建設業の女性比率19.4%、女性技術者は10年で85%増
建設業の女性就業者は約78万人、就業者全体の19.4%(国土交通省『最近の建設産業行政について』)。製造業31%、全産業平均45%と比べると、建設業はまだ半分以下の水準です。
ただし流れは動いています。建設業の女性技術者は2010年の2万4,700人から2020年に4万5,710人と85%増。建設技術者に占める女性比率も5.4%から9.0%に上昇しました。新卒では2012年の1,846人が2021年に4,053人と2.2倍に拡大しています。
採用市場で女性が増えているのに、定着で取りこぼしている会社が多いのが現状です。建設業の育児休業取得率は66.9%と全産業平均86.6%を約20ポイント下回っており、女性専用トイレ未設置の現場も約30%残ります。
この記事では、女性が応募して定着する建設会社になるための5つの打ち手を、環境整備・両立制度・キャリアパス・採用広報・採用代行の順でまとめます。
採用戦略全体は建設業の採用戦略ガイド、定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手採用は建設業の若手採用ガイドもあわせて参考になります。
女性が建設業に来ない・定着しない3つの構造
構造1|現場の物理的な環境が整っていない
最大の壁は環境です。日本建設業連合会の「けんせつ小町」活動で女性専用トイレの設置率は約70%まで上昇しましたが、依然として3割の現場に女性専用トイレがありません(日本建設業連合会『けんせつ小町』)。
更衣室・休憩室・授乳スペースも同様に未整備の現場が多く、応募の入口で取りこぼします。
構造2|育児との両立が物理的に難しい
建設業の育休取得率66.9%は、全産業平均より約20ポイント低い数字です。現場中心の業務特性上、時短勤務やリモートワークが他業界より導入しにくいのが背景にあります。
「採用しても結婚・出産で辞める」という構造を放置すれば、女性比率はなかなか上がりません。
構造3|女性のロールモデルがいない
「うちの現場に女性はいたことがない」という会社では、求職者側も「自分が行って大丈夫だろうか」と不安になります。先輩女性社員の存在が、応募率と定着率の両方に効きます。
国土交通省の調査では、女性の採用・登用に数値目標を設定している建設企業は16.4%。一方で59.6%が「今後設定する予定」と回答しており、業界全体で意識は変わり始めています。
女性が応募して定着する5つの打ち手
打ち手1|現場の物理的環境を整える
最優先で動かすのが、現場の環境整備です。
女性採用で整備すべき現場環境
| 項目 | 整備内容 | コスト目安 |
|---|---|---|
| トイレ | 女性専用トイレの設置・快適トイレ仕様 | 1現場30〜80万円 |
| 更衣室・休憩室 | 施錠可能な専用スペース | 1現場20〜50万円 |
| 防犯・安全対策 | 照明・防犯カメラ・夜間の見回り | 現場規模による |
| 作業着・防護具 | 女性向けサイズの常備 | 年間数万〜10万円 |
| 授乳・育児スペース | 長期工事では仮設で対応 | 1現場20〜50万円 |
建設業採用支援の実務ベースで作成
国土交通省は「快適トイレ」の標準仕様を定めており、公共工事では設置が進んでいます。民間工事でも工事予算に組み込んで対応する会社が増加中です。
採用1名が決まれば30〜100万円の投資は十分に回収できます。むしろ環境を整えていない会社は、応募の入口で勝てません。
打ち手2|育児・介護との両立制度を整える
両立制度の整備は、定着率を直接動かします。次の3つを順に整えます。
- 育児短時間勤務: 対象期間を小学校入学まで延長、現場職にも適用
- 現場配属の柔軟化: 通勤時間が短い現場への配置、繁忙期の調整
- 復職時の研修制度: ブランクを埋める3〜6か月のリハビリ研修
育児休業取得率は男性社員の取得促進も含めて、社内で目標を設定するのが効きます。男性育休が取れる会社は、女性社員から見た働きやすさの指標としても認識されます。
打ち手3|女性のキャリアパスを明示する
「現場→主任→所長」という標準的なキャリアパスに、女性が通れるルートが整っているかを点検します。
- 出産・育児で一時中断しても復帰できる枠組み
- 復帰後の昇進・昇給の道筋
- 役職別の女性比率(管理職に女性がいるか)
- 産休・育休復帰者の処遇事例
求人票や採用サイトで、女性のキャリアパスをモデル付きで見せると、応募率と内定承諾率の両方が動きます。
打ち手4|女性歓迎を「具体例」で発信する
求人票に「性別不問」「女性歓迎」と書くだけでは不十分です。求職者が判断できる具体例を出します。
- 女性社員のインタビュー(年齢・職種・入社年・1日の流れ)
- 現場の写真(女性専用設備・実際の女性社員)
- 育児制度の利用実績(過去3年で取得◯名)
- 女性管理職・先輩女性社員の在籍数
ある建設会社では、求人票に女性社員の1日のスケジュールを掲載しただけで、女性からの応募が約3倍に増えた事例があります。求人票の作り方は建設業の求人票の書き方にまとめています。
打ち手5|採用代行で運用面を巻き取る
環境整備・両立制度・キャリアパス整備を同時に動かしながら、求人運用や採用広報まで社内で回すのは、採用専任者がいない中小では現実的に厳しい工数です。
採用代行(RPO)は、求人票の作成・媒体運用・採用サイトのコンテンツ設計・応募者対応・紹介会社のコントロールを外部の採用チームが引き受けるサービスです。月額10万〜30万円の建設特化型なら、女性向け採用広報まで含めて運用面を一括で巻き取れます。仕組みは採用代行(RPO)とは?にまとめています。
女性採用、環境整備と運用を両輪で壁打ちしませんか?
