建設業の離職率は10.1%、16産業のうち下から4番目

「建設業は離職率が高い業界だ」という見方をよく聞きます。ところが数字で確かめると、そうなっていません。

2023年(令和5年)の調査では、建設業の離職率は10.1%でした。全産業をまとめた産業計は15.4%ですから、5ポイント以上低い水準です(厚生労働省『令和5年雇用動向調査』)。

結論から言うと、建設業の離職率は業種別で見れば低いほうで、課題は高卒の若手と、女性が働き続けられる環境に集まっています。

見落としやすい点が2つあります。

  • 入職率(新しく入ってくる人の割合)は10.0%で、離職率とほぼ同じです。辞めた人数と入った人数が釣り合っているだけで、人数が増える形にはなっていません
  • 高卒で入った人の3年以内離職率は43.2%。全産業より約4.8ポイント高い数字です(こちらは『新規学卒就職者の離職状況』という別の調査です)

人手不足の全体像は建設業の人手不足の構造と打ち手、定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選で扱っています。


業種別の離職率ランキング(2023年)

業種別 離職率ランキング(2023年・令和5年)

産業離職率建設業との差
生活関連サービス,娯楽28.1%+18.0pt
宿泊,飲食サービス26.6%+16.5pt
サービス業(他に分類されないもの)23.1%+13.0pt
不動産,物品賃貸16.3%+6.2pt
産業計15.4%+5.3pt
教育,学習支援14.8%+4.7pt
医療,福祉14.6%+4.5pt
卸売,小売14.1%+4.0pt
情報通信12.8%+2.7pt
学術研究,専門・技術サービス11.5%+1.4pt
金融,保険10.5%+0.4pt
電気・ガス・熱供給・水道10.4%+0.3pt
運輸,郵便10.3%+0.2pt
建設業10.1%基準
製造業9.7%-0.4pt
鉱業,採石業,砂利採取業9.2%-0.9pt
複合サービス事業7.8%-2.3pt

厚生労働省『令和5年雇用動向調査』より作成。対象は就業形態計・事業所規模5人以上の常用労働者

この数字は正社員だけのものではありません。パートや契約社員も含みますし、定年退職や契約期間の満了も離職として数えられています。

16の産業のうち、建設業より離職率が低いのは製造業・鉱業・複合サービス事業の3つだけです。建設業は下から4番目にあたります。

いちばん高い生活関連サービス,娯楽は28.1%で、建設業との差は18.0ポイント。宿泊,飲食サービスの26.6%と比べると、建設業はその4割弱です。

「建設業は離職率が高い」という思い込みは、この表の範囲では当たりません。会社説明会や求人票で、この数字はそのまま説明材料に使えます。

青空にそびえる複数のタワークレーンと建設中の高層ビル
写真: taro ohtani / Unsplash

1991年から2023年までの推移

建設業の離職率の推移

年建設業の離職率
1991年15.1%
1997年17.5%
2002年18.6%
2010年11.4%
2015年9.4%
2020年9.5%
2022年10.5%
2023年10.1%

厚生労働省『雇用動向調査』年次別推移 第2表 産業(大分類)別入職・離職率より作成。対象は就業形態計・事業所規模5人以上の常用労働者

いちばん高かったのは2002年の18.6%で、1991年以降で最も高い数字です。公共投資が絞られ、業界全体が縮んでいった時期にあたります。

直近の数年は9%台から10%台で動いています。上下の幅だけを見れば、落ち着いた水準です。

ただし、就業者の数そのものは減り続けてきました。1997年(平成9年)のピークで685万人だった建設業の就業者は、2024年(令和6年)に477万人になりました。約30年で3割減った計算です。29歳以下は全体の11.7%しかいません(国土交通省『最近の建設産業行政について』(令和7年9月))。

減り方はここ10年でゆるやかになりました。2014年の約500万人から2024年の477万人で、5%ほどの減少です。離職率が10%前後で落ち着いてきた時期と、この鈍化の時期は重なります。

それでも、入ってくる若手の数が細いままなら人数は戻りません。離職率の低さは、人が足りている証明にはなりません。


本当の課題は新卒3年以内の離職率

新卒3年以内離職率(2021年・令和3年3月卒)

区分建設業全産業差
大卒3年以内30.7%34.9%-4.2pt(建設業のほうが低い)
高卒3年以内43.2%38.4%+4.8pt(建設業のほうが高い)

厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』、別紙2、別紙3より作成

厚生労働省が産業別の3年以内離職率を公表しているのは、高卒と大卒の2つです。

大卒は30.7%で、全産業の34.9%より低くなっています。技術職として先の道筋を示しやすい分、会社に残りやすいと見られます。

問題は高卒です。43.2%は、10人入って3年以内に4人以上が辞める水準。全産業との差は約4.8ポイントです。

高卒の若手が辞める3つの理由

  1. 労働時間が長い: 建設業の年間労働時間は1,987時間で、製造業より31時間長くなっています。調査産業計は1,939時間で、差は48時間です(国土交通省『最近の建設産業行政について』(令和7年9月)。令和6年度・事業所規模5人以上・パートタイムを除く一般労働者)
  2. 収入が安定しない: 日給制の割合が高く、雨で現場が止まる日や冬場に手取りが落ちます
  3. 先の道筋が見えない: 3年後・5年後にどんな仕事をして、いくらもらえるのか。入社のときに説明されていないケースが目立ちます

