求人倍率5.18倍の建設業で、年13名を採用した会社の共通点
建設業の有効求人倍率は5.18倍です。求人を出しても応募が来ない。紹介会社に依頼しても候補者が途切れる。媒体を増やすほど1名あたりの費用が上がる。
こうした状態のまま、「同じ規模の会社はどうやって人を採っているのか」と事例を探す方は多いです。
結論から言うと、建設業の採用で結果を出している会社には共通点があります。採用を「そのつどの募集」ではなく「決まった手順の運用」として回しているという一点です。
特別な予算を投じたわけではありません。大手と同じやり方を持ち込んだわけでもありません。自社の規模・職種・地域に合う打ち手を1〜2つに絞り、3ヶ月から半年、同じ運用を続けた結果です。
建設業の採用成功事例は、派手な打ち手ではなく地味な積み重ねから生まれています。「何をやったか」よりも「どの順番でどう回したか」を読み取るのが、自社に活かす一番の近道です。
これから取り上げる5社は、いずれも当社が採用代行として伴走した会社です。会社名は伏せ、都道府県・業種・従業員規模だけを載せています。
建設業の採用は、何もしなければ応募が来ない
同じ地域で同じ職種を募集していても、採れる会社と採れない会社の差は年々開いています。

有効求人倍率5.18倍・求人1件に求職者0.2人
建設業の有効求人倍率は5.18倍(厚生労働省『一般職業紹介状況』2025年10月分)。全産業平均の1.19倍と比べて約4.3倍です。
職種別では、建築・土木・測量技術者が5.76倍、建設躯体工事従事者は8.01倍。求人1件に対して、求職者はおよそ0.2人しかいない計算です。
「募集を出せば何人かは応募がある」という感覚は、いまの市場とずれています。手を打たなければ、そもそも応募者が集まりません。
採用専任者を置けない会社が37.3%
もう一つ、構造的な背景があります。採用の担当者を置けないことです。
厚生労働省の調査では、37.3%の建設業企業が採用専任者を配置していないと報告されています(厚生労働省『建設雇用改善対策』)。総務部長が片手間で採用を回す。工事部長が応募者に電話する。社長本人がスカウト文を書く。よくある形です。
この体制で5倍超の求人倍率と戦うのは、正直なところ厳しいです。事例を読むときも、「どんな体制でその打ち手を回したのか」まで含めて見ると、自社に引き寄せやすくなります。
中小建設会社が大手の真似をしても刺さらない
事例を探すときに陥りやすいのが、大手ゼネコンや上場企業のやり方を参考にすることです。応募してくる層も予算の桁も違うため、そのまま持ち込むと空振りします。
中小建設会社に合うのは、同じ規模・同じ業種の会社から逆算する発想です。従業員30名の設備工事会社なら、30名規模の建設会社の打ち手のほうが真似しやすい。この記事の5社も、従業員15名〜90名の中小・中堅に絞っています。
成功事例に共通する5つのパターン
建設業の採用成功事例に共通する5パターン
| パターン | 概要 | 効果が出やすい規模 | 主な打ち手 |
|---|---|---|---|
| 応募から入社までの流れを見直す | 応募・面接・内定の数字を分解し、詰まっているところを特定 | 全規模 | 応募〜入社の数字を分解/面接設定のルール化 |
| 紹介会社のとりまとめ | 紹介会社との関係を「依頼」から「運用」に変える | 30名以上 | 要件シート/返信48時間ルール/月1回の定例 |
| 求人票・採用ホームページの刷新 | 給与中心の求人票を、応募者の目線で書き直す | 全規模 | 職種別の原稿/年収モデル/現場写真の追加 |
| ダイレクトリクルーティングの導入 | 待ちの採用から、こちらから声をかける採用へ | 10名以上 | 登録者のデータベース選定/月200〜300件のスカウト運用 |
| 採用活動の外部化(採用代行) | 求人広告・人材紹介・スカウトを横串で回す体制を外に持つ | 15名以上 | 月額20万円〜+媒体費/業務範囲を段階的に設計 |
