「いい人がいたら採る」では、もう間に合わない
建設業の有効求人倍率は5.04倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」2025年)。求人5件に対して求職者が1人しかいない計算です。躯体工事は7.65倍、土木作業は6.21倍と、職種によってはさらに深刻です。
「人が足りなくなったら求人を出す」。この場当たり的な採用が、コストの膨張と慢性的な人手不足の原因です。
帝国データバンクの調査(2025年)によると、建設業の人手不足倒産は113件で初めて100件を超えました。全業種の人手不足倒産427件のうち約26.5%を建設業が占めており、全業種トップです。
採用に成功している建設会社には共通点があります。それは「採用計画」があること。いつ、何人、どの職種を、どのチャネルで採るのかを事前に設計し、計画的に動いています。
この記事では、建設業に特化した採用計画の立て方を5ステップで解説し、採用数を2倍にした中小建設会社の事例も紹介します。
なぜ建設業に「採用計画」が必要なのか
理由1:人手不足は構造的な問題
建設業の就業者数はピーク時の1997年に685万人いましたが、2024年には477万人まで減少しました(総務省「労働力調査」)。技能者に限れば464万人から303万人へ、35%も減っています。
年齢構成を見ると、55歳以上が約37%を占める一方、29歳以下はわずか12%。今後10年で大量退職が進むことは確定しています。場当たり的な採用では、この構造的な減少に対応できません。
建設業就業者の年齢構成(2024年)
総務省「労働力調査」2024年
理由2:計画なしの採用はコストが膨らむ
建設業の中途採用コストは1人あたり平均97.8万円。施工管理技士を人材紹介で採用すると、年収の30〜35%で約200万円かかります。
さらに、計画なしの採用はミスマッチを生みやすく、早期離職につながります。建設業の高卒3年以内離職率は38.4%(厚生労働省、2021年3月卒)。約4割が3年で辞める計算です。採用費と育成費が丸損になるだけでなく、再度97.8〜200万円のコストがかかります。
理由3:計画があれば先手を打てる
採用計画があれば、繁忙期の前に人員を確保でき、採用チャネルの使い分けもできます。「急いで人材紹介に頼んで高額の手数料を払う」のではなく、「半年前から求人媒体で母集団を形成しておく」という動き方が可能になります。
→ 施工管理の採用コスト完全ガイド — 人材紹介・求人広告・RPOの費用比較
建設業の採用計画の立て方|5ステップ
ステップ1:事業計画から必要人数を逆算する
採用計画は「何人採るか」から始まりますが、この数字は勘ではなく事業計画から逆算します。
確認すべき項目:
- 来期の受注予定・工事件数
- 現在の人員構成と退職予定者
- 各現場に必要な有資格者の人数(監理技術者・主任技術者の配置要件)
例えば、来期の受注目標から必要な現場数を算出し、各現場に必要な施工管理者と技能者の人数を割り出します。そこから現在の人員を引けば、「あと何人必要か」が数字で見えます。
退職予定者の見積もり方
定年退職の予定は把握しやすいですが、自己都合退職の予測が難しいのが現実です。過去3年の離職率の平均を使うのが実務的です。建設業の平均離職率は10.1%(厚生労働省「雇用動向調査」2023年)。自社のデータがなければ、この数字を目安にしてください。
ステップ2:職種別の採用難易度を把握する
建設業の採用は職種によって難易度がまったく違います。必要人数が同じでも、採用にかかる時間とコストは職種で大きく変わります。
職種別の有効求人倍率と採用単価の目安
厚生労働省「一般職業紹介状況」2025年より当社整理
躯体工の有効求人倍率は7.65倍。求人を出しても応募がほぼ来ない水準です。一方、未経験者をターゲットにすれば倍率は下がり、育成前提で採用する選択肢が広がります。
ステップ3:採用チャネルを職種別に選定する
職種の難易度に応じて、最適な採用チャネルは異なります。
経験者の施工管理技士なら、人材紹介やダイレクトリクルーティングが効果的。未経験者や若手を狙うなら、SNSや求人サイトで認知を広げる方が費用対効果が高くなります。
