建設業の有給取得率57.5%、4週8閉所61.1%、3年離職43.2%
建設業の福利厚生は、「あれば嬉しい」から「ないと応募が来ない」段階に入ってきました。
建設業の有給休暇取得率は57.5%と全産業平均62.1%を下回り、4週8閉所(実質週休2日)を実現している現場は61.1%(国土交通省資料)。新卒3年以内離職率は高卒で43.2%と、若手の早期離職が止まりません(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。
求職者は給与だけでなく、福利厚生の中身まで比較しています。とくに新卒・若手は「3年後・5年後にどう成長できるか」「家族との時間を確保できるか」「資格取得を支援してもらえるか」を入社前にチェックします。
この記事では、建設業の採用と定着に効く7つの福利厚生制度を、整備のポイント・コスト感・求人票への反映方法までセットでまとめます。
定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選、賃上げ動向は建設業の賃上げ動向、求人票の作り方は建設業の求人票の書き方もあわせて参考になります。
福利厚生が採用と定着に与える影響
離職1名で約657〜774万円の損失
新卒1人の離職で約657万円、中途で約774万円のコスト損失モデル試算(建設業の離職率|業種別ランキング参照)。福利厚生への投資は単なる「コスト」ではなく、離職コストを抑える投資としてはっきりした回収根拠があります。
従業員50名・離職率10%の会社で、離職率を5pt下げるだけで年間1,600〜1,900万円の節約効果。「制度整備に予算が出ない」ではなく、「離職コストの一部を制度整備に振り替える」発想が起点になります。
福利厚生は求人票で見られる
厚生労働省の調査では、建設業を選ぶときに求職者が重視するのは「仕事の内容」50.2%、「賃金の額」23.7%、「地元の企業」16.6%(厚生労働省『建設業における雇用管理現状把握実態調査』令和5年度)。賃金以外で差をつけるなら、福利厚生の具体的な内容と数字を求人票で見せる必要があります。
求人票に「福利厚生充実」と書くだけでは伝わりません。資格手当の金額・退職金制度の種類・住宅手当の金額まで明示するのが、応募率を動かす起点になります。
建設業の採用・定着に効く7つの制度
制度1|資格取得支援
建設業のキャリアは資格と直結しているので、資格取得支援はもっとも効きやすい制度です。
資格取得支援の整備例(相場)
| 項目 | 内容 | 相場 |
|---|---|---|
| 受験費用 | 全額会社負担 | 年間1〜10万円/人 |
| テキスト・講習費 | 全額または上限付き補助 | 年間5〜10万円/人 |
| 合格祝い金 | 1級5万円・2級3万円が相場 | 資格取得時のみ |
| 資格手当 | 1級月3〜5万円・2級月1〜2万円 | 継続的な処遇改善 |
| 資格勉強休暇 | 試験前1か月の残業免除など | 運用ルールを社内で明文化 |
建設業採用支援の実務ベースで作成
求人票では「資格取得支援あり」だけでなく、金額まで具体的に書きます。例えば「1級施工管理技士 受験費用全額負担+合格祝い金5万円+月額3万円の資格手当」と並べると、若手のキャリア感が一段リアルになります。
制度2|退職金制度
建設業には業界共通の退職金制度として「建設業退職金共済(建退共)」があり、退職給付制度を設けている企業は82.9%(厚生労働省『就労条件総合調査』)。基本ラインとしては整備されています。
差別化するなら、建退共+中退共+企業型確定拠出年金の組み合わせです。
退職金制度の比較
| 制度 | 対象 | 掛金目安 | 強み |
|---|---|---|---|
| 建退共 | 現場労働者 | 日額310円 | 業界共通・転職しても通算 |
| 中退共 | 常用雇用者 | 月5,000〜30,000円 | 掛金が全額損金算入 |
| 企業型DC(確定拠出年金) | 全従業員 | 月3,000〜55,000円 | 運用益が非課税 |
各制度公開情報をもとに作成
「長く働くほど有利になる」設計は、若手の中長期定着に効きます。建退共は手帳の運用が必要なので、運用面のサポートも検討します。
制度3|住宅手当・社員寮
施工管理職は現場が変わるたびに引っ越しが発生する可能性があり、住宅手当は実質的な収入増として機能します。
- 住宅手当: 月額2〜5万円が相場
- 社員寮: 都市部の単身寮で月1〜3万円の自己負担
- 借り上げ社宅: 会社契約のマンションを月3〜5万円で利用
地方からの採用を増やしたい会社では、家賃の高い都市部での住宅補助が応募率に直結します。
制度4|食事補助
現場では昼食の選択肢が限られるので、食事補助は地味ながら効きます。
