建設業の55歳以上は36.7%、2035年度は技能労働者が129万人足りない

建設業で働く人のうち、55歳以上が36.7%を占めます。29歳以下は11.7%です(国土交通省『最近の建設産業行政について』)。

日本建設業連合会の見通しでは、2035年度に要る技能労働者は393万人。これに対して供給の見込みは264万人です。129万人が足りなくなる計算です(日本建設業連合会『建設業の長期ビジョン2.0』)。

抜けていく人数に、入ってくる人数が追いついていません。

野原グループが全国の20〜70代の建設業従事者1,000名に聞いた調査があります(2025年11月実施)。建設2025年問題の中身を理解している層では、92.0%が技術継承に不安を感じると答えました(野原グループ『建設2025年問題に関する意識調査』(2025年11月調査))。

不安の理由の上位は「若手が定着しない・育たない」と「技術継承の仕組みが不十分」で、どちらも42.2%でした。

採用しても、高卒で入った若手の3年以内離職率は43.2%です(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。

結論から言うと、教える中身と教える時間を先に決めて、最後は社長が自分の口で伝えるところから育成は動き出します。

定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手の採り方は建設業の若手採用ガイドもあわせてご覧ください。


育成が回らない3つの理由

OJT頼みで、教え方が人によって変わる

野原グループの同じ調査では、技術継承に不安を感じている層が効果のある取り組みとして挙げた1位がOJT(現場に入りながら先輩が教えるやり方)で52.7%でした。

ただ、OJT頼みには次の問題が出ます。

  • 教え方が先輩によってバラバラになる
  • 工期が迫ると教育が後回しになる
  • ベテランの経験則が、その人の頭の中に残ったままになる

「見て覚えろ」で育った世代が教える側に回っても、教え方そのものを習っていないことが多いです。

残業の上限規制で、教える時間が減った

2024年4月から、建設業にも残業の上限規制(月45時間・年360時間)が適用されています(厚生労働省『建設業の時間外労働の上限規制』)。

労働時間が短くなったのは良いことです。一方で、残業の中でやっていた技術指導や打ち合わせの置き場所がなくなりました。

短い時間で技術を渡すには、教える中身をあらかじめ決めておくしかありません。

育成にかけた費用の効果が見えない

「時間とお金をかけても辞められたら終わり」という声はよく聞きます。

育成の成果が出るまでには数年かかります。教える側が使った時間も、費用として数字に出てきません。

効果が見えないので、次の年も後回しになります。ここが止まると、育成そのものが始まりません。

作業台に並んだ電動ドリル・金づち・差し金・クランプと、削り出た木くず
写真: Tima Miroshnichenko / Pexels

技術継承と定着を両立する5つの仕組み

仕組み1|スキルマップで、何をどこまで教えるかを見える化する

用意するのは次の3つです。

  • スキルマップ: 職種ごとに要る技能を書き出し、5段階などに分けた一覧表
  • 到達目標: 入社1年・3年・5年で何ができるかを言葉にする
  • 評価基準: 見る人によって評価がずれないよう、チェック項目にする

大林組は2022年度から、社員の経験や資格を一元管理する仕組み(タレントマネジメントシステム)を入れています。建築職の業務経験と資格をデータで持ち、上司が部下の足りない技能を把握したうえで現場での経験の積ませ方を決めています(大林組『人材マネジメント』)。

大がかりな仕組みでなくても始められます。職種ごとの技能を紙1枚に書き出すところからで足ります。

仕組み2|座学と現場をセットで回す

座学研修だけでは現場で手が動きません。現場だけでは知識が抜け落ちます。「習う、やってみる、振り返る」を1組にして回します。

清水建設は入社から数年を基盤を固める期間と決め、座学研修と現場での指導を組み合わせた育成を制度にしています(清水建設『人財育成』)。

研修施設を持たない会社でも、次のやり方で回せます。

  • 月1回の社内勉強会(先輩2名に若手3名のグループ)
  • 業界団体の技能講習を使う
  • オンラインの講座で施工管理技士の試験対策をする

技能講習には人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースが使えます。従業員20人以下の中小の建設会社なら受講料の75%が戻ってきます。会社の人数や受講者の年齢で助成率は変わります(厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』)。

