建設業の離職率は全体10.1%、ただし高卒3年以内は43.2%

建設業の離職率を1つの数字でまとめると、業界全体としては10.1%。全産業平均15.4%より低く、業種別でも上位ではありません(厚生労働省『令和5年雇用動向調査』)。

ただ、ここに2つの落とし穴があります。

  • 高卒で建設業に入った人の3年以内離職率は43.2%。全産業平均より5ポイント以上高い
  • 全体の数字が低いのは「辞めにくい年代(55歳以上36.7%)」が残っているからで、若手定着の構造改善にはなっていない

採用しても3年で半分近くが離れる構造が続けば、毎年の採用は補充で終わります。1人離職するごとの損失は新卒で約657万円、中途で約774万円のモデル試算。離職率を5ポイント改善できれば、年間で数千万円規模のコスト削減につながる計算です。

この記事では、建設業の離職データと辞める理由の最新版を整理し、辞める理由から逆算した5つの定着施策を採用視点でまとめます。離職率データの全体像は建設業の離職率|業種別ランキング・新卒3年以内・推移、若手向けの打ち手は建設業の若手採用ガイドもあわせて参考になります。


辞める理由トップ5|若手の本音

定着施策を考えるには、辞める理由を正確に把握する必要があります。

建設業 若年技能労働者が辞める主な理由

順位理由補足
1位作業がきつい(47.0%)屋外作業・重量物・気候の負荷
2位長時間労働・休日不足年間労働時間が全産業より約230時間長い
3位賃金への不満(約34%)残業代未払い・日給制での収入不安定
4位職場の人間関係(35→46%に増加)縦社会・若手が相談しにくい空気
5位キャリアパスが見えない3〜5年後の役職と年収が想像できない

厚生労働省『建設業における雇用管理現状把握実態調査』および各種公開調査をもとに作成

ここで重要なのは、事業者側の認識と若手の本音にズレがあることです。事業者が「3K・低賃金」を主因と考えがちな一方、若手側はキャリアパスや人間関係への不満も大きく抱えています。施策を組むときは、若手の本音から逆算するのが要点です。

入社1年目で離職が集中する

高卒の3年以内離職者の内訳を見ると、1年目の離職がもっとも多い傾向にあります。入社直後の3〜6か月で「自社が合うかどうか」の判断が下されているケースが目立ちます。

この期間に「相談できる先輩がいる」「困りごとを拾える仕組みがある」かどうかで、3年定着率は大きく変わります。


辞める理由から逆算する定着施策5選

施策1|週休2日と残業上限を「本気で」実現する

狙う理由

退職理由2位「長時間労働・休日不足」と1位「作業がきつい」への対策。物理的な負荷を減らすのが起点。

2024年4月から建設業にも残業の上限規制(月45時間・年360時間)が適用されました(厚生労働省『建設業の時間外労働の上限規制』)。国土交通省の直轄工事では週休2日対象工事の実施率が2022年に99.6%に到達。「週休2日にすると赤字になる」という壁は低くなっています。

ポイントは制度ではなく運用です。次の3点を整えると、実際に休める空気が作れます。

  • 工程表・見積もりの段階から週休2日を前提に組む
  • 発注者との交渉を前工程に入れる
  • 現場の片付け・撤収時間を就業時間内に収める設計

詳しい背景は建設業の2024年問題にまとめています。

施策2|キャリアパスを「年表」で見せる

狙う理由

退職理由5位「キャリアパスが見えない」への対策。「何年後にどうなれるか」を入社前から見せる。

「頑張れば昇給します」という曖昧な訴求では、若手は動きません。年次×役職×年収のモデルを数字付きで見せます。

施工管理職のキャリアパスモデル

年次役職モデル年収モデル主な目標
入社1〜2年現場補助・職長補佐350〜400万円2級施工管理技士補の取得
3〜5年現場主任450〜530万円2級施工管理技士の取得
6〜10年現場代理人・所長550〜700万円1級施工管理技士の取得
10年以上工事課長700〜850万円プロジェクトマネジメント