- 食事手当(月5,000〜10,000円)
- 食事チケット(チケットレストランなど)
- 弁当注文の会社補助
- 朝食提供(事務所での朝食支給)
中堅・中小では、年間で従業員1人あたり10万円程度の負担で導入できます。「同じ制度を持つ会社が地域にない」という形で、採用差別化に効くケースがあります。
制度5|週休2日制と残業上限の運用
2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)が適用されました。日本建設業連合会は2026年3月までの全建設現場での週休2日実現を目標に掲げています。
求人票で訴求するときは、次のレベルで具体性を出します。
- 「年間休日110日(土曜は月2回出勤、日祝休み、夏季5日・年末年始6日)」
- 「月平均残業20時間(繁忙期30〜40時間、閑散期10時間)」
- 「有給取得率:直近実績65%」
- 「2024年4月以降の月平均残業は◯時間まで圧縮」
詳しい背景は建設業の2024年問題、賃上げと連動させた処遇改善は建設業の賃上げ動向にまとめています。
制度6|安全・健康・環境への投資
現場での快適さと安全への投資は、若手・女性の応募率にも効きます。
- 熱中症対策手当(夏季の月額5,000〜10,000円)
- 空調服・防寒具の全額支給
- 作業着・安全靴・保護具の全額支給
- 定期健康診断の充実(人間ドック補助、35歳以上の項目追加)
- 女性専用トイレ・更衣室の整備(女性採用の前提条件、建設業の女性採用参照)
「自分が大事にされている」と感じるポイントは、給与レンジでの差別化が難しい中小では特に効きます。
制度7|メンタルヘルスケアと相談窓口
若手の離職理由の上位に「人間関係」が入ります(35→46%に増加傾向)。外部EAP(従業員支援プログラム)を導入し、匿名で相談できる窓口を設けると、突然の離職を防げます。
- 外部相談窓口(月額1〜3万円程度)
- メンター制度の手当付き運用
- 1on1の時間を業務として確保
- ハラスメント相談窓口の独立運用
定着施策の詳細は建設業の離職率を下げる定着施策5選、人材育成は建設業の人材育成ガイドにまとめています。
福利厚生と採用設計、両輪で動かす相談を承ります
建設業特化の採用コンサルタントが、御社の規模・職種・地域に合わせて、福利厚生制度の組み合わせ・求人票への反映・採用代行の活用までを無料でご提案します。月額10万円〜の建設特化採用代行で、福利厚生を採用力に変えるご相談からどうぞ。
無料で相談する助成金で整備コストを抑える
福利厚生の整備には、いくつかの助成金が使えます。
福利厚生の整備で活用できる主な助成金
| 制度 | 対象 | 支給額 |
|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(若年・女性に魅力ある職場づくり事業コース) | 環境整備・両立制度 | 年間上限160〜200万円 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 勤怠管理・残業削減・有給取得促進 | 令和8年度予算101億円 |
| キャリアアップ助成金(正社員化) | 有期→正社員化 | 重点支援対象者で1名最大80万円 |
| トライアル雇用助成金(建設業上乗せ) | 35歳未満の若手 | 1名月8万円×3か月=最大24万円 |
| 中小企業退職金共済(中退共)の掛金助成 | 新規加入時 | 掛金の一部を国が補助 |
助成金の活用法は建設業の助成金ガイドにまとめています。福利厚生整備の費用を、助成金で一部回収しながら段階的に進めるのが、地に足のついた進め方です。
「制度を作る」ではなく「求人票で見せる」
福利厚生は整備しても、求人票や採用サイトで見えなければ採用には効きません。
求人票に書くべき具体例
- 「1級施工管理技士 月額3万円の資格手当」(金額まで明記)
- 「建退共+中退共+企業型DCの3階建て退職金制度」(種類を出す)
- 「住宅手当 月3万円(独身寮あり、月1万円自己負担)」
- 「年間休日110日/月平均残業20時間/有給取得率65%」(数字で)
「福利厚生充実」という抽象的な表現は、Z世代には響きません。比較検討中の求職者にとっては、数字と固有名詞が判断材料になります。求人票の作り方は建設業の求人票の書き方に7つのコツとBefore/After例文を載せています。
採用代行で求人票・採用広報まで巻き取る
福利厚生の整備と並行して、求人票や採用サイトの作り直しを社内だけで進めるのは工数的に厳しい場面が多いです。月額10万〜30万円の建設特化採用代行なら、求人票の作成・媒体運用・採用サイトのコンテンツ提案まで一括で巻き取れます。
仕組みは採用代行(RPO)とは?、費用は採用代行の費用相場ガイドにまとめています。
