「大工がいない」は、もう全国共通の悩み
「外注の大工が見つからない」「若い大工がいなくなった」。
工務店やゼネコンの現場で、毎日のように聞こえてくる声です。
総務省の国勢調査によると、大工の就業者数は1980年の約93.7万人から2020年には約29.8万人へ。40年間で約68%が減少しました。
国土交通省の試算では、2040年には約13万人まで減る見通し。今いる大工の半分以上がいなくなる時代が、すぐそこに来ています。
この記事では、大工の採用がここまで難しくなった構造的な原因をデータで示し、実際に若手大工の確保に成功している企業の5つの方法を事例付きで解説します。
データで見る大工不足の実態
40年で68%減、2040年には13万人へ
大工の就業者数は、戦後ピークの1980年から一貫して減少しています。
大工就業者数の推移
総務省「国勢調査」、国土交通省試算より作成
2000年に約60万人だった大工は、2015年に35万人、2020年に29.8万人。国土交通省の試算では2030年に約21万人、2040年には約13万人まで減少する見通しです。
平均年齢54歳、60歳以上が43%
大工の高齢化は、建設業の中でも突出しています。
2020年の国勢調査データでは、大工の60歳以上が約43%(12.8万人)。50歳以上まで広げると約60%を占めます。一方、30歳未満はわずか7.2%です。
大工の年齢構成(2020年)
総務省「国勢調査」(2020年)より作成
平均年齢は54.2歳。建設技能者全体の平均よりさらに高く、今後10年で大量引退が確実です。
有効求人倍率5倍超、採れない時代
厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、建設業全体の有効求人倍率は5.04倍(2025年時点)。建設躯体工事従事者に限れば8.70倍です。
全職種平均の1.25倍と比べると、建設業は約4倍の採用難易度。大工を含む技能者の確保は、全産業で最も困難な領域のひとつです。
→ 建設業の人手不足が深刻な職種ランキング|職種別データと採用戦略
大工の採用がここまで難しい3つの理由
理由1: 「きつい・汚い・危険」のイメージが根強い
若い世代にとって、大工は「肉体労働で危険」というイメージが先行します。実際の現場は安全管理が進んでいますが、認知が追いついていません。
建設業全体で29歳以下が約12%、大工に限れば7.2%。若者の建設業離れは深刻で、そもそも応募母数が圧倒的に少ないのが現実です。
理由2: 一人前になるまでの期間が長い
大工は一人前になるまで5〜10年かかると言われます。長期的な育成が前提のため、「すぐ使える人材」を中途で採用するのが極めて難しい職種です。
経験者は既に独立して一人親方になっているか、条件の良い現場に囲い込まれています。未経験者を採用するにしても、育成体制がなければ定着しません。
理由3: 一人親方の高齢化で外注も限界に
自社で大工を雇用せず、一人親方への外注に頼ってきた企業も多いですが、この構造も限界を迎えています。
一人親方の平均年齢も上昇しており、「日当が低い仕事は断る」という構造が生まれています。外注費は年々上昇し、そもそも頼める大工が見つからない状況が増えています。
日本経済新聞の調査(2025年)では、大手・中堅建設会社の約7割が「2026年度内に大型工事を新規受注できない」と回答。約4割が契約済み工事で工期遅れの可能性を指摘しています。大工不足は個社の問題ではなく、業界全体の経営リスクです。
大工の採用を成功させる5つの方法
方法1: 「社員大工」制度で若手を育てる
近年、大工を正社員として雇用し、自社で育成する「社員大工」制度を導入する企業が増えています。
一人親方への外注と比較した場合のメリットは以下です。
社員大工 vs 一人親方外注
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、各社事例より作成
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では、雇用されている大工の平均年収は約448万円。一人親方は年収522〜900万円とされますが、外注費の上昇を考えると、長期的には社員大工の方がコスト効率が高いケースが増えています。
方法2: 工業高校・職業訓練校との連携
大工志望の若手に最も近い場所が工業高校と職業訓練校です。
相羽建設(東京)は工業高校からインターンシップ経由で若手を採用し、現在5名の社員大工が在籍。若い世代同士のコミュニケーションを重視した職場環境が定着率の高さにつながっています。
平成建設は、さらに踏み込んで大卒の新卒を大工として採用・育成する独自モデルを構築。「大工=大卒が目指すキャリア」という新しいイメージを作り出しています。
