月45時間規制の適用から1年半、建設業の現在地
建設業に時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間が原則、特別条項で年720時間)が適用されたのは2024年4月。施行から約1年半が経ち、業界全体では認知度85.4%、月45〜60時間の残業をしていた層が約5%減るなどの動きが出ています(NSSスマートコンサルティング『建設業界の働き方改革施行後の実態調査』)。
一方で、月平均残業は依然12.7時間、年間労働時間は1,987時間と、製造業平均より31時間長い水準です(厚生労働省『毎月勤労統計調査』2024年)。規制が定着するまでにはまだ距離があり、対応の遅れは採用市場での淘汰につながり始めています。
この記事では、建設業の2024年問題を規制内容・1年半経過後の実態・採用市場への影響・打ち手の4軸で整理します。労務管理の解説より一歩踏み込んで、求人票・応募率・採用代行といった採用視点で何を変えるかに焦点を当てます。
人手不足の構造そのものは建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、求人倍率データは建設業の有効求人倍率もあわせて参考になります。
規制内容を正確に押さえる
「月45時間」だけが独り歩きしている印象がありますが、実際には複数の上限が重ね掛けされています。経営側で求人票や工期を組み立てるときに、ここを正確に把握しておく必要があります。
建設業の時間外労働 上限規制(2024年4月〜)
| 項目 | 以前(猶予期間) | 2024年4月以降 |
|---|---|---|
| 原則の上限 | 上限なし | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項(臨時的事情) | 実質上限なし | 年720時間以内 |
| 単月の上限(休日労働込み) | なし | 100時間未満 |
| 2〜6か月の月平均(休日労働込み) | なし | 80時間以内 |
| 月45時間超えの回数上限 | なし | 年6回まで |
| 罰則 | なし | 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
特別条項を結べば年720時間まで残業できますが、月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内のダブルキャップが効くため、繁忙期にまとめて長時間残業を投入することはできなくなりました。
災害復旧・復興事業の例外
建設業に限った例外として、災害復旧・復興事業に従事する場合は月100時間未満・2〜6か月平均80時間の規制が適用外になります。ただし特別条項の年720時間は引き続き遵守が必要です(厚生労働省『建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制』)。
例外があるからといって、通常工事で災害復旧扱いを使えるわけではありません。例外の範囲は厚労省・国交省の通達で限定されています。
違反した場合のリスク
違反は刑事罰の対象です。さらに監督署からの是正勧告・行政指導が入り、社名公表のリスクもあります。社名が出れば、求人媒体や紹介会社経由の応募率に影響が出ます。罰金額の問題ではなく、採用市場での競争力に直結する話として捉える必要があります。
適用1年半経過、業界の現在地
規制が動き出してから何が変わったか、最新データで整理します。
認知度85.4%、残業時間は5%減少
NSSスマートコンサルティングの調査では、建設業従事者の85.4%が「2024年問題を知っている」と回答。規制施行前には月45〜60時間の残業をしていた層が、4月以降は約5%減少しています(NSSスマートコンサルティング『建設業界の働き方改革施行後の実態調査』)。
残業時間そのものは確かに減り始めています。一方で、減った分の業務量がどこに行ったかというと、現場の効率化・工期延長・人員追加という形で吸収されています。
残る課題
- 工期の長期化: 残業に頼れなくなった分、工期の見直しや人員追加で対応する現場が増加
- 給料が減るという求職者の不安: 残業代込みで月給を組み立てていた層が、転職時に「年収が下がる」と感じやすい
- 対策できていない会社が7割: 認知はあっても、社内の働き方を実際に変えられている会社は少数派
- 建設業倒産の増加: 帝国データバンクの調査では、2025年度の人手不足倒産は建設業112件で業種別最多(帝国データバンク『人手不足倒産の動向調査(2025年度)』)
規制適用は始まりに過ぎず、対応の質と速度で会社の採用力が大きく分かれ始めています。
規制が採用市場に与える3つの影響
労務の話で終わらせず、採用市場への影響を整理します。ここが上位記事との差別化点です。
影響1|「人手が足りない分は残業で」が成立しない
これまで建設業では、人員不足を既存社員の残業で吸収する慣行が一般的でした。月45時間の上限が効くと、同じ工事量を回すのに必要な人員数が物理的に増えます。