当社の建設業採用支援の実務をもとに作成
5つはそれぞれ単独でも効きますが、実際の成功事例では複数を組み合わせている会社がほとんどです。1つずつ順に入れるというより、自社の詰まっているところに合わせて2〜3個を同時に動かしています。
自社に当てはまるのはどれか
応募が来ないなら、求人票の刷新とスカウトの導入。応募はあるが決まらないなら、応募から入社までの流れの見直しと、紹介会社のとりまとめ。事例を読む前に、自社の課題とその解決施策を照らし合わせてみてください。
事例1|福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)— 年間13名採用
課題|求人広告の応募が来ない・紹介会社から返信が来ない
福島県の総合建設業A社は、施工管理・技能工・事務を合わせて年5〜6名を採りたいと考えていました。ところが数年にわたって3〜4名で足踏みしていました。
ご相談の内容をほどいていくと、問題は2つでした。
- 求人広告を複数媒体に載せているのに、応募が月1〜2件しか来ない
- 人材紹介会社を3社契約しているのに、候補者の紹介が途切れがち
社内には「市場が厳しいから仕方がない」という空気がありました。ただ数字を分解すると、媒体の選び方と運用、紹介会社との付き合い方に、まだ手をつけていない部分が残っていました。
施策|応募から入社までの流れの見直しと、紹介会社の運用化
ご一緒した打ち手は、大きく3つです。
- 求人要件の言語化: 職種別に「どんな経験・資格の人を、どんな現場に配属するか」を要件シートにまとめる
- 紹介会社のとりまとめ: 要件シートの再提出、返信は48時間以内というルール、月1回の定例打ち合わせの設置
- 媒体の組み合わせの整理: 求人広告3媒体を建設特化型・大手総合型・Indeed連携の3種類に絞り、職種ごとに原稿を分ける
体制は、当社の採用代行(月額20万円)が採用の段取り全体のとりまとめ役に入る形です。求人広告の原稿改善、応募者への一次対応、紹介会社2社とのやりとりを一括で巻き取りました。A社には最終面接と入社手続きに集中していただきました。
成果|応募約2.4倍・年13名採用
数字は大きく動きました。
- 応募数: 月1〜2件 → 月5〜6件(約2.4倍)
- 紹介会社からの月次候補者数: ほぼゼロ → 月3〜5名で安定
- 年間採用数: 3〜4名 → 13名(施工管理3名・技能工6名・事務4名)
紹介手数料は引き続き発生しています。ただ求人広告からの応募が増えたぶん、紹介会社には有資格者の枠に絞って動いてもらえるようになりました。紹介を減らしたのではなく、紹介会社に動いてもらう的を絞った形です。
再現方法|このケースを自社に当てはめる3ステップ
A社のやり方を自社で再現するなら、次の順番が進めやすいです。
- 直近3〜6ヶ月の、媒体別・紹介会社別の応募数と採用数を書き出す
- 応募は来るが面接に繋がらないのか、そもそも応募が来ないのかを切り分ける
- 紹介会社との打ち合わせを「依頼」から「運用」に切り替え、定例とフィードバックの型を作る
紹介会社のとりまとめのやり方は、採用代行(RPO)とは?仕組み・業務範囲・選び方に具体例を置いています。紹介会社との付き合い方を運用のレベルに引き上げるのは、中小建設会社では効果が大きい打ち手です。
「この条件なら会ってみます」の枠を足したら、紹介が3倍に
以前ご一緒した神奈川の住宅会社では、紹介会社に伝えていた採用要件が細かすぎて、紹介そのものが止まっていました。
そこで要件はそのままにして、「この条件を満たす方なら、資格が足りなくても一度会ってみます」という例外の枠を1つ足しました。
それだけで、紹介会社からの紹介数が3倍になりました。紹介会社は、会ってもらえる見込みが読めない求人を後回しにします。会う入口を1つ広げると動き出します。
事例2|新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)— 採用単価30%減