2024年4月から、残業の上限規制(月45時間・年360時間)が建設業にも適用されました。長時間労働は改善の方向に動いています。なお、災害が起きたあとの復旧・復興の工事には、上限の一部が適用されない例外が設けられています。

一方で、日給制で働く人は残業代が減ると手取りがそのまま下がります。規制が新しい離職の理由になる場合もあります。

定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手向けの設計は建設業の若手採用ガイドで具体例を置いています。


1人辞めると、何が消えるのか

「辞めたらまた採ればいい」という進め方が、いちばんお金と時間のかかるやり方です。

1人が辞めると、その人を採るためにかけた広告費や紹介手数料、書類選考と面接に使った時間が、まとめて消えます。入社後に現場で教えてきた時間も戻りません。

高卒で43.2%が3年以内に辞めるということは、この消え方が10人に4人以上で起きているということです。

木材にかんなをあてる職人の手元
写真: Đậu Photograph / Pexels

自社の採用にいくらかかっているかを把握していない会社は、この損の大きさに気づけません。手法ごとの費用の目安は建設業の求人費用はいくら?で扱っています。まず自社の実額を出すところから始めてください。


女性の離職|採用は増えている。環境づくりは道半ば

建設業で働く女性は88万人で、就業者全体の18.4%にあたります。比率としては過去最高です(2025年。日本建設業連合会『建設業デジタルハンドブック』4.建設労働。元データは総務省『労働力調査』)。

新卒で入る女性の建設技術者は、2012年の1,846人から2021年の4,053人へ、約2.2倍に増えました(ヒューマンリソシア『女性活躍に関するレポート② 建設業界編』。元データは文部科学省『学校基本調査』の大学・大学院新卒)。

定着について、国土交通省は「入職者数に対する離職者数の割合についても全産業と比べて高い年があるなど、女性の定着はまだ不十分」としています(国土交通省『最近の建設産業行政について』(令和7年9月))。採用は増えていますが、働き続けられる状態になったとは言えません。

追いついていない3点

  • 現場の設備: トイレや更衣室の整備は現場によってばらついています。女性が入る前提で作られていない現場が残っています
  • 育児との両立: 女性の育児休業取得率は建設業66.9%、全産業86.6%。20ポイントほど低い水準です。男性は建設業35.5%、全産業40.5%でした(厚生労働省『令和6年度雇用均等基本調査』)
  • 身近な先例が少ない: 女性の管理職がいない会社では、入社後の道筋を社内の例で示せません

採用の人数を増やすだけでは、この3点は動きません。設備と制度をあわせて進めるほうが、すでに採った人が残ります。

女性採用の具体策は建設業の女性採用ガイドにまとめています。

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離職率を低く抑えている会社は何をしているか

鹿島建設の場合

鹿島建設は2017年度に働き方改革の骨子をまとめ、2018年度から実行に移しました。同社が公表している人事データでは、直近5年(2021年度〜2025年度)の離職率の平均が1.10%、2025年度の単年では1.3%です。入社3年以内の離職率は2025年度で4.2%でした(鹿島建設『サステナビリティデータ(人事データ)』)。

ただし、この数字を先の10.1%と並べて比べないでください。鹿島の数値は同社単体の正社員を対象にしたもので、10.1%のほうはパートや契約期間の満了、定年退職まで含む常用労働者全体の数字です。算定の範囲が違うので、そのまま高い低いを言える関係にはありません。

中堅・中小が打てる型

  • 機械と作業のやり方を変える: 国土交通省の調査では、ICT建機(3次元データで動きを自動制御する建設機械)を使った土工で、起工測量から工事完成までの延べ作業時間が31.2%減りました。前年度の調査でも28.3%の削減です(国土交通省『直轄工事における生産性向上の取組について』(i-Construction推進コンソーシアム 企画委員会 資料))。作業時間が減れば、残業と休日の条件を変えられます
  • 入社3年目までの支えを一式そろえる: メンターをつける、キャリアの道筋を示す、資格取得を会社が支える。この3つはばらばらに置くより、ひとまとめの制度にしたほうが現場に伝わります
  • 収入の波を小さくする: 日給制から月給制に移す、または最低保障額を決める。雨や冬場で手取りが落ちる不安に、直接あたる打ち手です

他社の取り組みをそのまま写しても、自社で辞めている理由と合っていなければ効きません。先に理由をつかみ、順番をつけて手を打つほうが結果につながります。

結束された鉄筋が積み重ねられた様子
写真: Marco Damm / Pexels

離職率を下げるために、まず動かす3つのこと

1|辞める本当の理由を聞く仕組みを作る

経営側が思っている離職の理由と、辞めた人が抱えていた理由は、よくずれます。

退職のときの面談を仕組みにして、在職中の人にも年1回はキャリアの面談を設けてください。「給与の問題だと思っていたら、先の道筋が見えないことが原因だった」という話は珍しくありません。

