労務単価は25,834円、賃上げ率は大手6.76%と100人未満3.76%
国が公共工事の人件費を決めるときに使う基準額は、令和8年3月適用分で1日あたり25,834円になりました。14年連続の引き上げで、25,000円を超えたのは今回が初めてです(国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』)。
ところが、実際の賃上げ率は会社の規模ではっきり割れています。
2026年の春の労使交渉を経団連がまとめた集計で、大手企業の建設は6.76%・37,727円でした。同じ集計の中小企業では、土木・建設が4.41%・14,255円です。
従業員100人未満に絞ると3.76%・10,206円まで下がります。金額で見ると、大手の上げ幅は中小の土木・建設の2.6倍、従業員100人未満の3.7倍です。
結論から言うと、建設業の賃金は上がっていますが、上がり方が大手と中小の二層に割れています。
国自身も、これまでの取り組みが民間工事の事業者や下請業者まで届いていないと認めています。その届きにくさを正すために作られたのが、2025年12月に完全施行された建設業法の改正です。
人手不足の構造は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、採用市場の混み具合は建設業の有効求人倍率で扱っています。
国が決める人件費の基準額は14年連続で上がっている
公共工事設計労務単価は、国が公共工事の予算を組むときに使う、技能者1人1日あたりの人件費の基準額です。公共工事のために決めた数字ですが、民間工事でも相場の物差しとして参照されています。
公共工事設計労務単価(全国・全職種の平均)の推移
| 適用開始 | 1日あたりの金額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 令和3年3月適用 | 20,409円 | +1.2% |
| 令和4年3月適用 | 21,084円 | +2.5% |
| 令和5年3月適用 | 22,227円 | +5.2% |
| 令和6年3月適用 | 23,600円 | +5.9% |
| 令和7年3月適用 | 24,852円 | +6.0% |
| 令和8年3月適用(2026年3月〜) | 25,834円 | +4.5% |
国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』より作成。注:金額は全国全職種の加重平均値、伸び率は全国全職種の単純平均の伸び率で、計算方式が異なります
加重平均値は職種ごとの人数で重みを付けた平均、単純平均は人数に関係なく金額をそのまま平均した値です。金額の欄と伸び率の欄で計算方式が違うので、表を社内資料に写すときはこの点を添えてください。
伸び率の累積で見ると平成24年度から+94.1%で、金額もこの14年でほぼ2倍になりました。
職種別の金額は次のとおりです。
- 型わく工31,671円(+5.0%)/鉄筋工31,267円(+4.6%)/とび工30,780円(+4.0%)
- 左官30,508円(+4.1%)/大工30,331円(+3.1%)/普通作業員23,605円(+3.0%)
この金額は令和7年10月に施工中の、1件1,000万円以上の直轄事業や補助事業などを調べた結果です。有効標本は85,670人、47都道府県の51職種を集計しています。
単価には会社の経費が入っていません
単価に経費は含まれていません
国土交通省は、公共工事設計労務単価に事業主が負担すべき人件費、つまり必要経費分は含まれていないと明記しています。そのうえで、下請代金に必要経費分を入れないことや、下請代金から値引くことは不当行為だとしています。
社会保険の会社負担分、現場までの移動にかかる費用、安全管理の費用。これらは単価の外にあります。「単価が25,834円なのだから、その金額で請けられるはずだ」と言われたときの、反論の材料になります。
国は「技能者の年収はいくらであるべきか」まで示している
あまり知られていませんが、国は技能者の年収の目安まで金額で公表しています。建設キャリアアップシステム(技能者の資格や就業履歴を業界共通で登録・蓄積する仕組み。CCUSとも呼ばれます)の能力評価に合わせた、レベル別の年収です。
