建築士が採れない。設計部門の人手不足が経営を圧迫しています
建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.12倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」2025年4月)。全職種平均の約4倍にあたる水準で、建築士の採用市場は売り手一色です。
国土交通省の調査によると、一級建築士の平均年齢は56.2歳。50代以上が全体の約70%を占め、20代はわずか1%未満。一方で一級建築士試験の合格者数は年間約3,400人前後で推移しており、退職する人数をまったく補えていません。
ベテラン建築士の大量退職はすでに始まっています。求人を出しても来ない時代に、採用の設計そのものを見直す必要があります。
この記事では、建築士の採用が難しい理由をデータで示し、人材を確保するための5つの具体策と採用コストの比較を解説します。
建築士の採用が難しい3つの理由
理由1:一級建築士の70%が50代以上。若手がいない
国土交通省のデータによると、一級建築士の登録者は約37万人。しかし平均年齢は56.2歳で、50代以上が全体の約70%を占めています。
一級建築士の年齢構成
一級建築士試験の合格率は約9.9%(令和6年度)。年間の合格者は約3,400人で、受験者数自体も減少傾向にあります。退職者の補充すら追いつかない構造的な人材不足が続いています。
理由2:大手志向が強く、中小企業に人が集まらない
建築士の就職先は大手ゼネコン・大手設計事務所に偏る傾向があります。建築学科の学生は「大手で大規模プロジェクトに関わりたい」というモチベーションが強く、中小の設計事務所や建設会社は採用競争で不利な立場に置かれています。
さらに、大手企業は初年度年収500万円以上、福利厚生も充実しているため、給与面でも差がつきやすい。中小企業が建築士を採用するには、大手にない魅力を打ち出す必要があります。
理由3:建設投資の増加で需要が供給を大幅に上回っている
国土交通省の建設投資見通しによると、2025年度の建設投資額は73兆900億円と過去最高水準。都市部の再開発、老朽化インフラの更新、2050年カーボンニュートラルに向けたZEB化。建築士への需要は増え続ける一方、供給はまったく追いつきません。
帝国データバンクの調査(2024年)によると、建設業の人手不足倒産は342件と過去最多。設計部門の人材不足は、受注機会の損失に直結しています。
→ 建設業の人手不足は何万人?2026年最新データと企業ができる3つの対策
建築士の採用コスト比較
建築士の採用単価は手法によって大きく変わります。
建築士の採用手法別コスト比較
各社公開情報より作成
一級建築士(年収700万円想定)を人材紹介で採用すると、1人あたり210〜245万円の手数料がかかります。年間2名採用すれば400万円超。一方、採用代行(RPO)なら月額固定で複数名の採用活動を同時に進められるため、年間の採用コストを半分以下に抑えられるケースも少なくありません。
→ 施工管理の採用単価は200万円?手法別コスト比較と削減策
建築士を採用する5つの方法
方法1:資格要件を見直して応募の間口を広げる
「一級建築士 必須」にすると、そもそも転職市場に出てくる人材は限られます。応募を増やすために、資格要件を見直しましょう。
- 二級建築士でもOKとする(入社後の一級取得を支援)
- 実務経験年数の要件を緩和する
- 施工管理経験者からの職種転換を受け入れる
ある中堅設計事務所では、「二級建築士以上」に要件を緩和し、入社後2年以内の一級建築士取得を目標とした支援制度を導入。応募数が前年比2.3倍に増加し、未経験から入社した社員が3年で一級を取得した実績も生まれています。
資格要件の見直しポイント
「一級建築士 必須」→「二級建築士以上(一級取得支援あり)」に変えるだけで、応募のターゲット層は大幅に広がります。受験費用の全額会社負担、試験前の特別休暇制度なども、求人の魅力を高める要素です。
方法2:「中小ならではの魅力」を求人で伝える
大手に勝てないのは規模と給与だけです。中小の設計事務所や建設会社には、大手にない魅力があります。
- 入社1年目から設計の主担当になれる(大手だと5〜10年かかる)
- 企画段階から竣工まで一貫して関われる