課題|媒体費と紹介料の合計1,500万円超で経営が厳しい
新潟県の総合建設業B社は、従業員90名の中堅クラスです。年間の中途採用10名前後を回すうちに、2〜3年前から採用コストが積み上がりました。媒体費と紹介料の合計は年間1,500万円を超える水準です。
経営側から「このコスト構造では続けられない」という指摘が出たタイミングでのご相談でした。採用人数は落とさずに、1名あたりの費用を下げたい、というご要望です。
施策|媒体の種類の整理とスカウト採用の導入
打ち手は、媒体構成の見直しと、運用の外部化の2本立てです。
- 媒体構成を、大手の総合転職サイト・スカウト採用・建設特化型の3種類に整理
- ダイレクトリクルーティング(登録者に企業から直接声をかける採用)を導入し、月200〜300件のスカウト運用を巻き取る
- 人材紹介は「即戦力の有資格者」に用途を絞り、そのぶん優先度を上げてもらう運用に変更
- 求人広告の原稿を職種別に作り直し、応募の動機になる要素を前半に置く
運用は当社の採用代行が引き受け、B社の採用担当は現場部門との連携と面接の設計に集中する体制にしました。
成果|応募1.8倍・採用単価30%減
半年から1年で、数字の流れが変わりました。
- 求人広告経由の応募数: 約1.8倍
- 媒体費ベースで見た1名あたり採用単価: 従来比30%減
- 年間採用: 中途11名・新卒2名(採用人数は維持)
- 紹介料の総額: 減少。残した紹介会社2社とは、定例運用で紹介の精度が上がった
採用数を落とさずにコストを下げる、という経営課題への答えが出ました。紹介会社を切ったわけではありません。使いどころを絞って精度を上げる方向に寄せたのがポイントです。
再現方法|媒体の組み合わせを組み替えるときの考え方
B社のやり方が合うのは、採用人数は維持したまま、1名あたりの費用を下げたい会社です。採用人数そのものを増やしたい時期は、媒体の種類を足す動きが先に来ます。コストを整えたい時期は、種類は増やさずに役割を割り振り直すほうが結果につながります。
媒体ごとの特徴と組み合わせ方は、建設業の採用媒体完全比較ガイドにまとめています。
事例3|長野県の工務店C社(従業員15名規模)— 12ヶ月で自社運用に戻す
課題|社長1人で採用対応・毎回ゼロから
長野県の工務店C社は、従業員15名の小規模会社です。代表が営業・現場・採用のすべてを兼任しており、募集のたびに「ゼロから求人票を書く」「紹介会社に都度連絡する」という状態でした。
採用が決まってもやり方が社内に残らず、次の募集で同じ作業を繰り返す。ご相談をいただいた時点では、「うちに採用代行は大きすぎるのでは」という不安もお持ちでした。
施策|月額20万円の最小構成で段階的に外部化
C社で重視したのは、最初から全部任せるのではなく、段階的に外に出す設計です。
- 月額20万円の最小構成からスタート
- 採用代行の業務範囲は、求人票の作成・Indeedの運用・応募者への一次対応のみ
- 面接と入社後の受け入れは代表が直接担当
- 求人票のひな形、面接の進め方、応募者への返信文の型を並行して整備
6ヶ月目までは当社が中心で運用し、7ヶ月目以降は段階的にC社側へ引き継ぎました。12ヶ月目にひな形と手順書をお渡しして、自社運用に戻す設計です。
成果|半年で現場1名・事務1名・12ヶ月で卒業
半年で現場1名・事務1名の採用ができました。それ以上に大きかったのは、採用のやり方が社内に残ったことです。
- 12ヶ月目に採用代行を「卒業」し、以降は自社で年3名ペースの採用を継続
- 求人票のひな形・面接の進め方・応募者への返信文の型が社内に蓄積
- 代表が採用の実務から離れ、営業と現場のとりまとめに時間を使えるように
採用代行の費用が「毎月出ていくコスト」ではなく、採用の体制をつくる初期投資として働いたケースです。
再現方法|小規模でも仕組み化はできる
C社のポイントは、規模が小さくても採用は仕組みにできるという点です。「人が少ないから仕組み化は無理」ではありません。人が少ないからこそ、仕組みで回すほかないという順番です。
