建設業の有給取得率60.7%、現場の閉所66.4%、3年以内離職43.2%

建設業の有給休暇の取得率は60.7%です。2年前の令和5年調査では57.5%でしたから、3.2ポイント上がりました。

ただし前年の令和6年調査も60.7%です(厚生労働省『令和6年就労条件総合調査』)。直近の1年は横ばいです。

全産業の平均は66.9%です。建設業とは6ポイント以上の差が残っています(厚生労働省『令和7年就労条件総合調査』)。

4週のうち8日、現場そのものを閉める取り組みを「4週8閉所」と呼びます。日本建設業連合会の会員企業では、2025年度の上半期に66.4%まで上がりました。前年の同じ時期は61.1%ですから、5.3ポイント増えています(日本建設業連合会『週休二日実現行動計画 2025年度上半期フォローアップ報告書』)。

一部は動きました。それでも、高卒で入った若手の3年以内離職率は43.2%のままです(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。

結論から言うと、制度を金額と日数で書き出して、そのまま求人票に載せるところから、福利厚生は採用の力になります。

「福利厚生充実」の一言では、他社と比べてもらえません。

定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、求人票の作り方は建設業の求人票の書き方もあわせてご覧ください。


福利厚生が採用と定着に効く理由

賃上げだけでは、80万円の差が埋まらない

現場で働く技能者(統計でいう生産労働者)の年収は、令和7年で465万円です。前年より4.9%増えました。全産業の平均は545万円で、伸びは3.5%です。

伸び率では建設業が上回っています。それでも、80万円の差が残ったままです(国土交通省『建設業を巡る現状と課題』参考資料集(令和8年4月))。

この差を毎年の賃上げだけで詰めるのは、中小の建設会社には重い話です。だからこそ、お金以外の待遇で差をつける余地が残ります。

1人辞めると、657万〜774万円が消える

1人辞めたときの損失は、新卒でおよそ657万円、中途でおよそ774万円。求人にかけた費用、教育の時間、抜けた穴が埋まるまでの目減りを足したモデル試算です(建設業の離職率|業種別ランキング)。

従業員50名で離職率が10%の会社なら、離職率を5ポイント下げるだけで年間1,600万〜1,900万円の計算になります。

「制度整備に予算が出ない」ではなく、「離職で消えている分を制度に振り替える」という順番で考えてください。

今いる社員が、この会社を選んだ理由

厚生労働省が建設業の技能労働者2,906人に「今の会社に就職する際に重視したこと」を聞いた調査があります(複数回答)。

1位は「仕事の内容」で50.2%。次いで「賃金の額」が23.7%、「地元の企業であること」が16.6%でした(厚生労働省『建設業における雇用管理現状把握実態調査』令和5年度)。

賃金は2番手です。仕事の中身と、働く場所。この2つをどう見せるかで応募が動きます。

木の棚に色とりどりの建設用ヘルメットが整然と並ぶ
写真: ClickerHappy / Pexels

採用と定着に効く7つの制度

制度1|資格取得支援

建設業のキャリアは資格と直結しています。資格が1つ増えるたびに、若手は自分の伸びを数字で確認できます。

資格取得支援の設計例

項目内容金額の目安
受験費用全額を会社が負担年1〜10万円/人
テキスト・講習費全額、または上限を決めて補助年5〜10万円/人
合格祝い金合格した年に一度だけ支給1級5万円・2級3万円
資格手当毎月の給与に上乗せ1級月3〜5万円・2級月1〜2万円
勉強時間の確保試験前1か月は残業を免除する運用ルールを社内で文書にする

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

建設業に絞った公的な手当統計は見当たりません。目安として、全産業の技能手当・技術(資格)手当などの平均は月21,500円、支給している企業は19.5%です(厚生労働省『令和7年就労条件総合調査』)。

採用の力にするなら、この平均を上回る設計が要ります。

求人票では「資格取得支援あり」で止めず、金額まで書きます。「1級施工管理技士 受験費用は全額会社負担、合格祝い金5万円、資格手当は月3万円」と並ぶと、若手が数年先の手取りを思い描けます。

制度2|退職金制度

退職給付の制度を設けている建設業の企業は82.9%です。全産業の平均74.9%を上回っています(厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』)。

