建設業の離職率は全体10.1%、全産業平均より低い水準

「建設業は離職率が高い業界」というイメージを持たれる方が多いのですが、データで見るとそうでもありません。

厚生労働省の最新調査では、建設業の離職率は10.1%。全産業平均15.4%を大きく下回り、業種別ランキングでも上位ではありません(厚生労働省『令和5年雇用動向調査』)。

ただし、ここに2つの落とし穴があります。

  • 入職率(新しく入ってくる人の割合)は10.0%とほぼ同水準。「辞める人より入る人が多い」という構図にはなっていない
  • 高卒で入った人の3年以内離職率は43.2%。全産業平均より5ポイント以上高い

この記事では、業種別の離職率ランキング、過去の推移、新卒の3年以内離職率、女性の離職実態、離職1人あたりのコストまでを最新データで整理し、採用設計の側から立て直す方法をまとめます。

人手不足の構造解説は建設業の人手不足|2035年129万人不足の構造と打ち手、定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選が次のステップです。


業種別離職率ランキング(2023年)

業種別 離職率ランキング(2023年)

業種離職率建設業との差
宿泊・飲食サービス26.9%+16.8pt
生活関連・娯楽21.4%+11.3pt
全産業平均15.4%+5.3pt
医療・福祉15.3%+5.2pt
教育・学習支援14.5%+4.4pt
運輸・郵便13.0%+2.9pt
卸売・小売11.8%+1.7pt
建設業10.1%基準
製造業9.7%-0.4pt
情報通信9.3%-0.8pt

厚生労働省『令和5年雇用動向調査』より作成

建設業の10.1%は、製造業・情報通信業と肩を並べる水準です。宿泊・飲食サービスの26.9%と比べると、約2.7分の1の差があります。

「建設業=離職率が高い」という思い込みは、データ上は当たりません。


過去30年の推移

長い目で見ると、建設業の離職率は改善方向に動いてきました。

建設業 離職率の長期推移

建設業 離職率主な背景
1991年14.0%バブル崩壊直後
2002年18.6%公共投資削減で業界縮小・大量離職
2010年12.5%震災復興期に向けて落ち着く
2015年9.8%東京五輪・震災復興で需要増
2020年9.5%コロナ禍で人材流動が低下
2022年10.5%2024年問題前の人材移動
2023年10.1%直近最新値

厚生労働省『雇用動向調査』各年版より作成

ピークは2002年の18.6%。公共投資削減で業界全体が縮小したタイミングです。

その後は10〜13%台で落ち着き、直近では10%前後の安定推移。離職率の数字だけ見れば、業界としては改善してきています。

ただ、この10年で建設業の就業者数は685万人 → 477万人と30%減りました(国土交通省『最近の建設産業行政について』)。「辞める人が減った」のではなく「辞めにくい年代の人が増えた(高齢化)」という見方もできます。29歳以下の若手は11.7%しかいません。


本当の課題は新卒の3年以内離職率

業界の数字よりも深刻なのが、若手の早期離職です。

新卒3年以内離職率(2021年3月卒)

区分建設業全産業平均
大卒3年以内30.7%34.9%-4.2pt(建設業のほうが低い)
短大卒3年以内41.5%41.4%ほぼ同水準
高卒3年以内43.2%38.4%+4.8pt(建設業のほうが高い)

厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』より作成

大卒の3年以内離職率は全産業平均より低い水準にあります。技術職としてキャリアパスが見えやすい層は、定着しています。

問題は高卒です。10人入社して3年以内に4人以上が辞めている計算で、全産業平均より5ポイント高い数字です。

高卒の離職理由トップ3

採用支援の現場で聞かれる離職理由は、大きく3つに集約されます。

  1. 労働時間が長い: 年間労働時間は1,987時間で、製造業より31時間長い水準(厚生労働省『毎月勤労統計調査』2024年
  2. 収入が安定しない: 日給制の割合が高く、雨天や冬場で収入が落ちる
  3. キャリアの先が見えない: 「3年後・5年後にどうなれるか」が入社時に説明されていない

2024年4月から残業の上限規制(月45時間・年360時間)が建設業にも適用され、長時間労働は改善方向に動いています。一方で日給制の人は残業代の減少が手取りダウンに直結し、新たな離職リスクとして浮上しています。

詳しい打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手向け施策は建設業の若手採用ガイドにまとめています。


1人離職するごとに発生するコスト

「辞めたらまた採ればいい」という発想は、最もコストがかかる選択です。

離職1人あたりの損失額(モデル試算)

内訳新卒1人中途1人
採用コスト(広告・紹介料・面接工数)72.6万円84.8万円
在職中の人件費・社会保険488.1万円599.6万円
教育・研修コスト38.0万円12.7万円
離職後の引き継ぎ・補充コスト58.3万円76.9万円
合計約657万円約774万円

採用単価・教育コスト・生産性損失の業界平均をもとに当社試算

新卒1人が辞めると約657万円、中途なら約774万円の損失です。

従業員50名・離職率10%の会社なら、年間5人の離職で3,300〜3,900万円の損失になる計算です。離職率を5ポイント改善すれば、年1,600〜1,900万円の節約効果があります。

定着施策に投資する判断は、採用コストの削減として確実なリターンがあります。

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女性の離職率|採用は増えても定着が追いつかない

建設業で働く女性は約87万人、就業者全体の約17%(国土交通省『最近の建設産業行政について』)。新卒で入る女性建設技術者は、2012年の1,846人 → 2021年の4,053人で約2.2倍に増えました。