方法3: 育成ロードマップの可視化
「何年で一人前になれるのか」が見えないと、若手は不安で辞めていきます。
岡崎工務店(富山)は「成長ステップシート」を導入。入社から5年間で習得すべき技術を段階的に明示し、5年で一人前になるロードマップを可視化しています。
イムラ(奈良・大阪)は2014年から大工育成制度をスタート。学生を社員大工として採用し、6年間棟梁のもとで伝統技術を修業する仕組みを構築しました。
建築工房 零では十数名の社員大工が在籍し、先輩が後輩を教える文化が根付いています。育成が「仕組み」になっているからこそ、採用後の定着が実現できているのです。
方法4: 待遇改善と求人票の工夫
大工の採用で最も重要なのは、待遇の具体的な数字を求人票に明示することです。
求人票に記載すべき待遇情報は以下です。
- 年収の具体的な金額: 「経験者450〜600万円」のように幅を持たせて提示
- 社会保険の完備: 一人親方からの転職組は社会保険を重視する
- 資格取得支援: 建築大工技能士、建築施工管理技士の受験料・報奨金
- 休日数: 年間休日105日以上を明記(4週8休以上が目安)
- キャリアパス: 「5年で棟梁」「10年で現場監督」など将来像を提示
「大工 募集」「職人 求む」だけの求人では、もう人は来ません。「この会社に入ったらどうなれるか」が伝わる求人票が、応募率を大きく左右します。
方法5: 建設業特化の採用チャネルを使う
大工の採用は、総合転職サイトだけでは難しいのが現実です。建設業に特化した採用チャネルを使い分けることが重要です。
助太刀は建設業特化のマッチングアプリで、20万以上の事業者が利用。職人とのマッチングに強く、大工の採用にも活用できます。
GATEN職は月額23,100円〜と安価で、現場系職種に特化。POWER WORKは紙媒体も展開しており、インターネットをあまり使わないベテラン職人にもリーチできます。
ハローワークは無料で掲載でき、助成金との連携も可能。リファラル採用(職人のつながりを活用した紹介採用)も、大工の世界では効果が高い手法です。
→ 建設業の採用サイトおすすめ12選|職種別の選び方と費用比較
大工の採用・育成に使える公的支援
大工の育成には時間がかかります。その負担を軽減する公的支援も活用すべきです。
国土交通省は「大工を育てるNET」というポータルサイトを運営し、大工育成に取り組む企業の情報発信や制度設計を支援しています。
自治体レベルでも支援が広がっています。山形県は「若手大工技能習得サポート事業」として、新規入職から5年間の資格取得・技能習得を支援。こうした地域の制度を活用すれば、育成コストを抑えられます。
2025年12月に全面施行された改正建設業法では、技能者の処遇改善や労働環境整備が強化されています。法改正の流れを追い風に、大工の待遇改善と採用強化を同時に進めることが求められています。
→ 建設業の人材確保に使える助成金ガイド|7制度の支給額と申請方法
「大工を採れない」を放置するリスク
大工不足を放置した場合の経営リスクは、すでに数字に表れています。
- 大手・中堅の7割が「大型工事を新規受注できない」(日本経済新聞、2025年調査)
- 約4割が「契約済み工事で工期遅れの可能性」と回答
- 人手不足倒産(建設業)が2025年に113件で過去最多(帝国データバンク)
仕事はあるのに人がいなくて受けられない。この状態が続けば、売上の機会損失だけでなく、取引先からの信頼も失います。
大工の確保は「いつかやる」課題ではなく、今すぐ動くべき経営課題です。
しかし、日常業務をこなしながら採用活動まで手が回らないのが中小建設会社の実情です。そうした企業には、採用代行(RPO)という選択肢があります。
人材紹介の成功報酬は1人150〜200万円。月額固定の採用代行なら25万円〜で、求人票の作成から媒体選定、スカウト、面接調整まで一括で任せられます。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
まとめ
大工の就業者数は40年で93.7万人から29.8万人へ68%減少。平均年齢は54.2歳で、60歳以上が43%を占めます。2040年には13万人まで減る見通しです。
大工を採用するための5つの方法は以下の通りです。
- 社員大工制度の導入: 外注依存から脱却し、自社で育てる仕組みをつくる
- 工業高校・職業訓練校との連携: インターンシップ経由で若手と接点をつくる
- 育成ロードマップの可視化: 「5年で一人前」のステップを明示する
- 待遇改善と求人票の工夫: 年収・社会保険・キャリアパスを具体的に書く
- 建設業特化の採用チャネル活用: 助太刀・GATEN職など職人に届く媒体を使う
まずは自社の大工の年齢構成を確認し、5年後・10年後の人員計画を立てるところから始めてみてください。