建設業採用支援の実務ベースで作成

資格取得支援も具体性が要点です。受験費用全額負担+合格祝い金(1級5万円・2級3万円)+資格手当(1級月3〜5万円・2級月1〜2万円)を金額付きで明示します。

人材育成の打ち手は建設業の人材育成ガイドにまとめています。

施策3|入社1年目のメンター制度を導入する

狙う理由

退職理由4位「人間関係」と離職が1年目に集中する事実への対策。「孤立させない」仕組みを早期に作る。

メンター制度を機能させるポイントは3つです。

  • メンターは直属の上司以外から選ぶ(本音を言える関係を作るため)
  • 週1回15分の1on1を設定する(負担を軽くして継続性を確保)
  • メンター側にも手当を出す(業務として扱う)

メンターが聞くべきことは、仕事の進捗より「困っていることはないか」「職場の空気はどうか」の2点です。これだけで早期の異変察知につながります。

施策4|事務作業の分業で現場の負担を減らす

狙う理由

退職理由1位「作業がきつい」と2位「長時間労働」への対策。本業以外の負担を減らす。

施工管理が辞める要因として大きいのが、書類作成・写真整理・役所対応などの事務作業です。現場作業のあとに事務作業が始まる構造が長時間労働を招いています。

事務分業の打ち手は次のようなものがあります。

  • 事務専任スタッフの新設(工務部・施工サポート課など)
  • クラウド日報・電子黒板・タブレット運用
  • 写真整理アプリ・図面共有クラウドの導入

ある建設会社では事務分業の導入で労働時間が約15%削減され、若手の定着率も改善した事例があります。

施策5|処遇改善を数字で見せる

狙う理由

退職理由3位「賃金への不満」への対策。納得感のある報酬体系を求人段階から見せる。

公共工事設計労務単価は2026年3月適用分で14年連続上昇、全国全職種加重平均で日額25,834円に到達。賃金相場の底上げ自体は業界全体で進んでいます(国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』)。

処遇改善で効くのは、額面より「納得感」です。

  • 経験年数別の年収テーブルを社内・求人票で開示
  • 資格手当の金額を1級5万円・2級2万円のように具体額で
  • 昇給基準を「あいまいな評価」ではなく「達成条件」で示す
  • 賞与の直近実績(年2回・計4ヶ月分など)

賃上げ動向の詳細は建設業の賃上げ動向にまとめています。

採用と定着、両輪で動かす設計を壁打ちしませんか?

建設業特化の採用コンサルタントが、求人設計・採用活動・定着施策まで御社の規模に合わせて無料でご提案します。月額10万円〜の建設特化採用代行で、採用コストを下げて定着投資に回す設計のご相談からどうぞ。

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採用と定着はセットで設計する

定着施策だけを動かしても、採用が止まれば人は減ります。逆に採用だけ動かしても、辞めれば投資は回収できません。両輪で見るのが基本です。

採用設計のズレが定着の失敗を生む

入社後すぐの離職には、採用時点での期待値ズレが影響しているケースが多いです。

  • 求人票で残業時間が書かれていなかった→実態とのギャップで早期離職
  • キャリアパスが入社後に説明された→将来不安で1年目離職
  • 給与の手当構成が不透明→月給と手取りの差で不満

採用入口で期待値を整えるほうが、入社後の定着施策よりコストパフォーマンスが高い場面もあります。求人票の作り方は建設業の求人票の書き方で扱っています。

1人定着のROI試算

新卒1人離職で約657万円、中途で約774万円の損失モデル試算。従業員50名・離職率10%の会社なら、年間5人離職で3,300〜3,900万円の損失です。

離職率を10%→5%に半減できれば、年間1,600〜1,900万円の節約効果。定着施策への投資は採用コストの後追い補填として、はっきりした回収率があります。

離職コストの構造解説は建設業の離職率|業種別ランキングにまとめています。


中小建設会社が定着率を改善した3社の事例

会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースでまとめます。

福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)

