「給料は悪くないのに、人が辞めていく」

「年収は上げたのに若手が3年で辞める」「求人に応募が来ない」。

建設会社の経営者や人事担当者から、毎月のように聞こえてくる声です。

厚生労働省「雇用動向調査」(令和4年度)によると、建設業の離職率は10.5%。入職率8.1%との差はマイナス2.4ポイントで、人が減り続けている構造です。

新規高卒者の3年以内離職率は42.7%。採用した若手のほぼ半数が3年以内に辞めている現実があります。

給与だけでは人は定着しません。いま求職者が見ているのは、福利厚生の中身です。この記事では、建設業が導入すべき福利厚生制度を7つに絞り、費用対効果と導入事例を交えて解説します。


データで見る建設業の福利厚生の実態

有給取得率は全産業より4.6ポイント低い

厚生労働省「就労条件総合調査」(2023年)によると、建設業の有給休暇取得率は57.5%。全産業平均の62.1%を4.6ポイント下回っています。

有給休暇取得率の比較

全産業平均62.1%
建設業57.5%
情報通信業65.8%

厚生労働省「就労条件総合調査」(2023年)

付与された平均17.8日のうち、取得できたのは10.3日。約7日分が使われずに消えている計算です。

週休2日はまだ6割の現場しか実現できていない

国土交通省の調査によると、4週8閉所(実質週休2日)を実現している現場は61.1%(2024年)。2019年の30%から5年で倍増したものの、4割近くの現場がまだ週休2日に達していません

実際に4週8休が取れている労働者は、わずか8.6%。最も多いのは4週6休で44.1%です。

退職金制度は8割以上の企業が導入済み

厚生労働省「就労条件総合調査」によると、建設業で退職給付制度を設けている企業は82.9%。全産業平均の74.9%を上回っています。

ただし内訳を見ると「退職一時金のみ」が67.0%。企業年金を組み合わせている企業はまだ少数です。

建設業の賃上げ動向と採用への影響|2026年最新データで読む給与戦略


福利厚生が採用・定着に与えるインパクト

離職1人あたりのコストは640万円以上

内藤一水社の調査によると、中途社員が1人離職した場合のコストは約640〜850万円。新卒社員でも約530〜580万円に達します。

離職コストの内訳

内藤一水社調査データより作成

仮に年間5人の離職を3人に減らせた場合、年間約1,280万円の損失を回避できます。福利厚生への投資は「コスト」ではなく、離職防止のリターンを生む投資です。

福利厚生で離職率28%→4%に改善した事例も

サイボウズは働き方改革と福利厚生の拡充で、離職率を28%から4%に改善しました。レオパレス21は研修制度の導入により約15%から9%弱に低下。

業界は違えど、福利厚生の充実が離職率を劇的に下げることはデータが証明しています。


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建設業が導入すべき福利厚生7選

1. 資格取得支援制度

施工管理技士や建築士など、建設業では資格が昇進・昇給に直結します。受験費用の全額負担+合格報奨金を設ける企業が増えています。

具体的には、1級施工管理技士の合格報奨金として10〜30万円を支給する企業が多いです。学習時間を確保するための「資格勉強休暇」を設ければ、合格率も上がります。

求職者にとって「入社後にスキルアップできる環境」は企業選びの重要な判断基準です。

2. 退職金制度の充実

建設業には建設業退職金共済(建退共)という業界独自の退職金制度があります。日額310円の掛金で、20年勤続なら約200万円の退職金が支給されます。

さらに手厚くするなら、中小企業退職金共済(中退共)や企業型確定拠出年金(DC)の併用が効果的です。

退職金制度の比較

各制度公式情報より作成

「長く働くほど有利になる仕組み」は、離職防止の最も効果的な施策のひとつです。

3. 住宅手当・家賃補助

現場が変わるたびに引っ越しが必要な施工管理職にとって、住宅手当は実質的な収入増です。月額2〜5万円の支給が相場です。

社員寮を完備している企業では、若手の初期負担を大幅に軽減でき、地方からの採用にも強くなります。

4. 食事補助

現場仕事では昼食の選択肢が限られます。食事手当の支給やチケットレストランなどの福利厚生サービスの導入が効果的です。

大分市の株式会社ミサキは食事補助サービスを導入し、「同じ制度を持つ企業が地域にない」ことが採用面での差別化につながりました。朝食をとらなかった従業員が食事を取るようになり、現場での生産性も向上しています。

5. 週休2日制の推進

日本建設業連合会は2026年3月までに全建設現場での週休2日実現を目標に掲げています。

週休2日が取れない会社は、若手の応募対象から外れます。国土交通省も公共工事での週休2日を推進しており、制度整備は「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」の段階です。

建設業の働き方改革|成功企業5社の事例と2025年最新データ

6. 安全対策・現場環境の整備

熱中症対策手当(夏季に月額5,000〜10,000円)、空調服の支給、作業着・安全靴の全額支給など。現場で働く人にとって、安全と快適さへの投資は「自分が大事にされている」と感じるポイントです。

7. メンタルヘルスケア・相談窓口

若手の離職理由の上位に「人間関係」があります。外部のEAP(従業員支援プログラム)を導入し、匿名で相談できる窓口を設けることで、メンタル不調による突然の離職を防げます。

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導入事例に学ぶ福利厚生の効果

事例1: 斉藤建設(神奈川県鎌倉市)

創業1891年、社員約60名の老舗建設会社。DXによる業務効率化で残業をほぼゼロに。2022年の新社屋移転時にラウンジ・ジム・無料野菜ジュースを設置。全社員に医療保険を会社負担で加入。

結果、18〜20年勤続の社員が多数。退社した社員が「やっぱり斉藤建設がいい」と戻ってくるケースも。70代の社員2名が現役で活躍しています。

事例2: 厚生労働省認定の働き方改革事例

中外電工株式会社はトップの決断で長時間労働を一掃。株式会社重藤組はスーパーフレックスタイム制を導入。株式会社吉川造園は週休2日制を実現。

いずれも厚労省が公式に認定した事例であり、中小企業でも実現可能であることを示しています。

中小企業が最初にやるべき3つ

すべてを一度に導入する必要はありません。まず取り組むべきは、1. 資格取得支援(低コストで始められる)、2. 退職金制度の見直し(建退共の活用確認)、3. 週休2日の段階的導入、の3つです。


自社で整備する場合と、プロに任せる場合

福利厚生の整備は、採用力強化の「土台」です。しかし制度を作っただけでは、求職者に伝わりません

求人票に福利厚生を魅力的に記載し、スカウト文面に反映させ、面接で正しく伝える。この「伝える」部分が、採用成果を左右します。

福利厚生の整備と採用活動の進め方

人材紹介で施工管理技士を1人採用すれば150〜200万円。月額固定25万円〜の採用代行なら、何名採用しても追加費用がかかりません。

福利厚生の整備と並行して、採用活動そのものをプロに任せるという選択肢もあります。

採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準


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まとめ

建設業の福利厚生は、「あればいい」から「なければ人が来ない」時代に変わりました。

押さえるべきポイントは3つです。

  1. 離職コストは1人640万円以上: 福利厚生への投資は「コスト」ではなく離職防止の「リターン」
  2. まず3つから始める: 資格取得支援・退職金制度の見直し・週休2日の段階的導入
  3. 制度を作るだけでなく「伝える」: 求人票やスカウトに反映しなければ、求職者には届かない

福利厚生の整備が進んだら、次はそれを採用力に変える仕組みを作りましょう。

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