辞めた理由を全部話す人は、3割しかいない

本当の退職理由を会社側に「すべては伝えていない」人は70.9%です。一部だけ伝えた42.1%と、伝えなかった28.8%の合計です。すべて伝えた人は29.1%でした。

伝えなかった理由の1位は「本音を伝えても改善されないと思ったから」で41.5%。2位が「引き留めや説得を避けたかったから」25.6%、3位は20.5%で、「上司との関係が悪化すると思ったから」と「職場全体に、率直な意見を言いにくい雰囲気があったから」の2つが同率でした(株式会社働きがいのある会社研究所『退職時の本音に関する調査』(2026年9月9日発表))。

n=330で、直近3年以内に自己都合で退職して転職した20〜30代に限ったインターネット調査です。若手に限った民間調査で、業種別の内訳はありません。

辞める割合は低いのに、穴が埋まらない

令和7年の雇用動向調査では、建設業の離職率は8.7%でした。産業計の13.7%より5.0ポイント低い水準です。辞める人の割合で見ると、建設業は産業全体より低く出ます。

詰まっているのは入ってくる側です。建設業の入職率は10.4%で、産業計14.7%を4.3ポイント下回ります。

入職が離職を上回る幅は、建設業が+1.7ポイント、産業計が+1.0ポイント。実数では建設業の入職者が26万5,300人、離職者が22万2,500人です(厚生労働省『令和7年 雇用動向調査結果の概況』)。

辞める割合は低いけれど、入ってくる割合はもっと低い。だから1人辞めた穴が、なかなか埋まりません。

母数そのものも縮んでいます。建設業の就業者は685万人(平成9年)から504万人(平成22年)、令和6年には477万人です。

年齢の構成も偏っています。建設業は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%。全産業は55歳以上32.4%、29歳以下16.9%でした(国土交通省『改正建設業法「令和7年12月施行分」説明会』資料(令和8年1月))。

若い人の比率が全産業より5.2ポイント低い業界で、入ってきた1人が辞めます。その理由を全部話して辞める人は、3割しかいません。

結論から言うと、面談の目的を引き止めから情報の聞き取りに置き換え、聞き手を直属の上司から外すところから手を付けます。

そのうえで、聞いた内容を求人票と働き方の条件に落とすところまでを1本の流れにします。

この記事が扱う範囲

扱うのは、本人の意思で辞める自己都合退職の聞き取りだけです。

会社側から退職を勧める退職勧奨の面談は、まったく別の手続きなので含みません。退職を考え直してもらうための引き止めの話も扱いません。


引き止めの場にすると、5%しか戻らない

退職前の面談が実施されたという人は71%、されなかった人が29%でした。

回答者全体の45%が、面談で「引き止めるようなことを言われた」と答えています。

同じ回答者全体のうち、面談のあとに退職を取りやめた人は5%でした。変化はなかった、つまりそのまま退職した人が67%。残りの28%は、面談が実施されなかったので分からないという回答です。

一方で、退職前の面談が「必要だと思う」と答えた人は62%います(n=300、就業経験・退職経験のある20〜60代。アクシス株式会社『日本国内の退職前面談に関する意識調査』(2024年9月4日発表))。全産業の数字です。

回答者全体で見て、引き止められた人が45%、それで戻った人が5%。面談を引き止めの場にしても、ほとんど戻ってきません。

それでも6割の人が、面談そのものは必要だと答えています。辞める側にも話したいことはある、という読み方ができます。

目的を入れ替えます。本人を引き止めるための場ではなく、次に辞める人を減らすための情報を集める場に置きます。

青空の下、タワークレーンのブームの先に型枠と足場が組まれた建設中のビルの上層階
写真: Valentin Ivantsov / Pexels

この記事で言う退職面談

本人から退職の申し出があった後に、辞める理由と会社への要望を1回だけ聞き取る面談です。目的は引き止めることではなく、残っている社員が同じ理由で辞めるのを防ぐ材料を集めることに置きます。会社から退職を勧める退職勧奨の面談とは、手続きも目的も別のものです。