中小建設会社が福利厚生を強化した3社の事例
会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースでまとめます。
福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)
新卒の3年定着率が業界平均を下回っていた状態。資格取得支援(受験費用全額負担+合格祝い金1級5万円・2級3万円)と資格手当(1級月3万円・2級月1.5万円)を新設し、求人票に金額付きで明記。採用代行(月額20万円)で求人票の刷新と媒体運用を一括化したところ、応募数約2.4倍、新卒3年定着率も業界平均より10pt高い水準まで改善しました。
新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)
媒体費・紹介料が年間1,500万円超で、福利厚生にも予算を回せない状態でした。クラウド勤怠と工程管理アプリの導入で残業を月平均15時間まで圧縮、有給取得率も65%まで改善。「2024年4月以降の月平均残業15時間以内」「有給取得率65%」を求人票で全面訴求した結果、媒体費ベースの1名あたり採用単価は従来比30%減まで改善しました。
長野県の工務店C社(従業員15名規模)
小規模で「福利厚生に予算をかけられない」と感じていた会社。建退共+中退共の組み合わせと、空調服・安全靴の全額支給という低コスト施策を整備。月1回の食事会(会社負担)も導入し、採用応募の増加と若手定着の両方を改善しました。
事例の詳細は建設業の採用成功事例5選にまとめています。
よくある質問
Q. 福利厚生の整備にどれくらいコストがかかりますか?
優先順位の高い3つ(資格取得支援・退職金制度の見直し・週休2日推進)に絞ると、初年度で従業員1人あたり年間10〜30万円程度から始められます。離職コストの回収視点で見ると十分回収可能なレンジです。
Q. まず何から始めればいいですか?
低コストで効果が見えやすい3つを起点にします。①資格取得支援(受験費用負担と合格祝い金)、②建退共の運用整備、③求人票で残業時間・休日・有給取得率を数字で開示。この3つだけで応募率と定着率の両方が動き始めます。
Q. 求人票で福利厚生を「魅力的に」見せるコツは?
抽象表現を避け、金額・期間・対象者を数字で出します。「資格手当あり」ではなく「1級施工管理技士月額3万円・2級月1.5万円」、「年間休日多め」ではなく「年間休日110日(内訳付き)」のように粒度を上げます。
Q. 助成金で全部カバーできますか?
すべては難しいですが、人材確保等支援助成金(若年・女性に魅力ある職場づくり事業コース)の年間160〜200万円や、働き方改革推進支援助成金は使いやすい制度です。詳細は建設業の助成金ガイドにまとめています。
Q. 採用代行は福利厚生の整備にも関わりますか?
採用代行は採用業務の運用が中心ですが、求人票での福利厚生の見せ方や採用サイトのコンテンツ提案まで巻き取れる場合があります。「制度を作る」と「制度を伝える」の両方を整理する相談相手として活用できます。仕組みは採用代行(RPO)とは?で扱っています。
まとめ|福利厚生は「採用力」と「定着力」の両方に効く
- 建設業の有給取得率57.5%、4週8閉所61.1%、新卒3年以内離職率43.2%
- 1人離職で新卒657万円・中途774万円の損失。福利厚生への投資はROIで考える
- 採用・定着に効く7制度: 資格取得支援/退職金制度/住宅手当/食事補助/週休2日と残業上限/安全環境/メンタルヘルスケア
- 助成金(人材確保等支援助成金・働き方改革推進・キャリアアップ・建退共/中退共)で整備コストを一部回収できる
- 制度を作るだけでなく、求人票で「金額・期間・対象者」を数字で見せると応募率が動く
- 中小は採用代行で求人票・媒体運用を巻き取りつつ、社内のリソースを制度整備に振り向ける設計が現実的
福利厚生は「あれば嬉しい」段階から「なければ応募が来ない」段階に移っています。コストが負担に見える制度も、離職1人の損失(657〜774万円)を回避できれば、はっきりした投資効果として回収できます。
次の一歩として、定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選、賃上げ動向は建設業の賃上げ動向、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、助成金は建設業の助成金ガイド、採用代行は採用代行(RPO)とは?をあわせてご覧ください。
福利厚生を採用力に変える設計、一緒に動かしませんか?
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