建設業の離職率は「低い」。でも人が減り続けている

建設業の離職率は10.1%(令和5年・厚生労働省「雇用動向調査」)。 全産業平均の15.4%を大きく下回っています。

「うちの業界は離職率が高い」と思い込んでいませんか。

数字だけ見れば、建設業の離職率は16業種中11位。決して高くありません。

しかし、問題は別のところにあります。

建設業の入職率は8.1%。離職率10.1%に対して、入ってくる人のほうが少ない。 つまり毎年2.4ポイント分の人材が純減している計算です。

さらに深刻なのが、高卒3年以内離職率43.2%という数字。 全産業平均の38.4%を約5ポイント上回っています。

この記事では、厚生労働省の最新データをもとに業種別離職率ランキング新卒3年以内離職率離職コストの試算、そして離職率1%を実現した企業の事例まで解説します。


業種別離職率ランキング【令和5年最新】

厚生労働省「令和5年雇用動向調査」のデータをもとに、主要業種の離職率を比較します。

業種別離職率ランキング(令和5年)

宿泊・飲食26.9%
生活関連・娯楽21.4%
医療・福祉15.3%
全産業平均15.4%
教育・学習14.5%
運輸・郵便13%
不動産12.4%
卸売・小売11.8%
建設業10.1%
製造業9.7%
情報通信9.3%

厚生労働省「令和5年雇用動向調査」より作成

建設業の離職率10.1%は、製造業(9.7%)や情報通信業(9.3%)に近い水準です。

宿泊・飲食サービス業の26.9%と比べると、約2.7分の1。

「建設業=離職率が高い」は、データ上は正しくありません。

ただし、建設業が他業種と決定的に違うのは入職率の低さです。 辞める人は少ないけれど、入ってくる人はもっと少ない。この構造が人手不足の本質です。

建設業の人材不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策


建設業の離職率推移【過去30年のトレンド】

建設業の離職率は、長期的には改善傾向にあります。

建設業の離職率推移

1991年14%
2002年18.6%
2010年12.5%
2015年9.8%
2020年9.5%
2022年10.5%
2023年10.1%

厚生労働省「雇用動向調査」各年版より作成

ピークは2002年の18.6%。公共投資の大幅削減で業界全体が縮小し、大量離職が発生しました。

その後は右肩下がりで推移し、2020年には9.5%まで低下。

離職率だけを見れば、建設業は「改善できている」業界です。

しかし、55歳以上の就業者が約37%、29歳以下が約12%という年齢構成を考えると、今後10年で大量退職が始まります。

「辞めない」ではなく「辞められない」だけかもしれません。 若手の採用と定着を同時に進めなければ、現場は回らなくなります。


新卒3年以内離職率|高卒43.2%が最大の課題

建設業の離職問題で最も深刻なのが、新卒の早期離職です。

新卒3年以内離職率(2021年3月卒)

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」

大卒の3年以内離職率は30.7%。全産業平均より4.2ポイント低い水準です。

一方、高卒は43.2%10人入社して3年以内に4人以上が辞めている計算です。

なぜ高卒の離職率だけが高いのか

建設業では高卒入社者の多くが現場の技能職に配属されます。

離職理由の上位は以下の3つです。

  1. 長時間労働:年間総労働時間は全産業平均より320時間多い
  2. 収入への不満:日給制の割合が63.6%。雨天や冬場は収入が不安定になる
  3. キャリアの見通しが立たない:「10年後どうなれるか」が見えない

2024年問題が離職リスクをさらに高める

時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)により、残業代収入が減少します。日給制の技能者にとっては実質的な収入減。対策なしでは離職加速のリスクがあります。

