助成金は採用コストを下げる手段、人を集める入口は別にあります

建設業で人材確保のテーマになると、まず話題に上がるのが助成金です。トライアル雇用助成金・人材開発支援助成金・建設労働者確保育成助成金など、申請できる制度が複数あり、活用できればコスト負担を軽くできます。

ただし助成金は「採用したあとの費用補填」であって、人を呼び込む入口にはなりません。応募が集まらない会社が助成金だけ準備しても、採用人数は動きません。

帝国データバンクの調査では、建設業で正社員が不足していると回答した企業は業種別で最も高い水準(帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査』)。有効求人倍率は5.18倍、施工管理は5.76倍、躯体は8.01倍(厚生労働省『一般職業紹介状況』2025年10月分)。この市場で人材を集めるには、求人票・リファラル・未経験育成・定着・採用代行を組み合わせて、応募が動く仕組みを作るところから始める必要があります。

この記事では、助成金以外の打ち手で建設業の人材を確保する5つの実践方法を、採用視点でまとめます。助成金の使い方そのものは建設業の人材確保に使える助成金ガイドで扱っています。

人手不足の構造解説は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイドもあわせて参考になります。


人材確保が難しい3つの理由

人材確保の打ち手に入る前に、なぜ建設業で人が集まりにくいのか整理しておきます。

理由1|母集団そのものが減っている

建設業の就業者は1997年のピーク685万人 → 2024年477万人で30%減(国土交通省『最近の建設産業行政について』)。技能者だけ見ると464万人 → 303万人で34.7%減です。29歳以下は11.7%、55歳以上が36.7%。10年後にベテランがまとまって引退する一方で、若手の流入は追いつきません。

理由2|採用単独では足りない

助太刀総研の調査では、建設業の中途採用担当のうち43%が直近1年で1人も採用できなかったと回答(株式会社助太刀『建設業の中途採用状況調査』2024年9月)。採用しても新卒3年以内離職率は高卒で43.2%と高め(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。

採用が動かないだけでなく、せっかく入ってきた人も定着しない。「採用×定着」の両輪で見ないと、人材確保は進みません。

理由3|助成金は応募を呼ばない

助成金は採用後・育成後に申請する性質の制度なので、応募の入口を太くする効果はありません。求人票・媒体・紹介会社の運用が整っていない会社で助成金だけ用意しても、申請する対象の社員自体が集まらない構図になります。

助成金は「使えるなら使う」ものにとどめて、本丸は採用設計と定着施策に置くのが地に足のついた進め方です。


助成金以外で人を集める5つの方法

ここから本題です。建設業で人材を確保するために、外せない論点を5つに絞りました。

  1. 方法1|求人票を判断材料として作り直す
  2. 方法2|リファラル(社員紹介)を制度化する
  3. 方法3|未経験者を育てる仕組みを整える
  4. 方法4|入社3年目までの定着施策に投資する
  5. 方法5|採用代行で複数チャネルを束ねる

順番にも意味があります。求人票(方法1)で応募の入口を太くし、リファラル(方法2)で社員経由の良質な母集団を加える。未経験育成(方法3)で対象層を広げ、定着施策(方法4)で投資の回収率を上げる。採用代行(方法5)はこの全体をまとめて運用するレイヤーです。


方法1|求人票を判断材料として作り直す

応募が来ない原因の多くは、媒体ではなく求人票の中身です。同じ媒体でも、求人票を直すだけで応募率が一段上がります。

求職者が求人票で見ている項目

厚生労働省の調査では、建設業を選ぶときに求職者がもっとも重視するのは「仕事の内容」50.2%、次に「賃金の額」23.7%、「地元の企業」16.6%(厚生労働省『建設業における雇用管理現状把握実態調査』令和5年度)。

仕事の内容が「土木工事一式」「施工管理業務全般」だけの求人票は、応募率の入口で半分以上を取りこぼしています。

求人票で必ず明示する項目

  • 仕事内容: 工種・現場規模・1日の流れを時間軸で記載
  • 給与: 経験別の年収例を3〜4パターン
  • 休日・残業: 年間休日の内訳・月平均残業の数字・有給取得率
  • キャリアパス: 年次×役職×年収のモデル
  • 応募ハードル: 履歴書なしWeb応募・LINE応募・48時間以内連絡保証

