建設業のDX人材採用ガイド|求められるスキルと確保の戦略
建設採用センター 編集部
建設業界の採用支援に特化したプロフェッショナルチーム。企業の採用戦略設計から実務代行まで、豊富な支援実績を持つ。
建設テック求人は6年で7.8倍に増えた
建設業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が加速しています。
建設テック関連の求人数は、2018年比で7.8倍に急増。
建設業界全体のデジタル化関連求人も5.52倍に増えています。
一方で、DX人材の量が「大幅に不足している」と答えた企業は62.1%。
求人は増えているのに、応募できる人材がいない。
これが建設DX採用の現実です。
この記事では、建設業のDX人材を取り巻く市場データを整理し、自社でDX人材を確保するための具体的な戦略を解説します。
建設DX市場はどこまで伸びるのか
市場規模は2030年に2倍以上
建設現場DX市場は、2024年度の586億円から2030年度には1,250億円へ成長する見込みです。
建築分野の建設テック市場も、2023年度の1,845億円から2030年度には3,043億円に拡大すると予測されています。
建設現場DX市場の成長予測
矢野経済研究所「建設DX市場レポート」より
市場が拡大すれば、それを担う人材の需要も比例して増えます。
ICT施工とBIM/CIMの普及が加速
国土交通省直轄の土木工事では、ICT施工の比率が約89%に達しています。
BIM(建築情報モデリング)の導入率も着実に上昇——
建築企業のBIM導入率の推移
日本建築士事務所協会連合会調査より算出
大手総合設計事務所では約80%がBIMを導入済み。
一方、中小建設会社では導入が遅れており、スキルを持つ人材の確保が導入の鍵になっています。
DX人材の需要と供給ギャップ
2030年にIT人材は最大80万人不足する
経済産業省の推計によると、日本全体でIT・デジタル人材の供給不足は2030年に最大80万人に達します。
建設業界に限定しても、状況は深刻です。
建設業の人材をめぐる数字
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 建設技能者数(ピーク時) | 464万人 | 1997年 |
| 建設技能者数(現在) | 303万人 | 2024年、ピーク比65% |
| 建設業の有効求人倍率 | 5.04倍 | 2025年時点 |
| DX人材が「大幅に不足」と回答した企業 | 62.1% | IPA DX白書2024 |
各種公開データより作成
建設技能者数はピーク時から161万人減少。人手不足が深刻な中で、DXを推進できる人材はさらに限られます。
DX人材の年収水準は上昇傾向
DX関連職種への転職者の56%が転職後に賃金が上昇しています。
スーパーゼネコン5社の平均年収は1,000万円超。
DXスキルを持つ人材の市場価値は、今後さらに上がっていくでしょう。
国の政策が採用市場を変えている
i-Construction 2.0の目標
国土交通省は2024年4月にi-Construction 2.0を策定しました。
その目標は——
2040年度までに建設現場の省人化を3割以上実現し、生産性を1.5倍に向上させる。
すでに2024年度には国交省発注工事21件で遠隔施工技術が実践されています。成瀬ダムでは約400km離れた拠点から14台の建設機械を遠隔監視・自動運転する実証が行われました。
BIM/CIM原則適用と補助金
小規模工事を除く全国交省直轄公共工事でBIM/CIM原則適用がスタート。
2027年には建築確認申請へのBIM義務化も検討されています。
これに合わせて、補助金制度も拡充されています。
建築GX・DX推進事業(2025年度〜)
| 区分 | 補助上限 | 備考 |
|---|---|---|
| 設計段階 | 3,500万円 | BIM活用による設計効率化 |
| 工事段階 | 5,500万円 | ICT施工・デジタルツイン活用 |
国土交通省 2025年度予算(約65億円)
補助金を活用してDXに投資する企業が増えるほど、それを運用できる人材の争奪戦は激しくなります。
建設DXで求められる5つのスキル領域
では、具体的にどんなスキルを持つ人材が求められているのでしょうか。
ここで重要なのは、すべてのスキルを1人で持つ必要はないということです。