誰が聞くかで、出てくる話が変わる

退職時の面談を誰が担当しているか。上司との面談が58.5%、人事との面談が30.5%、社外のインタビュアー(社外の聞き手)との面談が7.1%でした。

本音で話せた割合は、ほぼ逆の順番です。社外が63.1%、人事が57.9%、上司が57.7%。

いちばん多く行われている上司との面談が、いちばん本音が出ていません(n=5,100、直近1年以内に退職した全国20〜59歳の会社員・公務員。パーソルビジネスプロセスデザイン『退職理由の本音に関する実態調査』(2026年2月17日発表))。全産業の数字です。

社外と上司の差は5.4ポイントなので、社外に頼めば本音が出るという話ではありません。

見てほしいのは実施率のほうです。58.5%と7.1%で8倍以上開いているのに、本音で話せた割合はほとんど変わりません。聞き手を上司に固定している会社が多いということです。

建設業では、直属の上司が現場の所長になる

建設業では、ここがもう一段ややこしくなります。

直属の上司が現場の所長で、本人と同じ現場に毎日います。辞める理由がその所長との関係や、その現場の進め方そのものである場合、本人は所長には言えません。

直行直帰の会社だと、本社の人間と顔を合わせる機会がほとんどありません。退職の連絡も所長を経由して上がってきます。聞き取りの場を所長以外に作るという発想が、そもそも出てきにくいです。

従業員10名から100名の規模では、採用や労務の専任者がいない会社も多いです。総務の担当者が給与計算と社会保険と採用を兼ねていると、面談を1本増やすこと自体が負担になります。

辞めるときに本音が出るかは、辞める前で決まっている

在職中の相談の有無でも差が出ています。

在職中に上司へ率直に相談「できていなかった」人は合計61.5%でした(できていなかった39.1%+どちらかといえばできていなかった22.4%)。

そして上司に率直に話せていた層は、本当の退職理由を「すべて伝えた」が52.3%。できていなかった層は18.2%で、約2.9倍の差がありました(前掲・働きがいのある会社研究所の調査。若手に限った民間調査です)。

辞めるときに本音が出るかどうかは、辞める前の上司との関係でおおよそ決まります。退職面談だけを整えても、そこで回収できる話には限りがあります。

聞き手別に見た、出てくる話と出てこない話

聞き手向いている場面出にくい話小さい会社での進め方
直属の上司(現場の所長)引継ぎの範囲や工程の確認。残る工事の段取り所長本人との関係、現場の人間関係、安全や工程の進め方への不満引継ぎの打ち合わせはここで行い、辞める理由の聞き取りは別の人に分ける
社長待遇や制度への要望。その場で判断できる話給与や評価への不満。社長が決めた制度への批判30名前後までなら社長が聞く場面も多い。聞き役に徹し、その場で反論しない
総務・人事の担当者退職理由の聞き取り、手続きの確認、記録を残す作業担当者と社長の距離が近いと、待遇の不満が薄まる窓口を1人に決め、毎回同じ人が同じ順番で聞く
社外(社会保険労務士・採用代行など)聞き取りの実施。複数人分をまとめて傾向を見る現場の固有名詞や工程の細部。背景が分からないと深掘りできない全員に使うと費用がかさむ。年に数件の退職をまとめて見てもらう形から

パーソルビジネスプロセスデザイン『退職理由の本音に関する実態調査』(2026年2月17日発表)と当社の支援経験をもとに作成

聞き手を1人に決めてしまう必要はありません。引継ぎの話は所長、辞める理由の聞き取りは総務か社長、という分け方で足ります。


いつ、どのくらいの時間で

時期は退職日までのどこかです。申し出を受けた直後ではなく、引継ぎの見通しが立った後に置きます。

申し出た直後の本人は、気持ちが固まりきっていないことがあります。そこで理由を聞くと、話が引き止めに流れます。

引継ぎの段取りがついた後なら、本人も会社も先が見えています。そのほうが話しやすくなります。

長さは1回30分から60分です。2回3回には分けません。

本人が断ったら、そこで終わりにします。繰り返し声をかけると、考え直させるための呼び出しだと受け取られます。退職勧奨や退職強要と受け取られる余地を作らないほうがいいです。

退職手続きの事務とは別の日に置く

賃金の精算や貸与品の返却、保険証の回収といった事務の説明と同じ場でやると、本人は手続きの話として聞きます。要望を出す場だと受け取ってもらえません。

日程は別の日にします。声のかけ方も決めておきます。「今後のために話を聞かせてほしい」と伝えます。「考え直す気はないのか」を添えると、その瞬間に引き止めの場になります。