CCUSレベル別年収(全国・全分野)
| レベル | 経験の目安 | 標準値 | 目標値 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 経験5年未満 | 395万円 | 535万円以上 |
| レベル2 | 経験5年以上10年未満 | 444万円 | 599万円以上 |
| レベル3 | 経験10年以上または一級技能士 | 472万円 | 664万円以上 |
| レベル4 | 登録基幹技能者 | 572万円 | 754万円以上 |
標準値は下位15%程度、目標値は平均以上の水準です。関東ブロックはこれより高く、レベル1が418万〜567万円、レベル4が606万〜800万円です。
レベル別年収は、公共工事設計労務単価がそのまま賃金として支払われたらいくらになるかを、職種ごとに計算し直したものです。国はこれを、適正な賃金を考えるときの具体的な目安の一つとして示しています。
法的な強制力はありませんが、無視もできません
国土交通省は、この金額に法的拘束力はなく、支払いを義務付けるものではないと注記しています。
一方で、標準値を下回る支払い状況の事業者については、請負契約で労務費のダンピング(相場から大きく外れた安値での受注)の恐れがないかを重点的に確認する、とも書かれています。義務ではありませんが、下回っていれば国に見られる数字です。
自社の給与テーブルをこの表と突き合わせてみてください。レベル3相当の職人に年収472万円を払えているか。ここが求人票を書く前の出発点になります。

上がっているのは大手。中小との差はここまで開いている
経団連は大手と中小を別々に集計しています。どちらも2026年の最終集計です。
2026年春季労使交渉の妥結結果(経団連・最終集計)
| 区分 | 集計社数 | 妥結額 | 賃上げ率 |
|---|---|---|---|
| 大手:建設 | 5社 | 37,727円 | 6.76% |
| 大手:総平均 | 146社 | 19,752円 | 5.37% |
| 中小:土木・建設 | 23社 | 14,255円 | 4.41% |
| 中小:総平均 | 399社 | 12,201円 | 4.25% |
| 中小:従業員100人未満 | 130社 | 10,206円 | 3.76% |
日本経済団体連合会『2026年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(最終集計)』および同『中小企業業種別妥結結果(最終集計)』より作成。いずれも定期昇給などを含みます
大手は原則として従業員500人以上の主要23業種248社、中小は原則として従業員500人未満の17業種754社が対象です。どちらの数字にも、年齢や勤続年数に応じて毎年上がる分(定期昇給)が含まれています。中小を規模別に見ると、100〜300人未満が4.20%、300〜500人未満が4.42%でした。
建設は、2026年が5社で37,727円・6.76%。前年の2025年は4社で30,946円・5.64%でした。1年でさらに伸びています。一方で中小の土木・建設は、前年の19社・15,056円・4.88%から下がりました。
業界全体が上がっているなかで、中小の土木・建設だけが前年を割りました。
厚生労働省の集計も大手の姿を映しています
厚生労働省の令和8年春季賃上げ集計では、建設が6.45%・22,879円(27社)、全産業の平均が5.18%・18,167円(428社)でした。前年の令和7年は建設5.96%・21,537円です。
ただし対象は、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合がある企業に限られます。組合員数による加重平均で、妥結額には原則として定期昇給分が含まれます(厚生労働省『令和8年春季賃上げ集計』)。
従業員50名の建設会社の実感と離れるのは、当然のことです。
中小の現場で「上がった」と答えたのは3人に1人
クラフトバンク総研が2025年8月18日から26日に行ったインターネット調査があります。有効回答は1,659件で、内訳は経営者601、事務員541、職人517。対象は社員5〜100名の法人で、職人を正社員として雇用している企業です。