木材に巻尺を当てて寸法を測り、鉛筆で印を付けている手元
写真: Ono Kosuki / Pexels

仕組み3|メンター制度で若手を孤立させない

若手が早く辞める大きな理由は「相談できる人がいない」ことです。

相談役の先輩をつける仕組み(メンター制度)の要点は3つです。

  • 直属の上司以外から選ぶ。仕事の指導と相談の受け皿を分ける
  • 年齢の近い先輩を指名する。10歳以上離れたベテランより、3〜5歳上のほうが話しやすい
  • 月1〜2回の面談を決めておく。「何かあったら言って」では相談は来ない

聞くのは仕事の進み具合ではありません。「困っていることはないか」「職場の雰囲気はどうか」の2つです。

メンターを引き受けた人には手当を付けます。厚意ではなく仕事として扱うと、この仕組みは続きます。

仕組み4|資格取得支援で成長を実感させる

建設業のキャリアは資格と結びついています。資格が1つ増えるたびに、若手は自分の伸びを目に見える形で確認できます。

資格取得支援の整備項目(相場)

項目相場ねらい
受験費用全額会社負担落ちても再挑戦しやすい
合格祝い金1級施工管理技士5万円・2級3万円合格が目標になる
資格手当1級月3〜5万円・2級月1〜2万円取るほど手取りが増える
勉強時間の確保試験前1か月の残業免除試験前に勉強時間を取れる
テキスト・講習費全額会社負担+人材開発支援助成金で受講料の一部が戻る会社負担を軽減

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

施工管理技士なら、3年で2級、6〜10年で1級。何年目に何を取るかを先に見せると、若手は数年先の自分を思い描けます。

キャリアの見せ方は建設業の若手採用ガイドで扱っています。

仕組み5|ベテランの勘どころを形に残す

  • 動画の手順書: ベテランの作業手順をスマホで撮り、社内のクラウドに置く
  • VR研修: 高所や狭い場所の作業を疑似体験して安全教育に使う
  • チェックリストの電子化: 紙の手順書をタブレットで見て、その場で直せるようにする
  • BIM/CIM: 建物や地形を立体データで扱う仕組み。図面と現場のズレを目で見て共有できる
  • ドローン測量: 現場確認の手間を減らし、若手が学ぶ時間を作る

野原グループの調査では、技術継承に不安を感じている層のうち39.0%が、効果のある取り組みとして動画教材やマニュアル化を挙げました。OJTの52.7%に次ぐ2位です(野原グループ『建設2025年問題に関する意識調査』(2025年11月調査))。

引退の前に撮っておかないと、その人の手順は社内に残りません。

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育成にかけた費用は、どこで回収されるか

1人辞めたときの損失は、新卒でおよそ657万円、中途でおよそ774万円。求人にかけた費用、教育の時間、抜けた穴が埋まるまでの目減りを足した試算です(建設業の離職率|業種別ランキング)。

育成にお金をかけないと、若手が育つ前に辞めます。辞めた分を採り直すために、また採用費がかかります。

採用費は毎年出ていく費用です。育成に回した分は、毎年の採用費を減らすために使うお金です。

育成は費用ではなく、毎年の採用費を減らすための支出だと考えてください。


採用と育成を両輪で回す設計

入口のズレが、入社後の離職を生む

入社してすぐの離職には、採用の時点で生まれた、聞いていた話と実際とのズレが影響しています。

  • 求人票に資格取得の支援が書かれていない。入社後に育成の中身が見えず辞める
  • キャリアの道筋を入社後に説明する。先が読めず1年目で辞める
  • 育成期間中の給与が低く、生活が回らずに辞める

求人票の段階で、育成の中身と年次ごとの年収を出しておきます。求人票の作り方は建設業の求人票の書き方で扱っています。

弊社の経験:育成の話は、社長の口から出たときに残る

「3年で何ができるようになるか」「資格はいつ取らせるか」は、求人票にも書けますし、面接でも説明できます。ただ、それが本人の腹に落ちるのは、もう少し後の場面です。

弊社がよくお願いするのは、最終面接の前後で社長や現場リーダーが候補者と食事をすることです。会議室の面接だけでは、候補者は会社の空気をつかみきれません。

食事の席で雑談を交わすと、候補者が「自分がここで働く姿」を思い描けるようになり、承諾率が変わってきます。育成の話も、同じ席で社長が自分の言葉にすると、届き方が変わります。

