建設業向け助成金は採用後・育成後の費用補填、知らないと損する仕組み

建設業の採用・育成で使える助成金は、国が用意した「採用や育成にかかった費用を後から戻す」仕組みです。応募を呼ぶ機能はないものの、適切に申請すれば中小建設会社で年間100万〜300万円のキャッシュバックが見込めます。

令和8年度予算案では、建設事業主向けの助成金に71億円、働き方改革推進支援に101億円が計上されています(厚生労働省『建設業の人材確保・育成に向けた取組』)。雇用保険料を原資にした制度なので、保険料を払っている事業主が「使わない」のは単純にもったいない構造です。

ただし、助成金は知っている会社だけが受け取れる仕組みでもあります。要件・申請期限・事前計画書の提出など、細かい運用ルールがあり、知らずに進めると不支給になるケースが頻発しています。

この記事では、建設業の採用・育成で使える7つの助成金制度を、支給額・要件・申請の流れで整理します。助成金以外の人材確保の打ち手は建設業の人材確保|助成金以外で人を集める5つの実践方法で扱っています。

採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイド、求人費用の比較は建設業の求人費用もあわせて参考になります。


助成金は「採用後の補填」、応募の入口にはならない

助成金は採用や育成にかかった費用を後から戻す制度なので、求人を出して応募を呼ぶ機能はありません。応募が来ない会社が助成金だけ準備しても、採用人数は動きません。

助成金の使いどころは、次のような場面です。

  • 採用が決まった後、トライアル雇用や正社員化で支給額を取りに行く
  • 既存社員のCCUS(建設キャリアアップシステム)登録・レベル判定で支給を受ける
  • 技能講習や資格取得の研修費用の一部を戻してもらう

採用設計(求人票・媒体・紹介会社の運用・定着施策)が回っていることが前提で、その上でかかった費用の一部を戻す位置にあります。

助成金以外の人材確保の打ち手は建設業の人材確保|助成金以外で人を集める5つの実践方法、求人費用の比較は建設業の求人費用で扱っています。


建設業の採用・育成で使える7つの助成金

制度1|トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

35歳未満の若手または女性を試行的に雇用するときに支給される制度です。

トライアル雇用助成金(建設業上乗せあり)

項目内容
支給額1名あたり月最大8万円×3か月=最大24万円
内訳一般トライアル月4万円+建設業上乗せ月4万円
対象35歳未満の若年者または女性
要件中小建設事業主(資本金3億円以下、または従業員300人以下)
申請先ハローワーク

厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』より作成

ポイントは、建設業に上乗せ枠があることです。一般トライアルだけだと月4万円ですが、建設業の中小事業主なら同額の上乗せがあって月8万円になります。

制度2|キャリアアップ助成金(正社員化コース)

有期雇用の社員(契約社員・パートなど)を正社員に転換したときに支給されます。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

区分中小企業大企業
通常1名40万円1名30万円
重点支援対象者(3年以上の有期雇用など)1名80万円1名60万円

厚生労働省『キャリアアップ助成金』より作成

3年以上有期雇用で働いていた現場作業員を正社員化するケースは、建設業ではよくあります。重点支援対象者の枠で1名80万円なので、年2〜3名の正社員化なら200万円前後の助成が動きます。

制度3|人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース)

2025年度(令和7年度)に新設された制度です。CCUS(建設キャリアアップシステム)を活用して技能者の処遇を改善した会社に支給されます。

  • 支給額: レベル判定で昇格評定を受け、賃金を5%以上アップした技能者1名あたり16万円
  • 上限: 1事業主あたり年間160万円(10名分)
  • 要件: 雇用する技能者全員のCCUS登録が完了していること

CCUSは技能者の経験・資格・社会保険加入状況などを業界横断で記録するシステムで、登録者数は2024年8月末時点で150万人を超えました(国土交通省『建設キャリアアップシステム』)。普及フェーズが終わり、活用フェーズに入った段階の助成金です。

