「人が足りない」の中身は、職種によってまったく違う
建設業の人手不足は、もはや周知の事実です。
しかし、どの職種が、どれくらい足りないのかを把握している経営者は多くありません。
建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7.75倍(2025年4月・厚生労働省)。 求職者1人に対して、7社以上が奪い合っている状態です。
一方、全職種平均は1.29倍。建設業の現場職は、その約6倍の採用難易度です。
「人が足りない」で止まっていませんか。職種別のデータを見れば、どこに手を打つべきかが見えてきます。
この記事では、国土交通省・厚生労働省のデータをもとに、人手不足が深刻な職種ランキングと2035年の予測データ、そして職種ごとの採用戦略を解説します。
職種別・有効求人倍率ランキング【2025年最新】
厚生労働省「一般職業紹介状況」のデータをもとに、建設関連職種の有効求人倍率を比較します。
建設関連職種の有効求人倍率(2025年4月)
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年4月)より作成
すべての建設関連職種が全職種平均の2.5倍以上の求人倍率です。
特に建設躯体工事従事者(とび、鉄筋、型枠大工など)は7.75倍。 この数字は「求人を出しても、ほぼ応募が来ない」ことを意味します。
建設技術者も5倍超え
施工管理技士などの建築・土木・測量技術者も5.12倍。
現場の技能者だけでなく、管理する側の人材も深刻に不足しています。
2035年に人材が半減する職種がある
建設経済研究所のデータは、さらに厳しい未来を示しています。
職種別技能者数の2035年予測
建設経済研究所データより作成
大工と左官は、2035年までに約40%が減少する見通しです。
現在の大工約25万人が、11年後には約15万人に。 10万人近くが引退し、その穴を埋める若手の入職が追いつきません。
高齢化が「急減」を引き起こす
建設業就業者の55歳以上は約35.5%、60歳以上は約25.7%。今後10年で就業者の4分の1が引退する計算です。この「大量退職」は、採用を強化しなければ止められません。
人手不足が深刻な6職種と、その背景
1. とび職|求人倍率7倍超、でも若手は集まる
建設躯体工事の中核を担うとび職。有効求人倍率は7倍超と最も高い水準です。
一方で、2035年の残存率は96%と他職種より圧倒的に高い。 これは若手の入職が比較的安定しているためです。
横浜市のとび職企業「雅」は、全従業員を20代で構成。 統一作業着やSNS発信で建設業のイメージを刷新し、若手採用に成功しています。
「かっこいい」を前面に出すブランディングが、とび職の採用には効果的です。
2. 大工|11年で10万人減の危機
大工の減少は数値的に最もインパクトが大きい職種です。
2024年の約25万人から2035年には約15万人へ。 残存率60%は全職種で最低レベルです。
背景には、木造住宅需要の変化とプレカット化の進展があります。 「大工がいなくても建てられる」構造が進んだ結果、育成の仕組みが弱体化しました。
しかし、リフォーム・リノベーション需要は拡大しており、多能工として活躍できる大工の需要は今後も高いままです。
3. 左官|技術伝承の断絶が最大の課題
左官も残存率60%。大工と並んで最も減少が激しい職種です。
左官は習得に10年以上かかると言われる高度な技能職。 技術者の高齢化が進むと、技術そのものが失われるリスクがあります。
国土交通省の建設労働需給調査でも、左官は労働者確保が「困難」と回答する企業が多い職種の1つです。
4. 鉄筋工|残存率67%、構造物の安全に直結
鉄筋作業従事者の残存率は67%。2035年には約8,000人が減少する見通しです。
鉄筋工は建物の構造安全性に直結する職種。 品質を維持しながら人を減らすことは不可能です。
5. 型枠大工|RC造の要
型枠大工の残存率は74%。 RC造建築には欠かせない職種ですが、若手の入職が伸び悩んでいます。
