「採用代行はフリーランス(個人)に頼めますか?」に答えます
結論から言うと、頼めます。ただし任せる業務の線引きによって、発注する建設会社の側に法律上の手続きや義務が生じます。
求人票づくり、応募者への返信、面接の日程調整。この種の実務なら、個人の方に頼んでも十分に回ります。
一方で、候補者を集める募集そのものや、スカウトの送信まで含めると、許可の話が出てきます。申請するのは受けた側ではなく、募集する会社の側です。
2024年11月からは、個人に仕事を頼む側にも書面と支払期日の義務がかかりました。この2つを知らずに契約すると、頼んだ側が指導を受けることになります。
採用の現場が切迫しているのは数字にも出ています。令和8年8月の有効求人倍率は、職業計が1.06倍。建設・採掘従事者は5.10倍、建築・土木・測量技術者は5.71倍、建設躯体工事従事者は8.25倍です。
職種別の有効求人倍率(令和8年8月・常用(パート含む)・実数)
いずれも常用(パート含む)の実数ベースの数字です(厚生労働省『一般職業紹介状況』令和8年8月分)。ニュースで見る全体1.18倍は季節のばらつきをならした別の数字なので、職種別の数字と並べて比べないでください。
正社員が足りないと答えた企業は全体で51.3%。建設業は66.0%で、業種別の2位でした(有効回答1万518社。帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査』2026年7月、2026年8月17日発表)。
働き手の減り方も、30年という長さで見ると急です。建設業の就業者は平成9年(1997年)の685万人から、令和5年(2023年)には483万人まで減りました。うち技能者は455万人から304万人へ。55歳以上が36.6%を占め、29歳以下は11.6%です(国土交通省『改正建設業法について』)。
採用の手を借りたくなるのは当然の流れです。だからこそ、頼み方のところで足をすくわれないようにしたいところです。
フリーランスの採用代行と、会社の採用代行で何が変わるか
採用代行を個人に頼む場合と会社に頼む場合
| 比較する点 | フリーランス(個人) | 採用代行の会社 |
|---|---|---|
| 任せられる業務の範囲 | 求人票づくり・応募者対応・日程調整・スカウト送信など、絞った業務が中心 | 募集の設計から応募者対応、紹介会社とのやり取りまで一通り |
| 費用 | 業務を絞るぶん安く収まりやすい | 範囲が広いぶん月額は上がる |
| 稼働が止まったときの代わり | 体調や他案件の事情で止まると、代わりの手がない | 担当を差し替えて続けられる体制がある |
| 発注側に生じる手続き | フリーランス法の義務がかかる。募集まで任せると委託募集の許可の話になる | 従業員のいる会社ならフリーランス法の対象外。許可を持つ会社なら委託募集の許可は基本的に不要 |
| 建設業の職種の分かり方 | 前職の経験に左右される。施工管理と技能者の違いが伝わらないこともある | 建設特化の会社なら資格要件や職種の違いを前提に動ける |
個人に頼むほうが向く場面もあります。
ひとつは、任せたい業務がすでに決まっているときです。「ビズリーチのスカウトだけ回してほしい」「求人票を書き直してほしい」のように範囲が絞れていれば、個人のほうが身軽に動けます。
もうひとつは、立ち上がりを急いでいるときです。会社との契約は与信確認や稟議で数週間かかることがありますが、個人なら翌週から手が入ることもあります。
逆に、採用を年間を通して回していく前提なら、止まったときの代わりがあるかどうかで差が出ます。繁忙期の3か月だけ担当者が動けなくなると、そこで積み上げが途切れます。

なお、日本のフリーランスは2020年時点で462万人と試算されています(内閣官房。公正取引委員会ほか『フリーランス・事業者間取引適正化等法 説明資料』)。採用支援を手がける個人も見かけるようになり、選択肢としては現実的なものになりました。
費用はどう見ておくか
採用代行の月額費用は「10万円〜20万円未満」が最多で18.8%。初期費用は「5万円〜10万円未満」が最多で17.7%でした(342人調査、2025年11月〜12月。BOXIL『採用代行の費用相場』342人調査)。