つまり、退職金があるだけでは差になりません。差がつくのは組み合わせ方です。

3つの退職金制度の違い

制度対象掛金強み
建設業退職金共済(建退共)現場で働く人証紙は日額320円会社が変わっても積み立てが続く
中小企業退職金共済(中退共)常時雇っている社員月5,000〜30,000円掛金の全額を損金にできる
企業型確定拠出年金全従業員上限は月55,000円運用で増えた分に税金がかからない

建設業退職金共済事業本部中小企業退職金共済事業本部厚生労働省『確定拠出年金制度の対象者』より作成

建退共は業界共通の制度で、会社を移っても掛金が通算されます。中退共は中小企業向けの制度で、社員一人ひとりに掛金を積んでいく形です。企業型確定拠出年金は、掛金を会社が出し、社員が自分で運用先を選ぶ年金です。

企業型確定拠出年金の上限は、2026年12月1日から月62,000円に引き上げられます。この62,000円は、企業型と個人型(iDeCo)を合わせた枠です(厚生労働省『確定拠出年金制度の対象者』)。制度を入れるなら、この改定を前提に設計してください。

「長く働くほど手元に残る」と分かる形にすると、若手の定着につながります。

制度3|住宅手当・社員寮

施工管理職は現場が変わるたびに引っ越しが必要になります。住宅の補助は、そのまま手取りの上乗せとして受け取られます。

導入している会社でよく見かける水準は次のとおりです。

  • 住宅手当: 月2万〜5万円
  • 社員寮: 都市部の単身寮で自己負担は月1万〜3万円
  • 借り上げ社宅: 会社が借りた部屋を月3万〜5万円で使う

全産業の住宅手当などの平均は月18,700円、支給している企業は45.7%です(厚生労働省『令和7年就労条件総合調査』)。

都市部の現場に人を呼びたい会社ほど、家賃の高い地域での補助が応募数に効きます。

制度4|食事補助

現場では昼食の選択肢が限られます。食事の補助は地味ですが、毎日のことなので社員の実感に残ります。

  • 食事手当(月5,000〜10,000円)
  • 食事チケットの配布
  • 弁当代の会社補助
  • 事務所での朝食提供

中小でも、従業員1人あたり年10万円ほどの負担から始められます。同じ制度を持つ会社が地域に少なければ、それだけで比べられたときの差になります。

制度5|週休2日と残業の上限

2024年4月から、建設業にも残業の上限規制(月45時間・年360時間)が適用されています。

日本建設業連合会は2025年12月に「作業所閉所推進ロードマップ」を作りました。2035年度までに、会員企業のおおむね全ての作業所で土日祝日に一斉に閉所する(年間130日閉所)ことを目指しています。中間の目標は、2030年度までに半数の作業所で年間130日の閉所です(日本建設業連合会『作業所閉所推進ロードマップ』)。

一方で現場の実態はまだ追いついていません。4週8休以上で働けている人は技術者で29.4%、技能者で28.6%。もっとも多いのは「4週6休程度」です。建設業の年間出勤日数は、全産業より10日多いままです(国土交通省『建設業を巡る現状と課題』参考資料集(令和8年4月))。

だからこそ、休みの実績を数字で出せる会社が目立ちます。求人票では、ここまで具体的に書いてください。

  • 「年間休日110日(土曜は月2回出勤、日祝休み、夏季5日・年末年始6日)」
  • 「月平均の残業20時間(繁忙期は30〜40時間、閑散期は10時間)」
  • 「有給取得率は直近の実績で65%」

背景は建設業の2024年問題、賃上げと組み合わせた処遇改善は建設業の賃上げ動向で扱っています。

青空に向かって伸びる足場の階段と現場を覆う防護シート
写真: Mathias Reding / Pexels

制度6|安全・健康・環境への投資

現場を快適に、安全にするための出費は、若手にも女性にもきちんと伝わります。

  • 熱中症対策手当(夏季に月5,000〜10,000円)
  • 空調服・防寒具の全額支給
  • 作業着・安全靴・保護具の全額支給
  • 健康診断の上乗せ(人間ドック補助、35歳以上は検査項目を追加)
  • 女性用のトイレ・更衣室の整備(建設業の女性採用参照)

