「人が来ないのは、うちだけじゃなかったんですね」
弊社の採用支援の初回面談で、経営者からもっとも多く聞く言葉がこれです。
結論から言うと、建設業の人手不足は「うちだけ」ではありません。 帝国データバンクの2026年1月調査で、建設業の正社員不足割合は69.6%。 全業種でトップです。
「当たり前」という声がある一方、「嘘だろう」という声もあります。 どちらが正しいのか。
この記事では、データで建設業の人手不足の構造を解き明かし、中小企業がとるべき対策まで解説します。
建設業の人手不足が「当たり前」と言われる5つの理由
理由1:就業者が30年で30%消えた
建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに減り続けています。
建設業の就業者数推移
総務省「労働力調査」より作成
2024年時点で477万人。 30年間で約208万人、30%が減少しました。
一方、建設投資額は約67兆円(2022年)で高止まりしています。 仕事量は減っていないのに、人だけが減っている。 これが人手不足の根本構造です。
理由2:35.9%が55歳以上。若手は12%だけ
建設業のもうひとつの構造問題は、極端な高齢化です。
建設業の年齢構成
| 年齢層 | 建設業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 55歳以上 | 35.9% | 31.1% |
| 29歳以下 | 約12% | 約17% |
国土交通省「建設業を巡る状況について」(2024年)
55歳以上が35.9%。 29歳以下はわずか約12%。
今後10年で、ベテラン層の大量退職が始まります。 若手が入ってこなければ、技術の継承すらできなくなります。
理由3:有効求人倍率6.68倍。全産業の5倍以上
厚生労働省の2024年度データでは、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は6.68倍。 全職業平均の1.22倍と比べて5倍以上です。
躯体工に至っては7.65倍(2025年7月時点)。 つまり、1人の求職者を7社以上が奪い合っている状態です。
理由4:年間労働時間が全産業より230時間多い
厚生労働省の調査では、建設業の年間労働時間は全産業平均より約230時間多い状態が続いています。
月に換算すると約19時間の差。 ほぼ「2.5日分の休日」が少ないのと同じです。
若手求職者がこの事実を知って、他業界を選ぶのは自然な流れです。
→ 建設業の離職率を下げる定着施策5選|辞める理由から逆算する
理由5:2024年問題が人手不足を顕在化させた
2024年4月の残業上限規制により、これまで残業でカバーしていた人手不足が数字として表面化しました。
残業を減らさなければ罰則。 でも人を増やす余裕もない。
規制が人手不足を「つくった」のではなく、「隠れていた不足」が見えるようになったのです。
「建設業の人手不足は嘘」は本当か?データで検証
ネットでは「建設業の人手不足は嘘」「自業自得」という声も見られます。 なぜそう言われるのか、そしてデータは何を示しているのか。
「嘘」と言われる3つの背景
- 職種によって温度差がある。事務職や営業職は人手不足感が低いが、現場の施工管理や技能労働者は深刻
- 「賃金を上げれば来る」という見方。低賃金が原因なのに人手不足と言うのは嘘だという主張
- 「外国人材を使えばいい」という意見。解決策があるのに対策しないのは自業自得だという論調
データが示す「嘘ではない」根拠
これらの主張には一理ありますが、マクロデータは明確です。
「嘘」では説明できないデータ
| 指標 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 就業者数の減少 | 685万→477万人 | 30年で30%減。これは構造的問題 |
| 有効求人倍率 | 6.68倍 | 賃金を上げても供給が追いつかない |
| 正社員不足割合 | 69.6%(全業種1位) | 特定職種だけの問題ではない |
| 高齢化率 | 55歳以上35.9% | あと10年で大量退職が確実 |
各省庁データより作成
職種や地域による差はありますが、業界全体として人手不足は「嘘」ではありません。 むしろ、「賃金を上げれば解決する」という単純な話ではないところに問題の深刻さがあります。
