建設業の賃金、14年連続で上がり続けています
建設業で働く人の賃金は、2026年も上昇が続いています。
国が公共工事の人件費の目安として毎年決めている金額(公共工事設計労務単価)は、2026年3月適用で日額25,834円。14年連続で上がり、今回はじめて2万5千円台に乗りました(国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』)。
民間でも、大手ゼネコン5社(大成建設・大林組・鹿島建設・清水建設・竹中工務店)は2025年度入社の大卒初任給を一斉に30万円に揃えました。
ただし、賃上げの波がすべての会社に届いているわけではありません。
年商1億円未満の中小建設会社で賃上げできた割合は18%。残りの8割は給与を据え置いたままです(クラフトバンク総研『中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査:2025年版』)。「大手と同じ給与は出せない、でも出さないと人が来ない」という声が、よく聞こえてきます。
この記事では、建設業の賃上げの今を分かりやすく整理し、大手と同じ給与を出せない中小でも採用で勝つ方法をまとめます。
人手不足全体の構造は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、求人倍率データは建設業の有効求人倍率で扱っています。
国が決める「人件費の目安」が14年連続で上がっている
公共工事設計労務単価は、国が公共工事の予算を組むときに使う、技能者1人1日あたりの人件費の目安です。
民間の工事でも参考にされるので、業界全体の賃金相場の物差しとして使われています。
人件費目安(全国・全職種の平均)の推移
| 適用年度 | 1日あたりの金額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 20,409円 | +1.2% |
| 2022年度 | 21,084円 | +2.5% |
| 2023年度 | 22,227円 | +5.2% |
| 2024年度 | 23,600円 | +6.2% |
| 2025年度 | 24,852円 | +6.0% |
| 2026年度 | 25,834円 | +4.5% |
ポイントは2つです。
- 5年で5,000円以上上がっている
- ここ3年は毎年4〜6%という、はっきり感じる上げ幅
職種別では、2025年度に大工が+6.3%、左官と軽作業員が+6.8%と、現場の中心職種で大きく上昇しました。
国と建設業の主要4団体は、技能者の給与を「年6%ほど上げる」という共同目標を掲げており、この流れは2026年度以降も続く見込みです(国土交通省『建設業における賃上げの取組』)。
大手ゼネコンは初任給30万円で横並び
民間で賃上げを引っ張っているのは、いわゆるスーパーゼネコンと呼ばれる大手5社です。
大手ゼネコンの大卒初任給(2025年度)
| 企業 | 大卒初任給 | 院卒初任給 |
|---|---|---|
| 大成建設 | 30万円 | 32万円 |
| 大林組 | 30万円 | 32万円 |
| 鹿島建設 | 30万円 | 32万円 |
| 清水建設 | 30万円 | 32万円 |
| 竹中工務店 | 30万円 | 32万円 |
| 西松建設 | 30万円 | — |
| 長谷工コーポレーション | 30万円超 | — |
各社IR・報道発表より作成
5社が同じ金額で初任給を出すのは、2025年度入社が初めてです。準大手・中堅ゼネコンも同じ水準を追いかけています。
毎年春の労使交渉(春闘)での建設業の賃上げ率は平均5.46%。製造業や情報通信を含む全産業の平均より高い水準です。「給与を上げないと人が採れない」という流れが、業界全体に広がっています。
中小は5社に1社しか賃上げできていない
一方で、中小建設会社の現場感は大きく違います。
クラフトバンク総研が社員5〜100名の建設会社1,659社に行った調査によると、年商1億円未満の会社で賃上げできた割合は18%。5社に1社しか給与を上げられていません(クラフトバンク総研『中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査:2025年版』)。
年商規模別 賃上げ実施率(2025年)
| 年商規模 | 賃上げ実施率 | 大手との給与差(モデル) |
|---|---|---|
| 年商1億円未満 | 18% | 年収で200万円以上の差 |