採用代行ができるのは、食事の段取りと話す中身の準備までです。その場で会社の魅力を語るのは社長の仕事になります。

採用代行と育成設計をセットで動かす

採用代行(RPO)は、求人票の作成、媒体の運用、応募者への対応といった採用の運用を引き受けるサービスです。求人票を作る段階から、育成の中身を一緒に書き込めます。

月額20万〜30万円(+媒体費)で建設業に特化した採用代行なら、求人票や媒体の運用、紹介会社のとりまとめに加えて、入社後の受け入れまで一緒に考えられます。メンターを誰にするか、最初の3か月で何を教えるか、といったところです。

採用の手法や媒体は毎年のように移り変わります。社内の人だけで追いかけるのは負担が大きいので、建設業に特化した採用代行と組むのを基本線に置いてください。そのうえで、社内にどこまで人を割くかを決めます。

青空の下、建設中の建物の上に立ち並ぶタワークレーン
写真: AS Photography / Pexels

仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。


規模別の進め方

従業員規模ごとの始め方

従業員数まず手を付けること教える側への手当て
10〜30名月1回の勉強会と、月2回の短い1対1の面談から。スキルマップは紙1枚で足りる面談の時間を就業時間の中に入れる
30〜80名スキルマップと年次ごとの到達目標を文書にするメンターを指名し、手当と時間を付ける
80名以上資格取得の順番と動画の手順書を、制度として回す教える側の評価にも育成の項目を入れる

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

人数の少ない会社ほど、作り込みより回数です。勉強会と面談の間隔を決めるだけで、若手の様子が見えるようになります。

人数が増えるほど、教える側の負担を制度で受け止める必要が出てきます。手当と評価の両方に育成を入れておくと、指導が個人の厚意で終わりません。


よくある質問

Q. 育成の仕組みを作るのに、どれくらいかかりますか?

スキルマップと到達目標の整備で1〜2か月、メンター制度の運用開始まで含めて半年が目安です。作り込む前に、まず1つ作って動かし、四半期ごとに直すほうが早く回り始めます。

Q. 中小でも研修施設は要りますか?

要りません。月1回の社内勉強会、業界団体の技能講習、オンライン講座の組み合わせで回せます。人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースを使えば、従業員20人以下の中小の建設会社なら受講料の75%が戻ってきます(会社の人数や受講者の年齢で助成率は変わります)。助成金の全体像は建設業の助成金ガイドにまとめています。

Q. ベテランが教えてくれません

「教える側の手当」と「教える時間」を用意することです。メンターを引き受けた人に手当を付け、面談や指導の時間を就業時間に組み込むと、ベテラン側の負担感が下がります。

Q. デジタル化はどこから始めればいいですか?

スマホで動画を撮ってクラウドに保存するところからで足ります。月に数本、ベテランの作業手順を撮って社内のチャットで配るだけでも、手順は社内に残ります。BIM/CIMやVRは、その後の段階で考えれば間に合います。

Q. 育成に回すお金がありません

採用にかかる費用を抑えて、その分を育成に回すやり方があります。求人の運用と紹介会社のとりまとめを月額20万〜30万円(+媒体費)の採用代行に任せ、社内の手間を育成に向ける中小の建設会社が増えています。


まとめ|採用と育成と定着は1つの設計

  • 55歳以上が36.7%、29歳以下は11.7%。2035年度は技能労働者が129万人足りない見通し
  • 技術継承に不安を感じる人は、2025年問題の中身を知る層で92.0%
  • 育成が回らない理由はOJT頼み/教える時間の減少/費用の効果が見えないこと
  • 5つの仕組みはスキルマップ/座学と現場のセット/メンター制度/資格取得支援/動画と手順書
  • 1人辞めたときの損失は新卒657万円・中途774万円の試算。育成は毎年の採用費を減らすための支出
  • 求人票で育成の中身を出し、最後は社長が自分の口で伝える

採用と育成と定着は、本来ひとつづきの設計です。「採れたら育てる」「育ったら定着する」と段階で分けずに、求人票の段階から育成の中身を織り込んでください。

次の一歩として、定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手の採り方は建設業の若手採用ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、他社の動き方は建設業の採用成功事例5選、採用代行は採用代行(RPO)とは?もあわせてご覧ください。

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