新卒入社後の3年定着率が業界平均を下回っていた状態。メンター制度を導入し、3か月・6か月・1年・2年面談を制度化。資格取得スケジュールを年次×役職×年収のモデル付きで求人票と社内に展開したところ、新卒3年定着率が業界平均より10ポイント高い水準まで改善。並行して採用代行(月額20万円)で求人運用と紹介会社のコントロールを一括化し、採用と定着の両輪が回る体制を作りました。

新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)

媒体費と紹介料の合計が年間1,500万円超で、採用後の定着にも課題がありました。クラウド勤怠と工程管理アプリで残業を月平均15時間まで圧縮、求人票で「2024年4月以降の月平均残業15時間以内」を全面訴求。定着改善で採用ペースが安定し、媒体費ベースの1名あたり採用単価は従来比30%減まで改善しました。

長野県の工務店C社(従業員15名規模)

小規模で「定着施策に予算をかけられない」と感じていた会社。月給制の最低保障額を設定し、月1回の現場朝礼と週1回のメンター1on1を始めただけで、未経験で入社した若手が2年で2級施工管理技士補を取得し、3年継続勤務に到達。仕組みを大がかりに作り込まず、対話の頻度を上げる打ち手だけでも、規模に合った効果が出たケースです。

事例の詳細は建設業の採用成功事例5選にまとめています。


よくある質問

Q. 建設業の離職率は本当に低いのですか?

業界全体では10.1%で全産業平均15.4%より低い水準です。ただし高卒3年以内離職率は43.2%と全産業平均より5ポイント以上高く、若手定着の構造課題が残っています。

Q. 入社1年目に離職するのを防ぐ一番効く施策は?

メンター制度と1on1の制度化です。直属の上司以外の先輩を月1〜2回つけるだけで、若手の不安・迷いを早く拾えるようになります。コストはほぼ人件費の範囲で抑えられます。

Q. 賃金を上げないと定着しませんか?

賃金は重要ですが、若手が辞める理由のトップは「作業がきつい」と「長時間労働」です。給与アップだけでなく、労働時間の短縮と事務分業で物理的な負担を減らすほうが、若手定着には効きます。賃金を上げる場合は、納得感のある評価基準とセットにします。

Q. 定着施策に予算を回す余裕がありません

採用コストを下げて、その分を定着投資に回す設計があります。採用代行で求人運用や紹介会社管理を月額10万〜30万円で外注し、社内の工数と費用を定着施策にシフトする中小建設会社が増えています。仕組みは採用代行(RPO)とは?にまとめています。

Q. 2024年問題で残業が減ると、給料も減りますか?

日給制・残業代込みで月給を組んでいた会社では、規制適用後に手取りが下がるケースがあります。基本給を上げる、月給制に移行する、最低保障額を設定するなどの設計変更で、収入の安定化を図るのが現実的な対応です。


まとめ|定着は「採用設計」と「入社後の運用」の両輪

  • 建設業の離職率は全体10.1%、ただし高卒3年以内離職率は43.2%と若手定着に課題
  • 辞める理由トップ5: 作業がきつい/長時間労働/賃金不満/人間関係/キャリア不安
  • 5つの定着施策: 週休2日と残業上限の運用/キャリアパスの年表化/メンター制度/事務分業/処遇改善の数字化
  • 1人離職の損失は新卒657万円・中途774万円。離職率を5pt改善するだけで年間数千万円のコスト削減
  • 採用と定着はセット。求人票で期待値ギャップを減らすのが、入社後の定着施策と同じくらい効く
  • 採用コストを下げて定着投資に回す設計が、中小建設会社で広がっている

採用も定着も、特別な予算が必要なわけではありません。「メンターをつける」「1on1を制度化する」「年収テーブルを開示する」など、今日から動かせる施策の積み重ねで、3年定着率は変わります。

次の一歩として、離職率データの全体像は建設業の離職率|業種別ランキング、若手向けの打ち手は建設業の若手採用ガイド、人材育成は建設業の人材育成ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、採用代行は採用代行(RPO)とは?をあわせてご覧ください。

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