採用ペースを上げる必要があるのに、有効求人倍率は5.18倍(厚生労働省『一般職業紹介状況』2025年10月分)。「採れる人材が少ない市場で、これまで以上に採らなければならない」という二重の負荷がかかっています。
影響2|「残業代で稼ぐ」モデルの崩壊と求職者の不安
残業時間の短縮は、月給の構成を変えます。残業代込みで30万円台後半だった月給が、規制適用後は基本給だけで30万円前後にとどまるケースが出てきます。
求職者からは「2024年問題で給料が減るのでは」という不安が聞かれるようになりました。求人票で月給だけを書いていると、この不安に応えられません。基本給と諸手当の構成を見直し、年収レンジで提示する必要があります。
影響3|規制対応の遅れが「淘汰される会社」を生む
社名公表や違反履歴のある会社は、求人媒体・紹介会社の評価が下がり、応募が動きにくくなります。建設業倒産は2025年度に建設業の人手不足倒産が業種別最多(112件)で、規制対応の遅れが採用減 → 受注減 → 倒産という連鎖を生み始めています。
「規制を守れている」ことが採用市場の最低ライン。「守ったうえで、さらに働きやすい」を打ち出せる会社が、若手応募で勝ちます。
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無料で相談する「給料が減る」不安に求人票でどう応えるか
採用視点で2024年問題を扱うときに、いちばん向き合うべきなのが求職者の「給料が減るのでは」という不安です。
月給の見せ方を変える
- 基本給と諸手当を分けて書く: 「月給28万円(基本給23万円+資格手当3万円+現場手当2万円)」のように構成を明示
- 年収例を経験別に並べる: 経験3年で年収400万円、10年で年収580万円のように、残業の少なさと組み合わせて見せる
- 残業時間を数字で書く: 「月平均20時間(繁忙期30〜40時間/閑散期10時間)」と幅で開示
- 有給取得率を載せる: 直近実績65%など、休みの取りやすさを定量化
求人票の作り方そのものは建設業の求人票の書き方|応募が来ない原因と7つの改善コツで7つのコツとBefore/After例文を載せています。
残業代分を基本給に振り替える設計
残業上限で残業代が減った分を基本給に上乗せする会社が増えています。基本給アップは年収の見え方を改善するだけでなく、賞与・退職金・各種手当の計算ベースが上がるため、長期的な処遇改善につながります。
求人票では「2024年4月の残業上限規制適用に合わせて、基本給を月◯万円引き上げました」と明記すると、規制対応している会社という印象を出せます。
規制を採用の武器に変える4つの打ち手
規制対応は守りの話に見えますが、採用視点で攻めに転換できます。
打ち手1|DXで残業を減らす
勤怠管理・工程管理・図面のやり取りをクラウド化するだけで、残業時間が目に見えて減るケースが多いです。BIM/CIM・ICT施工・ドローン測量などの導入は、若手の応募意欲にも直結します。
国交省は『i-Construction 2.0』で2040年までに建設現場の生産性を1.5倍にする目標を掲げており、DXは「余裕があればやる」段階を超えています(国土交通省『i-Construction 2.0』)。
打ち手2|求人票で「規制対応している会社」を打ち出す
- 月45時間以内に収まっている直近実績を数字で
- 完全週休2日制・年間休日120日の実現状況
- 残業代込みではなく基本給ベースの給与体系
- 災害時を除いた通常時の繁閑差(月10〜30時間など)
これらを明示するだけで、規制対応に不安を持っている求職者に対して「ちゃんと守れている会社」というメッセージが届きます。
打ち手3|週休2日を採用の前面に置く
国交省の直轄工事ではすでに週休2日制が義務化されています。民間工事でも完全週休2日を実現している会社はまだ少数派で、求人票に「完全週休2日(土日祝)」と書けるだけで他社との差別化になります。
採用戦略の地図は建設業の採用戦略ガイド、媒体の組み合わせは建設業の採用媒体完全比較ガイドに整えています。
打ち手4|採用代行(RPO)で人事リソース不足を埋める
規制対応の文書整備・36協定の見直し・現場との調整で、人事担当の工数はすでに逼迫しています。そこに採用活動を上積みするのは現実的に難しい場面が多いです。
採用代行(RPO)は、求人票の作成・媒体運用・スカウト送信・応募者対応・紹介会社の運用までを外部の採用チームが引き受けるサービスです。求人広告や人材紹介の代わりではなく、それらをまとめて運用する上位レイヤーとして動きます。月額10万〜30万円の建設特化型から段階的に始められます。
仕組みは採用代行(RPO)とは?仕組み・業務範囲・選び方を徹底解説、費用感は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。
規制対応+採用改善を両立した3社の実例
