「採用は社長の仕事」のままでは、もう人が来ない時代です
建設業の有効求人倍率は5.02倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」2025年)。躯体工事に限れば8.38倍。求職者1人を8社以上が奪い合う異常な市場です。
採用に困っている建設会社には共通点があります。それは「採用が誰かの本業ではない」ということです。
Indeed Japanの調査(2021年)によると、中小企業の採用担当者の72.4%が他業務との兼任。従業員300人以下の企業では、採用業務に充てられる時間はわずか35.5%です。さらに助太刀総研の調査(2024年)では、中小建設会社の43%が年間採用ゼロ。人が欲しいのに、採用活動をする人がいないのです。
この記事では、建設会社が人事・採用の体制をどう作るべきかを、データと事例をもとに解説します。
なぜ建設会社には「採用する人」がいないのか
構造的な3つの原因
建設会社に人事部門が育ちにくい背景には、業界特有の構造があります。
1つ目は現場優先の文化です。建設業では「現場が回ること」が最優先。管理部門に人を割く余裕がなく、総務や経理が採用を片手間で担当するケースが大半です。
2つ目は縁故採用への依存。助太刀総研の調査では、中小建設会社の採用チャネルは「知人・縁故」が61%で最多、次いでハローワーク49%。求人広告は31%、人材紹介は13%にとどまります。「知り合いの紹介で何とかなってきた」という成功体験が、採用体制の整備を後回しにさせています。
3つ目は採用担当の適任者がいないこと。人事経験者は建設業界に少なく、他業界から採用しようにも「建設業の人事」は求職者にとって馴染みが薄い。結果として、社長や役員が面接だけ対応する「場当たり的な採用」が続きます。
データが示す「採用体制なし」のリスク
日本商工会議所の調査(2024年)によると、建設業で人手不足を感じている企業は82.3%で、介護に次いで全業種2位。帝国データバンクのデータでは、2025年の人手不足倒産は427件と過去最多を更新し、建設業が全体の約26.5%を占めてトップです。
「人が足りない」と言いながら、採用活動を本気でやれる体制がない。これが建設業の人手不足の根本原因のひとつです。
→ 建設業の人手不足を解決する5つの方法|データと事例で解説
人事体制を作った建設会社はどう変わったか
事例1:専任採用担当を置いて年間12名採用(従業員83名)
ある建設会社では、それまで社長と役員が兼任で採用対応していました。専任の採用担当を1名配置し、求人票の見直し・応募者対応の迅速化・面接プロセスの整備を行った結果、年間12名の採用に成功。それまでほぼゼロだった採用数が劇的に改善しました。
事例2:採用戦略の見直しで4.5ヶ月で22名応募(高知県)
高知県のある建設会社では、年間1件程度しか応募がない状態が続いていました。採用戦略を根本から見直し、ターゲット設定・求人媒体の選定・訴求内容の改善を実施。その結果、4.5ヶ月で22名が応募し、10名を採用。女性比率51%という成果も出ています。
事例3:働き方改革と発信で応募3倍(愛知県・従業員25名)
愛知県の型枠大工会社(従業員25名)は、週休2日制の部分導入と日報のアプリ化を実施。「建設業はこう変われる」というメッセージをSNSで発信したところ、若手の応募が前年比3倍に増加しました。
共通点は明確です。採用を「誰かの仕事」にした瞬間から、結果が変わっているのです。
→ 建設業の採用成功事例5選|中小でも人が集まる会社の共通点
建設会社の人事体制、3つの選択肢を比較する
採用体制を整える方法は大きく3つ。それぞれのメリット・デメリットを整理します。
採用体制の選択肢比較
人材紹介は「高すぎる」が本音
施工管理技士を人材紹介で1人採用すると、成功報酬は150〜200万円(年収の30〜35%)。3人採用すれば450〜600万円です。しかも紹介会社経由の人材は定着率が低い傾向があり、1年以内に退職すれば投資がゼロになります。
RPOなら「月額固定」で採用活動を丸ごと任せられる
建設業専門の採用代行(RPO)なら、月額25万円〜で求人票の作成、媒体運用、応募者対応、面接調整まで一括で依頼できます。年間300万円で複数名を採用できれば、人材紹介の半額以下。しかも採用ノウハウが蓄積されるため、将来自社に人事を置く際の基盤にもなります。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
自社に合った採用体制の選び方
従業員50人以下:RPOから始めるのが現実的
従業員50人以下の建設会社が、いきなり人事の正社員を採用するのはリスクが高い。まずはRPOで採用の「型」を作り、採用数が安定してきたら社内に人事を配置する、という段階的なアプローチがおすすめです。
従業員50〜100人:兼任+RPOのハイブリッド型
総務や労務の担当者に採用業務の一部を任せつつ、求人設計や媒体運用はRPOに委託。兼任者が面接と入社後のフォローに集中できる体制を作ります。
従業員100人以上:専任人事+RPOの併用
年間採用数が10名を超えるなら、専任の採用担当者を置くべきです。ただし、人事1人で全職種をカバーするのは現実的ではありません。専任人事が採用戦略と面接に集中し、実務はRPOがサポートする併用型が最も成果が出ます。
人事の適正配置人数の目安
リクルートワークス研究所の調査によると、全産業の人事比率は従業員の約1.9%。従業員100人なら人事2人が目安です。ただし建設業は職種が多く採用難易度が高いため、RPOの併用で実質的な採用力を補強するのが合理的です。
まとめ
建設会社の採用体制づくりで押さえるべきポイントをまとめます。
- 中小建設会社の43%が年間採用ゼロ。原因は「採用を本業とする人がいない」構造的な問題
- 採用担当の72.4%が兼任で、採用業務に使える時間は35.5%しかない
- 専任人事を置いた会社は採用数が劇的に改善。年間0名→12名の事例もある
- 人材紹介は1人150〜200万円。3人採用で450〜600万円と高コスト
- RPOなら月額25万円〜で丸ごと委託可能。まずはRPOで型を作り、段階的に社内人事を育てるのが現実的
「人が来ない」のは、採用市場が厳しいからだけではありません。採用を担う体制がないことが、最大のボトルネックです。