聞いた内容は、会社として1枚にまとめて残します。個人の記憶に置いておくと、次の年に活かせません。

2|入社3年目までを手厚くする

高卒3年以内離職率43.2%という数字は、最初の3年で結果が決まることを示しています。

メンターをつけること、半年・1年・2年の節目で面談すること、資格を取る順番と時期を示すこと、給与が何年目にいくらになるかを数字で見せること。この4つがそろっているかを確かめてください。

すべて新しく作る必要はありません。すでにやっていることを、文書にして新入社員に渡すだけでも伝わり方が変わります。

3|採用の入口で期待値のズレを減らす

入社してすぐの離職には、採用のときの説明不足がかかわっています。

求人票に給与・残業時間・休日を数字で書き、面接で「どんな人が続かないか」まで率直に伝えてください。入口で期待値をそろえておくほうが、入社後の定着は安定します。

求人票の直し方は建設業の求人票の書き方に例文つきで載せています。採用の全体設計は建設業の採用戦略ガイドで扱っています。


「定着施策と採用、どちらも手が回らない」ときの選択肢

離職率を下げるには、理由をつかみ、制度を整え、現場に根づかせるまで、会社にとっては長い道のりになります。その間も、抜けた穴を埋める採用は止められません。

中小の建設会社では、人事の担当者が総務や経理を兼ねているのが普通です。両方を社内だけで回すのは、人数の面で難しくなります。

採用代行(RPO)は、求人票の作成・求人媒体の運用・スカウト・応募者への対応・紹介会社のとりまとめまでを、外部の採用チームが引き受けるサービスです。人材紹介や求人広告の代わりではありません。それらをまとめて動かす立ち位置になります。

人材紹介は、建設業の有資格者に確実に会える手段です。使うこと自体は正しくて、上手に使いこなせるかどうかで効き方が変わります。要件の伝え方、推薦が来たときの返信の速さ、見送った理由の返し方。ここを詰めると推薦の質が変わります。

建設特化の価格帯は月額20万〜30万円が目安で、これとは別に媒体費がかかります。最小構成から始めれば、人事の担当者が定着の仕事に時間を使えるようになります。

仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用の内訳は採用代行の費用相場ガイドで扱っています。


よくある質問

Q. 建設業の離職率は高いですか?

2023年(令和5年)の調査では10.1%で、産業計の15.4%より低い水準です。16の産業のうち下から4番目にあたります(厚生労働省『令和5年雇用動向調査』)。ただし高卒の3年以内離職率は43.2%で、全産業より約4.8ポイント高くなっています。

Q. なぜ高卒の離職率だけ高いのですか?

労働時間の長さ、日給制による収入の不安定さ、先の道筋が見えないことの3点が主な理由です。入社から3年のあいだにこの3つに手を打てている会社は、定着の数字が変わっています。

Q. 1人辞めると、会社はどれだけ損をしますか?

金額で答えられる公的な統計はありません。分かっているのは、採用にかけた広告費や紹介手数料、選考に使った時間、入社後に教えてきた時間が、まとめて消えるということです。自社で計算するなら、採用にかかった費用の実額から積み上げてください。手法ごとの費用の目安は建設業の求人費用はいくら?で扱っています。

Q. 女性の離職はどう改善しますか?

トイレや更衣室といった現場の設備、育児休業の実際の運用、社内の先例の見せ方。この3つをあわせて進めます。採用の人数を増やすだけでは残りません。詳しくは建設業の女性採用ガイドにまとめています。

Q. 離職率を下げるなら、まず何から手をつけますか?

入社3年目までの支えです。メンター、節目の面談、キャリアの道筋、資格取得の順番の4つで、3年定着率を底上げできます。あわせて求人票で期待値のズレを減らすと、入口からの取りこぼしが減ります。


まとめ|全体は低い。課題は高卒の若手と女性の環境

  • 建設業の離職率は10.1%。産業計15.4%より低く、16産業のうち下から4番目です(2023年・令和5年の調査)
  • 入職率は10.0%で離職率とほぼ同じ。辞めた人数と入った人数が釣り合っているだけの状態です
  • いちばん高かったのは2002年の18.6%。直近の数年は9%台から10%台で動いています
  • 就業者は1997年の685万人から2024年の477万人へ。約30年で3割減り、29歳以下は11.7%です
  • 高卒の3年以内離職率は43.2%で、全産業より約4.8ポイント高い。一方で大卒は30.7%で全産業より低い水準です
  • 女性は88万人で全体の18.4%。比率は過去最高ですが、国土交通省は女性の定着はまだ不十分としています
  • まず動かすのは3つ。辞める理由を聞く仕組み/3年目までの手厚い支え/採用の入口での期待値合わせ

離職を止める入口は、定着の制度だけではありません。採用の側にもあります。入る前に伝えきることと、入った後に手厚く育てること。この両方を回すと、若手の残り方が変わります。

次の一歩として、定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手採用は建設業の若手採用ガイド、女性採用は建設業の女性採用ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方をあわせてご覧ください。

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