「鳶が足りない」。その一言で工事が止まる時代です
建設業の有効求人倍率は4.81倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」2025年4月)。中でも鳶職を含む躯体工の有効求人倍率は9.38倍と、全職種の中でもトップクラスの人手不足です。
鳶職は足場の組立て・鉄骨の建方など、工程の最上流を担う職種。鳶が1人欠けるだけで後工程すべてがストップします。にもかかわらず、求人を出しても応募が来ない。「経験者を採りたいけど、そもそも市場にいない」。多くの建設会社がこの状況に頭を抱えています。
鳶職の採用は「待ち」の姿勢では間に合いません。なぜ人が来ないのかを構造的に理解し、打ち手を変えることが必要です。
この記事では、鳶職の採用が難しい理由をデータで示し、人材を確保するための5つの具体策と、応募が増える求人票の書き方を解説します。
鳶職の採用が難しい理由|データで見る現状
躯体工の有効求人倍率は9.38倍
厚生労働省「一般職業紹介状況」(2024年)によると、鳶職を含む躯体工の有効求人倍率は年平均で9.38倍。建設業全体の4.81倍と比べても約2倍の水準です。
求人9件に対して求職者は1人しかいない計算。ハローワークに求人を出しても応募が来ないのは、当然の結果です。
職種別 有効求人倍率(2024年)
厚生労働省「一般職業紹介状況」2024年・2025年
55歳以上が37%、29歳以下は12%
建設業の就業者のうち55歳以上が約37%を占める一方、29歳以下はわずか12%(総務省「労働力調査」2024年)。2003年と比べて就業者は約120万人減少しています。
鳶職はとくに体力勝負の側面が強く、50代後半からの引退が早い職種です。今いるベテランが数年以内に現場を離れると、さらに深刻な欠員が発生します。
人手不足倒産は過去最多の342件
帝国データバンクの調査(2024年)によると、建設業の人手不足倒産は342件と過去最多を更新しました。
鳶職が足りなければ足場が組めず、足場が組めなければ工事は始まりません。鳶の欠員は工期遅延だけでなく、受注機会の損失や重機賃料の膨張など、経営に直結するリスクです。
→ 建設業の人手不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策
鳶職に人が来ない3つの構造的原因
原因1:「危険・きつい」イメージが若者を遠ざける
厚生労働省のデータによると、建設業の労災死亡者数は232人(2024年)で、全産業の31.1%を占めています。うち墜落・転落による死亡は77人。鳶職は高所作業が多い分、「危ない仕事」というイメージが根強く残っています。
実際にはフルハーネス義務化や安全装備の進化で安全性は大幅に向上していますが、それが求職者に伝わっていません。
原因2:求人票が「職人目線」で書かれている
弊社の支援実績で多いのが、求人票の記載内容に問題があるケースです。「足場鳶経験3年以上」「玉掛け・クレーン免許必須」と条件だけ並べた求人は、すでに働いている職人には響きますが、新たに鳶職を目指す人の目には留まりません。
年収・日給の具体的な数字、未経験者への教育体制、安全対策の取り組み。これらが書かれていない求人は、応募の段階で選ばれません。
原因3:採用活動に手が回らない
中小建設会社では、社長や現場監督が採用も兼任しているケースがほとんどです。現場が忙しいときほど人を採りたいのに、現場が忙しいから採用活動ができない。この矛盾が慢性的な人手不足を生んでいます。
鳶職を採用する5つの方法
方法1:建設特化型の求人媒体を使う
ハローワークだけでは限界があります。鳶職を探すなら、建設業に特化した求人媒体を活用しましょう。
鳶職採用に使える求人媒体の比較
建設特化型の媒体は求職者の職種意向が明確なため、「そもそも建設業に興味がない人」にリーチするムダがありません。
方法2:SNSで現場のリアルを発信する
ある建設会社がInstagramで施工現場やインターンシップの様子をリール動画で発信したところ、フォロワーが2,600人まで増加。応募者数が1.5倍に向上しました。
鳶職は作業風景そのものがコンテンツになります。高所からの景色、鉄骨を組み上げていくスピード感、チームワーク。これらを短尺動画で見せるだけで、「かっこいい」「やってみたい」という反応が生まれます。
