人事評価制度がある会社は、20人以下だと3社に1社です

従業員5〜20人の会社で人事評価制度があるのは35.0%です。

従業員101人以上の会社では87.2%あります。2021年11月から12月に帝国データバンクが実施した調査で、4,341社が答えています。2022年版の中小企業白書に載っている数字です(中小企業庁『2022年版中小企業白書』第2-2-36図)。

会社が小さいほど、給与は社長の頭の中にある基準で決まっています。

それで何十年もやってきた会社が多いと思います。社長が全員の働きぶりを見ているのですから、紙に書く理由がありません。

ただ、2025年12月に建設業法の改正が全面施行されました。

建設業者は、その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない。

第25条の27第2項です(建設業法(e-Gov法令検索))。

これは努力義務です。守らなかった会社に罰則がつくわけではありません。ただし第40条の4で、国土交通大臣がこの措置の実施状況を調べて公表することになっています(国土交通省『最近の建設産業行政について』令和7年9月)。

結論から言うと、評価制度をつくる作業は、社長の頭の中にある基準を紙に出す作業です。

等級の段と賃金の目安には、国が公表したものをそのまま使えます。白紙から設計する話ではありません。


「従業員が少ないから要らない」が82.2%

人事評価制度がある会社の割合(従業員規模別・2021年調査)

出典: 中小企業庁『2022年版中小企業白書』第2-2-36図より作成

制度を設けていない理由も、同じ白書に出ています。

従業員5〜20人の会社では82.2%が「従業員が少なく、経営者が全従業員の状況を把握しているため」を挙げました。複数回答です。

「制度設計の方法が分からないため」は7.6%でした。「人事評価をしても給与に反映できないため」は10.6%です(同白書 第2-2-40図)。

作り方が分からないから作っていないのではありません。要らないと判断した会社が大多数です。

その判断の結果も、同じ調査に出ています。

2015年と2020年の売上高を比べた増加率です。回答した会社をまん中で区切ったときの数字(中央値)で見ます。従業員5〜20人では、制度がある会社が6.6%、ない会社が2.6%です。101人以上では、ある会社が10.4%、ない会社が0.6%です(同白書 第2-2-38図)。

もっと差が出たのは、作ったあとの扱いでした。

定期的に見直している会社の売上高増加率は12.8%、10年以内に見直した会社は6.4%、10年以上見直していない会社は0.2%です(同白書 第2-2-39図)。

作って放置した会社の数字が、いちばん低く出ています。

この調査から原因と結果までは読み取れません。制度があるから伸びたのか、余力のある会社が作ったのか、どちらもありえます。ただ、10年前の評価表を引き出しに入れたままなら、いま何を評価しているのか誰も答えられません。

建設中の建物に組まれた単管足場と、赤レンガを積んだ柱
写真: d c / Unsplash

辞めているのは高卒・技能職の側です

令和4年3月に卒業した人の3年以内の離職率です。高卒は建設業が41.4%、調査産業の合計が37.9%でした。建設業のほうが3.5ポイント高いです。

大卒は建設業が30.5%、調査産業の合計が33.8%です。こちらは建設業のほうが3.3ポイント低くなっています(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)』令和7年10月24日公表)。

高卒の41.4%は、前の年の卒業者の43.2%から下がりました。改善はしています。

それでも、大卒と高卒で向きが逆に出ています。「若手が辞める」と社内で話すときの中身は、高卒で入った層の側にあります。

賃金と時間の差も出ています。

現場で作業する人(統計では生産労働者と呼びます)の年間賃金は、建設業が432万円、全産業が508万円でした。建設業が15.0%低い水準です。年間の労働時間は建設業2,018時間、全産業1,956時間で、62時間長くなっています(国土交通省『最近の建設産業行政について』令和7年9月)。

この432万円は全国の平均です。職種と地域による差が大きく、都市部の施工管理職や有資格者の実額はこれより上になります。自社の給与台帳の数字と見比べてください。

就業者は令和6年平均で477万人です。ピークだった平成9年から約30%減りました。55歳以上が36.7%、29歳以下は11.7%です。60歳以上の技能者は全体の約4分の1にあたる25.8%で、10年後にはその大半が引退する見込みです(同資料)。

お金を出す元手そのものは増えています。

令和8年3月から適用される公共工事設計労務単価は、全国の全職種の平均で前年度より4.5%上がりました。国が公共工事の人件費を計算するときに使う基準額です。職種ごとの人数で重みを付けて平均した額は25,834円で、初めて25,000円を超えました。14年連続の引き上げです(国土交通省『令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について』令和8年2月17日)。