技能者登録料(上限4,900円/人)やレベル判定手数料(4,000円/人)も別の補助制度で全額カバーできるケースがあります。

制度4|人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)

建設現場の職場環境を整備したときに支給されます。トイレ・更衣室・休憩室の整備、女性が働きやすくする施策などが対象です。

  • 雇用管理改善促進事業: 技能者1名あたり16万円(年間上限160万円)
  • 団体向け事業: 経費の2/3(上限3,000万円)

若手・女性の採用と定着を進めたい会社で使いやすい制度です。

制度5|人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)

技能講習や資格取得の研修費用を戻してくれる制度です。建設業で必須の足場組立て主任者、玉掛け、フォークリフト運転などの講習が対象になります。

技能実習コース 助成内容

項目20人以下の事業主21人以上の事業主
経費助成費用の3/4(上限10万円/人)35歳未満7/10、35歳以上9/20
賃金助成(CCUS未登録)日額8,550円日額7,600円
賃金助成(CCUS登録者)日額9,405円日額8,360円
年間上限500万円500万円

厚生労働省『人材開発支援助成金』より作成

20人以下の中小事業主は研修費用の3/4が戻ってきます。資格取得を社員研修としてやっている会社なら、ほぼ毎年使える制度です。

制度6|人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース)

職業訓練法人が行う認定職業訓練を受けさせたときに支給されます。

  • 経費助成: 訓練経費の1/6
  • 賃金助成: 日額3,800円(技能実習コースの賃金助成に上乗せ)

技能実習コースとセットで使われることが多い制度です。

制度7|働き方改革推進支援助成金

労働時間の短縮や有給休暇取得の推進、勤怠管理システム導入などに取り組んだ会社を支援します。令和8年度予算案で101億円計上。

2024年4月の残業上限規制(月45時間・年360時間)への対応費用が一部戻る形で、勤怠管理クラウド導入・就業規則の変更・労務管理ツール購入などに使えます。詳しい背景は建設業の2024年問題にまとめています。


従業員20人モデルの年間受給シミュレーション

すべての制度を組み合わせるとどれくらいの金額になるのか、従業員20人の中小建設会社をモデルに試算します。

助成金の年間受給シミュレーション

制度活用内容年間受給額
トライアル雇用未経験若手2名を試行雇用48万円(24万円×2名)
キャリアアップ(正社員化)有期雇用1名を正社員化(重点支援)80万円
CCUS活用促進技能者5名がレベル昇格+賃金5%以上アップ80万円(16万円×5名)
技能実習3名に資格取得講習を実施約75万円(経費+賃金助成)
働き方改革推進勤怠管理システム導入約60万円

各制度の上限額と一般的な活用パターンをもとに試算

合計で年間約343万円。すべての制度を完璧に使い切る会社は限られますが、3〜4制度を組み合わせれば年間100万〜200万円の受給は十分狙えます。

採用にかかる実費(媒体費・紹介手数料)を直接ゼロにできるわけではありませんが、採用1名あたりの実質的な負担を大きく下げる効果があります。

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申請前に押さえる3つの準備

助成金は「採用してから申請」ではなく、多くの場合「計画→実施→申請」の順序で動きます。手順を間違えると不支給になります。

準備1|雇用管理責任者を選任する

建設業特有の要件です。事業所ごとに雇用管理責任者を選任し、所定の書類を整備する必要があります。社長や総務部長が兼任するケースが多いです。

準備2|雇用保険の適用事業所であること

助成金の原資は雇用保険料なので、雇用保険に加入していない事業主は申請できません。1人でも雇っている会社なら原則加入対象なので、未加入なら先に手続きを済ませます。

準備3|計画書の事前提出

多くの助成金は「事業を始める前」に計画書を提出する仕組みです。トライアル雇用なら雇用前、技能実習なら研修開始前。先に実施してから申請しても受け付けてもらえません。