建設業の採用代行の選び方と導入の手順は、建設業の採用代行サービスの選び方|費用相場・導入事例に載せています。C社のような15〜30名規模での使い方も、具体例を置いています。
事例4|大阪府の総合建設業D社(従業員30名規模)— 紹介を軸に、入口を増やす
課題|紹介手数料が年間700万〜1,000万円
大阪府の総合建設業D社は、従業員30名規模で施工管理を年2〜3名採用していました。採用の入口は人材紹介が中心で、紹介手数料の合計は年間700万〜1,000万円に達していました。
年収800万円の施工管理を紹介手数料45%で採用すると、1名あたり約360万円。年3名で1,080万円の水準です(厚生労働省『職業紹介事業関係』参照)。
手数料の相場は、全業界の平均で30〜35%です。建設業の施工管理では主流45%まで上がります。1級の資格を持つ所長クラスや、急いで採りたい希少な職種では60〜70%まで上振れるケースもあります。
これは「紹介会社を使うな」という話ではありません。有資格者を確実に採れる手法は、いまのところ人材紹介がもっとも強いからです。問題は、紹介以外の入口が細いままだと、採用人数を増やそうとしたときに打つ手がなくなることでした。D社では、求人広告やスカウトを社内で回す余力もなく、二重に詰まっていました。
施策|採用手法の組み合わせを組み替える
打ち手は、紹介を軸に置いたまま、応募の入口を増やすことです。
- 求人広告(建設特化型1・大手総合型1)の運用改善
- 求人票を「給与・待遇」中心から「入社後の道筋・1日の流れ・先輩社員の話」中心に刷新
- ダイレクトリクルーティングを1サービス導入し、スカウトの運用を外に出す
- 人材紹介は2社に絞り込み、要件の精度を上げて優先度を確保
体制は、当社の採用代行が採用全体に並走する形です。D社の採用担当は紹介会社とのやりとりだけで工数が埋まっていたため、求人広告とスカウトの運用を外部チームが担いました。担当者は紹介会社との関係づくりと面接対応に集中できるようになりました。
成果|採用手法の組み合わせが動き始めた
すぐに紹介料がゼロになる話ではありません。採用手法の組み合わせが動き出したことが一番の変化です。
- 求人広告経由・スカウト経由の応募比率が高まり、紹介経由の比率が相対的に低下
- 年間の採用ペースは維持(2〜3名)
- 採用1人あたりの実質コスト(媒体費+スカウト費+紹介料)は改善方向
採用代行の費用を「紹介手数料への上乗せ」と見ると、二重に払っているように映ります。実際は逆です。丸投げのまま決まらない期間や、条件のすり合わせ不足で早く辞めてしまう採用を減らせます。そのぶん、1名あたりの実質コストはむしろ下がります。
「紹介を減らす」のではなく「紹介の隣に、応募の入口を増やす」。この置き換えが、中期のコスト構造を変えていきます。
再現方法|求人票の刷新と、手法の組み替えの合わせ技
D社で再現しやすいのは、求人票の刷新と、採用手法の組み替えの合わせ技です。給与条件だけで勝負すると、紹介会社経由の即戦力採用に寄ります。すると1名あたりの費用が跳ね上がります。
求人票を応募者の目線で書き直すと、求人広告やスカウトからも候補者が動きます。紹介会社に任せる枠と、自社で採る枠を分けられるようになります。求人票の書き方は建設業の求人票の書き方|応募が増える7つのコツに詳しく書いています。
求人票を3回書き直して、応募ゼロが月8件に
以前ご一緒した東京の内装工事会社(従業員18名)は、求人を出しても応募がゼロの状態が続いていました。
求人票を3回書き換えたところ、月8件の応募が来るようになりました。1回書き直して当たったのではありません。反応を見ながら3回直して、ようやく動きました。
求人票は一度作って終わりの書類ではなく、応募数を見ながら手を入れ続ける道具として扱うほうが結果につながります。
自社の採用、事例のように組み直しませんか?