単価は上がっています。それを社内の賃金表に落とし込めているかは別の話です。業界全体の賃上げの動きは建設業の賃上げ動向でまとめています。

いまの金額だけを全産業と比べられると、建設業は不利です。

勝てるのは、これから何年でいくらまで上がるのかを見せる側です。18歳で入った人に、5年後と10年後の姿を数字で見せられるかどうかです。


等級はゼロから作らなくていい — 建設キャリアアップシステムのレベルを背骨に使う

建設キャリアアップシステムを使います。技能者の資格や就業日数を業界共通で記録する仕組みで、略してCCUSと呼ばれます。

2026年7月31日時点で技能者1,893,445人が登録しています。事業者は315,210で、一人親方を除くと205,479です(建設業振興基金『建設キャリアアップシステムの運営状況について』2026年8月18日)。

このシステムには能力評価の仕組みが付いています。レベルは4段です。

レベル1が初級技能者、つまり見習いです。レベル2が中堅技能者で、一人前になった段です。レベル3は職長として現場に従事できる技能者、レベル4は現場をまとめる力を持つ技能者で、登録基幹技能者などが入ります。

判定は国土交通大臣が認定した50分野の能力評価基準にもとづきます。見るのは3つです。就業日数で測る経験、保有資格で測る知識や技能、そして登録基幹技能者講習の受講や職長の経験で測る現場をまとめる力です(国土交通省『能力評価制度の概要』)。

判定の累計は令和8年6月30日現在で172,927件です。レベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件になります(国土交通省『能力評価制度について』)。

CCUSレベル別年収(令和8年4月改定・全国・全分野)

レベル相当する経験標準値目標値
レベル1(見習い)5年未満395万円535万円以上
レベル2(一人前)5年以上10年未満444万円599万円以上
レベル3(職長)10年以上または一級技能士472万円664万円以上
レベル4(登録基幹技能者)登録基幹技能者572万円754万円以上

国土交通省『CCUSレベル別年収の概要(令和8年4月改定)』より作成

国は目標値以上の支払いを推奨しています。

そして標準値を下回る支払いをしている事業者については、請負契約で工事の人件費が安く買い叩かれていないか、重点的に確認するとしています。

一方でこの資料には、示した金額に法的拘束力はなく、支払いを義務づけるものではないとも書かれています。払っていない会社が違法になるわけではありません。

それでも、自社の等級と賃金表を作るときの下敷きになります。5年未満でいくら、一人前でいくら、職長でいくら、という段が国の資料に入っています。この段に自社の実額を並べるだけで比較ができます。

処遇に使っている会社の例も公表されています。

北海道の谷脇組は、自社の技能者にCCUSのレベルに応じたキャリアアップ手当を月額で支給しています。長野のフクザワコーポレーションは、自社の技能者の昇格基準にCCUSのレベルを設定しました。

東京の松井建設は、就業履歴を一定の回数以上ためた技能者に、レベルに応じた報奨金を四半期ごとに支給しています。同じ東京の西松建設は、協力会社の技能者を対象に、レベルを考慮した優良技能者制度を設けました(国土交通省『CCUSの能力評価等を活用した処遇改善の取組例』)。

レベルを上げるには資格と経験が要ります。何を取らせて、どの現場を踏ませるかの組み立ては建設業の人材育成ガイドに載せています。

製図台に広げた図面の上に置かれたコンパスと三角定規、スケール定規
写真: Lucas Kepner / Unsplash

施工管理・技能者・事務で評価軸を分ける

技能者の等級は、CCUSのレベルをそのまま使えます。困るのは施工管理と事務です。

CCUSは技能者の仕組みなので、この2つは表に乗りません。別の軸を用意することになります。

施工管理で中心になるのは実行予算です。工事ごとに社内で決める原価の見積りのことです。この予算と実際の原価の差は、すでに毎月の会議で見ている数字だと思います。評価表に移すだけで済みます。

職種別の評価軸と、数字の取り方

職種評価する項目どこから数字を取るか
施工管理実行予算に対する原価の収まり、工期の守り、手直しや是正の発生、発注者からの評価月次の原価表、工程表、是正の記録、完成検査の結果
技能者CCUSのレベル、保有資格、段取りの早さ、後輩の指導CCUSのレベル判定、資格証、職長の日報、指導の割当記録
事務・積算書類の期日、原価の入力の正確さ、請求と入金の管理、電話と来客の応対提出台帳、入力の差戻し件数、月次の締め日
全職種に共通安全、法令の守り、引き継ぎ事故とヒヤリハットの報告、教育の受講記録