6. 施工管理技士|現場を回す人材が5倍の争奪戦
有効求人倍率5.12倍。 施工管理技士は技能者の不足を管理力でカバーする立場ですが、その管理者自体が足りません。
1級施工管理技士の離職率は約5%と低い一方、資格取得までのハードルが高く、供給そのものが限られているのが現状です。
→ 施工管理の採用単価は200万円?手法別コスト比較と削減策
人手不足を放置すると何が起きるか
「足りないけど、なんとか回っている」。
その状態は、すでに限界に近いかもしれません。
倒産リスク
帝国データバンクの調査によると、2025年の建設業の人手不足倒産は113件。 初めて100件を超え、過去最多を更新しました。
建設業全体の倒産件数も2,021件(過去10年最多)。4年連続の増加です。
受注制約
日本経済新聞の調査では、大手・中堅建設会社の約70%が「2026年度は大型工事を新規受注できない」と回答。
約40%が既存受注工事にも工期遅延リスクがあると答えています。
人手不足は「採用の問題」ではなく、「経営の問題」です。受注できない、納期に間に合わない、最悪の場合は倒産する。そういうフェーズに入っています。
コスト上昇
人手不足による工事費の上昇率は平均15〜20%。 人件費の高騰が利益率を直接圧迫します。
→ 建設業の人材不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策
職種別の採用戦略|「全方位」ではなく「狙い撃ち」
人手不足の職種すべてに同じ採用手法を使っても、成果は出ません。 職種の特性に合わせた採用戦略が必要です。
技能者(とび・大工・左官・鉄筋・型枠)の採用戦略
- SNS・動画での「見える化」:現場の作業風景、職人のインタビューを発信する。とび職の「雅」のように、「かっこいい仕事」として発信するアプローチが有効
- 外国人材の活用:特定技能制度を活用した外国人材の受入れ。特に躯体工事系は有効求人倍率が7倍超のため、国内採用だけでは追いつかない
- 育成型採用:未経験者を採用し、自社で育てる。キャリアパスと資格取得支援をセットで提示することで、若手の応募が増える
→ 建設業の外国人採用ガイド|特定技能・技能実習の制度と受入れ手順
施工管理技士の採用戦略
- 求人票の差別化:年収・休日だけでなく、担当案件の規模・種類、DX導入状況、キャリアパスを具体的に記載する
- DXで業務負荷を下げる:ANDPAD等のクラウド型施工管理ツールを導入し、「この会社なら働きやすい」と思わせる環境をつくる。ある住宅会社では、DX導入で1人あたりの担当棟数が1.6倍に
- 採用代行の活用:有効求人倍率5倍超の職種を自社だけで採用するのは非効率。スカウト・応募対応・面接調整を外部に任せ、人事は定着施策に集中する
「採用を強化したいが、人事に余力がない」場合
職種別に採用戦略を分けるべきだと分かっていても、実行する人手がないのが中小建設会社の現実です。
求人票の書き分け、媒体の使い分け、スカウトメールの送信、応募者対応。 これらを全職種分こなすには、採用専任の担当者が必要です。
月額固定の採用代行(RPO)なら、職種ごとの求人設計からスカウト、応募対応、面接調整まで丸ごと任せられます。
人材紹介で施工管理を1人採用すると150〜200万円。 採用代行は月額25万円〜で、何名・何職種採用しても追加料金がかかりません。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
まとめ
建設業の人手不足は、職種によって深刻度がまったく異なります。
- 建設躯体工事の有効求人倍率は7.75倍。全職種平均の約6倍
- 大工・左官は2035年までに約40%が減少する見通し
- 人手不足倒産は2025年に113件。過去最多を更新し続けている
「人が足りない」を「どの職種が、どれくらい足りないか」に分解すること。 それが、採用戦略の出発点です。
まずは自社で最も不足している職種を特定し、その職種に合った採用手法を選ぶところから始めてみてください。