机の上に何枚も重ねて広げられた建物の平面図面
写真: Marina Zvada / Pexels

何を聞くか — 質問は6つに絞る

転職した人が前の職場を辞めた理由を調べた、全産業の数字があります。産業別の内訳は公表されていないので、建設業だけを取り出した数字は存在しません。

男性では「その他の個人的理由」が16.8%、「定年・契約期間の満了」が16.1%、「その他の理由(出向等を含む)」が12.1%。ここまでが上位3つです。

中身が分かるのはその次からです。「給料等収入が少なかった」9.9%、「職場の人間関係が好ましくなかった」8.9%、「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」8.5%、「会社の将来が不安だった」6.9%、「仕事の内容に興味を持てなかった」5.2%、「能力・個性・資格を生かせなかった」5.2%です。

女性も並びは似ています。「その他の個人的理由」が23.8%で最大、「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」12.9%、「職場の人間関係が好ましくなかった」11.5%、「定年・契約期間の満了」9.8%、「給料等収入が少なかった」8.6%、「仕事の内容に興味を持てなかった」4.6%、「会社の将来が不安だった」4.3%、「能力・個性・資格を生かせなかった」3.9%でした(厚生労働省『令和7年 雇用動向調査結果の概況』)。

転職入職者が前職を辞めた理由(男性・全産業、%)

出典: 厚生労働省『令和7年 雇用動向調査結果の概況』より作成。全産業の数字で、産業別の内訳は公表されていません

いちばん大きい塊が「その他の個人的理由」です。男性16.8%、女性23.8%。どこにも分類されない理由が、分類されたどの理由よりも多く出ています。

国の統計でこうなるなら、自社の面談でも同じことが起きます。「個人的な事情で」と言われて、そこで止まります。

だから分類に頼らず、具体化して聞きます。質問は6つで足ります。

6つの質問

①「辞めようと思ったのは、いつ頃ですか。そのとき何がありましたか」

時期を先に聞きます。半年前なのか、先月なのか。

半年前という答えが返ってきたら、その半年のあいだ会社は何も気づけなかったことになります。引き金になった出来事が1つあるのが普通なので、そこを聞きます。

②「給料と手当は、仕事の内容に見合っていましたか」

見合っていなかったと言われたら、もう一歩聞きます。「いくらなら残りましたか」。

金額が出てこない場合は、手当のどれが足りなかったかを聞きます。資格手当、現場手当、残業代の付け方。この3つのどこかに不満が出ます。

③「休みは取れていましたか。土曜はどのくらい出ていましたか」

年間休日の日数ではなく、実際に出た土曜の回数を聞きます。

月2回なのか3回なのか。現場によって違ったのか。子どもの行事で休めたのか。

④「分からないとき、誰に聞いていましたか。教えてもらえましたか」

誰に聞いていたかを先に聞くと、教育の実態が出ます。

所長に聞けたのか、年の近い先輩に聞いたのか、誰にも聞けなかったのか。「誰にも聞けなかった」という答えが返ってきたら、その現場の教え方を直す話になります。

⑤「次はどんな会社ですか。うちと何が違いましたか」

次の会社の条件を聞くのは、詰問ではありません。自社に足りなかったものがそのまま出てきます。

休みが多い、現場が近い、日給が高い、資格を取らせてくれる。どれが決め手だったかを聞きます。

⑥「うちで1つだけ直すとしたら、何から直しますか」

最後にこれを聞きます。辞める人は遠慮が減っているので、残っている社員より正確な答えが返ってきます。

答えをその場で評価しません。「それは違う」と返した時点で、残りの話は出てきません。

答えを業界の数字と照らす

出てきた答えを、公的な数字と照らして確かめます。

建設業の年間総実労働時間は1,938時間。全産業が1,643時間、製造業が1,877時間です(令和6年、事業所規模5人以上)。建設業は全産業より295時間長い計算になります。

完全週休2日制の普及率は建設業45.9%、全産業56.7%、製造業53.5%でした(令和6年、企業規模30人以上)。

ただし「週休2日」で見ると建設業92.4%、全産業90.9%で、建設業のほうが高くなります(厚生労働省『建設労働をめぐる情勢について』(令和7年10月15日))。

