新卒が「建設業を受けよう」と思う確率は、わずか4.8%

「説明会を開いても学生が来ない」「内定を出しても辞退される」。

建設会社の採用担当者なら、一度は経験したことがあるはずです。

インタツアーの調査(回答652名)によると、建設業を「受けようと思っている」学生はわずか4.8%。「受けるかもしれない」を含めても26.3%にとどまります。

2026年卒の建設業の大卒求人倍率は8.55倍。全体平均1.66倍の5倍以上。8社が1人の学生を奪い合っている計算です。

しかし、従業員10名未満の会社が予定の2倍の内定を獲得した事例もあります。この記事では、建設業の新卒採用が難しい構造的な原因をデータで示し、中小企業でも再現可能な5つの戦略を事例付きで解説します。


データで見る建設業の新卒採用の現実

就業者477万人、29歳以下はわずか12%

総務省「労働力調査」によると、建設業の就業者数はピーク時の1997年に685万人。2024年時点では477万人で、約30%減少しています。

建設業就業者の年齢構成(2024年)

29歳以下12%
30〜54歳51%
55歳以上37%

総務省「労働力調査」より作成

55歳以上が約37%を占める一方、29歳以下は約12%。今後10年で大量退職が見込まれるなか、若手の流入が追いつかない構造です。

新卒入職者数が11年ぶりに4万人割れ

厚生労働省「雇用動向調査」によると、建設業への新規学卒入職者数は2024年に3.8万人。2014年以降4万人台を維持してきましたが、11年ぶりに4万人を下回りました

大卒の建設業就職者は17,325人(2024年3月卒)で、2013年比では1.4倍に増えています。しかし業界が必要とする人数には遠く及びません。

人手不足倒産が過去最多を更新

帝国データバンクの調査によると、2024年度の人手不足倒産は350件(過去最多)。うち建設業は111件で全体の約3割を占め、初めて100件を超えました。

人が採れない会社は、仕事があっても受けられず倒産する。新卒採用は経営の存続に直結する課題です。

建設業の人手不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策


新卒採用が難しい3つの構造的原因

原因1: 学生が持つ「3Kイメージ」の根深さ

インタツアーの調査では、学生が建設業に持つイメージの1位は「肉体労働・力仕事」42.2%。次いで「作業的」43.7%、「昔ながらの文化がある」34.5%。

一方で、プラスイメージとして「社会貢献度が高い」40.2%、「安定している」31.9%も挙がっています。ネガティブイメージを払拭し、ポジティブな面を伝える情報発信が鍵です。

原因2: 高卒と大卒で異なる離職構造

厚生労働省のデータによると、建設業の新卒3年以内離職率は大卒30.1%、高卒42.4%

新卒3年以内離職率の比較

厚生労働省データより作成

大卒は全産業平均より低い一方、高卒は6.5ポイントも高い。高卒採用と大卒採用では、定着に向けたアプローチを変える必要があります。

原因3: 労働時間と休日のギャップ

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、建設業の年間出勤日数は238日。全産業平均より26日多く、年間労働時間も約230時間多い状況です。

2024年4月からの時間外労働上限規制(月45時間・年360時間)の適用で改善は進んでいますが、学生が就職先を選ぶ際に「休みが少ない」は大きなマイナス要因です。

建設業の採用が難しい5つの理由と、今すぐできる打ち手


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新卒採用を成功させる5つの戦略

戦略1: 学校との関係構築を最優先にする

工業高校・専門学校・大学の建築土木系学科との関係構築は、最もコストパフォーマンスが高い新卒採用手法です。

静岡県の工野建設(役員2名・社員7名)は、初めての高卒採用で予定2名に対し4名の内定を獲得。企業パンフレットを制作し、学内合同説明会2校に参加しました。

成功のポイントは、求人票に「10年後に月収50万円の職長昇進」など具体的なキャリアプランを記載したことです。

学校訪問で伝えるべき3つのこと

  1. 入社後の具体的なキャリアステップ(1年目→3年目→10年目)、2. 先輩社員の「生の声」(可能なら同行)、3. 資格取得支援や研修制度の内容。抽象的な「やりがい」より、具体的な将来像が学生に刺さります。