人手不足は「嘘」ではない。ただし「当たり前」で終わらせてはいけない。構造を理解し、手を打つ企業だけが生き残ります。
人手不足で倒産する企業が急増している
「人手不足でも、なんとかなるだろう」。 その認識は、もう通用しません。
人手不足倒産が過去最多を更新
帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は全産業で427件。 3年連続で過去最多を更新しました。
そのうち建設業は113件で、全体の約26%を占めています。 業種別でもっとも多い数字です。
建設業の人手不足倒産件数
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査」より作成
倒れているのは「小さな会社」
人手不足倒産した企業の77.0%が従業員10人未満です。
中堅社員が1人辞めるだけで現場が回らなくなり、外注に頼る。 外注費がかさんで利益が圧迫される。 資金繰りが悪化して、倒産。
この流れは、弊社が支援する中小建設会社でも繰り返し目にしています。
仕事はあるのに受けられない
日本経済新聞の2025年12月の調査では、建設会社の約7割が「2026年度中に大型工事を受注できない」と回答しています。
未消化工事高は15兆円超で過去最大。 仕事があるのに人がいないから受けられない。
人手不足は「経営リスク」であり、「機会損失」です。経営者が知っておくべきこと
人手不足倒産のリスクが高いのは、従業員10人未満の小規模企業です。「たった1人の退職」が会社の存続を左右する可能性があることを、認識しておく必要があります。
人手不足を「当たり前」で終わらせない。今すぐ始める採用戦略
戦略1:採用チャネルを多角化する
ハローワークと求人媒体だけに頼っていませんか。
有効求人倍率6.68倍の市場では、待っていても人は来ません。
リファラル採用(社員紹介)、SNS採用、採用サイトの強化など、チャネルを広げることが第一歩です。
→ 建設業のリファラル採用完全ガイド|コスト1/10で定着率も高い手法
戦略2:DXで「少数精鋭」を実現する
後藤組(山形県米沢市)は「全員DX」を掲げ、kintone等を活用したデータドリブン経営を推進しています。
後藤組のDX改革成果
| 指標 | 改革前 | 改革後 |
|---|---|---|
| 残業時間 | — | 20%以上削減 |
| 書類量 | — | 約60%削減 |
| 新卒3年定着率 | 64.3% | 83.3% |
経済産業省「DXセレクション2025」グランプリ受賞企業事例
新卒3年定着率が64.3% → 83.3%に改善。 人を増やすだけでなく、辞めない仕組みをつくることも人手不足対策です。
戦略3:採用のプロの力を借りる
ここまで読んで、「やるべきことは分かった。でも誰がやるんだ」と思った方も多いでしょう。
中小建設会社の人事担当は、総務・経理と兼任していることがほとんどです。 採用戦略の設計、求人票の改善、応募者対応、面接調整。 これらをすべて自社で回すのは、現実的に難しい。
「採用に手が回らないから人が来ない。人が来ないから忙しい。忙しいから採用に手が回らない」。この悪循環を断つには、外部の力が必要です。
月額固定の採用代行(RPO)なら、求人設計から応募対応、面接調整まで丸ごと任せられます。
人材紹介で1人採用すると150〜200万円の成功報酬。 採用代行なら月額25万円〜で、複数名の採用活動を同時に進められます。
「人手不足は当たり前」で終わらせるか、手を打つか。 その判断が、3年後の会社の姿を決めます。
まとめ
建設業の人手不足が「当たり前」と言われる構造は明確です。
- 就業者数が30年で30%減少(685万→477万人)
- 55歳以上が35.9%、29歳以下はわずか約12%
- 有効求人倍率は6.68倍(全産業平均の5倍以上)
- 人手不足倒産は113件で過去最多
「嘘」ではありません。 ただし「当たり前」で諦めてもいけません。
後藤組のように、DXで定着率を64% → 83%に改善した企業もあります。 大切なのは、構造を理解したうえで、自社に合った手を打つことです。
自社で採用体制を整えるか、プロに任せるか。 どちらの道を選ぶにしても、「何もしない」が最もコストの高い選択です。