| 年商1〜5億円 | 28% | 年収で150万円前後の差 |
| 年商5〜10億円 | 35% | 年収で100万円前後の差 |
| 年商10億円以上 | 40%以上 | 大手と肉薄する水準 |
同じ調査では、人手不足で68%の会社が「仕事を断った経験がある」と回答しています。
賃上げできない → 人が採れない → 仕事を断る → 売上が減る → さらに賃上げできない。一度この流れに入ると、自力で抜け出すのは難しくなります。
改正建設業法で「適正な人件費を見積もりに入れていい」が制度化
賃上げの原資は、自社の利益を削るだけでは作れません。元請から受け取る金額自体を上げる必要があります。
そのための制度が、2025年12月に施行された建設業法の改正です(国土交通省『建設業法の改正について』)。
ポイントは3つに集約されます。
- 標準的な人件費の目安が国から示される: 下請が「うちの見積もりはこの目安に沿っています」と説明できる
- あまりに安い人件費の見積もりは禁止: 受注側が原価割れ寸前で受けることも、発注側が無理に値切ることも、両方ダメになった
- 違反した場合は処分対象: 受注者は国交大臣から、注文者は公正取引委員会から指導や処分を受ける
中小から見ると、「うちは適正な人件費を入れさせてください」と元請に説明する根拠ができた、ということです。
法律ができても自動で値段が上がるわけではないので、見積もりの作り方や交渉のやり方を変えていく必要があります。
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大手と同じ初任給30万円を出せなくても、採用で勝つ方法はあります。
戦略1|年収例を経験別で具体的に書く
求人票で求職者が一番気にするのは、給与情報の分かりやすさです。「月給25万円〜」と書いてあるだけだと、求職者は下限の25万円で計算してしまいます。
経験別の年収モデルを並べると、応募率が一段上がります。
- 未経験〜2年: 月給25万円(年収目安 約350万円)
- 経験3〜5年・2級資格保持: 月給28万円(年収目安 約400万円)
- 経験10年・1級資格保持: 月給40万円(年収目安 約580万円)
求人票の作り方は建設業の求人票の書き方に7つのコツとBefore/After例文を載せています。
戦略2|手当と福利厚生で「実質手取り」を厚くする
基本給で大手に並ぶのが厳しい場合は、手当を積み上げて差を埋めます。
- 1級施工管理技士の資格手当: 月3〜5万円
- 2級施工管理技士の資格手当: 月1〜2万円
- 受験費用全額負担+合格祝い金: 1級5万円・2級3万円が相場
- 家族手当・住宅手当・現場手当: 月1〜3万円ずつの積み上げ
- 賞与の直近実績: 「年2回・計4ヶ月分(昨年実績)」と数字で書く
求人票では、これらを「あり」とだけ書かずに、金額まで明記します。比較検討中の求職者には、判断材料が増えるほど刺さります。
戦略3|採用コストを下げて、その分を賃上げに回す
採用にかかる費用を見直すのも有効です。
- 人材紹介の手数料は、施工管理クラスで年収の45%が主流。年収800万円1名で約360万円
- 効きの悪い求人広告を整理すれば、媒体費を半分くらいに抑えられるケースが多い
- 採用代行(RPO)と紹介会社の使い分けで、採用1名あたりの実費を下げられる
採用費を100万円減らせれば、その分を社員の月給アップ(年間約8万円分)や手当の新設に回せます。「賃上げの原資はどこから出すのか」という問いに、採用コストの最適化で答える発想です。
媒体の組み合わせは建設業の採用媒体完全比較ガイド、紹介会社の使い分けは採用代行と人材紹介の違いで詳しく扱っています。
戦略4|改正建設業法を見積もり交渉で使う
2025年12月の建設業法改正で、適正な人件費を含めた見積もりを出す根拠ができました。元請に対して「人件費はこれくらい必要です」と説明しやすくなったので、価格交渉のときに必ず材料として使います。
「安く受注して人件費を削る」という流れから抜け出さないと、採用競争で勝つのは厳しいままです。
賃上げ+採用改善を両立した3社の実例
会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースでまとめます。
福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)
施工管理候補で月給を競合と並べても応募が動かないという状態でした。