建設業専門の採用コンサルタントが、貴社の採用課題を洗い出し、事例の打ち手を自社に落とし込む形で無料でご提案します。戦略段階のご相談から歓迎です。
無料で相談する事例5|北関東の電気工事会社E社(従業員25名規模)— スカウト型に転換
課題|応募してくれる人が集まらない
北関東の電気工事会社E社は、従業員25名の中小電気工事業者です。第二種電気工事士と電気工事施工管理技士の有資格者を、年2〜3名採りたいというご希望でした。
ご相談の時点では、求人広告・ハローワーク・紹介会社の3つの窓口を並行して使っていました。それでも応募ゼロの月が続いていました。電気工事士の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回り、転職サイトに登録している人自体が全国的に少ないためです。待っているだけでは応募者が集まらない職種です。
施策|ダイレクトリクルーティングの導入
E社では、待つ採用から、こちらから声をかける採用へ大きく切り替えました。
- ダイレクトリクルーティングを1サービス導入(施工管理・技能職向けの登録者のデータベース)
- 月200〜300件のスカウト送信を運用として設計
- スカウト文面は「未経験可」ではなく「有資格者向けに、責任者のポジションでの入社」を前面に
- 返信が来た方には、48時間以内にオンライン面談を設定するルール
求人広告とハローワークはそのまま続け、新しい入口としてスカウトを足す形です。運用工数は週10時間前後を見込み、社内1名(総務兼任)と当社のサポートで回しました。
成果|3ヶ月で3名採用
3ヶ月で変化がはっきり出ました。
- スカウト送信は月200〜300件、返信率は約5%
- 面談設定は月4〜5名で安定
- 3ヶ月で施工管理1名・電気工事士2名の計3名を採用
- 紹介会社経由ゼロ、スカウト経由100%の採用に
スカウト採用は時間がかかる手法だと思われがちですが、運用を詰めれば3ヶ月で結果が出ることもあります。効いたのは、スカウト文面の設計と返信が来てからの応対の速さの2つです。
再現方法|待つ採用から、声をかける採用へ
E社のやり方が合うのは、そもそも転職サイトに登録している人が少ない職種です。電気工事士・大工・鳶・重機オペレーターのような技能職は、総合の転職サイトだけでは応募者が集まりません。
登録者のデータベースから候補者を検索し、企業側から直接声をかける形に切り替えると、いま転職活動をしていない層にも届きます。建設業でのスカウト採用の進め方は、建設業のダイレクトリクルーティング完全ガイドで解説しています。
必須条件をゆるめたら、応募が0件から6件に
以前ご一緒した神奈川の電気工事会社(従業員20名)では、求人票に必須の資格と経験年数を細かく書いていました。応募はゼロが続いていました。
この応募のハードルをゆるめたところ、応募が6件に増えました。
資格や経験は、面接で確かめれば足ります。入口で絞りすぎると、会う機会そのものが生まれません。
5社から見える「採用に成功する会社」の共通点
5社を並べてみると、業種も規模も打ち手も違うのに、いくつか同じ姿勢が見えてきます。

共通点1|採用を経営課題として扱っている
うまくいっている会社は、採用を「人事の仕事」ではなく経営の仕事として扱っています。A社は社長が月1回の採用打ち合わせに同席していました。B社は経営会議で採用コストの構造を議論していました。C社は代表が採用の意思決定を直接していました。