求人票の作り方は建設業の求人票の書き方に7つのコツとBefore/After例文を載せています。


方法2|リファラル(社員紹介)を制度化する

社員からの紹介は、建設業で効果が出やすい採用手法です。コストが低く、紹介者が会社の実情を伝えたうえで紹介してくれるので、入社後のミスマッチが減ります。

リファラルの相場と特徴

リファラル採用の相場と他チャネル比較

項目リファラル求人広告人材紹介
1名あたり費用報奨金5〜20万円30〜80万円施工管理クラス200〜360万円
母集団の規模社員数に依存掲載期間で広くエージェント次第
入社後の定着率高め平均平均〜やや低め
採用までの期間1〜2か月1〜3か月2〜4週間

建設業採用支援の実務ベースで作成

リファラルを動かす運用

  • 紹介報奨金を制度化(入社時10万円+3か月定着で追加10万円など)
  • 全社員に毎月の朝礼や社内チャットで告知
  • 紹介しやすいツールを用意(会社紹介の1枚資料・採用ページのQRコード)
  • 紹介者と被紹介者へのフォロー体制(食事会・先輩面談)

リファラルは年5〜10名規模で安定供給するのは難しいですが、年1〜3名のスポット採用には強いチャネルです。求人広告や紹介会社と組み合わせると、低コスト枠として効きます。


方法3|未経験者を育てる仕組みを整える

経験者市場で母集団が薄いなかで、経験者だけを取り合うのは限界があります。未経験・第二新卒を採用して育てる方が、中長期で見ると合理的な道です。

未経験育成の3点セット

  • 入社後1〜3か月の集中研修: 安全教育・図面の読み方・CAD・現場用語
  • メンター制度: 年齢の近い先輩を1人つけ、月1〜2回1on1
  • 資格取得支援: 受験費用全額負担+合格祝い金(1級5万円・2級3万円が相場)+資格手当(1級月3万円・2級月1.5万円)

新卒採用単価は中途より約3割安く(業界平均で新卒69.4万円・中途97.8万円)、入社後の定着率も高い傾向があります。

育成の中で使える助成金

未経験育成では、人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)などが使えるケースがあります。研修費用の一部が補助される形なので、育成投資のキャッシュアウトを抑えられます。助成金単独で人を呼ぶことはできませんが、育成設計と組み合わせると効きます。

詳しい運用は建設業の若手採用ガイド、新卒採用の打ち手は建設業の新卒採用を成功させる5つの戦略にまとめています。

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方法4|入社3年目までの定着施策に投資する

採用しても3年で辞めると、採用コストは丸ごと回収できません。建設業の高卒3年以内離職率は43.2%、大卒30.7%(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。新卒1人離職で約657万円の損失モデル試算もあります。

入社3年目までに効く施策

3年定着率を上げる施策

施策主な内容効果
メンター制度年齢の近い先輩を1対1でつける若手の不安・迷いを早期キャッチ
3か月・6か月・1年・2年面談評価とギャップを擦り合わせ期待値ズレを修正
資格取得スケジュール3年で2級・6〜10年で1級成長実感とキャリアパス可視化
残業上限と休日管理月45時間以内・年間休日110日以上求人票で訴求できる差別化
日給制から月給制へ最低保障額の設定など収入の安定化で離職減

建設業採用支援の実務ベースで作成

定着施策が採用にも効く

求人票に「直近の3年定着率」「メンター制度あり」「資格取得スケジュール」を書けると、応募率と内定承諾率の両方が上がります。定着施策は採用と切り離さず、採用設計の中で見せる工夫がポイントです。

定着施策の詳しい打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、人材育成は建設業の人材育成ガイドにまとめています。


方法5|採用代行で複数チャネルを束ねる

求人票・リファラル・育成・定着の4方向を、採用専任者がいない中小で並列に回すのはかなり厳しい工数です。

採用代行(RPO)は、求人票の作成・媒体運用・スカウト・応募者対応・紹介会社のコントロールまでを外部の採用チームが引き受けるサービスです。求人広告や人材紹介の代わりではなく、それらをまとめて運用する役割を担います。

採用代行が「人材確保」に効くポイント

  • 求人広告・人材紹介・DR・リファラルの運用を一本化できる
  • 紹介会社の優先度を上げる運用(要件シート・返信スピード・合否フィードバック)を仕組み化できる
  • 採用担当の工数が空くので、定着施策に時間を回せる
  • 月次レポートで応募・面接・採用の数字が可視化される