週に2日休める週がある会社は9割を超えています。それでも、毎週2日休める会社は半分に届きません。ここで順位が入れ替わります。

「休みが少ない」と言われたときに見るのは、この差です。月に何日休めたかではなく、毎週決まって2日休めていたか。

③の質問で土曜の回数を聞く理由もここにあります。月2回の土曜出勤なら完全週休2日ではありません。求人票に「週休2日」と書いていれば、入ってきた人との食い違いが起きます。


記録は残す。ただし回す範囲を先に決める

聞き取った内容は記録します。その前に、何のために使うのかと、誰まで回すのかを決めておきます。

個人情報保護委員会のFAQはこう書いています。

従業員を雇用するに当たり当該従業員の個人情報を取り扱う場合も、当該個人情報の利用目的をできる限り特定する必要があります。

(個人情報保護委員会 FAQ Q2-2)

退職した後の扱いについても説明があります。退職した社員の個人情報は「取得時に特定した利用目的の範囲内で利用することは可能」とされています。

ただし、こうも書かれています。「当該利用目的が達成されたときには、利用する必要がなくなった場合に該当し、当該請求に応じる義務があると考えられます(法第35条第6項)」(個人情報保護委員会 FAQ Q9-22)。

消去を求められたら、応じる義務が生じ得るということです。

だから面談の冒頭で本人に3つ伝えます。何のために聞くのか。誰が見るのか。どう使うのか。

「職場の改善に使うために聞きます」「内容は社長と総務の担当者が見ます」「個人が分からない形にまとめて、来年の求人票と休日の決め方の見直しに使います」。この程度の説明で足ります。

退職の事由の証明書に、面談のメモを転記しない

労働基準法第22条第1項はこうです。

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

同条第3項に、こう続きます。「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」(労働基準法(e-Gov法令検索))。

本人が請求した事項だけを書く条文です。面談で聞き取った不満や人間関係の話を、本人が請求していないのに証明書へ書き込むことはできません。

面談のメモと証明書は別のものとして扱います。メモをそのまま転記しない。これだけ決めておけば足ります。

名前を付けて回すか、集計して回すか

記録の回し方は2通りです。

1つは、本人が分かる形のまま、社長と担当者だけで見る方法です。退職の手続きや引継ぎに関わる内容はこちらです。

もう1つは、名前を外して集計した形。半年分、1年分をまとめて傾向を見る使い方です。求人票や休日の決め方の見直しに使うのはこちらです。

決めることは1つです。どちらの形で、誰まで回すか。これを面談の前に決めて、本人に伝えます。

現場の所長に伝えるかどうかも、ここで決まります。所長への不満が出ている場合、本人が特定できる形で所長に渡すと、話した本人に跳ね返ります。

辞めた人が同業の知り合いに会社の話をすることはあります。紹介会社経由の採用をしている会社では、そういう評判が候補者まで伝わります。

真下から見上げた、組み上がった鉄筋の柱と梁の格子
写真: Maren Ferraro / Pexels

ハラスメントの話が出たら、面談の外に出す

面談で、暴言や無視や過大な要求の話が出ることがあります。そのときは面談の記録にメモして終わらせません。別の手続きに移します。

職場のパワーハラスメントを防ぐ措置は、事業主の義務です。根拠は労働施策総合推進法(e-Gov法令検索)の第30条の2です。国の雇用対策と職場の環境について定めた法律です。

中小企業も令和4年4月1日から義務の対象になっています(厚生労働省『職場におけるハラスメントの防止のために』)。

厚生労働省の指針が求めている相談対応の中身は、次のとおりです。

指針が求めている相談対応の中身

相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。窓口と認められる例には「外部の機関に相談への対応を委託すること」も含まれます。
現に生じている場合だけでなく「発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合」も、広く相談に対応すること。
相談者と行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。
相談等をしたことを理由として「解雇その他不利益な取扱いをされない旨」を定め、労働者に周知・啓発すること。

(厚生労働省告示第5号(パワーハラスメント防止指針))