設問は「あなた自身の給与・賞与は昨年、一昨年と比較して上がりましたか」。会社が賃上げしたかどうかではなく、答えた本人の給与が上がったかを聞いています。
年商規模別「自分の給与・賞与が上がった」と答えた割合(2025年)
| 年商規模 | 上がったと答えた割合 | 回答数 |
|---|---|---|
| 1億円未満 | 18% | 432 |
| 1〜3億円 | 32% | 417 |
| 3〜5億円 | 35% | 215 |
| 10億円未満 | 37% | 257 |
| 10億円以上 | 50% | 252 |
| 全体 | 32% | 1,573 |
クラフトバンク総研『中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査:2025年版』より作成。年商の区分は原典の表記どおりです
全体では32%で、前年の調査の27%から5ポイント動いています。ただ年商1億円未満では18%。10億円以上の50%とは32ポイントの開きがあります。
同じ調査で、人手不足のために仕事を断った経験がある会社は68%ありました。採用できていないと答えたのは42%です。
発注単価が上がったと答えた経営者は全体で49%。年商1億円未満では32%、10億円以上では64%でした。もらう金額が上がった会社ほど、払う金額も上げられています。
大手ゼネコンの初任給は30万円で並んでいる
新卒の採用では、求職者が金額をそのまま見比べます。
大手・準大手の大卒初任給(一次資料で確認できる範囲)
| 企業 | 大卒 | 修士 | 確認できる時点 |
|---|---|---|---|
| 大林組 | 300,000円 | 320,000円 | 2025年4月入社 |
| 竹中工務店 | 300,000円 | 320,000円 | 2025年度 |
| 清水建設 | 300,000円 | 320,000円 | 2025年度・グローバル職 |
| 大成建設 | 300,000円 | 320,000円 | 採用募集要項 |
| 鹿島建設 | 300,000円 | 320,000円 | 2026年・2027年採用の募集要項 |
| 西松建設 | 310,000円 | 330,000円 | 2026年4月入社 |
| 長谷工コーポレーション | 300,000円 | 320,000円 | 2024年4月入社 |
横並びが今回始まったわけではありません。スーパーゼネコン5社(大成建設・大林組・鹿島建設・清水建設・竹中工務店)は、2024年度入社の時点で大卒28万円・院卒30万円で揃っていました。2025年度入社でそれぞれ2万円ずつ上がり、30万円・32万円で並んでいます。
清水建設の30万円はグローバル職の金額です。エリア職はA地域270,000円、B地域258,000円、C地域246,000円と、勤務地で差が付きます。
大手より先に動いた会社もあります。長谷工コーポレーションは2024年4月入社の時点で、すでに大卒30万円・修士32万円でした。大林組は2022年4月から4年連続、竹中工務店も2022年以来4年連続で引き上げています。
建設業全体の初任給は26万9,800円
大手の30万円は業界の平均ではありません。賃金構造基本統計調査(令和7年)によると、建設業の大卒初任給は26万9,800円でした。産業計は26万2,300円ですから、建設業のほうが7,500円ほど高くなっています。
会社の規模で見ると差が出ます。
- 1,000人以上:29万4,300円
- 100〜999人:25万8,300円
- 10〜99人:23万2,200円
1,000人以上と10〜99人で、6万円以上の開きがあります(厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』)。
リクルートワークス研究所の調査では、2026年4月入社の建設業の大卒初任給は24.9万円で、前年から4.2%増えました。ところが「前年より初任給が増える」と答えた企業の割合は建設業で54.7%(254社)。前年の59.2%から下がり、6つの業種区分のうち低下したのは建設業だけでした(リクルートワークス研究所『第43回ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)』)。
上げ続ける会社と、そろそろ限界という会社に分かれ始めています。