「忙しいから人事に任せている」という体制だと、紹介会社のとりまとめも、媒体の組み合わせの判断も後手に回ります。経営のレベルで採用予算と目標を決めるのが出発点です。
共通点2|媒体でなく導線で考える
5社とも、媒体選びの議論ではなく応募者の導線に時間を使っていました。求人を見た方が、どの媒体から応募し、どのタイミングで面接に進み、何を決め手に入社するのか。
この流れが見えると、媒体の評価の仕方が変わります。「応募数」だけでなく、入社までの歩留まり(応募者のうち何割が次に進むか)や入社後の定着まで含めて媒体を見るようになり、安易な媒体の追加が減ります。
共通点3|外部の力を使うことに抵抗がない
5社とも、採用代行・人材紹介・スカウト媒体といった外部の力を前向きに使っていました。「自社で全部やるべき」という考えに縛られている会社ほど、採用で詰まりやすいです。
建設業は、採用専任者を置けない会社が37.3%を占めます。外部の採用チームを借りるのは甘えではなく、合理的な選択です。
共通点4|離職対策と採用をセットで動かす
5社とも、採用の強化と並行して離職率の改善にも手をつけていました。いくら採用しても、同じ人数が辞めれば差し引きで増えません。
建設業の高卒3年以内離職率は42.7%(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。採用と定着は同じ課題の裏表です。定着率の改善については、建設業の離職率と定着対策にまとめています。
自社で事例を再現するための進め方
打ち手だけを真似ても、自社の詰まっているところが違えば空振りします。順番はいつも同じで、数字を見る、詰まりを1つに絞る、1つだけ試す、3ヶ月で判定する、の4つです。

Step1|いまの採用を数字で見る
直近6〜12ヶ月の採用活動を、数字で書き出します。
- 媒体別の掲載数・応募数・面接設定数・採用数
- 紹介会社別の紹介候補者数・書類通過数・採用数
- 採用1人あたりの費用(媒体費+紹介料+工数の換算)
- 入社後6ヶ月の定着率
ここで数字が出てこないときは、「数字を揃える」ことが最初の打ち手になります。感覚で決めていた採用の意思決定を、事実で決める状態に変える段階です。
Step2|詰まっているところを1つに絞る
数字を書き出すと、どこで止まっているかが見えます。詰まり方は、おおむね3つです。
- そもそも応募が来ない: 求人票・媒体の組み合わせ・スカウトの導入で応募を増やす
- 応募は来るが面接に繋がらない: 返信の速さ・面接設定のルール・書類選考の精度
- 面接するが決まらない: 面接の設計・志望動機の聞き取り・最後のひと押し
いくつも同時に手をつけると、どれが効いたのか分からなくなります。1つに絞って3ヶ月続けるほうが、打ち手の良し悪しをはっきり判定できます。
連絡を24時間以内に回したら、面接実施率が38%から62%に
以前ご一緒した千葉のゼネコン(従業員80名)では、応募者への連絡と面接日程の設定を、24時間以内に回す運用に変えました。
それだけで、面接まで進んだ割合が38%から62%に上がりました。
応募者は同じ時期に何社も受けています。返事が遅い会社から順に、候補から外れていきます。お金をかけずにできて、効き方が大きい打ち手です。
Step3|1施策から試す
打ち手が決まったら、1つを3ヶ月運用して数字の変化を見ます。A社の紹介会社のとりまとめ、D社の求人票の刷新、E社のスカウトのように、範囲が狭くても結果が出る打ち手から始めるのがおすすめです。