低コストで始めるSNS採用
社員のスマートフォンで現場の様子を撮影し、Instagram ReelsやTikTokに投稿するだけでOK。編集は無料アプリ(CapCut等)で十分です。週1回の投稿から始めて、反応を見ながら頻度を上げていきましょう。
方法3:未経験者・異業種転職者にターゲットを広げる
「経験者限定」を外すだけで、応募のすそ野は大きく広がります。
弊社の支援先でも、未経験OKに切り替えた鳶工会社が独自の教育プログラム(段階的なOJT+資格取得支援)を整備し、応募数が増加。定着率も向上しました。
鳶職は入職後にとび技能士や足場の組立て等作業主任者の資格を取得していくキャリアパスがあります。「資格取得費用は全額会社負担」「入社後3ヶ月は先輩と2人1組で作業」といった育成体制を求人に明記することで、未経験者の不安を解消できます。
方法4:リファラル採用の仕組みをつくる
鳶職の世界は横のつながりが強い業界です。「知り合いの職人が転職を考えている」という情報は、求人サイトより早く動きます。
リファラル採用のポイント:
- 紹介報奨金の設定(例: 入社・3ヶ月定着で10万円)
- 紹介しやすい仕組み(LINEで簡単に推薦できるフォーム等)
- 紹介してくれた社員への感謝の見える化
リファラル採用のコストは人材紹介の1/10以下。しかも紹介者のフィルターがかかるため、ミスマッチが少なく定着率が高い傾向があります。
→ 建設業のリファラル採用完全ガイド|コスト1/10で定着率も高い手法
方法5:採用代行(RPO)でプロに任せる
「求人を出したいが、求人票を書く時間がない」「応募が来ても、電話に出られない」。中小建設会社では、採用活動そのものに手が回らないことが最大のボトルネックです。
採用代行(RPO)なら、求人票の作成・媒体選定・スカウト送信・応募者対応・面接調整までを一括で任せられます。人材紹介の成功報酬が1人100〜200万円かかるのに対し、月額固定25万円〜で複数名の採用活動を同時に進められるのがメリットです。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
応募が増える鳶職の求人票の書き方
年収・日給は具体的な数字で明記する
鳶職の平均年収は約506万円(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)。日給制の場合も「日給13,000〜18,000円」のように幅を持たせつつ、経験年数別のモデル年収を添えると具体性が増します。
「経験・能力による」だけでは、求職者は他の求人と比較できません。数字を出すことに抵抗があっても、少なくとも下限は明記するのが応募数を増やすコツです。
未経験者への教育体制をアピールする
「入社後3ヶ月は先輩社員と2人1組」「足場の組立て等作業主任者の資格取得を全額会社負担」「とび技能士の受験対策あり」。具体的なステップを書くほど、未経験者の応募ハードルは下がります。
安全対策・福利厚生を前面に出す
フルハーネスの支給、最新の安全装備、定期的な安全教育。これらを求人票に明記するだけで、「危険な仕事」というイメージが和らぎます。
求人票に入れたい安全・福利厚生情報
フルハーネス全員支給 / 安全靴・作業着支給 / 熱中症対策(空調服支給・休憩所完備) / 社会保険完備 / 資格取得支援制度 / 退職金制度 / 週休2日対応の現場あり
まとめ
鳶職の採用を成功させるためのポイントをまとめます。
- 躯体工の有効求人倍率は9.38倍。「待ちの採用」では人は来ない
- 「危険・きつい」のイメージを求人票で上書きする。安全対策・福利厚生を前面に出す
- 未経験者にターゲットを広げる。教育体制と資格取得支援を明記すれば応募は増える
- SNSで現場のリアルを発信する。鳶職の作業風景はコンテンツ力が高い
- 採用活動に手が回らないなら、プロに任せる。月額固定の採用代行で、求人作成から面接調整まで一括対応
鳶職は建設現場の最上流を支える職種です。足場がなければ工事は始まりません。採用を後回しにするほど、工期遅延や受注機会の損失というコストが積み上がっていきます。