建設技能者の25.8%が60歳以上。シニア採用は消去法ではありません
建設現場で働く技能者のうち、60歳以上は77.4万人で25.8%です。
内訳は65歳以上が50.3万人、60〜64歳が27.0万人。一方で29歳以下は35.2万人、割合は11.7%にとどまります。
この数字を出した国土交通省の資料には、60歳以上の技能者について一文が添えられています。「10年後にはその大半が引退することが見込まれる」(国土交通省『改正建設業法 令和7年12月施行分 説明会』資料、総務省『労働力調査』令和6年平均をもとに国交省作成)。
同じ資料では、建設業就業者のうち55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%です。全産業は32.4%と16.9%ですから、建設業のほうが高齢の側に寄っています。就業者の数も平成9年の685万人から令和6年の477万人へ減りました(平成22年は504万人)。
平均年齢は45.3歳で、全産業の44.1歳と大きな差はありません(厚生労働省『建設労働をめぐる情勢について』2025年10月)。ただし原典は同じ箇所で、建設業は全産業に比べて高齢化が進んでいると評価しています。また、この45.3歳は技術者や事務、営業まで含めた平均です。現場の技能者に絞れば、4人に1人が60歳以上という姿になります。
採用市場も緩んでいません。有効求人倍率(1人の求職者に何件の求人があるかを示す数字)は、令和8年3月に建設躯体工事従事者で7.35倍、職業計で1.10倍でした(厚生労働省『一般職業紹介状況』令和8年3月 参考統計表、常用(パートタイムを含む)・全国計)。
若手が採れないからシニアに頼る。この順番で考えている会社は少なくないと思います。
結論から言うと、60代以上の採用と継続雇用は、人が足りないときの穴埋めではありません。技能を次の世代に渡すための手段です。
そして採る前に決めることが3つあります。定年の扱い、賃金の決め方、任せる役割。ここを決めないまま雇い続けると、本人も周りの社員も不満を抱えます。
さらに2026年4月から、高年齢の働き手に配慮した作業環境づくりが事業者の努力義務になりました。人手不足そのものの全体像は建設業の人手不足で扱っています。
「60歳以上の割合」は分母で変わります
現場の技能者に絞ると60歳以上は25.8%です。就業者全体では55歳以上が36.7%という区切りで公表されています。賃金統計の母数(企業規模10人以上の常用労働者)でみると、60歳以上は16.5%です。社内で議論するときは、どの母数の話かをそろえてください。
シニア採用は人件費の節約策ではありません
建設基礎工事業の123社に「高齢者を活用する上でのメリット」を聞いた調査では、1位が「技術・技能の伝承ができる」で73.2%でした。2位が「知識・スキル・ノウハウの伝承ができる」で69.1%、3位が「後輩の指導」で43.2%、4位が「長く働けると知り全社員が仕事に意欲をもつ」で27.6%です。
最下位は「人件費が安くて済む」で3.2%でした(複数回答。全国基礎工事業団体連合会『建設業基礎工事業における高齢技能労働者の活躍ガイドライン』令和4年12月)。
実際に高齢の技能者を活用している会社が、安く使えるからとは答えていません。
建設業の賃金は、60歳を超えても他産業ほど落ちません
年齢層別の所定内給与額(令和7年)
| 年齢層 | 建設業 | 産業計 | 建設業の55〜59歳比 |
|---|---|---|---|
| 55〜59歳 | 447.2千円 | 396.2千円 | 100% |
| 60〜64歳 | 389.5千円 | 329.3千円 | 87.1% |
| 65〜69歳 | 329.3千円 | 285.3千円 | 73.6% |
| 70歳〜 | 289.7千円 | — | 64.8% |
厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』第1表より作成。所定内給与額、企業規模10人以上の民営事業所の一般労働者
建設業の所定内給与は、55〜59歳と比べると60〜64歳で87.1%、65〜69歳で73.6%、70歳以降で64.8%です。産業計は60〜64歳が83.1%、65〜69歳が72.0%まで下がりますから、建設業のほうが下げ幅は小さいです。
建設業の65〜69歳の329.3千円は、産業計の60〜64歳と同じ額です。60代後半の技能者に、他産業の60代前半と同じだけ払っている計算になります。
