建設業の採用市場データレポート10分で読める

建設業の賃上げ動向と採用への影響|2026年最新データで読む給与戦略

監修

建設採用センター 編集部

建設業界の採用支援に特化したプロフェッショナルチーム。企業の採用戦略設計から実務代行まで、豊富な支援実績を持つ。

初任給24万円が、4年で30万円になった

2021年、大手ゼネコンの大卒初任給は24万円でした。

 

2025年4月——大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店の5社は、大卒初任給を30万円に引き上げました。

4年間で25%のアップです。

 

準大手の西松建設、長谷工コーポレーション、中堅の東洋建設も追随。「初任給30万円」は建設業界のスタンダードになりつつあります。

賃上げは、もはや福利厚生ではなく採用戦略そのものです。

公共工事設計労務単価は13年連続で上昇。2025年春闘の賃上げ率は5.46%

 

しかし、この波はすべての企業に等しく届いているわけではありません。

 

この記事では、建設業の賃上げの最新動向を整理し、賃金が採用にどう影響するかをデータで読み解きます。


建設業の賃金はいま、どうなっているのか

平均年収は565万円——ただし「時間あたり」では低い

2024年の建設業の平均年収は565万3,000円。全産業平均の485万円を上回っています。

 

しかし、注意すべき数字があります。

建設業と他産業の比較

指標建設業全産業平均
平均年収565万円485万円
年間総労働時間約1,976時間約1,746時間
全産業比の超過時間+約230時間

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」より

 

年間230時間多く働いて、ようやく80万円高い——時間あたり賃金で見ると、建設業は決して高くありません。

 

さらに、建設業男性生産労働者の賃金は製造業の同職種を依然として下回っているのが実態です。

設計労務単価は13年連続で過去最高を更新

国土交通省が定める公共工事設計労務単価は、2025年度に全国全職種平均で日額24,852円に達しました。

公共工事設計労務単価の推移

2021年度20234円(全国全職種平均・日額)
2023年度22227円(全国全職種平均・日額)
2025年度24852円(全国全職種平均・日額)
2026年度(予測)26200円(全国全職種平均・日額)

国土交通省発表データより作成

 

前年度比6.0%の引き上げ。2021年度比では22.9%上昇しています。

 

国交大臣と建設4団体は、技能者賃金を「おおむね6%上昇」させることを官民共同目標として申し合わせています。


大手ゼネコンの賃上げ競争が始まっている

春闘と初任給の動向

2025年春闘では、建設業の賃上げ率は平均5.46%。個別企業の動きはさらに顕著です。

大手ゼネコンの賃上げ事例(2025年度)

企業名賃上げ率大卒初任給
大成建設ベア+定昇で平均6%30万円
清水建設ベア3.1%、計5.7%30万円
西松建設ベア+定昇で10%超30万円
長谷工30万円超(業界最高水準)

各社IR情報・報道より作成

 

西松建設の10%超という数字は、建設業界の人材獲得競争の激しさを物語っています。

全産業の賃上げ実施率は84%

2024年度の賃上げ実施率は全体で84.2%。建設業に限ると88.6%と、さらに高い水準です。

 

2025年度も86.0%の企業が賃上げを予定しています。

 

ただし、この「平均値」の裏には大きな格差が隠れています。


中小企業に賃上げの波は届いているか

年商1億円未満では「賃上げした」が18%にとどまる

クラフトバンク総研の調査(2025年版、社員5〜100名の建設会社1,659社)によると——

「賃金が上がった」と回答した割合(年商規模別)

年商1億円未満18%
全体平均32%
年商1億円以上40%

クラフトバンク総研「中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査:2025年版」

 

年商1億円未満の企業では、賃上げの波が18%にしか届いていません。

 

大手企業と中小企業の平均年収格差は約250万円。この差が、中小企業からの人材流出を加速させています。

多重下請け構造が賃上げを阻む

元請が賃上げしても、その原資が下請・孫請の段階まで波及しにくいのが建設業の構造的な問題です。

 

中間企業に利益が吸収され、現場の技能者の手取りが増えない——この「中抜き」が、現場労働者の給与改善を遅らせています。

 

さらに深刻なのは——

  • 人手不足で仕事を断った経験がある企業:68%
  • 採用活動をしていない企業:2割超
  • 人材育成・離職防止について「何もしていない」:4割

 

賃上げの余力がない企業ほど、採用もできず、仕事も断り、さらに業績が悪化する——負のスパイラルに陥るリスクがあります。

建設業の採用が難しい構造的理由

人手不足の背景にある5つの構造的課題は「建設業の採用が難しい5つの理由と、今すぐできる打ち手」で整理しています。→ 記事を読む


改正建設業法が「賃金の底上げ」を制度化する

標準労務費の勧告と「著しく低い見積もり」の禁止

2025年12月に全面施行された改正建設業法は、建設業の賃金構造に大きな変化をもたらします。

標準労務費の勧告

著しく低い労務費の禁止

原価割れ契約の禁止

違反時の行政処分

 