「自分が大事にされている」と感じてもらえるかどうかが分かれ目です。給与の幅で差をつけにくい中小の会社ほど、ここが大きく響きます。

制度7|相談できる窓口をつくる

厚生労働省の同じ調査では、若い世代ほど「職場の人間関係の良さ」を重く見ています。5点満点で聞いた平均点は、若年層4.15、全体4.03でした(厚生労働省『建設業における雇用管理現状把握実態調査』令和5年度)。

現場に入ったばかりの若手は、困りごとを誰に言えばいいか分かりません。受け皿を先に用意しておきます。

  • 社外の相談窓口(月1万〜3万円程度で契約できます)
  • 先輩が担当につく仕組み(メンター制度)。引き受けた人には手当を出す
  • 1対1の面談を、就業時間の中に入れる
  • ハラスメントの相談窓口を、通常の指揮命令から切り離して運用する

人材育成とセットで考える話なので、建設業の人材育成ガイドもあわせてご覧ください。

福利厚生と採用設計、両輪で動かす相談を承ります

建設業特化の採用コンサルタントが、御社の規模・職種・地域に合わせて、福利厚生制度の組み合わせ・求人票への反映・採用代行の活用までを無料でご提案します。月額20万円〜の建設特化採用代行で、福利厚生を採用力に変えるご相談からどうぞ。

無料で相談する

助成金で整備コストを抑える

福利厚生の整備で使える主な助成金

制度対象支給額
人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)現場環境の整備、若手・女性が働きやすい制度づくり一事業年度あたり上限200万円(中小の建設事業主は対象経費の5分の3)
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)残業の削減、有給取得の促進、勤怠の仕組みづくり助成率4分の3・上限は最大550万円
キャリアアップ助成金(正社員化コース)有期雇用から正社員に転換する重点支援対象者は1名で最大80万円
トライアル雇用助成金(建設業の上乗せ分)35歳未満の若手を試行雇用する上乗せ分は月4万円×最長3か月=上限12万円
中退共の掛金助成新しく中退共に加入する掛金月額の2分の1(1人あたり上限5,000円)を、加入4か月目から1年間

厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』厚生労働省『令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内』より作成

人材確保等支援助成金では、令和8年度から定着助成が新しく設けられました。経費の助成を受けたうえで、新しく入った人が6か月続けて働けば、1人につき42万円。年3人までで、上限は126万円です(厚生労働省『建設事業主等に対する助成金のご案内(令和8年度)』)。

助成金の全体像は建設業の助成金ガイドに載せています。全額を助成金でまかなうのは難しいので、費用の一部を戻しながら段階的に進めるのが地に足のついた進め方です。


制度を作るより、求人票で見せる

福利厚生は、整備しても求人票や採用ホームページに出ていなければ採用の力になりません。

求人票に書くべき具体例

  • 「1級施工管理技士 資格手当 月3万円」(金額まで出す)
  • 「建退共+中退共+企業型確定拠出年金の3階建て」(制度名を出す)
  • 「住宅手当 月3万円。独身寮あり、自己負担は月1万円」
  • 「年間休日110日/月平均の残業20時間/有給取得率65%」(数字で出す)

「福利厚生充実」という言い方は、若い世代には届きません。他社と比べている途中の求職者にとっては、金額と日数だけが判断材料になります。

青空を背に、建設中の建物のそばで腕を伸ばす赤と白のタワークレーン
写真: Anatolii Grytsenko / Pexels

求人票の作り方は建設業の求人票の書き方に、7つのコツとビフォーアフターの例文を載せています。他社の動き方は建設業の採用成功事例5選で扱っています。

求人票と採用ホームページは外に出す。社内の手は制度づくりへ

制度の整備と並行して、求人票や採用ホームページの作り直しまで社内で抱えると、どちらも中途半端になります。

月額20万〜30万円(+媒体費)の建設特化の採用代行なら、求人票の作成、媒体の運用、紹介会社のとりまとめ、採用ホームページの原稿づくりの提案までを引き受けられます。