全面的な入れ替えは工数が大きく、うまくいく確率も読めません。小さく始めて数字を見て、効いたものを広げる。この進め方のほうが結局は早いです。
Step4|3ヶ月で数字を見て、続けるか決める
3ヶ月後に、打ち手の効果を数字で評価します。
- 応募数・面接設定率・採用数の変化
- 1名あたり採用単価の変化
- 現場や面接官の手ごたえ
効果があれば続けて、他の職種にも広げる。薄ければ打ち手を切り替える。この判断を3ヶ月ごとに回すと、採用活動がだんだん運用に変わっていきます。
採用戦略全体の組み立ては、建設業の採用戦略ガイド|5ステップで体系化に載せています。
よくある質問
Q. 事例と自社の規模が違う場合、参考になりませんか?
規模が違っても、考え方は流用できます。A社(50名)の紹介会社のとりまとめは15名規模でも応用できますし、B社(90名)の手法の組み替えは30名規模でも小さくして取り入れられます。
大事なのは、「何をやったか」ではなく「なぜそれが効いたか」を読み取ることです。打ち手をそのまま写しても、自社の状況に合っていなければ空振りします。
Q. まずどこから着手すべきですか?
いまの数字を出すことと、詰まっているところを1つに決めることです。「どの事例が一番効くか」を考える前に、自社がA社型(応募が来ない)なのか、B社型(コストが重い)なのか、D社型(紹介以外の入口が細い)なのかを見分けてください。
数字が揃っていない場合は、数字を揃えること自体が最初の取り組みになります。
Q. 何ヶ月くらいで成果が出ますか?
打ち手によりますが、早いもので3ヶ月、仕組みとしての効果が出るのは6ヶ月〜12ヶ月が目安です。E社のスカウトは3ヶ月で3名採用まで届きました。A社の紹介会社のとりまとめは半年かかって応募2.4倍。C社の仕組み化は12ヶ月で自社運用まで持っていきました。
早く効く打ち手を仕込みながら、仕組み化は中長期で積み上げる。この二段構えがおすすめです。
Q. 採用代行は中小でも使えますか?
使えます。C社(15名)は月額20万円の最小構成で、求人票の作成・Indeedの運用・応募者への一次対応だけを切り出して導入しました。採用代行は大手向けというイメージは古く、建設特化の中小向けなら月額20万円〜(別途、媒体費)から組めます。
順番としては、まず建設特化の採用代行と組むことを基本線に置き、そのうえで社内にどこまで人を割くかを決めるほうが進みます。求人媒体もスカウトのやり方も入れ替わりが速く、片手間で追い続けるのは負担が大きいためです。
詳しくは採用代行(RPO)とは?と建設業の採用代行サービスの選び方をご覧ください。
Q. 5社の事例はすべて採用代行を使っていますか?
5社とも当社の採用代行をお使いいただいたケースです。ただ打ち手の中心は採用代行そのものではなく、求人票・求人広告・紹介会社・スカウトの運用改善です。採用代行は、それらを横串で回す役割です。代行を入れれば採用が決まる、というサービスではありません。
役割の分け方は、だいたいこの形に落ち着きます。
- 求める人物像・採用要件の整理: 社内と採用代行で一緒に
- 面接・最終判断・内定承諾の最後のひと押し: 社内
- 求人票・媒体・スカウト・応募者対応・日程調整: 採用代行
社内で同じ運用ができるなら、採用代行なしで再現することもできます。
まとめ|成功事例はすべて「仕組み化」されている
- 有効求人倍率5.18倍・採用専任者なし37.3%の市場では、そのつどの募集だけでは採用が成立しない
- 結果を出している5社は、打ち手の派手さではなく運用の仕組み化で採れている
- 5つのパターン(応募から入社までの流れの見直し・紹介会社のとりまとめ・求人票の刷新・スカウトの導入・採用代行)を組み合わせて使っている
- 採用を経営課題として扱い、導線で考え、外部の力を使い、離職対策とセットで動かすのが共通した姿勢
- 自社で再現するには、いまの数字を見る→詰まりを1つに絞る→1つだけ試す→3ヶ月で判定、の順で進める
特別な予算も、大手と同じやり方も要りません。自社の規模・職種・地域に合う打ち手を1〜2個に絞り、3〜6ヶ月続ける。結局はこれが一番の近道です。
次の一歩として、戦略の組み立ては建設業の採用戦略ガイド、媒体の組み合わせは建設業の採用媒体完全比較ガイド、採用代行の中身は採用代行(RPO)とは?をご参照ください。
事例の打ち手を、貴社の採用にそのまま落とし込みませんか?
建設業専門の採用コンサルタントが、貴社の課題をほどいて、5社の打ち手を自社に合わせた形でご提案します。月額20万円〜の建設特化採用代行で、媒体の選定から応募者対応、紹介会社のとりまとめまで一括でお引き受けします。
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