- 住宅から商業施設まで幅広い案件を経験できる
- 経営者との距離が近く、自分のアイデアが通りやすい
これらの魅力を求人票や採用ページで具体的に伝えることが、大手との差別化になります。「うちの会社に入ったら何ができるか」を数字と事例で示しましょう。
方法3:BIM・DX対応で「技術志向の人材」を惹きつける
BIM(Building Information Modeling)の導入は、採用競争力に直結します。建築士の中でも20〜30代の若手は、BIMやデジタル設計ツールを使いこなせる環境を重視する傾向があります。
新潟県の小柳建設はHoloLensやDXツールの導入を積極的に発信し、県外からの応募が半数以上、例年の倍近い採用数を実現しました。設備投資は必要ですが、「古い会社」というイメージを払拭する効果は絶大です。
方法4:リファラル採用で大学・業界ネットワークを活かす
建築士の世界は大学の研究室やアトリエ事務所の人脈がものをいう業界です。「先輩が活躍している会社なら安心」という信頼が、採用につながります。
リファラル採用のポイント:
- 紹介報奨金を設定(入社・3ヶ月定着で10〜30万円)
- 大学OBの社員に母校での採用イベント参加を依頼
- 社員の前職ネットワークを活用する
人材紹介の1/10以下のコストで、業界や会社の雰囲気を理解した人材を採用できるのがリファラルの強みです。
→ 建設業のリファラル採用完全ガイド|コスト1/10で定着率も高い手法
方法5:採用代行(RPO)で専門職採用をプロに任せる
中小の設計事務所では、所長が設計・営業・採用を兼任しているケースが珍しくありません。「設計の締め切りに追われて、採用に手が回らない」。この悪循環が人手不足を慢性化させています。
採用代行(RPO)なら、求人票の作成・媒体選定・スカウト送信・応募者対応・面接調整までを一括で任せられます。人材紹介で1人180〜250万円かかるところ、月額固定25万円〜で複数名の採用を同時に進められるのがメリットです。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
応募が増える建築士の求人票の書き方
年収レンジを具体的に明記する
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、一級建築士の平均年収は約702万円。ただし事務所の規模や地域によって幅があり、400万円台から1,000万円超まで様々です。
求人には最低でも年収レンジの下限を明記しましょう。「年収500〜800万円(資格・経験による)」のように書くと、求職者が自分の待遇をイメージしやすくなります。
担当案件の規模・種類を具体的に書く
「設計業務全般」ではなく、「RC造マンション新築の意匠設計がメイン」「住宅リノベーションの企画から監理まで一貫」「年間受注額10億円超のプロジェクト」のように具体的に書くと、自分がどんな仕事をするのかイメージできます。
働き方の柔軟性をアピールする
建築設計はリモートワークとの相性が良い業務です。「週2日在宅勤務OK」「フレックスタイム制」「年間休日120日以上」などの制度があれば、大手との差別化ポイントになります。
求人票に入れたい建築士採用の魅力
年収レンジ / 資格手当(一級: 月3〜5万円) / 一級建築士の取得支援制度 / BIM導入済み / リモートワーク制度 / フレックスタイム / 代表案件のジャンル・規模 / 残業時間の実績
まとめ
建築士の採用を成功させるためのポイントをまとめます。
- 一級建築士の平均年齢は56.2歳、50代以上が70%。若手の確保は待ったなし
- 資格要件を見直して応募の間口を広げる。二級建築士からの育成パスを用意する
- 「中小ならではの魅力」で大手と差別化。入社1年目から主担当を任せられる環境を訴求する
- BIM・DX対応で技術志向の人材を惹きつける。県外からの応募が倍増した事例もある
- 採用に手が回らないなら、プロに任せる。月額固定の採用代行で求人作成から面接調整まで一括対応
建築士は建物の安全性・快適性・デザインを左右する要の職種です。一級建築士の高齢化が進む中、採用を先送りにするほど設計力の低下というリスクが高まります。今すぐ採用戦略を見直し、次世代の建築士を確保する動きが求められています。