求人票で月給単独表記をやめ、資格手当・現場手当・家族手当を金額付きで明記。さらに採用代行(月額20万円)で求人広告と紹介会社の運用を一括化したところ、応募数が約2.4倍、年間で13名の採用に到達しました。
採用コストを下げて生まれた予算は、入社時点の処遇改善に回しています。
新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)
媒体費と紹介料の合計が年間1,500万円を超えていました。
建設業法の改正を根拠に、元請2社と人件費の見直しを交渉。年間約400万円の賃上げ原資を確保しました。同時に求人媒体の組み替えで、採用単価を従来比30%減まで圧縮しています。
「売上を増やして賃上げ原資を作る」のではなく、価格交渉と採用コスト削減のセットで原資を作った例です。
長野県の工務店C社(従業員15名規模)
小規模で「賃上げの余力がない」と感じていた会社です。
月額10万円の建設特化採用代行を導入し、求人広告・Indeed運用・応募者一次対応を外注。半年で現場1名・事務1名の採用に成功しました。社内の採用工数が減ったぶん、その人件費を既存社員のベースアップに回しています。
採用代行が「給与を上げるためのコスト圧縮装置」として機能した例です。
事例の詳細は建設業の採用成功事例5選に5社分まとめてあります。
よくある質問
Q. 建設業の賃上げ目標は何%ですか?
国と建設業の主要団体が掲げている目標は「年6%」です。2025年春闘の建設業の平均は5.46%、公共工事の人件費目安は2025年度で6.0%上昇でした。中小はこの目標との差をどう埋めるかが課題です。
Q. なぜ建設業で賃上げが必要なのですか?
人手不足が深刻だからです。建設業の有効求人倍率は5.18倍、施工管理は5.76倍、躯体工は8.01倍(厚生労働省『一般職業紹介状況』2025年10月分)。給与で他社と差をつけないと、応募の入口で勝てません。
Q. 中小でも賃上げはできますか?
できます。基本給を一気に上げるのが難しければ、手当の新設や福利厚生の充実で「実質手取り」を上げる方法があります。元請への見積もり交渉と、採用コストの見直しで原資を作る2方向のアプローチが効きます。
Q. 国の人件費目安はどのくらい上がりましたか?
2026年3月適用分は1日あたり25,834円で、14年連続の上昇。1日2万5千円台に乗ったのは初めてです(国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』)。
Q. 賃上げと採用は同時に動かせますか?
動かせます。採用コストを下げて、浮いた予算を賃上げに回す設計が王道です。月額10万円〜の建設特化採用代行で求人運用や紹介会社管理を一括化すれば、採用1名あたりの実費が下がります。仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。
まとめ|賃上げは「採用設計」とセットで動かす
- 国の人件費目安は14年連続上昇。2026年3月適用は1日25,834円で、初めて2万5千円台に
- 大手ゼネコン5社は大卒初任給30万円で横並び。準大手・中堅も追随中
- 中小(年商1億円未満)の賃上げ実施率は18%。大手との差は年収200万円超
- 2025年12月施行の建設業法改正で、適正な人件費を見積もりに入れる根拠ができた
- 採用視点で打てる手は4つ: 年収例の具体化/手当と福利厚生の積み上げ/採用コスト削減で原資捻出/改正法を見積もり交渉で使う
- 中小は採用コストを下げて、その分を賃上げに回す設計が現実的
賃上げを単独の施策として見るのではなく、求人票の書き方・採用コスト・元請への交渉とセットで考えると、限られた予算でも動かせます。大手と同じ給与は出せなくても、「自社で働くと手取りがいくらになるか」が見える求人票なら、応募は増やせます。
次の一歩として、人手不足の構造解説は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、求人倍率データは建設業の有効求人倍率、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、採用代行の仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用感は採用代行の費用相場ガイドをあわせてご覧ください。
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