この数字は所定内給与額で、残業代と賞与を含みません。企業規模10人以上の民営事業所で働く一般労働者の平均です。所定内給与の平均が下がることは、手取りが同じだけ下がることを意味しません。
なお同じ調査では、建設業の常用労働者179.4万人のうち60歳以上が29.6万人で16.5%です。技能者だけを取り出した25.8%とは母数が違います。
会社が期待しているのは、手が1人増えることではありません。教えられる人が現場に残ることです。若手に教えてほしい、ただし給料は下げる。この組み立てだと、教える側が納得しません。

何歳まで働けるのか|法律に上限はなく、元請の運用があります
建設現場で働ける年齢に、法令上の上限はありません。
まず押さえておきたいのが高年齢者雇用安定法です。この法律は2段階になっています。65歳までの雇用確保措置は義務です。65歳から70歳までの就業確保措置は努力義務で、令和3年4月1日から始まりました。努力義務は、そうするよう努めることを法律が求める段階で、罰則はありません。
70歳までの努力義務で認められている措置は5つあります。70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度、業務委託契約を結べる制度、社会貢献事業に従事できる制度です。継続雇用制度は、定年を迎えた人が希望した場合に引き続き雇う仕組みを指します(厚生労働省『高年齢者雇用安定法の概要』)。
令和7年6月1日現在、報告を出した企業(常時雇用する労働者が21人以上)237,739社のうち、65歳までの雇用確保措置は99.9%が実施済みでした。70歳までの就業確保措置は34.8%で、中小企業が35.2%、大企業が29.5%です。中小のほうが進んでいます(厚生労働省 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」)。
定年年齢はまだ60歳が多数派です
定年の定め方の分布(令和7年6月1日現在・%)
出典: 厚生労働省 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」より作成
定年60歳が62.2%で147,864社、65歳が27.2%で64,765社、定年廃止が3.9%で9,367社です。定年制を廃止した企業を含めても、65歳以上を定年とする企業は34.9%にとどまります。
65歳定年が増えているとはいえ、まだ60歳が多数派です。「うちは遅れている」と焦る前に、数字で自社の立ち位置を見てください。
元請の入場制限は、法律とは別の話です
法令に年齢の上限はありませんが、現場に入れるかどうかには元請ごとに別の決まりがあります。
全国基礎工事業団体連合会のガイドラインは、こう書いています。「65歳以上、67歳以上、70歳以上に事実上入場制限を設けている元請等の存在が確認されている」(全国基礎工事業団体連合会『建設業基礎工事業における高齢技能労働者の活躍ガイドライン』令和4年12月)。
建設業労働災害防止協会(建災防)が元請の本社36社に聞いた調査では、「特別に対策が必要な年齢」の答えが分かれました。65歳以上が22社で最も多く、60歳以上が8社、70歳以上が2社、55歳以上が1社、その他が3社です(建設業労働災害防止協会『令和6年度 建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策のあり方検討委員会 報告書』令和7年3月)。
自社が70歳まで雇う制度を作っても、入る現場によっては入場できないことがあります。この前提で採用の説明をすることになります。
混同しやすいところ
「高齢だと現場に入れない」は法律の話ではありません。建設現場で働ける年齢に法令上の上限はなく、元請ごとの運用として入場制限や追加の確認が設けられている、という構造です。面談で説明するときは、この2つを分けて伝えてください。元請の運用は変わりますし、事前に確認すれば入場できる場合もあります。
採る前に決める3つのこと|定年・賃金・役割
定年をどうするか
最初に決めるのは、自社の出口をどこに置くかです。定年60歳のままで再雇用を重ねるのか、定年そのものを引き上げるのか。ここが決まっていないと、賃金も役割も毎回その場の話し合いになります。
定年と継続雇用の設計例(建設4社)
| 会社 | 定年 | 定年後の扱い | 60歳以上の在籍 | 最高年齢者 |