採用チャネル別の特徴
ポイントは「1つのチャネルに頼らないこと」。経験者向けの人材紹介と、未経験者向けの求人サイト・SNSを並行して走らせるのが、計画的な採用の基本です。
→ 建設業の採用媒体完全比較ガイド|ハローワーク・求人サイト・スカウトの使い分け
ステップ4:年間スケジュールに落とし込む
採用計画を「いつ何をするか」のスケジュールに落とし込みます。建設業の採用には季節性があるため、タイミングが重要です。
建設業の採用スケジュール例
中途採用は年間を通じて動きますが、1〜3月と4〜5月が最も転職者が多い時期です。この時期に求人を出していなければ、最大のチャンスを逃すことになります。
ステップ5:効果測定と改善サイクルを回す
採用計画は立てて終わりではありません。月次で以下の指標を確認し、計画を修正します。
確認すべき指標:
- チャネル別の応募数・面接率・内定率・入社率
- 1人あたり採用コスト(チャネル別)
- 入社後3ヶ月・6ヶ月・1年の定着率
- 計画に対する充足率
数字で管理することで、「このチャネルはコストの割に採れない」「この職種は未経験採用に切り替えるべき」という判断がデータに基づいてできるようになります。
採用計画で成果を出した建設会社の事例
事例1:小柳建設(新潟県)— 採用数が5名→11名に倍増
小柳建設は従業員約80名の中小建設会社。DX推進とPR部門の新設を軸に採用改革を実行しました。
施策:
- HoloLensを活用したDX推進で「先進的な会社」のイメージを構築
- YouTube・SNSで現場の様子を定期発信
- クラウドツールの全面導入で月平均残業時間を2.6時間に削減
結果:
- 年間採用数が5〜6名から11名に倍増(うち県外5名)
- 離職率が31.7%から13.9%に改善(17.8ポイント減)
- 賞与は約4カ月分と右肩上がり
注目すべきは、採用チャネルを増やしただけでなく、「働きたいと思われる会社づくり」から計画的に取り組んだ点です。
事例2:サンエーフレッシュ工業(北海道)— SNS広告で2ヶ月で採用成功
有限会社サンエーフレッシュ工業は、求職者目線でホームページを刷新し、SNS広告を出稿。広告開始から約2ヶ月で意欲の高い若手の採用に成功しました。
「まず自社の見せ方を変え、次にターゲットに届くチャネルを選ぶ」。この順番が計画的な採用の鉄則です。
事例3:週休二日制導入企業 — 若手採用率が30%向上
4週8休・4週6休を導入した建設会社では、若手採用率が約30%向上したという調査結果があります。
採用計画を立てる際に見落としがちなのが、「採用チャネルの前に、働き方を変える」という視点です。求人票に「完全週休二日制」と書けるかどうかで、応募数は大きく変わります。
→ 建設業の採用成功事例5選|中小でも人が集まる会社の共通点
自社で採用計画を回す場合と、プロに任せる場合
中小建設会社では、社長や現場監督が採用も兼任しているケースがほとんどです。採用計画を立てても、「実行する時間がない」のが現実です。
採用活動の比較
人材紹介で施工管理技士を1人採用すると150〜200万円。一方、月額固定の採用代行なら25万円〜で求人票の作成から応募者対応まで任せられます。年間で複数名採用するなら、採用代行のほうがコスト効率は圧倒的に高くなります。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
まとめ
建設業の採用計画を成功させるためのポイントをまとめます。
- 有効求人倍率5.04倍、人手不足倒産113件。場当たり的な採用では生き残れない
- 事業計画から必要人数を逆算する。「何人必要か」を数字で把握することが出発点
- 職種別の採用難易度に合わせてチャネルを選ぶ。1つのチャネルに頼らず複数を並行運用する
- 年間スケジュールに落とし込む。1〜3月と4〜5月の転職ピーク期を逃さない
- 効果測定で計画を改善し続ける。データに基づく判断が、採用コストの最適化につながる
小柳建設のように、計画的に取り組めば採用数を2倍にすることも可能です。逆に計画なしで人材紹介に頼り続ければ、1人200万円のコストが積み上がり続けます。
まずは「来期、何人必要か」を数字で出すところから始めてみてください。