個人に頼む場合の単価について、官公庁がまとめた統計はありません。採用代行各社が公開している目安では、時間単価2,000〜4,000円、業務を絞った委託でひと月あたり10万円程度からという水準が示されています。公的な統計ではない点に注意してください。
当社のような建設特化の採用代行は、月額20万円(税別)〜に媒体費を加えた形になります。採用代行を入れても求人媒体の掲載費やスカウト媒体の費用はなくならないので、「月額20万円〜+媒体費」で見てください。月額だけを並べて比べると、見立てがずれます。
人材紹介の手数料も合わせて見る
採用にかかるお金のうち、額が大きいのは人材紹介の手数料です。
全業界の平均は年収の30〜35%。建設業の施工管理では主流45%です。1級の資格を持つ所長クラスや、急ぎで探す希少な人材では60〜70%まで上振れることもあります。
ここは減らす方向で考えないでください。人材紹介は、建設業の有資格者を確実に採れる主力の手法です。年収800万円の施工管理を1名採れば手数料は約360万円ですが、その1名が3年現場を回すなら、投資として説明がつきます。
変わるのは使い方のほうです。1社に丸投げして要件が伝わらないまま半年過ぎるのか、数社に優先度をつけて、合否の理由まで返しながら回すのか。同じ手数料率でも効き方が変わります。
料金体系ごとの相場は採用代行の費用相場ガイドに、規模別の使い方は中小企業の採用代行ガイドにまとめています。
2024年11月から、個人に頼む側の建設会社に義務が生じています
2024年11月1日、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。従業員を雇っていない個人や、社長1人だけの会社に仕事を頼むときは、頼んだ側に義務がかかります。
つまずきやすいものから5つです。
1. 取引条件をその場で書面か電磁的方法で示す仕事の内容、報酬の額、支払期日などを、委託したときに直ちに示す必要があります(第3条)。メールやチャットでも構いませんが、口頭だけでは足りません。
2. 報酬は受領日から起算して60日以内に払う成果物を受け取った日から60日以内の、できる限り短い期間内に払う決まりです(第4条)。建設業でよくある「月末締め翌々月末払い」の慣行だと、ここを超えることがあります。
たとえば4月5日に業務を受け取り、翌々月末の6月30日に払うと、受領から87日目になります。60日を大きく超えています。
3. 1か月以上の委託では、受領拒否や報酬の減額、買いたたきが禁止される政令では、禁止行為の規定がかかるのは1か月以上の業務委託と定められています。「思っていた出来ではないから半額で」という後出しの値引きは通りません。
4. 6か月以上の委託では、配慮と30日前の予告がいる育児や介護への配慮が求められるのは、6か月以上の業務委託です。更新を重ねて6か月以上になるものも含まれます。
中途解除と、契約を更新しない場合も同じ対象です。やめる30日前までに予告し、求められたら理由を開示します(公正取引委員会・厚生労働省『ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法』)。
5. ハラスメントの相談体制を整える社内の相談窓口を、委託先の個人からの相談も受けられる形にしておく、という趣旨です。
違反すると、行政から勧告や命令が出ます。命令に従わない場合と検査を拒んだ場合には、50万円以下の罰金があります。違反した個人だけでなく、会社にも同じ罰金がかかります(公正取引委員会ほか『フリーランス・事業者間取引適正化等法 説明資料』)。
取引条件を示していない割合が最も高い業種は建設業でした
法律の施行前に行われた調査では、取引条件を示していない割合が最も高い業種は建設業でした。委託者側で41.7%、フリーランス側で72.7%。どちらも1位です。全体では委託者17.4%、フリーランス44.6%でした。
この法律の内容を知らないと答えた委託者は、全体で54.5%。建設業の委託者では80.2%にのぼり、業種別で最も高い割合でした(公正取引委員会・厚生労働省『フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果』令和6年10月)。