窓口は社外に委託してかまいません。指針が認める例に入っています。10名から100名の規模で社内に中立な窓口を作るのは難しいので、ここは外に出すほうが早いです。

該当するかどうか微妙な場合も対象です。「指導の範囲内だと思う」という判断を、聞いた側がその場で下さないようにします。

事実確認の手順も先に決めておきます。誰が聞き取るか。相手方にいつ聞くか。記録をどこに保管するか。最終の判断は誰がするか。

退職する人から話が出たときにこれを決めるのでは、間に合いません。

本人が「もう辞めるので大ごとにしないでほしい」と言うこともあります。本人の意向は尊重しますが、同じことが残っている社員に起きていないかは別に確認します。

辞める人が言わずに帰った話は、次に辞める人の理由になります。


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就職して3年以内に辞めた割合は、新規高卒就職者で建設業40.9%、調査産業計36.9%。建設業が4.0ポイント高いです。

新規大卒就職者では向きが逆になります。建設業26.8%、調査産業計31.2%で、建設業が4.4ポイント低いです(令和5年3月卒業者。厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)』(2026年10月23日公表))。

厚生労働省の資料も、そのまま両方を書いています。

建設業における新規学卒者の3年目までの離職率は、新規高卒者では全産業を上回っているが、新規大卒者では全産業を下回っている

(厚生労働省『建設労働をめぐる情勢について』(令和7年10月15日))

高卒で入った人が辞めやすく、大卒で入った人は残っています。18歳で入ってくる人に何を伝えていなかったか、という問いになります。

規模でも差があります。調査産業計の事業所規模別で見ると、5人未満は高卒61.3%、大卒58.2%。1,000人以上は高卒24.4%、大卒24.2%でした。

小さい事業所のほうが2.5倍ほど高く出ています。10名から100名の建設会社は、1,000人以上よりも5人未満の側に近いところに入ります。

規模別や業種別の離職率は建設業の離職率|業種別ランキングにまとめています。

社長の見立てと、現場の本音はズレる

中小建設企業の経営者501人と、建設現場で働く従業員507人に同じ質問をした調査があります。

建設現場で働く従業員のおよそ9割が、建設業を辞めたいと思った経験があると答えました(よくある34.3%+たまにある51.3%)。

人手不足の理由では、3K(きつい・汚い・危険)のイメージを挙げた人が経営者53.7%、従業員54.8%。ここはほぼ一致しています。

ズレるのはこの先です。

「給与や待遇が仕事内容に見合わない」は従業員の56.6%が挙げて最多でした。経営者の回答を約10ポイント上回っています。

「若手や未経験者への育成環境が整っていない」は経営者26.6%に対して従業員37.1%。最大のギャップです(n=1,008、20〜50代。インターネット調査、モニター提供元はPRIZMAリサーチ。株式会社澤村『中小建設企業の人材危機を徹底調査』(2025年8月20日発表))。

建設会社が自社で実施した民間調査です。公的統計ではありません。

それでも、経営者と従業員に同じ質問をした調査は少ないです。待遇と育成の2つで、社長の見立てより現場のほうが厳しく見ています。退職面談で出てくる話も、この2つに寄ります。

教える側と教わる側の関係の作り方は建設業の人材育成ガイドに載せています。

聞いてみたら、想像していた理由と違った

国土交通省と建設業振興基金の事例集に、聞き取りから制度を変えた会社が載っています。

島根県松江市の長岡塗装店は、塗装工事の会社で社員30人、うち女性が8人です。

入社する人数以上の社員が退職する状況が続いていました。そこでまず、社員が抱えている不満や悩みの正体を知ろうと、話を聞くことにしました。

その答えは、給与でも休暇でも仕事内容でもありませんでした。「育児」でした。話したのは男性社員です。

そこから子の看護休暇を整えています。未就学児1人につき年5日、年次有給休暇とは別の有給休暇で、30分単位で取れる形です。始業・終業の繰り上げ繰り下げと、育児短時間勤務制度も入れました。

結果として、1998年から2009年までの11年のうち、8年は退職者が0人でした。

もう1社は三重県南牟婁郡の日本土木工業です。土木一式工事と舗装工事で、社員27人、うち女性が10人。

この会社は育児休業からの復帰前に面談をしました。そこで「現行の時短勤務制度では保育所の送り迎えに支障が出る」という相談を受けています。

受けた相談をもとに就業規則を改正し、より柔軟に働き方を選べる時短勤務制度を整備しました。育児休業の取得率は100%です(国土交通省・一般財団法人建設業振興基金『中小建設業の多様な人材確保・定着のための柔軟な働き方事例集』)。

