建設業の離職率を下げる定着施策5選|辞める理由から逆算する
建設採用センター 編集部
建設業界の採用支援に特化したプロフェッショナルチーム。企業の採用戦略設計から実務代行まで、豊富な支援実績を持つ。
「採用できたのに、すぐ辞めてしまう」
せっかくコストをかけて採用した社員が、1年も経たずに退職——。
建設業の採用担当者にとって、これほど辛いことはありません。
実は、建設業の全体の離職率は10.1%。全産業平均の15.4%を下回っており、数字だけ見ると「低い」部類に入ります。
しかし、ここに落とし穴があります。
高卒の新卒社員は、3年以内に43.2%が辞めています。
つまり、若手の早期離職が深刻なのです。
全体の離職率が低いのは、ベテラン社員が辞めずに残っているから。若手が定着しないまま高齢化が進めば、10年後に会社は立ち行かなくなります。
この記事では、建設業の離職データを正確に読み解いたうえで、辞める理由から逆算した5つの定着施策を解説します。
建設業の離職率、本当の姿
まず、数字で現状を把握しましょう。
全体の離職率は「低い」——ただし、それは表面の話
業種別 離職率(令和5年)
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
全産業平均15.4%に対して、建設業は10.1%。
この数字だけ見ると「建設業は辞める人が少ない」と思えます。
しかし、問題は年齢層で大きな差があることです。
若手の3年以内離職率は40%超
新卒3年以内の離職率(建設業 vs 他業種)
| 学歴 | 建設業 | 製造業 | 全産業平均 |
|---|---|---|---|
| 高卒 | 43.2% | 28.0% | 37.0% |
| 短大卒 | 41.5% | — | — |
| 大卒 | 30.7% | 21.0% | 32.3% |
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
高卒の建設業入職者は43.2%が3年以内に辞めています。
製造業の28.0%と比べると、約15ポイントも高い水準です。
さらに注目すべきは、離職のタイミング。
高卒就職者の3年以内離職者のうち——
- 1年目:2,913人
- 2年目:2,149人
- 3年目:1,512人
1年目で最も多くの人が辞めているのです。
つまり、入社後の初期対応がそのまま定着率に直結します。
なぜ辞めるのか?退職理由トップ5
定着施策を考えるには、まず「なぜ辞めるのか」を正確に知ることが必要です。
理由1:体力的にきつい(47.0%)
厚生労働省の調査で、「若年技能労働者が定着しない理由」の1位は「作業がきつい」(47.0%)。
屋外作業、重量物の運搬、夏の猛暑や冬の寒さ——これらは建設業の宿命ではあります。
しかし、「きつさ」を放置しているか、軽減する工夫をしているかで、定着率は大きく変わります。
理由2:長時間労働・休日の少なさ
建設業の年間出勤日数は全産業平均より約12日多く、年間実労働時間は約90時間長いというデータがあります。
若手・中堅の施工管理者の約4割が離職を検討しており、その主因は長時間労働です。
「休めない」は、最も確実に人を辞めさせる理由のひとつです。
理由3:賃金への不満
「給与が低い」という退職理由は約34%で推移しています。
残業代の未払いや、日給制のため週休2日になると手取りが減るというジレンマも。
賃金の「額面」だけでなく、「納得感」が重要です。
理由4:職場の人間関係
「職場の人間関係が悪い」という退職理由は、近年35%から46%へ大幅に増加しています。
建設業は縦社会が根強く、若手にとっては「相談しにくい」空気が残りがち。
ハラスメント対策は、法的義務であると同時に定着施策そのものです。
理由5:キャリアパスが見えない
「ここにいて成長できるのか」「何年頑張れば、何になれるのか」。
これがわからないと、若手は将来への不安から転職を選びます。
企業側は給与改善に注力しがちですが、若手が本当に求めているのは「休暇」「明確なキャリアパス」「やりがい」の3つです。
辞める理由から逆算する定着施策5選
施策1:週休2日を「本気で」実現する
施策の狙い
退職理由2位「長時間労働・休日の少なさ」への対策。休日を確保することで、体力的な負担も軽減できる(理由1への間接効果)。
2024年4月から時間外労働の上限規制が施行され、建設業でも月45時間・年360時間が上限になりました。
国土交通省の公共工事では、週休2日対象工事の実施率が2019年の57.1%から2022年には99.6%に到達。
休日数に応じた労務費補正も導入され、「週休2日にすると赤字になる」という壁は低くなっています。
ポイントは、「制度がある」だけでなく「実際に休める空気をつくる」こと。
ある設備工事会社では、工程表・見積り作成の段階から「月2回の週休2日」を前提に計画を組み、発注者との交渉を前工程に組み込むことで4週7休を達成しています。