会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースの記載にとどめます。
福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)
施工管理候補の募集で月平均残業25時間という実績を求人票に明記し、応募が動きませんでした。基本給を月3万円引き上げて残業代込みの旧月給と同水準を維持、求人票を「年収例(残業20時間込み)」で並べ直したところ、応募数が約2.4倍、年間で13名の採用に到達しました。
「給料が減るのでは」という求職者の不安に、構成変更で答えたケースです。
新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)
媒体費と紹介料の合計が年間1,500万円超で、採用コストが経営会議の議題に。クラウド勤怠と工程管理アプリの導入で月平均残業を15時間まで圧縮、求人票で「2024年4月以降、月平均残業15時間以内」と訴求した結果、応募数が約1.8倍、媒体費ベースの1名あたり採用単価は従来比30%減まで改善しました。
DX投資が労務改善と採用改善の両方に効いた例です。
長野県の工務店C社(従業員15名規模)
小規模で「規制対応に手が回らない」と諦めかけていた会社です。月額10万円の最小構成の採用代行で求人票・Indeed運用・36協定の見直しサポートを外注し、半年で現場1名・事務1名の採用に成功。社内の労務文書も並行して整備されました。
事例の詳細と他の成功パターンは建設業の採用成功事例5選|中小でも人が集まる会社の共通点に5社分まとめてあります。
よくある質問
Q. 一人親方や個人事業主にも規制は適用されますか?
労働基準法上の労働者ではない個人事業主・一人親方は、時間外労働の上限規制の直接対象ではありません。ただし、元請けが下請けの労働環境を考慮する義務(建設業法・公正取引)が強化されており、不当な短工期での発注はチェックされます。
Q. 災害復旧の例外はどこまで使えますか?
例外の対象は、災害発生後の復旧・復興事業に従事する労働者に限られます。通常の工事に災害例外を適用することはできず、厚労省・国交省の通達で範囲が限定されています。例外でも特別条項の年720時間は遵守が必要です。
Q. 残業上限を超えそうな場合、どう対応すればいいですか?
人員追加・工期延長・業務効率化(DX導入)の組み合わせで吸収するのが標準的な対応です。違反のリスクが見えた段階で、発注者と工期再交渉、社内で人員配置の見直し、勤怠管理ツールでの可視化を同時並行で進めます。
Q. 給料が下がった社員にどう向き合えばいいですか?
残業代込みの旧月給を維持するために、基本給の引き上げや手当の新設を進める会社が増えています。賞与・退職金・各種手当の計算ベースも上がるため、長期で見ると本人の処遇改善につながりやすい設計です。
Q. 採用に与える影響は大きいですか?
大きいです。規制対応の進捗が、応募数・書類通過率・内定承諾率の3つに直接影響します。求人票で残業時間・休日・基本給を数字で明示できる会社が、若手応募で優位に立ちます。求人票の改善は建設業の求人票の書き方、採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイドに整えています。
まとめ|2024年問題は「労務」ではなく「採用設計」の話
建設業の2024年問題で押さえたいポイントを並べると、次の通りです。
- 月45時間・年360時間(特別条項で年720時間)の上限規制が2024年4月から建設業にも適用。違反は刑事罰の対象
- 適用1年半経過時点で認知度85.4%、月45〜60時間残業層が5%減少。一方で月平均残業12.7時間、年間1,987時間と高止まり
- 採用市場への影響は3つ: 残業に頼れない/給料が減る不安/規制対応の遅れが淘汰加速
- 求人票では基本給と諸手当を分け、年収例と残業実績を数字で開示する
- 規制を採用の武器に変える4つの打ち手: DX/求人票の刷新/週休2日訴求/採用代行
- 求人媒体・紹介会社の運用で人事リソースが足りないなら、月額10万円〜の建設特化採用代行から段階導入する選択肢がある
2024年問題は、労務管理の話に見えて、求人票・応募率・採用代行といった採用設計に直結する論点です。規制対応の質と速度が、そのまま採用市場での競争力になっています。
次の一歩として、人手不足の構造解説は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、採用戦略の地図は建設業の採用戦略ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、中途採用は建設業の中途採用を成功させる5つの戦略、採用代行の仕組みは採用代行(RPO)とは?をあわせてご覧ください。
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