2社に共通しているのは、聞く前の想像と答えが違っていたことです。給与だと思っていたら、育児でした。制度はあると思っていたら、使える形になっていませんでした。

聞かないと分かりません。そして聞いた後に1つ変えないと、次の人も同じ理由で辞めます。

求人票に書く項目の順番

同じ澤村の調査に、今後も働き続けたい職場の条件を聞いた設問があります。

安定した給与・昇給制度が60.2%、労働時間や休日が柔軟に調整できるが54.2%、福利厚生が充実しているが37.1%、快適で働きやすい環境(事務所・トイレ・休憩所など)が37.1%でした。

この順番を、求人票に載せる項目の優先順位として使います。

給与は幅だけで止めず、昇給の仕組みまで入れておきます。「日給1万3,000円〜1万8,000円」の後に、いつ何を満たすと上がるのかを1行添えます。

休日は日数ではなく、調整できるかどうかを示します。「年間休日105日」より「土曜の出勤は月2回まで。子どもの行事での振替は現場ごとに相談」のほうが伝わります。

事務所やトイレや休憩所の話は、求人票にはまず載っていません。それでも37.1%が条件に挙げています。更衣室と休憩所の写真を1枚入れるだけでも差が出ます。

聞き取った理由を打ち手に変える順番は建設業の離職率を下げる定着施策に置いています。

建設業の採用は、1つの手法では応募者が集まらない

辞める理由を直しても、入ってくる人がいなければ人数は戻りません。入職率10.4%という数字はそこを指しています。

建設業の採用は、求人媒体と人材紹介とスカウト採用を組み合わせないと、応募者の集まり(母集団)ができません。どれか1つだけを選ぶものではありません。

人材紹介は、建設業の有資格者を確実に採れる主力の手法です。1級の施工管理技士や経験のある職長に手が届きます。手数料は全業界平均で30〜35%、建設業の施工管理では主流45%。1級保持の所長クラスや急募の希少人材では60〜70%まで上振れることがあります。

金額だけ見ると高く感じますが、使い方しだいで効き方が変わります。要件の伝え方、返信の早さ、見送ったときのフィードバック、複数社への優先度のつけ方が揃っている会社には、良い候補者が先に回ってきます。

紹介会社の契約社数は増やす方向で考えてかまいません。手数料は採用が決まったときに払う形が主流なので、契約するだけなら費用はかかりません。ヘッドハンター系には着手金があるので、そこは確認が要ります。

社数が増えればやり取りも増えます。社内の窓口を1人に決めて、全社に同じ要件の1枚を渡して回します。手が足りなければ、そのとりまとめを採用代行に任せます。

退職面談で聞き取った内容は、この1枚にそのまま入ります。辞めた人が挙げた不満は、次に採る人へ示す条件と裏表です。

役割の分け方

専任の人事を置くかどうかは、あとから考えてかまいません。まず建設特化の採用代行と組む形を基本線に置き、社内から何人出すかはそのあとで決める順番です。

退職面談を含めた採用・定着の役割分担

誰が何を
社内+採用代行で一緒に聞き取った理由を募集条件に戻す作業。求める人物像と採用要件の整理
社内何を聞くかの設計と、本人への声かけ。面接、最終判断、内定承諾の最後のひと押し
採用代行運用全般。求人票の作成と改訂、求人媒体、スカウト、応募者対応、日程調整、紹介会社のとりまとめ

当社の支援経験をもとに作成

当社は月額20万円(税別)〜で、これに求人媒体の費用が別でかかります。他社と並べるときは「月額20万円〜+媒体費」の合計で比べてください。

採用代行は業務委託契約なので、採用人数を書面で約束することはできません。書面に入れられるのは業務の量です。スカウトの送信通数、求人票の改訂本数、応募者への連絡までの時間、紹介会社との定例の頻度などです。

人材紹介の代わりに採用代行を入れる、という話ではありません。紹介を含めた採用活動の全体を運用して並走する立ち位置です。

当社が支援した福島県のA社(総合建設・従業員50名)では、応募が2.4倍になり、年間13名の採用につながりました。

退職面談で何を聞くかの設計は、社外に丸投げできません。自社の工事の内容と現場の回し方で変わるからです。聞き取りの実施と、聞いた後の求人票と募集条件の見直しは、外に出せます。こういう選択肢もある、という程度に見てもらえれば十分です。


よくある質問

全員に実施したほうがいいですか?