採用の手法や媒体は毎年のように移り変わります。社内の人だけで追いかけるのは負担が大きいので、建設業に特化した採用代行と組むのを基本線に置いてください。そのうえで、社内の手を制度の整備に振り向けます。

仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドで扱っています。


規模別の進め方

従業員規模ごとの始め方

従業員数まず手を付ける制度次に足す制度
10〜30名建退共の運用整備、受験費用の全額負担、空調服・安全靴の全額支給合格祝い金と資格手当。休日と残業の実績を求人票に出す
30〜80名資格手当を等級ごとに文書化、中退共の上乗せ、住宅手当熱中症対策手当、健康診断の上乗せ、社外の相談窓口
80名以上企業型確定拠出年金、借り上げ社宅、年間休日の目標を数字で公表先輩が担当につく仕組みの手当化、女性用設備の整備

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

人数の少ない会社ほど、制度の数より使いやすさが効きます。証紙の貼り忘れをなくす、受験費用の立て替えをやめる。その程度の見直しでも、社員には伝わります。

人数が増えるほど、制度を文書にしておく必要が出てきます。等級ごとの手当額と対象者を紙に落としておくと、求人票にそのまま転記できます。手当の額を決めるときは、社員に渡す金額と、離職で消えている金額を並べて見てください。


よくある質問

Q. 福利厚生の整備にどれくらいコストがかかりますか?

優先度の高い3つ(資格取得支援・退職金制度の見直し・休日の確保)に絞れば、初年度は従業員1人あたり年10万〜30万円から始められます。1人辞めたときの損失が657万〜774万円であることを考えると、十分に回収できる範囲です。

Q. まず何から始めればいいですか?

低コストで効果が見えやすい3つからです。受験費用の全額負担と合格祝い金、建退共の運用整備、そして残業時間・休日・有給取得率を求人票で数字のまま出すこと。この3つで応募と定着の両方が動き始めます。

Q. 求人票で福利厚生を魅力的に見せるコツは?

金額・期間・対象者を数字で出すことです。「資格手当あり」ではなく「1級施工管理技士は月3万円、2級は月1万5,000円」。「年間休日多め」ではなく「年間休日110日(内訳付き)」。ここまで細かく書きます。

Q. 助成金で全部カバーできますか?

全額は難しいです。ただ、戻せる額は小さくありません。人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)は一事業年度あたり上限200万円。働き方改革推進支援助成金の業種別課題対応コースは、助成率4分の3で上限は最大550万円です。詳細は建設業の助成金ガイドに載せています。

Q. 採用代行は福利厚生の整備にも関わりますか?

採用代行の中心は採用業務の運用です。そのうえで、求人票での福利厚生の見せ方や、採用ホームページの原稿づくりの提案まで引き受けられます。「制度を作る」と「制度を伝える」の両方を相談できる相手として使ってください。


まとめ|福利厚生は採用力と定着力の両方に効く

  • 有給取得率は60.7%(全産業66.9%)、4週8閉所は2025年度上半期で66.4%、高卒3年以内離職率は43.2%
  • 建設業の年収は465万円で前年比4.9%増。それでも全産業とは80万円の差が残る
  • 1人辞めると新卒657万円・中途774万円の試算。福利厚生はかけた分が返ってくる支出
  • 7つの制度は資格取得支援/退職金/住宅手当/食事補助/週休2日と残業上限/安全と健康/相談窓口
  • 助成金で整備費用の一部を戻せる。人材確保等支援助成金は一事業年度あたり上限200万円
  • 制度は作るだけでは効かない。金額・期間・対象者を求人票に数字で出して初めて応募が動く

福利厚生は「あれば嬉しい」から「なければ応募が来ない」に変わりました。負担に見える制度も、1人の離職を止められれば元が取れます。

次の一歩として、定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、助成金は建設業の助成金ガイドもあわせてご覧ください。

福利厚生を採用力に変える設計、一緒に動かしませんか?

求人票の作り直しから媒体の運用、紹介会社のとりまとめ、福利厚生整備のご提案まで、建設業特化のチームが御社の規模に合わせてご提案します。月額20万円〜の建設特化採用代行で、福利厚生を応募と定着に変えるご相談からどうぞ。

サービス内容を見る