技能者の等級区分は国土交通省『能力評価制度の概要』のレベル1〜4に合わせています。評価項目は自社の工事内容に合わせて入れ替えます

項目は多くしないほうが回ります。1職種あたり4つか5つで足ります。

そのうえで、安全を全職種に入れておいてください。

原価と工期だけを並べると、安全を削って数字を出した人がいちばん高く評価されます。急がせた現場でも、事故が起きなければ原価と工期の数字はきれいに出ます。

無事故で終わった現場は、何も起きていないので記録に残りません。だから項目として先に置きます。無事故日数、教育の受講、危険予知(KY)活動の記録。すでに安全書類で作っているものを転記すれば、現場の手間は増えません。

もうひとつあります。施工管理と技能者を同じ表で評価すると、数字で出やすい施工管理の評価が高く出ます。腕で支えている職人の側に不満が残ります。

表は分けて、等級の段だけを揃えてください。施工管理の中堅の段と技能者のレベル3が同じ給与の幅に入る形にしておけば、社内で説明ができます。


評価制度と採用、どちらから手をつけるか相談できます

月額20万円〜の建設特化採用代行。従業員10〜300名の建設会社を中心に、いまの人員構成と募集職種を見ながら、先に整える順番を一緒に考えます。

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運用に乗せる段取り

紙を作るところまでは、5つの手順で進みます。

ひとつめは、社長の頭の中にある基準を書き出すことです。

いま給与がいちばん高い人、真ん中の人、いちばん低い人の3人を並べて、その差が何から来ているのかを口に出し、紙に写します。出てきた言葉が、そのまま評価項目になります。

ふたつめは、等級の段を決めることです。技能者はCCUSのレベルに合わせ、施工管理は資格と任せられる現場の規模で3段から5段に分けます。

みっつめは、賃金表に国の年収目安を当てることです。標準値を各段の入口、目標値をそこから目指す水準として置き、自社の実額を横に並べます。どの段が薄いかが見えます。

よっつめは、評価と昇給のつなぎ方を先に決めることです。

制度を設けていない理由として、10.6%が「人事評価をしても給与に反映できない」を挙げていました。ここを決めずに始めると、点数だけが毎年たまります。A評価なら基本給を何円上げる、レベル3に上がったら手当を月何円付ける、という対応を先に書いておきます。

いつつめは、年に1回見直すことです。10年以上見直していない会社の売上高増加率は0.2%でした。工事の内容も現場の人数も変わるのですから、項目も変わります。

そして運用でいちばん詰まるのが、社員への説明です。

島根県松江市の長岡塗装店は、塗装工事の会社で社員30名、うち女性8名です。子の看護休暇や保育料の補助、22歳までの就学中の子1人につき月10,000円の子ども手当などを、段階的に導入しました。

同社が最初にやったのは、制度を利用しない社員に対して導入の目的を説明することでした。

結果として、1998年から2009年の11年間のうち、8年間で退職者が0人でした。有給休暇についても、計画取得を奨励する前と比べて取得率が約30%上昇しています。採用も動いていて、2021年に新卒4名、2022年は新卒2名と中途1名を採っています(国土交通省・建設業振興基金『中小建設業の多様な人材確保・定着のための柔軟な働き方事例集』)。

得をする人は黙っていても受け入れます。割を食うと感じる人に先に説明する。ここが運用の要点です。

評価制度でも同じことが起きます。新しい表で点が下がる人は出ます。その人に社長が先に会って理由を話すかどうかで、制度が回るか、面談だけの行事になるかが分かれます。

規程どおりに運ぶことを優先しなかった会社もあります。

宮城県仙台市の東洋緑化は造園工事の会社で、社員41名、うち女性12名です。規程にとらわれず、勤務時間や役割に合わせて雇用形態の変更や配置転換を個別に実施しました。結果として、事情により離職した社員を2名再雇用でき、2020年からは新入社員を5名採用できたとしています。

大阪府茨木市のマツミは、建築一式工事と塗装工事の会社で社員31名、うち女性9名です。施工管理用の情報共有アプリを導入し、スマートフォンとノートパソコンを支給しました。時差出勤の制度も設けています。約30%の残業時間削減につながりました(2社とも同じ事例集)。

