建設の採用、「求人を出せば来る」時代はとうに終わった
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年)によると、建設業の有効求人倍率は4.81倍。全産業平均1.26倍の約4倍です。1人の求職者を5社近くで奪い合う状態が続いています。
クラフトバンク「中小建設業の人手不足調査:2025年版」(n=1,659)では、68%の企業が人手不足で仕事を断り、33%が「応募がゼロ」と回答。にもかかわらず22%は「採用活動をしていない」という実態も明らかになりました。
採用が難しいのではなく、採用の「やり方」を変えていないだけかもしれません。
この記事では、建設業の採用手法をコスト・効果・対象層の3軸で比較し、中小建設会社でも今日から始められる採用の進め方を解説します。
建設業の採用を取り巻く3つの構造問題
問題1:就業者は30年で200万人減。回復の見通しなし
国土交通省のデータによると、建設業の就業者数は1997年の685万人から2024年には477万人へ。30%が業界から去りました。2035年には建設技能労働者が約191万人まで減少する見通しで、回復の兆しは見えません。
問題2:55歳以上が36.7%。10年後の大量退職が迫る
建設業就業者のうち55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%。全産業と比べて高齢化が顕著です。
建設業と全産業の年齢構成
| 年齢層 | 建設業 | 全産業 |
|---|---|---|
| 55歳以上 | 36.7% | 32.4% |
| 29歳以下 | 11.7% | 16.9% |
国土交通省「令和7年版 国土交通白書」
10年以内に高齢層の大量退職が始まります。「まだ大丈夫」は最も危険な判断です。
問題3:新卒入職3.8万人、3年以内離職率41.4%
2024年に建設業に入職した新卒者は3.8万人(厚生労働省)。11年ぶりに4万人を下回りました。さらに高卒の3年以内離職率は41.4%。入ってきても4割が辞めていく現実があります。
→ 建設業の人手不足|最新データで見る深刻度と採用で打開する5つの戦略
建設採用の手法別コスト比較
建設業で使える採用手法を、コストと特徴で整理します。
建設業の採用手法コスト比較
| 手法 | 費用目安 | 向いている層 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ハローワーク | 0円 | 地元・シニア層 | 若手の利用率が低い |
| Indeed等の無料掲載 | 0〜5万円 | 20〜40代の幅広い層 | 運用に手間がかかる |
| 建設業特化サイト | 5〜30万円/月 | 経験者・有資格者 | 母数は大手サイトより少ない |
| 有料求人広告 | 30〜100万円/掲載 | 幅広い層 | 応募の保証なし |
| 人材紹介 | 年収の30〜35% | 即戦力の経験者 | 1人150〜200万円と高コスト |
| 採用代行(RPO) | 月額25万円〜 | 全ターゲット | 全工程を一括対応 |
各手法の業界相場より作成
新卒の平均採用単価は69.4万円/人、中途は97.8万円/人(CIC日本建設情報センター調べ)。人材紹介に頼ると施工管理1人で約200万円になるため、手法の組み合わせでコストを最適化する必要があります。
採用に成功した建設会社3社の事例
事例1:働き方改革で応募60〜70名(拓新産業・福岡)
建設用足場の貸出を手がける拓新産業は、完全週休2日制・残業ゼロ・有休取得促進を徹底。3〜4名の募集に60〜70名の応募が集まるようになりました。
求人の中身を変える前に、職場そのものを変える。この発想が採用力に直結しています。
事例2:DXで採用数2倍(小柳建設・新潟)
新潟県三条市の小柳建設はクラウドシステム・HoloLens・電子契約などDXを全面導入。新規採用が年5〜6名から年11名に倍増しました。
- 採用者の50%が県外出身
- 離職率は17.8ポイント改善して13.9%に
- 月平均残業は10.6時間→2.6時間
「IT企業のような建設会社」というブランディングが若手に響いています。
事例3:アスリート採用で毎年21名確保(深谷組・埼玉)
埼玉県の深谷組(従業員90名)は野球部を軸にした「アスリート採用」で、今期21名が入社。体力と協調性を備えた人材を全国から継続的に確保しています。
「うちの会社にはどんな人が合うか」を明確にし、ターゲットを絞ることで、知名度がなくても採用は成功します。
→ 建設業の採用成功事例5選|中小でも人が集まる会社の共通点
建設採用を成功させる5つのステップ
ステップ1:採用ターゲットを具体的に設定する
「経験者がほしい」だけでは広すぎます。年齢・資格・経験年数・希望年収を具体的に設定しましょう。ターゲットが明確になれば、使うべき媒体とメッセージも決まります。
ステップ2:求人票を「選ばれる内容」に書き換える
応募がゼロの原因は、求人票にあるケースが多いです。
- 年収レンジの明示(「350〜550万円」など幅を持たせて)
- 休日日数と残業実態を正直に記載
- 資格取得支援や手当制度を具体的に打ち出す
- 写真や動画で職場の雰囲気を伝える
ステップ3:3チャネル以上を同時運用する
ハローワークだけでは若手に届きません。最低でも3つの媒体を並行しましょう。
おすすめのチャネル組み合わせ
ハローワーク(地元シニア層)+ Indeed(20〜30代の幅広いリーチ)+ 建設業特化サイト(経験者ピンポイント)。余力があればSNSも加えると認知度が上がります。
→ 建設業の採用サイトおすすめ12選|職種別の選び方と費用比較
ステップ4:応募後48時間以内に連絡する
求人倍率5倍の市場では、応募者は複数社に同時応募しています。応募から面接まで1週間以上かかると、他社に流れます。48時間以内の初回連絡を徹底し、面接→内定まで2週間以内に短縮しましょう。
ステップ5:採用の専門家の力を借りる
中小建設会社では採用担当が総務や経理と兼任しているケースがほとんどです。片手間では求人倍率5倍の市場で勝てません。
年間3名採用時のコスト比較
| 項目 | 人材紹介 | 採用代行(RPO) |
|---|---|---|
| 年間コスト | 450〜600万円 | 300万円 |
| 1人あたり | 150〜200万円 | 100万円 |
| ノウハウ蓄積 | エージェント側 | 自社に残る |
| 対応範囲 | 紹介のみ | 求人設計〜応募対応まで |
業界相場より試算
採用代行(RPO)なら月額25万円〜の固定費で全工程を外注でき、年間3名以上採用するなら人材紹介より150〜300万円のコスト削減になります。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
まとめ
建設業の採用を成功させるポイントをまとめます。
- 有効求人倍率4.81倍、中小の68%が人手不足で仕事を断る。待ちの採用では人は来ない
- 新卒入職は3.8万人に減少、3年以内離職率は41.4%。入口と定着の両方に課題
- 働き方改革とDXで応募数は劇的に変わる。60〜70名の応募、採用数2倍の実例あり
- ハローワーク1本ではなく3チャネル以上の並行運用が基本。応募後48時間以内の連絡も鉄則
- 人材紹介150〜200万円/人 vs RPO月25万円〜。年間3名以上なら採用代行が合理的
帝国データバンクのデータでは、2025年の建設業の人手不足倒産が113件で過去最多を記録。採用を後回しにするリスクは年々大きくなっています。まずは求人票の見直しと採用チャネルの拡大から始めてみてください。