建設会社の7割が「大型工事を受注できない」時代
建設業の人手不足は、もはや「採用の問題」ではありません。経営の存続に関わる問題です。
日本経済新聞(2025年12月)の調査によると、建設会社の約7割が「2026年度は大型工事を新規受注できない」と回答。
帝国データバンクのデータでは、2025年の建設業の人手不足倒産は113件。過去最多を更新しました。
「なんとか回っている」は、すでに限界のサインかもしれません。人手不足は放置するほど、取り返しがつかなくなります。
この記事では、国土交通省・厚生労働省のデータをもとに、建設業の人手不足の実態と中小企業でも実行できる5つの解決策を優先順位付きで解説します。
建設業の人手不足データ|数字で見る現実
就業者数は30%減、技能者は35%減
国土交通省・総務省「労働力調査」のデータです。
建設業就業者数の推移
総務省「労働力調査」より作成
ピーク時(1997年)の685万人から2024年は477万人。208万人、約30%が減少しました。
技能者に限ると、464万人から303万人へ。約35%の減少です。
年齢構成の偏りが「急減」を引き起こす
建設業の年齢構成(2024年)
国土交通省・総務省「労働力調査」より作成
55歳以上が約37%、29歳以下がわずか約12%。
国土交通省の試算では、2030年に就業者数は400万人、2040年には300万人を割る可能性があります。
有効求人倍率は全産業の5倍
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年)によると、建設業の有効求人倍率は5.04倍。
全産業平均1.24倍の約4倍です。
建設躯体工事は7.65倍。求人を出しても、ほぼ応募が来ない水準です。
人手不足倒産が急増中
帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は全業種で427件(過去最多)。建設業は113件で全業種2位。建設業全体の倒産も2,021件と10年間で最多です。
→ 建設業の人手不足は当たり前?嘘?データで見る本当の原因と対策
建設業の人手不足を解決する5つの方法
人手不足の解決策は1つではありません。 複数の施策を組み合わせることで、効果は何倍にもなります。
ここでは、中小建設会社が取り組みやすい順に5つの方法を解説します。
解決策1: 処遇改善で「選ばれる会社」になる
最も即効性がある施策です。
国土交通省のデータによると、公共工事設計労務単価は2021年3月〜2025年3月の49ヶ月で22.9%上昇しています。
業界全体で賃上げが進む中、自社だけ据え置きでは人材は流出する一方です。
賃金を5%引き上げた建設会社では、若年層の入職者数が前年比15%増加したというデータもあります。
給与だけでなく、週休二日制、残業時間の上限管理、資格取得支援も求職者が重視するポイントです。
解決策2: 採用のやり方を根本から見直す
「求人を出して待つ」だけの採用は、もう通用しません。
求人票の職種名、給与の見せ方、写真の有無。これらを変えるだけで、応募数は大きく変わります。
愛知県の型枠大工会社(従業員25名)は、業務日報のアプリ化と週休二日の導入を求人票に明記。 若手の応募が前年比3倍に増加しました。
リファラル採用(社員紹介)も有効です。定着率が他チャネルより20%以上高いというデータがあります。
解決策3: 外国人材を戦力として受け入れる
特定技能制度の活用で、即戦力の外国人材を採用できます。
建設分野の特定技能は型枠施工、鉄筋施工、とび、左官など18業務区分。 技能実習2号を修了した外国人材は、日本語力も技術力も一定水準に達しています。
鉄筋工事・型枠工事の現場では、外国人スタッフが主体的に動くことで作業工程全体が円滑化した事例も報告されています。
外国人材は「補填」ではなく「戦力」
外国人材を単なる労働力の穴埋めと捉える企業は、受入れに失敗しがちです。キャリアパスを提示し、技術指導の体制を整えることが定着の鍵です。
→ 建設業の外国人採用ガイド|特定技能・技能実習の制度と受入れ手順
解決策4: DXで「少ない人数で回せる現場」をつくる
国土交通省は「i-Construction 2.0」で、2040年度までに省人化3割、生産性1.5倍を目標に掲げています。
ICT活用工事による生産性向上は、2022年度時点で2015年度比約21%向上。すでに効果が出ています。
鹿島建設の自動化施工システム「A4CSEL」では、1人のオペレーターが複数の重機を同時に操作。 CSGまき出し量を約2倍に増やし、燃料使用量を40〜50%削減しました。
中小企業でも、クラウド型施工管理ツール(ANDPAD等)の導入から始められます。 日報のデジタル化だけでも、事務作業の負担を大幅に減らせるのが第一歩です。
解決策5: 採用業務そのものを外部に任せる
「対策が必要なのは分かっている。でも、採用に割く人手がない」。
これが、中小建設会社の最大のジレンマです。
求人票の作成、媒体の運用、スカウトメールの送信、応募者対応、面接調整。 採用業務はフルタイム1人分の工数がかかります。
「人手が足りないから採用したいのに、採用する人手がない」。この矛盾を解決するのが、採用代行(RPO)です。
採用代行を導入した企業では、採用単価を50%削減し、1年間で7名のエンジニア採用に成功した事例があります。
人材紹介で施工管理を1人採用すると約200万円。 月額固定の採用代行なら25万円〜で、求人設計からスカウト、応募対応まで丸ごと任せられます。
5つの解決策の優先順位|まず何から始めるべきか
すべてを同時に始める必要はありません。優先順位をつけて段階的に進めるのが現実的です。
解決策の優先順位と効果
各施策の一般的な導入コストと効果期間をもとに作成
まずは処遇改善と採用手法の見直し。この2つは即効性があり、中小企業でもすぐに着手できます。
特に採用代行の活用は、自社の工数をかけずに採用力を強化できる唯一の方法です。
まとめ
建設業の人手不足は、放置すれば倒産や受注機会の喪失に直結します。
- 就業者数は30%減、55歳以上が37%。構造的な人手不足は今後さらに深刻化する
- 処遇改善と採用手法の見直しが、即効性のある解決策。まずここから始める
- 外国人材・DX・採用代行を組み合わせることで、少ない人数でも事業を回せる体制をつくる
「いつかやろう」では間に合いません。 建設会社の7割が大型工事を受注できない時代は、もう始まっています。