辞める人全員にやるのが分かりやすいです。選ぶと「あの人は呼ばれて自分は呼ばれない」という話になります。

ただ、人数が多い年は負担が重くなります。その場合は、入社3年以内で辞めた人を優先します。高卒3年以内の離職率は建設業40.9%で、調査産業計36.9%を上回っています(大卒は建設業26.8%で、調査産業計31.2%を下回ります)。早く辞める人の理由から先に拾うのが順番として効きます。

断られたときに無理に行わないのは、全員に声をかける場合も同じです。

社長が聞いてもいいですか?

30名前後までの会社なら、社長が聞く場面も多いです。待遇や制度への要望はその場で判断できるので、話が早く進みます。

気をつけるのは2つです。1つは、その場で反論しないこと。もう1つは、給与や評価への不満は社長の前では出にくいと分かっておくことです。社長が決めた制度への批判は、社長本人には言いにくいからです。

給与の話が出てこなかった場合は、出なかったのではなく言えなかった可能性があります。全産業の調査では、いちばん実施されている上司との面談がいちばん本音が出ていませんでした。

面談を断られたらどうしますか?

1回声をかけて断られたら、そこで終わりにします。繰り返すと、考え直させるための呼び出しだと受け取られます。

代わりに、辞める理由を1枚の用紙で書いてもらう形を用意しておきます。口では言えないことが書かれることもあります。

書くほうも断られたら、引継ぎの打ち合わせのなかで出た言葉を記録に残します。それだけでも、次の人の理由と突き合わせる材料になります。

聞いた内容を現場の所長に伝えてもいいですか?

内容によって分けます。引継ぎや工程に関わることは伝えます。

所長本人への不満は、本人が特定できる形では渡しません。渡すと、辞める人にとっては面談に応じたことが不利に働きます。

半年分や1年分をまとめて、名前を外した形で共有するのが無理のない方法です。「この半年で辞めた3人のうち2人が、教えてもらえる相手がいなかったと答えています」という伝え方にします。

誰まで回すかを面談の前に決めて、冒頭で本人に伝えておきます。

本音を話してもらうには、どう声をかければいいですか?

目的をそのまま伝えます。「次に入る人が同じ理由で辞めないように、話を聞かせてほしい」。

そのうえで、使い方を先に言います。誰が見るのか、どうまとめるのか。本音を伝えなかった理由の1位は「本音を伝えても改善されないと思ったから」で41.5%でした。改善に使うと分かれば、話す側の理由が1つ増えます。

面談の中では、答えを評価しません。「それは違う」と1度返すと、残りの5つの質問は形だけになります。


まとめ|聞き手を決め、6つを聞き、1つ変える

まず目的を入れ替えます。引き止めではなく、次に辞める人を減らす材料を集める場に置きます。退職前の面談で引き止められた人は45%、それで退職を取りやめた人は5%でした。

次に聞き手を決めます。引継ぎの話は現場の所長、辞める理由の聞き取りは総務か社長に分けます。全産業の調査では、上司との面談が58.5%で最多でしたが、本音が出た割合は57.7%で最も低く出ています。

時期は引継ぎの見通しが立った後、1回30分から60分。退職手続きの事務とは別の日に置きます。断られたら繰り返しません。

聞く前に、利用目的と誰まで回すかを本人に伝えます。記録は残しますが、面談のメモを退職の事由の証明書に転記しません。労働基準法第22条第3項が、本人の請求しない事項を書いてはいけないと定めています。

質問は6つです。辞めようと思った時期と出来事、給料と手当、休みと土曜の回数、教えてもらえたか、次の会社との違い、1つだけ直すなら何か。

ハラスメントの話が出たら、面談の外に出します。相談窓口と事実確認の手順を先に決めておきます。中小企業も令和4年4月1日から義務の対象です。

最後に、聞いた話を1つだけ条件に戻します。給与の昇給の仕組みか、土曜の出勤の決め方か、教える人を決めることか。長岡塗装店は聞いた答えが育児だったところから制度を作り、11年のうち8年は退職者が0人でした。

自社の求人票と、この1年に辞めた人の理由があれば、どこから直すかを一緒に見られます。

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