月額10万〜30万円の建設特化型から段階的に始められます。仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。


中小建設会社が人材確保に成功した3社の事例

会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースでまとめます。

福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)

施工管理候補で求人広告と紹介会社の応募が途切れていた状態。採用代行(月額20万円)で求人票の刷新・応募者一次対応・紹介会社2社のコントロールを一括化したところ、応募数が約2.4倍、年間で13名の採用に到達。リファラル制度も並行して整備し、年2名の社員紹介採用が定着しました。

新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)

媒体費と紹介料の合計が年間1,500万円超。求人広告の運用改善・スカウト設計・紹介会社の使い分けで、媒体費ベースの1名あたり採用単価は従来比30%減。同時に3か月・6か月・1年面談を制度化し、新卒の3年定着率が業界平均より10ポイント高い水準まで改善しました。

長野県の工務店C社(従業員15名規模)

小規模で「採用にコストをかけられない」と感じていた会社。月額10万円の最小構成の採用代行で求人票・Indeed運用・応募者一次対応を外注し、半年で現場1名・事務1名の採用。同時にメンター制度と資格取得支援を新設し、未経験で入社した若手が2年で2級施工管理技士補を取得しました。

事例の詳細は建設業の採用成功事例5選にまとめています。


よくある質問

Q. 助成金は使わないほうがいいですか?

使えるなら使ったほうがお得です。ただし助成金は採用後・育成後に申請する制度なので、応募の入口を太くする効果はありません。本丸は求人票・媒体・紹介会社の運用と定着施策で、助成金は採用コストの後追い補填として使うのが基本です。詳しい制度は建設業の人材確保に使える助成金ガイドにまとめています。

Q. リファラルは本当にコストが下がりますか?

下がります。1名あたり報奨金5〜20万円で、人材紹介の200〜360万円と比べると桁違いに安いです。ただし社員数に応募数が依存するので、年5〜10名の継続採用には届きません。求人広告や紹介会社と組み合わせて使うのが基本形です。

Q. 未経験者を採用しても育てきれません

育成の仕組み(研修・メンター・資格支援)を作る前に未経験を採ると、現場任せになって離職が増えます。月額10万円の採用代行で求人運用を外に出して、社内のリソースを育成設計に振り向ける選択肢もあります。

Q. 採用と定着、どちらを優先すべきですか?

両輪で動かす前提です。ただし、いま応募がゼロに近い会社なら、求人票の見直しと媒体運用の改善を先に動かして応募の入口を作ります。応募はあるが採用後にすぐ辞めるなら、定着施策(メンター・面談・資格支援)を優先します。

Q. 採用代行は本当にコストが下がりますか?

媒体費の最適化と紹介会社の使い分けが効くと、採用1名あたりの実費は下がる場面が多いです。月額10万〜30万円の建設特化採用代行で、求人広告・紹介会社・スカウトを横串で運用し、採用総コストを30%前後抑えた事例もあります。


まとめ|人材確保は「採用×定着」の両輪で動かす

  • 助成金は採用後・育成後の費用補填。応募を呼ぶ入口にはならない
  • 建設業の人材確保は採用×定着の両輪で動かすのが基本形
  • 5つの実践方法: 求人票の作り直し/リファラルの制度化/未経験育成/3年定着施策/採用代行で複数チャネル統合
  • 求人票で求職者がいちばん見るのは「仕事の内容」50.2%。仕事内容の粒度を上げるところから着手
  • 採用単独で見ると43%が中途で1名も採れない市場。リファラル+未経験育成で母集団を広げる
  • 採用代行は単独手法ではなく上位レイヤー。月額10万〜30万円の建設特化型から段階的に導入できる

人材確保は単独の打ち手ではなく、複数の手法を組み合わせて初めて動きます。助成金は使えるなら使うものにとどめて、本丸の採用設計と定着施策にリソースを振り分けるのが、中小建設会社にとって現実的な道筋です。

次の一歩として、人手不足の構造解説は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、中途採用全体の打ち手は建設業の中途採用を成功させる5つの戦略、採用代行の仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイド、助成金は建設業の人材確保に使える助成金ガイドをあわせてご覧ください。

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