを具体的に示すことが重要です。
戦略3: 評価制度を「プロセス重視」に変える
建設業の営業は受注まで時間がかかるため、結果だけで評価すると早期離職につながります。
成功している企業は、営業プロセスの中間指標を評価に取り入れています。
営業評価の見直し例
プロセス評価を導入した建設企業では、営業職の離職率が改善した事例が複数報告されています。
戦略4: SNSで営業チームの雰囲気を発信する
営業職の候補者は、仕事内容だけでなく「どんな人たちと働くか」を重視します。
効果的な発信コンテンツは以下です。
- 営業メンバーのインタビュー動画(1日の流れ、やりがい)
- 受注成功時の社内共有の様子(チームの雰囲気が伝わる)
- 顧客との関係性(長期的なパートナーシップの事例)
求人サイトにInstagramやYouTubeのリンクを掲載し、テキストでは伝わらない社風を可視化することで応募意欲を高められます。
戦略5: 採用代行で「採用力」そのものを強化する
営業職の採用が難しい最大の理由は、採用活動にリソースを割けないことです。
この課題を根本的に解決するのが、採用代行(RPO)の活用です。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
「自社で採用」と「採用代行」のコスト比較
営業職の採用にかかるコストを整理します。
営業職の採用コスト比較
各種採用サービス公開情報をもとに作成
人材紹介で営業職を3名採用すると約450万円。一方、採用代行なら月額25万円×12ヶ月で年間300万円。何名採用しても追加費用はかかりません。
まるごと人事の事例では、RPO導入企業の採用コストが20〜25%削減されたと報告されています。
「営業の採用に3ヶ月かけて結局ゼロ」。この機会損失は数千万円規模の受注逸失に直結します。採用のプロに任せることで、経営者は本来の営業活動に集中できます。
建設業の営業職採用を成功させた事例
事例1: 東京都の建設会社|求人設計の見直しで応募51名
従業員11名の建設会社が、求人票の訴求ポイントを「キャリアアップ・スキル向上ができる」に変更。応募51名、うち有資格者が半数以上という結果を出しました。東北からの応募も多数あり、小規模企業でも全国から人材を集められることを証明しています。
事例2: 首都圏の建設会社|スカウト改善で採用単価を1/4に
人材紹介に頼っていた採用をスカウト型に切り替え。スカウトメールの文面をカスタマイズし、応募率が1.0%から4.7%に改善。3ヶ月で応募者40名、3名採用に成功し、採用単価は人材紹介の約1/4に削減されました。
事例3: 中小建設会社|RPO導入で毎月15人の有効応募
採用ノウハウがなく応募ゼロが続いていた中小建設会社が、RPOを導入。求人票の作成・媒体選定・スカウト送信を外部委託したところ、毎月15人の有効応募を獲得。採用コストも25%削減されました。
まとめ
建設業の営業職採用が難しい理由は、業界全体の人材不足、営業職特有の長い育成期間、中小企業のリソース不足の3つです。
しかし、以下の戦略で突破口を見つけることは可能です。
- 建設営業のやりがいを具体的に伝える求人票の設計
- 異業種の営業経験者へのターゲット拡大
- プロセス重視の評価制度で早期離職を防止
- SNSで営業チームの雰囲気を可視化
- 採用代行の活用で採用力そのものを強化
建設投資額73兆円の市場で案件を獲るには、営業人材の確保が不可欠です。まずは求人票の見直しから始めてみてください。