戦略2: インターンシップで「体験」させる

学生が建設業に持つイメージと実態には大きなギャップがあります。実際の現場を見せるのが、ギャップ解消の最短ルートです。

1日〜1週間のインターンシップで、ドローン測量やBIM/CIMの体験、現場見学を組み込みます。「力仕事」のイメージしかなかった学生が、テクノロジーが活用される現場を見て興味を持つケースは少なくありません。

戦略3: SNS・動画で「見える化」する

新潟県の小柳建設は、2015年からDX推進とSNS・YouTube動画制作に注力。結果、採用数が5〜6名から約11名に倍増。うち5名が県外からの応募でした。

小柳建設のBefore/After

d's JOURNAL(パーソルキャリア)掲載データより作成

別の建設会社では、SNS広告からホームページの採用記事に誘導する戦略で、出稿から約2ヶ月で意欲の高い若手の採用に成功しています。

ハローワークや求人誌だけに頼る採用は限界です。学生がいる場所(SNS)で、学生が見たいコンテンツ(動画)を発信する。この転換が不可欠です。

戦略4: 初任給・福利厚生で「選ばれる条件」を整える

新卒の採用単価は平均69.4万円。中途の97.8万円と比べて約29%安い。しかし、入社後に辞められたら投資はゼロになります

定着のために整備すべき条件は明確です。

  • 週休2日制: 日建連は2026年3月までの全現場実現を目標に掲げている
  • 資格取得支援: 受験費用の全額負担+合格報奨金(10〜30万円が相場)
  • 研修制度: 入社後2週間程度の基礎研修(図面の読み方、CAD操作)

建設業の福利厚生ガイド|採用力を高める制度設計と導入事例

戦略5: 内定者フォローと入社後の定着施策

高卒の3年以内離職率42.4%を下げるには、入社前から入社後1年目までの手厚いフォローが不可欠です。

具体的には、内定後の定期的な連絡(月1回の近況確認)、入社前の職場見学、入社後のメンター制度の導入です。

「放置しない」。これが若手定着の最も重要な原則です。現場に配属して「見て覚えろ」では、今の若手は辞めます。

建設業の若手採用ガイド|Z世代に選ばれる会社の5つの条件


「自社でやる」か「プロに任せる」か

新卒採用は中途採用以上に手間がかかります。学校訪問、説明会、インターンシップ、選考、内定者フォロー。年間を通じて切れ目なく動く必要があります。

しかし、建設会社の採用担当は他の業務と兼務であることがほとんどです。

新卒採用の進め方

人材紹介で中途の施工管理技士を1人採用すれば150〜200万円。月額固定25万円〜の採用代行なら、新卒・中途問わず何名採用しても追加費用がかかりません。

新卒は中途より採用単価が約29%安い。しかも自社の文化で育てられるため、長期的な定着率も高い。新卒採用にリソースを振り向ける判断は、経営として合理的です。

採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準


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まとめ

建設業の新卒採用は「待っていても来ない」時代です。大卒求人倍率8.55倍の市場で学生に選ばれるには、こちらから動く必要があります。

押さえるべきポイントは3つです。

  1. 学校との関係構築が最優先: 10名未満の企業でも、学校訪問とキャリアプランの見える化で成果が出る
  2. SNS・動画で3Kイメージを払拭する: 学生がいる場所で、学生が見たいコンテンツを発信する
  3. 採用して終わりではなく「定着」まで設計する: 高卒42.4%の離職率を下げるには、内定後から入社1年目のフォローが不可欠

日本建設業連合会の試算では、このまま何も手を打たなければ2035年に技能労働者が約129万人不足します。新卒採用の強化は、今始めなければ間に合いません。

建設業の求人票の書き方|応募が増える7つのコツ