この法改正の最大のポイントは、下請負人が「適正な利益を確保した見積もり」を堂々と提出できるようになったことです。

 

元請には、下請の見積もりを尊重し、発注者との価格交渉に反映させる責任が生じます。

 

つまり、賃金の底上げ圧力が制度的に担保されたのです。

CCUSが「スキルに応じた賃金」を可視化する

建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録者は、2025年7月時点で技能者約170万人、事業者約30万社に到達しました。

 

CCUSレベル4(ゴールド)保有者への優良技能者手当の支給や、協力会社への労務費5〜10%割増補正で支払う動きも出ています。

 

能力が可視化されれば、賃金交渉の根拠になる——CCUSは技能者の処遇改善を後押しする制度的基盤です。


賃上げと採用は、どこまで相関するのか

採用成功企業の44%が「相場より高い給与」を設定

助太刀総研の調査によると、採用成功企業の44%が「給与水準を相場より高く設定」しています。

 

求職者の転職理由で最も多いのは「給与が低かった」(男性12.1%)。転職先を決めた理由でも「給与が良い」が男女とも最多です。

賃金と採用の関連データ

指標数値意味
建設業の有効求人倍率5.04倍全産業平均の約4倍
ハローワーク経由の充足率3%ほぼ採用できない
採用で応募3名以下90%採用母集団が極めて小さい
応募ゼロの企業約30%そもそも候補者が来ない

助太刀総研「建設業の中途採用状況調査」より

 

有効求人倍率5.04倍という数字は、「5社が1人を奪い合っている」状態を意味します。

 

この環境で採用に成功するには、給与水準を「業界相場」ではなく「求職者の期待値」に合わせる発想が必要です。

有効求人倍率の詳細データ

建設業の有効求人倍率の推移と市場データは「【2026年最新】建設業の有効求人倍率と採用市場データまとめ」で詳しく解説しています。→ 記事を読む


中小建設会社が今すぐできる3つの賃金戦略

戦略1:総報酬パッケージで差別化する

基本給の大幅な引き上げが難しい場合は、「総報酬」で勝負する発想に切り替えましょう。

 

  • 資格手当の充実(施工管理技士1級で月3〜5万円など)
  • 住宅手当・家族手当の新設
  • 工事完了ボーナスの設定
  • 資格取得支援(受験料・講座費用の全額負担)

 

基本給が大手に劣っていても、手当と福利厚生を含めた「手取り」で遜色ない水準を実現できれば、採用競争力は高まります。

戦略2:求人票に具体的な年収モデルを記載する

応募が来ない求人票に共通する特徴は、給与情報があいまいなことです。

 

「月給25万円〜」ではなく「入社3年目・2級施工管理技士取得で年収420万円(月給28万円+資格手当+賞与)」のように、具体的な年収モデルを複数パターン提示しましょう。

求人票の改善方法

応募を増やす求人票の書き方は「建設業の求人票の書き方|応募が増える7つのコツ」で解説しています。→ 記事を読む

戦略3:賃上げ原資を価格転嫁で確保する

改正建設業法は、中小企業にとって賃上げ原資を確保するための法的根拠にもなります。

 

標準労務費を下回る見積もりの禁止は、「安く受注して人件費を削る」という悪循環を断ち切る制度です。

 

この制度を活用し、元請や発注者に対して適正な労務費を含む見積もりを提出することが、賃上げの第一歩になります。


賃上げ対応チェック

自社の賃上げ対応チェック

Q1.自社の給与水準が同エリア・同規模の建設会社と比較して競争力があるか把握していますか?

Q2.改正建設業法の「標準労務費」を踏まえた見積もり体制を整備していますか?

Q3.求人票に具体的な年収モデル(入社○年目・資格○○取得で年収○○万円)を記載していますか?

Q4.資格手当・住宅手当など、基本給以外の処遇を充実させていますか?

0/4 回答済み


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まとめ

建設業の賃上げは制度的にも市場的にも「止まらない流れ」です。

 

設計労務単価は13年連続で過去最高を更新。大手ゼネコンの初任給は30万円に。改正建設業法は標準労務費を制度化しました。

 

しかし、年商1億円未満の中小企業では賃上げ実施率がわずか18%——大手との格差は広がっています。

 

中小企業がとるべき3つの戦略——

 

  1. 総報酬パッケージで差別化する(資格手当・住宅手当・工事完了ボーナス)
  2. 求人票に具体的な年収モデルを記載する(「月給25万円〜」から脱却)
  3. 改正建設業法を活用して賃上げ原資を確保する(適正な労務費の価格転嫁)

 

2030年に向けて、建設技能者の不足はさらに深刻化します。賃金は「コスト」ではなく最も効果的な採用投資です。

 

建設業の人材不足の全体像を知りたい方はこちらをご覧ください。

建設業の人材不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策

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