不支給になる典型的な3つのケース

ケース1|申請期限を過ぎた

支給申請には原則2か月以内などの期限があります。「3か月のトライアル雇用が終わってから3か月後に申請」のような遅れは、即不支給になります。

ケース2|計画書を出さずに実施した

「先に正社員化してから申請」「研修を済ませてから申請」はできません。計画書の事前提出は、ほぼすべての制度で必須です。

ケース3|賃金台帳・出勤簿の不備

支給審査では、賃金台帳・出勤簿・タイムカード・雇用契約書などの書類が要求されます。書類不備は不支給の最大原因です。普段から労務管理書類を整備していない会社は、申請の前に一度社労士のチェックを受けると安全です。


助成金と採用代行を組み合わせた活用例

採用代行(RPO)は応募の入口を太くする運用、助成金は採用後の費用補填。役割が違うので、組み合わせて使うと効率が上がります。

採用代行+助成金の組み合わせパターン

シーン採用代行の役割助成金の使い方
未経験若手の採用求人票の刷新・Indeed運用・応募者対応トライアル雇用助成金で最大24万円
有期雇用社員の正社員化処遇改善・契約見直しのアドバイスキャリアアップ助成金で最大80万円
技能者の処遇改善CCUS登録の運用設計CCUS活用促進コースで最大160万円/年
資格取得の社員研修スキルマップに基づく育成設計技能実習コースで経費3/4+賃金助成

採用支援の実務ベースで作成

採用代行を上位レイヤーに置きつつ、助成金は採用後・育成後の費用回収として使う。採用1名あたりの実質コストが大きく下がります。

仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用感は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。


よくある質問

Q. 助成金は誰でも申請できますか?

雇用保険の適用事業所であることが基本要件です。建設業の場合、事業所ごとの雇用管理責任者の選任など追加要件もあるので、申請前にハローワークか社労士に確認するのが安全です。

Q. 申請は自社でできますか?

自社で申請する会社もありますが、書類整備と要件確認の工数を考えると、社労士に依頼する会社が多いです。着手金なしの成功報酬型で対応する社労士事務所もあるので、活用想定額の10〜20%が手数料の目安です。

Q. CCUSの登録は必須ですか?

CCUS活用促進コースの助成金を取りに行く場合、雇用する技能者全員の登録完了が要件です。CCUS自体は登録メリット(建退共連動・経審加点・技能者の評価可視化)もあるので、助成金以前に取り組んでおく価値があります。

Q. 助成金で採用人数は増えますか?

助成金単体では応募は呼べません。応募の入口は求人票・媒体・紹介会社の運用で太くする必要があります。助成金は採用後・育成後にかかった費用の一部を取り戻す制度です。応募の入口の作り方は建設業の人材確保|助成金以外で人を集める5つの実践方法、求人票の作り方は建設業の求人票の書き方で扱っています。

Q. 制度は毎年変わりますか?

毎年度、要件・支給額・新設・廃止が動きます。CCUS等普及促進コースは2024年度で廃止、2025年度に活用促進コースが新設されました。最新版は厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』で確認できます。


まとめ|助成金は「採用後の費用補填」として活用する

  • 建設業の採用・育成で使える主な助成金は7制度。令和8年度予算案では建設事業主向け71億円+働き方改革推進101億円
  • トライアル雇用は建設業上乗せで月8万円、3か月で最大24万円
  • 正社員化(重点支援対象者)は1名最大80万円
  • CCUS活用促進コースは技能者1名16万円、年間上限160万円
  • 技能実習・働き方改革推進など、育成と環境整備にも使える制度がある
  • 申請は計画書の事前提出が必須。賃金台帳・出勤簿の整備で不支給を防ぐ

助成金は応募の入口を太くする機能はないので、求人票・媒体・採用代行など採用設計の側と組み合わせるのが基本です。「使えるなら使う」の前提で、社労士に相談しながら年間計画に組み込むのが、中小建設会社にとって取りこぼしの少ない使い方です。

次の一歩として、助成金以外の人材確保は建設業の人材確保|助成金以外で人を集める5つの実践方法、求人費用の比較は建設業の求人費用、採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、採用代行の仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドをあわせてご覧ください。

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