評価表は、こうした手当や働き方の変更を誰に適用するかを決める土台になります。個別に判断していた話を、等級ごとの決めごとに移す作業です。

辞める理由の側から制度を見直したい場合は、建設業の離職率を下げる定着施策5選を合わせて読んでください。

木製パレットの上に置かれた黄色いヘルメット
写真: Richard Heinen / Unsplash

よくある質問

社員が10人の会社でも要りますか

要る会社と、まだ急がない会社があります。

社長が全員の顔と仕事を見ていて、給与に文句が出ていないなら、明日までに作る話ではありません。ただ、これから人を採るなら別です。

求人票に「昇給あり」と書いても、何年でいくらになるか答えられない会社は選ばれにくくなります。

資格手当と評価は分けたほうがいいですか

分けておくほうが運用しやすいです。

資格手当は、取れば誰でも同額が付く仕組みです。評価は、同じ資格を持つ人の中での働きぶりを見ます。混ぜると、資格を取った人が自動的に高評価になります。

等級は資格と経験で決め、評価は年ごとの働きぶりで付ける。この2階建てにすると説明が通ります。

人件費が急に上がりませんか

賃金表を作った時点で全員の給与を上げる必要はありません。

いまの実額を段に当てはめるところから始めます。標準値を下回っている段が見えたら、そこから先に埋めます。公共工事設計労務単価は14年連続で上がっていますから、受注価格に反映できた分から順に当てていきます。上げる順番と時期を先に決めておけば、いっぺんに動かすことにはなりません。


制度を整えても、入口が止まっていたら埋まりません

評価制度は、いまいる人が辞めない仕組みです。

ただ、60歳以上の技能者が全体の25.8%で、10年後にはその大半が引退する見込みです。辞めない仕組みだけでは、人数が保てない計算になります。

制度を作りながら、同時に入口を開けることになります。

有資格者は人材紹介が主力です

施工管理技士のような資格を持った人を採るなら、人材紹介が主力の手段です。求人票を出して待つ手では出てきにくい層なので、使うこと自体が正しい判断になります。

手数料の水準は知っておいてください。全業界の平均は、採用した人の想定年収の30〜35%程度です。弊社が建設業の採用支援で見ている範囲では、施工管理は主流45%になります。1級を持つ所長クラスや、急ぎで探す希少な人材では60〜70%まで上振れることもあります。

高いから使わない、という話にはなりません。使い方しだいで効き方が変わります。

要件を1枚の文章にまとめて渡す。推薦が来たら当日中に返す。見送るときは理由を伝える。この往復の質で、送られてくる人が変わります。紹介会社と契約したまま推薦が来ない状態が半年続くほうが、会社にとっては痛手です。

ここで評価表が効いてきます。等級と賃金の段が紙になっていれば、紹介会社に渡す要件も金額で書けます。技能者なら「レベル3相当、年収472万円から」、施工管理なら自社の何段目に当たるかで示せます。人物像を言葉だけで伝えるより、送られてくる人のずれが小さくなります。

採用代行の使い方

専任の採用担当を置くかどうかは、後から決めて構いません。まず建設特化の採用代行と組み、そのうえで社内にどこまで人を割くかを決める順番をおすすめしています。採用の手法も媒体も移り変わりが速く、本業の合間に追いかけるには量が多いからです。

求める人物像と採用要件は、社内と採用代行で一緒に詰めます。どの現場に配属して、何年で何を任せたいか。ここは現場を知っている社内の知見が要ります。

面接と最終判断、それに内定承諾の最後のひと押しは社内が担います。社長が会って話す、現場のリーダーが食事に誘う。ここは外に出せません。

求人票の作成と改訂、媒体の運用、スカウトの送信、応募者への返信、日程調整、紹介会社のとりまとめは採用代行が受けます。採用代行は人材紹介の代わりではなく、紹介も求人広告もスカウトも含めた採用活動全体に伴走する立ち位置です。

弊社は月額20万円(税別)〜+媒体費です。求人媒体の掲載費は、採用代行を入れても別にかかります。

料金体系を選ぶなら、建設業では月額固定型をおすすめします。成果報酬型は、決まらなければ業者の売上になりません。難易度の高い建設業の案件は後回しになりやすく、契約したのに動いてもらえないという話になります。月額固定なら、毎月の売上が見える顧客として優先度が保たれます。

契約書に書けるのは作業の量です。スカウトの送信通数、求人票の作成本数、レポートの提出日、応募者への返信時間。採用人数を書面で約束する業者は業務委託の枠を超えていますから、後で揉めやすくなります。

評価制度を作って、入口も開ける。どちらも1年では終わりません。ただ、等級と賃金の段が紙になった会社は、求人票に書ける内容が変わります。18歳で入った人に10年後の金額を見せられる会社が、これから選ばれます。

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