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無料で相談する助成金・認定制度の活用
女性採用・定着で使える制度を整理します。
女性採用で活用できる助成金・認定
| 制度 | 対象 | 支給・効果 |
|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース) | 女性向け環境整備 | 年間上限160〜200万円 |
| トイレ整備助成 | 女性専用トイレ・更衣室 | 設備費の一部補助 |
| えるぼし認定 | 女性活躍推進法に基づく認定 | 公共調達での加点・採用力向上 |
| くるみん認定 | 子育てサポート企業 | 採用ブランディング・税制優遇 |
| ICT・DX関連助成金 | 業務効率化・体力負担軽減 | 女性が活躍しやすい環境作り |
2025年3月には、国土交通省と業界団体が「建設産業における女性活躍・定着促進実行計画」を策定しました。官民一体で女性の採用・定着を推進する枠組みも整備されています。
助成金の活用法は建設業の助成金ガイドに詳しくまとめています。
ICT・DXが女性活躍を加速する
ICT施工・BIM/CIM・ドローン測量などのデジタル技術は、女性が活躍しやすい現場を作る武器にもなります。
- 体力差のハンデが減る: 重量物を扱う頻度が減り、設計・管理業務に時間を使える
- 遠隔での現場確認: 育児と両立しやすい働き方が可能に
- データに基づく評価: 性別ではなく成果で評価される文化が作られる
ICT-Full活用工事の最前線では、女性技術者が国土交通省「i-Construction大賞」優秀賞を受賞した事例もあります。DX投資は女性採用・定着の加速装置として機能します。
中小建設会社が女性採用に動いた3社の事例
会社名は伏せて、都道府県・業種・規模ベースでまとめます。
福島県の総合建設業A社(従業員50名規模)
施工管理職に女性応募がほぼ来ない状態でした。
3年計画で社内のトイレ・更衣室を全現場で整備(各現場50万円・国土交通省「快適トイレ」仕様)し、求人票に女性社員2名のインタビューと1日のスケジュールを掲載。採用代行(月額20万円)で女性向け媒体(マイナビ・doda女性版)の運用を開始したところ、年間で女性施工管理候補2名を含む13名の採用に到達しました。
新潟県の総合建設業B社(従業員90名規模)
女性を採用しても2年以内に離職するという課題がありました。
育児短時間勤務を現場職にも適用し、産休・育休復帰時の3か月リハビリ研修を制度化。女性社員同士のネットワーキング(月1回の社内勉強会)を導入したところ、3年連続で女性の離職ゼロを達成。口コミで「働きやすい会社」として認知され、女性応募が継続的に動くようになりました。
長野県の工務店C社(従業員15名規模)
小規模で「女性採用は無理」と感じていた会社。月額10万円の最小構成の採用代行で求人票・Indeed運用を外注し、ICTツールの導入(電子黒板・タブレット日報・図面共有クラウド)で体力負担を軽減。1年で女性現場監督1名の採用に成功し、ICT施工の中心メンバーとして活躍しています。
事例の詳細は建設業の採用成功事例5選にまとめています。
よくある質問
Q. 建設業の女性比率はなぜ低いのですか?
最大の要因は現場の物理的な環境(トイレ・更衣室・防犯)が整っていないことです。次に育児との両立が難しい構造、ロールモデルの不在が続きます。「制度」より「環境」が先に整っていないと、応募の入口で勝てません。
Q. 環境整備にどれくらいコストがかかりますか?
1現場あたり50〜200万円が目安です。トイレ整備50〜80万円、更衣室20〜50万円、その他で30〜70万円。採用1名が決まれば十分に回収できる投資です。助成金(人材確保等支援助成金など)も活用できます。
Q. 女性専用設備がない現場はどうすればいいですか?
仮設トイレ・更衣室で対応する会社が多いです。国土交通省「快適トイレ」仕様の仮設トイレが市販されており、レンタルも可能です。長期工事では仮設で対応し、終了後に撤去する設計が一般的です。
Q. 育休取得率を上げるには?
男性育休も含めた数値目標の設定が出発点です。社内で目標を共有し、月次で進捗を確認します。代替要員の確保、復帰時のリハビリ研修、復帰後のキャリアパスの3つを整えると、育休取得率も復帰率も上がります。
Q. ICT・DXは女性採用に効きますか?
効きます。体力差のハンデが減り、遠隔での現場確認や育児との両立がしやすくなります。BIM/CIM・ICT施工・ドローン測量を導入している会社は、女性技術者の応募率が上がる傾向にあります。
まとめ|女性採用は「環境」と「定着」から
- 建設業の女性比率19.4%は全産業平均45%の半分以下。技術者は10年で85%増と流れは動いている
- 女性が来ない・定着しない構造: 現場の物理環境/両立制度/ロールモデル不在の3点
- 5つの打ち手: 現場環境整備/両立制度/キャリアパス明示/女性歓迎を具体例で発信/採用代行で運用巻き取り
- 助成金・認定(魅力ある職場づくり助成金、えるぼし認定、くるみん認定)が活用できる
- ICT・DX投資は女性採用と活躍の加速装置になる
- 環境整備への投資(1現場50〜200万円)は採用1名で回収できる範囲
「女性が応募する会社」と「女性が定着する会社」は別物です。応募を呼ぶには採用広報、定着には現場環境と両立制度。両方を同時に動かすと、女性採用は中小建設会社でも回ります。
次の一歩として、定着施策は建設業の離職率を下げる定着施策5選、若手採用は建設業の若手採用ガイド、人材育成は建設業の人材育成ガイド、求人票の作り直しは建設業の求人票の書き方、助成金は建設業の助成金ガイド、採用代行は採用代行(RPO)とは?をあわせてご覧ください。
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