多くの建設会社では、既存の施工管理者に1〜2つのDXスキルを追加で習得してもらうアプローチが現実的です。
DX人材を確保する3つの戦略
戦略1:既存社員のリスキリング
外部から採用する前に、社内の人材をDX人材に育てるという発想が重要です。
現場を知っている社員がDXスキルを身につければ、外部から採用したIT人材よりも即戦力になるケースが多いからです。
リスキリングの具体策——
- BIM/CIMの社内研修プログラムを整備する
- 施工管理アプリの操作トレーニングを全現場で実施する
- 資格取得支援制度でDX関連資格(BIM利用技術者検定等)の取得を後押しする
- 若手社員をDX推進チームに兼務で参加させる
資格取得支援の設計方法
資格取得支援制度を含むキャリアパスの設計方法は「施工管理のキャリアパス設計ガイド|若手が辞めない会社の共通点」で詳しく解説しています。→ 記事を読む
戦略2:IT業界からの越境採用
建設業界外のIT人材を採用する越境採用も有効な戦略です。
ポイントは、建設業の社会的意義とDXならではのやりがいを求人票で訴求すること。
IT人材に響く求人票のポイント——
- 「レガシー産業を変革する」というミッションを明示する
- リモートワーク・フレックスなど柔軟な働き方を提示する
- 年収水準を他業界と同等以上に設定する
- 具体的なDXプロジェクトの内容を記載する
求人票の書き方
応募が増える求人票の書き方は「建設業の求人票の書き方|応募が増える7つのコツ」で解説しています。→ 記事を読む
戦略3:DX推進チームの設置
経営直下にDX推進チームを設置し、採用と育成の拠点にする方法です。
先行企業の事例——
- 鹿島建設はA4CSEL(クワッドアクセル)で建設機械の自動制御システムを開発
- 竹中工務店はドローンとAI画像解析による外壁タイル検査システムを導入
- 大成建設は自律移動ロボットによる現場巡視システムT-InspectionXを展開
これらの企業に共通するのは、DX専門のチームを組織して人材を集中配置している点です。
中小企業でも、まず2〜3名の小さなチームからスタートできます。
DX推進が採用力そのものを高める
見落としがちな視点があります。
DXは業務効率化のためだけのものではないということです。
建設業でDXに取り組んでいる企業はわずか11.4%。
逆に言えば、DXを推進しているだけで採用市場での差別化になります。
「ドローン測量を導入している」「施工管理アプリで業務を効率化している」——こうしたアピールは、特に若手の求職者に刺さります。
DXへの投資は、人材確保の投資でもあるのです。
採用市場の全体像
建設業の採用が難しい構造的な理由と打ち手については「建設業の採用が難しい5つの理由と、今すぐできる打ち手」で整理しています。→ 記事を読む
DX人材採用チェック
自社のDX人材採用チェック
Q1.建設DXに必要なスキル(BIM/CIM・ICT施工・データ分析等)を定義し、社内に共有していますか?
Q2.既存社員向けのDXリスキリング(研修・資格取得支援)を実施していますか?
Q3.IT業界出身者が応募したくなるような求人票・採用ページを用意していますか?
Q4.DX推進の専任チーム・担当者を設置していますか?
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まとめ
建設テック求人は6年で7.8倍に急増。
しかし、DX人材が「大幅に不足している」企業は62.1%——需給ギャップは拡大する一方です。
i-Construction 2.0やBIM/CIM原則適用により、DXは「できればやる」から「やらなければ仕事が取れない」時代に移行しています。
DX人材を確保するための3つの戦略——
- 既存社員のリスキリング(現場を知る社員にDXスキルを追加)
- IT業界からの越境採用(建設業の社会的意義とDXのやりがいを訴求)
- DX推進チームの設置(人材の受け入れ体制をつくる)
そして、DX推進そのものが採用力を高めるという好循環を忘れないでください。
建設業でDXに取り組んでいる企業はまだ11.4%。
今始めれば、それだけで採用市場での競争優位になります。
建設業の人材不足の全体像と対策を知りたい方は、こちらもご覧ください。
→ 建設業の人材不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策
2024年問題が採用に与える影響については、こちらで詳しく解説しています。