責めたい話ではありません。建設業では、電話と口頭で仕事を回す慣行が長く続いてきました。それが2024年11月から、そのままでは通らなくなったということです。発注書を1枚作り、支払期日を60日の内側に引き直すだけで、ほとんどの問題は起きなくなります。
契約の作り方や許認可のまわりは、採用代行は業務委託?違法リスク・許認可・契約書の押さえどころに詳しく書いています。
募集やスカウトまで任せると、許可の話になります
よく見かける「フリーランスに頼むと違法」という言い方は、正しくありません。違法になるのは個人という立場ではなく、行為のほうです。
問題になるのは次の3つです。
- 許可のない委託募集
- 許可のない職業紹介やスカウト
- 建設業務についての有料の職業紹介
委託募集は、申請するのが自社の側になります
職業安定法第36条は、報酬を与えて自社の社員以外の人に募集をさせる場合に、厚生労働大臣(規模によっては都道府県労働局長)の許可を求めています。これを委託募集といいます。自社の求人の募集を、外の人に報酬を払ってやってもらう形です。
注意したいのは、許可を申請するのが募集する会社自身だという点です。つまり手続きが自社に返ってきます。許可を得ずに行った者には、1年以下の拘禁刑(2025年6月に懲役から名前が変わった刑です)または100万円以下の罰金があります(職業安定法第64条第7号。e-Gov『職業安定法』)。
一方、許可を持つ職業紹介事業者に委託する場合は、その事業者に求人を申し込んだものと解され、委託募集の許可は基本的に不要になります。これは厚生労働省が示している扱いで、人材のスカウト行為に広く職業紹介にあたる性質を認めた最高裁平成6年4月22日判決が土台になっています(厚生労働省『労働者募集』)。
「許可のある会社に出すと手続きが軽くなる」と言われるのは、ここが理由です。個人に募集まで頼むときは、その人が許可を持っているかどうかで話が変わります。

建設業は、職種で紹介の可否が分かれます
有料職業紹介、つまり手数料をとって求職者と会社を引き合わせる仕事には、建設業だけの制限があります。
職業安定法第32条の11は、建設業務に就く職業の紹介を禁じています。建設業務とは、建設工事の現場で直接作業に従事する業務を指します。とび、鉄筋、型枠、左官などがここに入ります。
一方で、工程管理・品質管理・安全管理を行う施工管理の業務と、建設現場の事務職員の業務は建設業務に当たりません。こちらは紹介できます(厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』)。
ここが実務で引っかかります。現場の技能者と施工管理をまとめて外に出すと、技能者のほうが、紹介できない側に入ってしまうことがあるからです。頼む時点で職種を分けておいてください。
許可は法人でも個人でも取れますが、財産の要件があります
有料職業紹介の許可基準は、法人か個人かを問いません。個人でも取れます。
ただし財産的基礎の要件があります。資産から負債を引いた額(のれんなどは除きます)が500万円以上。加えて、自己名義の現金・預金が150万円以上です(厚生労働省『職業紹介事業の許可基準』)。
個人にとって軽い金額ではないので、許可を持っている方は多くありません。とはいえ「個人は取れない」わけでもありません。ですから推測で判断せず、許可番号を聞いて確かめるのが確実です。番号は厚生労働省の人材サービス総合サイトで照合できます。
どこまでを外に出し、どこを自社に残すか
採用の手法や媒体は移り変わりが速く、社内の人だけで追いかけるのは負担が大きくなります。だから建設特化の採用代行と組むのを基本線に置いて、そのうえで社内にどれだけ人を割くかを考える順番にしてください。専任の人事を置くかどうかは、その次の判断です。
役割の切り分けは3つで足ります。
求める人物像と採用要件の詰めは、社内と採用代行で一緒にやります。現場を知らないと要件が書けないので、ここは外に丸投げできません。
面接、最終判断、内定承諾の最後のひと押しは社内です。社長や現場のリーダーが顔を出して食事をする、という場面は代わりが立ちません。
求人票、媒体の運用、スカウト、応募者対応、日程調整は採用代行に出します。手間がかかるうえに、やり方の更新が早い部分です。