実際に支払われている賃金はどうなっているか
毎月勤労統計調査の2025年度分(確報)では、建設業の一般労働者の現金給与総額が月486,386円でした。前年度比+2.6%です。現金給与総額とは、残業代や手当を含めた、税金や社会保険料を引く前の支給額のことです。パートを含めた就業形態計では466,525円になります。
内訳は次のとおりです。
- 所定内給与:356,793円(前年度比+1.4%)
- 所定外給与、つまり残業代など:27,899円(前年度比+8.1%)
所定内給与とは、残業代や通勤手当などを除いた、毎月決まって支払われる給与のことです。
目を引くのは残業時間のほうです。同じ期間の所定外労働時間は13.3時間で、前年度から1.3%減っています。残業は減ったのに、残業代は8.1%増えました。1時間あたりの単価が上がった分が、時間の減少を上回っています(厚生労働省『毎月勤労統計調査 2025年度分結果確報』、事業所規模5人以上)。
残業規制で給料が減るのでは、という求職者の不安とは逆を向いた数字です。労働時間の実態は建設業の2024年問題で詳しく扱っています。
建設業の給与は産業計より2万6千円高い
賃金構造基本統計調査(令和7年)の6月分の所定内給与額は、建設業が36万6,300円(前年比+3.9%)、産業計が34万600円(同+3.1%)でした。建設業のほうが2万6千円ほど高く、伸び率も上回っています。平均年齢は45.5歳、平均勤続年数は13.7年です。
なお、この36万6,300円と先ほどの毎月勤労統計の35万6,793円を並べて比べないでください。調査の設計も対象の事業所規模も集計月も違う、別の物差しです。
給与のピークは55〜59歳
年齢が上がるにつれて給与がどう伸びるか(賃金カーブ)を見ると、建設業は産業計より急な形です。
建設業の年齢階級別 所定内給与額(令和7年・月額)
出典: 厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』(一般労働者・男女計・企業規模計)より作成
ピークは55〜59歳の44万7,200円で、20〜24歳の25万500円と比べると1.79倍です。産業計の1.63倍より伸びが大きい形になります。
若い年代ほど産業計との差は小さめです。25〜29歳は建設業29万2,800円、産業計27万9,400円で、開きは1万3,400円にとどまります。
この形は求人票で使えます。20代前半の月給だけを並べると大手に見劣りしますが、勤め続けたときにどこまで伸びるかを示せば見え方が変わります。

なぜ単価が上がっても中小の給料に届かないのか
この「届かなさ」は、国自身が認めています。国土交通省の説明会資料には、建設業は他産業より賃金が低く就労時間も長いため、担い手の確保が困難だという認識が書かれています(国土交通省『改正建設業法「令和7年12月施行分」説明会』(令和8年1月))。
根拠は賃金構造基本統計調査(令和5年)の数字です。建設業の生産労働者は年432万円・年2,018時間、全産業は年508万円・年1,956時間。年収で76万円低く、労働時間は62時間長いという比較です。
そのうえで資料はこう総括しています。これまでの取り組みで建設分野の賃金は着実に上昇しているが、民間工事に従事する事業者や下請業者も対象となる施策が必要である、と。
公共工事の単価は上がりましたが、公共工事以外の現場と、元請から先の下請には届いていません。この認識が、法律を変える理由になりました。
2025年12月に変わった建設業法のルール
2024年6月に成立した改正建設業法が、令和7年(2025年)12月12日に完全施行されました。施行期日を定める政令は、同年11月14日に閣議決定されています(国土交通省 報道発表)。
1. 労務費に関する基準ができました
「労務費に関する基準」は、中央建設業審議会(建設工事の契約ルールを決める国の会議体)が令和7年12月2日に作成し、実施を勧告したものです。ここで示されるのは、1日いくらという人件費ではありません。単位施工量あたりの労務費です。1トンあたり・1平米あたりのように、作業の量に対していくら、という形になります。
適正な労務費は、設計労務単価×歩掛×数量で計算します。歩掛とは、一定の作業量にどれだけの手間がかかるかを数値にしたものです。