ただし、女性の定着には課題が残っています。

女性が辞めやすい要因

  • 現場の環境整備が遅れている: 女性専用トイレの設置率は約70%。3割の現場には未整備
  • 育児との両立が難しい: 建設業の育児休業取得率は66.9%(全産業平均86.6%より20ポイント低い)
  • 女性のロールモデルが少ない: 女性管理職がいない会社では、入社後のキャリアの先が見えにくい

女性を採用するだけでは離職を防げません。環境整備と育児制度の充実をセットで進める必要があります。

詳しい打ち手は建設業の女性採用ガイドにまとめています。


離職率を低く抑えている会社の共通点

業界平均より低い離職率を維持している会社には、共通したパターンがあります。

鹿島建設の例

2017年から進めている働き方改革で、現場の長時間労働を計画的に削減。直近5年の平均離職率は0.98%、2024年度単年でも1.2%と業界トップクラスの水準です。

中堅・中小での事例

  • ICT建機の導入と多能工化で作業工数を4〜5割削減 → 残業が減り、年間休日が増える → 定着率が改善
  • メンター制度・キャリアパスの明示・資格取得支援の3点セットで、新卒3年定着率が改善
  • 月給制への移行と最低保障額の設定で、収入の安定化と離職減を同時に実現

「他社がやっている取り組みをそのまま真似する」のではなく、自社の離職原因を把握したうえで、優先順位をつけて手を打つほうが結果につながります。


離職率を下げるために、まず動かす3つのこと

1|辞める本当の理由を聞く仕組みを作る

経営側が想像する離職理由と、実際に辞める人が抱えていた理由はズレることが多いです。

退職面談を仕組みにし、在職者にも年1回はキャリア面談を設けると、ズレを早めに掴めます。「給与の問題だと思っていたら、実はキャリアパスが見えないことが原因だった」というケースは珍しくありません。

2|入社3年目までに集中投資する

高卒3年以内離職率43.2%という数字は、最初の3年で勝負が決まることを示しています。

メンター制度、半年・1年・2年の節目での面談、資格取得スケジュール、キャリアパスの数字付きの提示。この4点を最低限揃えるだけで、3年定着率は変わります。

3|採用設計を見直して、入口の期待値ギャップを減らす

入社後すぐの離職には、採用時点での期待値ズレが影響しているケースが多いです。

求人票で給与・残業時間・休日を数字で開示し、面接で「何ができないと辞めることになるか」まで率直に伝える。入口で期待値を整えるほうが、入社後の定着率は安定します。

求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイドにまとめています。


「定着施策と採用、どちらも手が回らない」場合の選択肢

離職率を下げるには、原因の把握・制度の整備・現場への浸透という長丁場のステップが必要です。一方で、抜けた穴を埋める採用活動も止められません。

中小建設会社の人事担当は、総務や経理を兼任しているケースがほとんどです。両方を社内だけで回すのは、現実的に難しい場面が多くなります。

採用代行(RPO)は、求人票の作成・媒体運用・スカウト・応募者対応・紹介会社の管理までを外部の採用チームが引き受けるサービスです。求人広告や人材紹介の代わりではなく、それらをまとめて運用する役割を担います。月額10万〜30万円の建設特化型から段階的に始められるので、人事担当が定着施策に集中できる体制を作りやすいです。

仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。


よくある質問

Q. 建設業の離職率は高いですか?

業界全体では10.1%で、全産業平均15.4%より低い水準です(厚生労働省『令和5年雇用動向調査』)。ただし高卒3年以内離職率は43.2%で、全産業平均より5ポイント高い課題があります。

Q. なぜ高卒の離職率だけ高いのですか?

長時間労働・日給制による収入の不安定さ・キャリアパスが見えないことの3点が主な要因です。最初の3年でこれらを解決できる仕組みを持っている会社は、定着率を大きく改善できています。

Q. 1人辞めるとどれくらい損失が出ますか?

新卒で約657万円、中途で約774万円のモデル試算です。採用コスト・教育コスト・補充コスト・引き継ぎコストを足した数字で、辞めるたびにこの損失が積み上がります。

Q. 女性の離職率はどう改善しますか?

トイレ・更衣室など現場の環境整備と、育児休業制度の運用、女性ロールモデルの可視化の3つをセットで進めます。採用するだけでは定着せず、入社後の働き続けやすさで差がつきます。詳しくは建設業の女性採用ガイドにまとめています。

Q. 離職率を改善する一番効く手は何ですか?

入社3年目までの集中サポートです。メンター制度・節目の面談・キャリアパスの明示・資格取得スケジュールの4点で、3年定着率を底上げできます。同時に、求人票で期待値ギャップを減らす設計も効きます。


まとめ|離職率は「全体は低い、若手と女性に課題」

  • 建設業の離職率は10.1%で、全産業平均15.4%を下回る水準。業種別では中位
  • 30年スパンでは改善方向。ただし就業者数自体が30%減っているので「辞めにくい層が残った」面もある
  • 課題は新卒の早期離職。高卒3年以内離職率は43.2%で全産業平均より5ポイント高い
  • 1人の離職で新卒657万円・中途774万円のコスト。離職率を5ポイント改善すれば年間数千万円の節約効果
  • 女性は採用が増えても定着が追いつかない。環境整備+育児制度+ロールモデルの3点セット
  • 離職率改善で動かす3つ: 辞める本当の理由を聞く仕組み/3年目までの集中投資/求人票の期待値ギャップ修正

離職率を下げる打ち手は、定着施策だけでなく採用設計の側にも入口があります。「入る前に伝えきる」「入った後に手厚く育てる」を両輪で回すと、若手の定着が変わります。

次の一歩として、定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手採用は建設業の若手採用ガイド、女性採用は建設業の女性採用ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、採用代行の仕組みは採用代行(RPO)とは?をあわせてご覧ください。

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