建設業の離職率を下げる定着施策5選|辞める理由から逆算する


離職コストの試算|1人辞めるたびに657万円の損失

「離職率が高くても、また採用すればいい」。

この考え方が、実は最もコストがかかります。

1人離職あたりの損失額

ミツカリ「早期離職コスト」より作成

新卒1人の離職で約657万円、中途なら約774万円の損失です。

従業員50名・離職率10%の建設会社なら、年間5人が離職。損失額は約3,300〜3,900万円に達します。

離職率を5ポイント改善するだけで、年間約1,600〜1,900万円のコスト削減が見込めます。

定着施策への投資は、採用コスト削減として確実にリターンがある投資です。


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女性の離職率|入職は増えても定着が追いつかない

建設業の女性就業者は約78〜87万人、就業者全体の約17%を占めています(国土交通省資料)。

新卒女性建設技術者は、2012年の1,846人から2021年の4,053人へと2.2倍に増加しました。

しかし、女性特有の離職要因が定着を阻んでいます。

女性の離職理由トップ3

  1. 現場環境の未整備:女性専用トイレの設置率は約70%。30%の現場にはまだない
  2. 育児との両立困難:建設業の育児休業取得率は66.9%(全産業平均86.6%)
  3. ロールモデルの不在:女性管理職がいないと、キャリアの先が見えない

女性を採用するだけでは不十分です。 環境整備と育児制度の充実がセットでなければ、採用コストだけが積み上がります。

建設業の女性採用ガイド|女性が活躍する会社の共通点と環境整備5選


離職率1%を実現した企業の取り組み

事例1:鹿島建設|離職率0.98%(5年平均)

2017年から「鹿島働き方改革」を推進。 現場の長時間労働削減を主軸に、直近5年の離職率を平均0.98%まで改善しました。

2024年度単年でも離職率1.2%。大手ゼネコンの中でもトップクラスの定着率です。

事例2:成友興業|平均年齢31歳の若い組織

人材確保・定着・育成の3軸に注力し、24年間で売上高13倍超を実現。

業界平均より約10歳若い平均年齢31歳の組織を構築しています。 高卒離職率43.2%の業界で、若手が定着する組織をつくれることを証明した事例です。

事例3:中小建設会社のICT活用事例

ある中小建設会社では、ICT建機の導入と多能工化により作業工数を4〜5割削減

労働時間の短縮が年間休日の増加につながり、結果として定着率が改善しました。

離職率改善のカギは、大企業の真似ではありません。自社の離職原因を正確に把握し、ピンポイントで対策を打つことです。

離職率を下げるために今すぐできる3つの施策

1. 離職原因の「本当の理由」をヒアリングする

企業が考える離職理由と、実際の離職理由にはギャップがあります。

「給与が低い」と思い込んでいたら、実は「キャリアパスが見えない」が本当の理由だった。 こうしたズレを放置すると、的外れな施策にコストを使うことになります。

退職面談の仕組み化と、在職者への定期ヒアリングの両方が必要です。

2. 入社3年目までの集中サポート体制をつくる

高卒3年以内離職率が43.2%ということは、最初の3年が勝負です。

メンター制度の導入、キャリアパスの明示、資格取得支援。 この3つをセットで導入するだけでも、定着率は大きく変わります。

建設業のメンター制度導入ガイド|若手の早期離職を防ぐ仕組みづくり

3. 給与体系を「日給制」から見直す

建設技能者の63.6%が日給制です。 天候や季節で収入が変動する不安定さは、離職の大きな要因になります。

月給制への移行が難しい場合でも、最低保障額の設定賞与制度の導入で安定感を出すことは可能です。


「定着施策も採用も、手が回らない」場合

離職率を下げるには、原因分析→制度設計→現場への浸透が必要です。 同時に、抜けた穴を埋める採用活動も止められません。

中小建設会社の人事担当は、総務や経理と兼任していることがほとんどです。 定着施策と採用活動の両方を、既存業務に追加するのは現実的ではありません。

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人材紹介で施工管理を1人採用すると150〜200万円。 採用代行は月額25万円〜で、何名採用しても追加料金がかかりません。

採用業務を外部に任せることで、人事担当は定着施策に集中できます。

採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準


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まとめ

建設業の離職率は10.1%。全産業平均の15.4%を下回っています。

しかし、3つの構造的な問題があります。

  1. 入職率8.1%が離職率を下回り、人材が純減し続けている
  2. 高卒3年以内離職率43.2%。若手の早期離職が止まらない
  3. 1人の離職で657〜774万円の損失。放置するほどコストが膨らむ

離職率1%を実現している企業は、特別なことをしているわけではありません。 離職原因を正確に把握し、入社3年目までの集中サポートを仕組みにしているだけです。

まずは自社の離職データを「学歴別」「年次別」に分解するところから始めてみてください。