令和7年12月までに、13の職種分野・99の工種について基準値が公表されました。建設業許可29業種のうち、15業種の作業に対応しています。東京都の令和7年12月時点では、鉄筋工事(建築)が1トンあたり71,472円、型枠工事(建築)が1平米あたり5,291円でした。
基準値は令和8年6月17日に令和8年度版へ更新されています。最新の値は国土交通省 労務費に関する基準ポータルサイトで確かめてください。
2. 禁止されることと、処分する役所が整理されました
ここは似た話が3つ並ぶので、混ぜずに読んでください。
改正建設業法で禁止された行為と、処分する役所
| 禁止される行為 | 受注する建設業者 | 注文する側 |
|---|---|---|
| 著しく低い労務費等による見積りの提出/見積りの変更依頼 | 国土交通大臣等から指導・監督処分 | 発注者は国土交通大臣等から勧告・公表 |
| 原価に満たない金額による契約の締結 | 国土交通大臣等から指導・監督処分 | 注文者が建設業者の場合は公正取引委員会から措置。公共発注者は国土交通大臣等から勧告 |
| 著しく短い工期による契約 | 国土交通大臣等から指導・監督処分 | 発注者は国土交通大臣等から勧告・公表 |
労務費が著しく低い見積りを出すことと、原価に満たない金額で契約することは、別の禁止規定です。1つの話としてまとめないでください。
令和6年の改正で対象も広がりました。原価に満たない金額での契約締結の禁止は、これまで注文する側だけが対象でしたが、いまは受注する建設業者の側も禁止されています。安く請けて人件費を削る受け方が、法律の側からふさがれた形です。
3. 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」が始まりました
中小がすぐ使えるのは、この制度です。技能者の処遇改善の取り組みなどを宣言して見える化し、受注機会の確保につなげる仕組みで、令和7年12月12日から申請の受付が始まりました。
宣言する項目は次のとおりです。
- 労務費・材料費等の内訳を明示した見積書を作成すること
- 技能者の適切な処遇を確保する取り組みを行うこと
- 担い手の育成に取り組むこと
- 建設キャリアアップシステムを活用すること
宣言した企業には、国土交通省ホームページへの掲載や経営事項審査での加点といった後押しが用意されています。経営事項審査とは、公共工事の入札に参加するときに受ける、会社の規模や経営状況の審査のことです(国土交通省『建設技能者を大切にする企業の自主宣言』、改正建設業法「令和7年12月施行分」説明会)。
入札の点数が上がり、国のホームページに社名が載ります。どちらも求人票に書ける材料になります。
賃上げと採用を、同じ設計で動かす壁打ちをしませんか?
建設業特化の採用コンサルタントが、御社の規模・職種・予算に合わせて、求人票の作り直し・採用コストの見直し・給与の見せ方まで無料でご提案します。月額20万円〜の建設特化採用代行で、採用コストを抑えながら賃上げの原資を作るご相談からどうぞ。
無料で相談する大手と同じ給与を出せない会社が採用で勝つ4つの手
大卒初任給30万円に並べなくても、打てる手はあります。
手1|年収の見せ方を、国の目安と年齢別の実額で裏打ちする
求職者が求人票でいちばん見るのは、給与の欄です。「月給25万円〜」とだけ書いてあると、下限の25万円で計算されます。
経験年数ごとの年収例を並べ、この記事で見てきた2つの数字を根拠として添えてください。1つは国が示すCCUSレベル別年収で、「経験10年の職人で年収472万円は、国が示す標準値と同じ水準です」と書けます。もう1つは年齢別の実額で、「建設業の給与のピークは55〜59歳で月44万7,200円。当社もこの形で設計しています」と示せます。
自社の金額が国の目安と並んでいるなら、そう書いてください。並んでいないなら、どこが足りないかが先にわかります。
求人票の直し方は建設業の求人票の書き方に、ビフォーアフターの例文つきで載せています。
手2|手当と福利厚生で手取りを厚くする
基本給で大手に並ぶのが厳しいなら、手当で差を詰めます。
建設業の資格手当について、職種別・資格別の公的な統計はありません。「1級なら月3〜5万円が相場」といった数字は、求人票でよく見かける水準にすぎません。