紹介会社のとりまとめは会社型のほうが回しやすい
複数の紹介会社に優先度をつける、要件を伝え直す、返信を早く返す、合否の理由を返す。この4つを毎週続けるのが、紹介を効かせるための地味な作業です。
5社も6社も並べて動かすと、連絡量がそれなりになります。担当が1人の個人では手が足りなくなりやすいので、ここは会社型のほうが回しやすい部分です。
業務委託の線を越えない
もうひとつ気をつけたいのは、業務委託なのに社員と同じように指示を出してしまうことです。出退勤を管理する、毎日のタスクを細かく指示する、といった運用が続くと、実態は雇用だと見られ、偽装請負を疑われます。進捗の報告を受ける、成果物を確認する、までにとどめてください。
頼む前に確かめる5つのこと
確認の抜けが起きやすいのは、任せる業務の線引きと支払期日の2つです。どちらも契約を結んだあとでは直しにくいので、声をかける段階で押さえておきます。

- 任せる業務の線はどこか。求人票や応募者対応といった実務までか、募集やスカウトまで含むのか
- 有料職業紹介の許可番号を持っているか。番号を聞いて、人材サービス総合サイトで照合する
- 発注書を出せるか。支払期日は受領日から60日以内に収まっているか
- 契約が6か月以上になるか。更新を重ねて6か月に達する場合も、30日前予告の対象になる
- 稼働が止まったときの代わりがあるか。代わりがないなら、止まったときの進め方を先に決めておく
採用人数を書面で約束する業者には気をつけてください
採用代行は業務委託契約です。採用人数や応募数を書面で約束することはできません。
書面にできるのは業務の量です。スカウトの送信通数、求人票の改訂本数、月次レポートの提出日、応募者への返信までの時間。このあたりは数字で決めておけます。
「半年で3名採用を保証します」と書面に入れてくる業者は、業務委託の枠を超えています。そもそも成果を約束する行為は、許可のない職業紹介に近づきます。あとで揉めやすいので、採用人数は四半期の振り返りで話す材料にとどめるのが無難です。
よくある質問
個人に頼むのは違法ですか?
違法ではありません。違法になるのは、許可のない委託募集、許可のない職業紹介、そして建設業務についての有料の職業紹介という行為です。求人票づくりや応募者対応といった実務の委託は問題ありません。
いくらくらいかかりますか?
採用代行全体では月額「10万円〜20万円未満」が最多で18.8%、初期費用は「5万円〜10万円未満」が最多で17.7%でした(BOXIL『採用代行の費用相場』342人調査)。個人への委託は、事業者が公開している目安で時間単価2,000〜4,000円、業務を絞ってひと月あたり10万円程度からという水準です。当社は月額20万円(税別)〜に媒体費が加わります。
発注書は本当に必要ですか?
はい。従業員を雇っていない個人に頼む場合、仕事の内容・報酬・支払期日を書面か電磁的方法で直ちに示す義務があります。メールで条件を送って控えを残す形でも足ります。
現場の職人の採用も任せられますか?
求人票づくりや応募者対応の代行はできます。ただし手数料をとって現場で直接作業する職種を紹介する行為は、職業安定法第32条の11で禁じられています。技能者と施工管理は分けて頼んでください。
まとめ|頼めるかどうかではなく、何を任せるかで決まります
要点は5つです。
- 採用代行はフリーランスに頼めます。立場ではなく、任せる業務の線引きで話が変わります
- 2024年11月から、個人に頼む側に書面と60日以内の支払いの義務がかかっています。6か月以上の委託では30日前予告も必要です
- 施行前の調査では、取引条件を示していない割合が最も高い業種が建設業でした。発注書1枚と支払期日の見直しで大半は収まります
- 募集やスカウトまで任せると委託募集の許可の話になり、申請するのは自社です。許可を持つ会社に出せば、その手続きは基本的に不要になります
- 建設業は職種で紹介の可否が分かれます。現場の技能者と施工管理は分けて頼んでください
採用の手を借りるという判断は、建設躯体工事従事者の求人倍率が8.25倍という数字を見れば、避けようのないものです。
そのうえで、誰にどこまでを任せ、自社に何を残すか。ここを決めてから声をかけると、頼んだあとの揉めごとがほとんど消えます。