2024年問題の詳細は、こちらの記事でまとめています。
施策2:キャリアパスを「年表」で見せる
施策の狙い
退職理由5位「キャリアパスが見えない」への対策。「何年後にどうなれるか」を可視化することで、将来不安を解消する。
「頑張れば昇給します」では、若手は動きません。
「入社3年で2級取得 → 5年で現場主任 → 10年でプロジェクトマネージャー」のように、具体的な年表とセットで示しましょう。
国土交通省が推進する建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用すれば、技能者の資格・就業履歴が業界横断で記録され、スキルレベルに応じた処遇の「見える化」が可能になります。
資格取得支援も効果的です。
- 受験費用を全額会社負担
- 合格祝い金の支給
- 勉強時間の確保(週1回の早上がり制度など)
「この会社にいれば成長できる」という実感が、定着の最大の武器になります。
未経験者のキャリアパス設計は、こちらで詳しく解説しています。
施策3:入社1年目の「メンター制度」を導入する
施策の狙い
退職理由4位「人間関係」+ 離職のピークが1年目であることへの対策。「孤立させない」仕組みをつくる。
前述の通り、離職は1年目に最も集中します。
この時期に「相談できる先輩」がいるかいないかで、定着率が大きく変わります。
メンター制度のポイント——
- メンターは直属の上司以外から選ぶ(本音を言いやすくするため)
- 週1回15分の1on1を設定する(負担を軽くし、継続しやすくする)
- メンター側にも手当を出す(「ボランティア」にしない)
メンターが聞くべきことは、仕事の進捗だけではありません。
「困っていることはないか」「職場の雰囲気はどうか」——この2つの質問だけでも、早期の異変察知に大きな効果があります。
施策4:「事務作業の分業」で現場の負担を減らす
施策の狙い
退職理由1位「体力的にきつい」+ 2位「長時間労働」への対策。現場社員の本業以外の負担を削減する。
施工管理者が辞める理由は、実は「現場作業がきつい」だけではありません。
書類作成・写真整理・役所対応などの事務作業が膨大で、定時後にデスクワークが始まるという構造が問題です。
ある建設会社では、事務作業を専門に担う「工務部」を新設し、現場と事務の役割分担を明確化しました。
その結果、労働時間が平均約15%削減。
現場作業に集中できるようになったことで、若手の「やりがい」も回復し、定着率が改善しました。
事務専門のスタッフを雇う余裕がない場合は、ITツール(電子黒板・タブレット・クラウド日報)の導入でも同様の効果が期待できます。
施策5:「処遇改善」を数字で見せる
施策の狙い
退職理由3位「賃金への不満」への対策。納得感のある報酬体系をつくる。
公共工事設計労務単価は13年連続で引き上げが続いており、令和7年は前年度比6.0%増。
全国全職種の加重平均値は24,852円で、過去最高水準を更新しています。
この追い風を活かして——
- 経験年数別の年収テーブルを明示する
- 資格手当の金額を具体的に開示する
- 昇給基準を「あいまいな評価」ではなく「達成条件」で示す
「頑張ったら上がる」ではなく、「○○を達成したら○万円上がる」と明確に伝えること。
これだけで、若手の「ここにいる意味」が変わります。
採用段階での給与の見せ方は、こちらで解説しています。
定着施策セルフチェック
自社の定着施策チェック
Q1.完全週休2日制(または4週8休)を実現できていますか?
Q2.入社1年目の社員に、直属の上司以外のメンターを配置していますか?
Q3.入社3年後・5年後・10年後のキャリアパスを具体的に提示していますか?
Q4.施工管理者の事務作業を軽減する仕組み(分業やITツール)がありますか?
Q5.経験年数別の年収テーブルを、社員に明示していますか?
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まとめ
建設業の離職率は全体では低いものの、若手の3年以内離職率は43.2%と深刻な水準です。
辞める理由から逆算した5つの定着施策をおさらいします。
- 週休2日を「本気で」実現する(長時間労働・休日不足への対策)
- キャリアパスを「年表」で見せる(将来不安の解消)
- 入社1年目の「メンター制度」を導入する(孤立防止・人間関係改善)
- 事務作業の「分業」で現場の負担を減らす(きつさ・長時間労働の軽減)
- 処遇改善を「数字」で見せる(賃金不満の解消)
「採用」と「定着」はセットです。
どれだけ採用に力を入れても、辞められてしまえばゼロに戻る。
逆に言えば、定着率が上がれば採用コストは確実に下がります。
まずは1つ、「メンター制度の導入」や「年収テーブルの明示」など、今日からできることから始めてみてください。
採用が難しい根本的な理由と打ち手は、こちらの記事で解説しています。