公的なよりどころは1つだけです。令和7年就労条件総合調査の「技能手当、技術(資格)手当など」で、労働者1人あたりの平均支給額は月2万1,500円、支給している企業の割合は53.0%でした。企業規模30〜99人では2万5,000円と、平均より高く出ています(厚生労働省『令和7年就労条件総合調査の概況』)。
この月2万1,500円を上回る金額に設定できれば、求人票で比べられたときに差がつきます。
受験費用の負担も書ける材料です。1級建築施工管理技術検定の令和8年度の受検手数料は、第一次検定12,300円と第二次検定12,300円で合計24,600円(建設業振興基金)。
「受験費用は会社が全額負担」と書くとき、この金額を添えると重みが出ます。
手当や福利厚生の組み立て方は建設業の福利厚生に具体例をまとめています。
手3|採用コストを下げて、賃上げの原資に回す
ここでいう原資とは、賃上げに回せるお金のことです。受注単価の交渉は時間がかかります。出ていくお金の見直しのほうが、自社で完結する分だけ早く動きます。
人材紹介の手数料は、全業界の平均で年収の30〜35%です。建設業の施工管理では主流45%になります。1級を持つ所長クラスや急ぎの募集では、60〜70%まで上振れることもあります。
年収800万円の1名を45%で採ると、約360万円です。金額だけ見れば重く感じます。ただ、建設業の有資格者に確実に会える手段はほかにありません。人材紹介を使うこと自体は正しくて、上手に使いこなせるかどうかで効き方が変わります。
要件の伝え方、推薦が来たときの返信の速さ、見送った理由の返し方、複数社への優先順位づけ。この4つを詰めると、推薦の質と量が変わります。そのうえで、効きの弱い求人広告を止め、応募が集まる媒体に予算を寄せます。
仮に、採用にかかる費用を年間100万円減らせたとします。1名に集中して配るなら、月給を約8万円上げる1年分の原資になります。10名に配るなら、1人あたり月8千円ほどです。
大事なのは、何人に何年かけて配るかを先に決めることです。
紹介会社との使い分けは採用代行と人材紹介の違いで扱っています。
手4|改正法と自主宣言を、交渉と求人票の両方で使う
労務費に関する基準は、元請との話し合いで使える材料です。
数量に基準値を掛けた金額を見積書に載せ、内訳を示します。「この労務費は国の基準値で計算しています」と言えると、根拠のない値引き交渉が入りにくくなります。
もう一方の使い道が求人票です。自主宣言をして国のホームページに社名が載れば、それ自体が求職者への説明材料になります。
「技能者の処遇改善を国に宣言しています」と書ける会社は、まだ多くありません。制度が始まったのは2025年12月です。早く動くほど有利になります。

従業員規模ごとの賃上げと採用の進め方
手をつける順番は従業員の人数で変わります。10名の会社と100名の会社では、使える制度も採用の打ち手も違います。
規模別|賃上げの原資の作り方と、採用の進め方
| 従業員規模 | 賃上げで先に手をつけること | 採用の進め方 |
|---|---|---|
| 10〜30名 | 自主宣言に申請し、経営事項審査の加点と国のホームページ掲載を取りにいく。資格手当を月2万1,500円より上に設定する | 求人票を1本作り直し、ハローワークと求人広告に絞る。年収例をCCUSレベル別年収と並べて書く。外部に任せるなら月額20万円(税別)〜の最小構成から |
| 30〜80名 | 労務費に関する基準の値で見積書の内訳を作り直し、主要な元請2〜3社と単価を話し合う。給与テーブルをCCUSレベル別年収と突き合わせる | 施工管理は人材紹介、職人は求人広告と社員からの紹介に分ける。紹介会社は決まるまで費用の出ない契約が多いので、数を限らずに声をかける。どの会社にも同じ要件を渡し、合否の理由を毎回返す |
| 80名以上 | 技能者のCCUS登録と能力評価を進め、レベル別の給与テーブルを作る。公共と民間の両方で労務費の内訳を出す | 求人広告・人材紹介・スカウト採用・採用ホームページを並行で回す。社内に担当を置き、日々の運用は採用代行と分担する |
順番を飛ばさないでください。給与テーブルを見直す前に求人票だけ直しても、書ける金額が増えません。まず自社の給与が国の目安に対してどのあたりかを確かめ、その数字を求人票に載せます。
実際に応募が増えた会社の動き方は建設業の採用成功事例5選に載せています。
よくある質問
Q. 建設業の賃上げ率は何%ですか?
2026年の経団連の集計では、大手企業の建設が6.76%(5社)、中小企業の土木・建設が4.41%(23社)、中小のうち従業員100人未満が3.76%でした。厚生労働省の集計では建設6.45%(27社)ですが、対象は資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合がある企業に限られます。規模で数字がまったく違うので、どの集計の話かを確かめてください。
Q. 国が掲げている賃上げの目標はありますか?
令和8年3月19日、金子国土交通大臣と建設業4団体のトップが意見交換し、技能労働者の賃金をおおむね6%上昇させることを目指すと申し合わせました(国土交通省 報道発表(令和8年3月19日))。対象は技能労働者であって、全従業員の賃上げ率ではありません。日本建設業連合会は『建設業の長期ビジョン2.0』(2025年7月)で、年平均7%以上の賃上げによる技能労働者の所得倍増と、40代で平均年収1,000万円超を掲げています(日本建設業連合会)。
Q. 中小でも賃上げはできますか?
できます。原資の作り方は2方向です。制度を使う道は、労務費に関する基準を根拠に元請と単価を話し合い、自主宣言で受注機会を増やします。出ていくお金を見直す道は、採用にかかる費用を下げた分を給与に回します。基本給を一気に上げるのが難しければ、資格手当や受験費用の負担から動かす手もあります。
Q. なぜ建設業で賃上げが必要なのですか?
採用市場が混んでいるからです。2026年7月の有効求人倍率は、建設・採掘従事者が4.99倍、建築・土木・測量技術者が5.46倍、建設躯体工事従事者が7.94倍。同じ月の職業計は1.05倍です(厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』)。なお、これは職業分類ごとの数値であって、「建設業」という産業の有効求人倍率ではありません。産業別の有効求人倍率は公表されていないからです。施工管理という職業分類もなく、いちばん近いのが建築・土木・測量技術者になります。
Q. 賃上げと採用は同時に動かせますか?
動かせます。採用にかかる費用を下げて、浮いた分を給与に回す設計が取り組みやすい順路です。月額20万円(税別)〜の建設特化採用代行で、求人票の作成・媒体の運用・応募者対応・紹介会社のとりまとめまでを任せると、1名あたりの実費が下がります。建設特化の採用代行の価格帯は月額20万〜30万円が目安で、これとは別に媒体費がかかります。仕組みは採用代行(RPO)とは?にまとめています。
まとめ|賃上げは採用設計とセットで動かす
- 公共工事設計労務単価は令和8年3月適用で1日25,834円。14年連続の引き上げで、25,000円を超えたのは初めてです
- 国はCCUSレベル別年収として、技能者の年収の目安まで公表しています。レベル3で標準値472万円、目標値664万円以上です
- 2026年の賃上げ率は大手の建設6.76%(37,727円)に対し、中小の土木・建設4.41%(14,255円)、従業員100人未満3.76%(10,206円)。金額では大手が中小の土木・建設の2.6倍、従業員100人未満の3.7倍です
- 年商1億円未満の会社で「自分の給与・賞与が上がった」と答えた人は18%。10億円以上では50%でした
- 建設業の現金給与総額は月486,386円で前年度比+2.6%。残業時間は1.3%減ったのに、残業代は8.1%増えています
- 単価が下請まで届いていないという国自身の分析を受けて、2025年12月12日に改正建設業法が完全施行されました
- 中小が打てる手は4つ。年収の見せ方を国の目安で裏打ちする/手当と福利厚生で手取りを厚くする/採用コストを下げて原資に回す/改正法と自主宣言を交渉と求人票で使う
大手と同じ初任給は出せなくても、勝てる部分はあります。
国が示す年収の目安と自社の給与を突き合わせ、その結果を求人票に数字で載せます。手当と受験費用の負担まで金額で示します。この2つができている会社は、まだ多くありません。
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