|---|---|---|---|---|
| 福島県の総合工事業(従業員173名) | 65歳(2020年改定) | 希望者全員70歳まで再雇用。以降は上限なし | 78人(60〜64歳25・65〜69歳32・70歳以上21) | 87歳 |
| 新潟県の総合建設業(社員30名) | 70歳(2018年導入) | 希望者全員75歳まで。基準を満たせば上限なし | 6人 | 76歳 |
| 長野県の土木工事業(従業員69名) | 65歳(2021年引上げ) | 希望者全員70歳まで。以降も上限なし | 20人 | 75歳(現場作業員) |
| 茨城県の総合建設業(従業員29名) | 66歳 | 本人の意思で再雇用か勤務延長を選択。基準を満たせば上限なし | 70歳以上4人(13.8%) | 75歳(営業) |
4社とも、年齢の上限をなくしています。うち3社は定年で一度区切り、希望者全員の枠を置いて、その先を個別に判断する形です。段を分けておくと、本人にも説明しやすくなります。
賃金をどう決めるか
同じ業界団体の調査では、「高齢者を活用する上での課題」の3位に「賃金と業務内容のバランスをとるのが困難」が入っています。21.1%です。
統計上の平均は、建設業でも60歳を境に下がります。ただし平均は平均で、各社が自分で決められる部分です。
福島県の総合工事業(従業員173名)は、定年後の基本給を定年前の約85%に設定し、月給制を続けています。70歳以降は日給制に移りますが、国家資格の手当は年齢にかかわりなく支給します。定年後も評価制度を運用して結果を賞与に反映し、資格取得の受験料・教材費・講習費は全額を会社が負担します。
新潟県の総合建設業(社員30名)は、もっと踏み込んでいます。「就業しているかぎりは給与を下げない」という賃金体系で、70歳の定年を過ぎても給与と賞与は従来の水準のまま、年1回の昇給も続けています。
長野県の土木工事業(従業員69名)は、年齢による一律の減額や線引きを行っていません。同社では、社員間に不公平感が生まれず信頼関係が強化されたとしています。処遇の透明性が高まったことで、若手社員も将来の働き方を前向きに描けるようになったそうです。
3社に共通するのは、年齢だけを理由に手当まで切らない点です。下げ幅を決めている会社でも、国家資格の手当は年齢にかかわりなく支給しています。
ここを曖昧にしたまま「まあ60歳からは7割で」と決めると、本人は納得しないまま働き続けます。教える役割を頼んでも、力は入りません。
何を任せるか
3つ目が役割です。ここを決めずに雇うと、本人は「邪魔にならないように」と動き、会社は「何をしてもらおうか」と迷います。
同じ調査で「高齢者に期待する役割」の1位は「知識・技術・技能の伝承」で87.0%、2位が「後輩の指導」で60.2%、3位が「知識・技術・技能の発揮」で45.5%でした。
一方、課題の1位は「健康・体力が低下している」で67.5%、2位が「本人の能力が低下している」で31.75%です。3位は先に触れた賃金と業務内容のバランス、4位が「新たな職務・職域への変更が難しい」で17.9%でした。
体力が落ちることと、教えられることは矛盾しません。問題になるのは、体力が落ちた人に若い頃と同じ作業量を求めることです。
茨城県の総合建設業(従業員29名)では、ベテラン技術者が新しい技術やIT対応に不安を感じ、現場監理(現場を管理する仕事)から技能労働者への配置転換を希望することが増えていました。そこで2023年に建設ディレクターを新設しました。現場の書類作成などをオフィス側で引き受ける担当者です。
あわせて、腰や腕の負担を軽くする装着型の器具(アシストスーツ)と軽量のコードレス機器を導入し、空調服と飲料の支援、休憩時間の調整を行っています。新潟県の総合建設業(社員30名)も、建設ディレクター制度で現場技術者の書類負担を軽くしています。
道具と段取りで体の負担を下げれば、任せられる範囲は広がります。書類が減れば、若手を横につけて教える時間も作れます。
役割には名前と手当をつけてください。誰に、何を、いつまでに教えるか。そこまで決めると、本人の仕事の中身が変わります。
安全配慮は2026年4月から努力義務になりました
労働安全衛生法が改正され(令和7年法律第33号)、高年齢の働き手の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理などの措置が、事業者の努力義務になりました(厚生労働省『高年齢者の労働災害防止のための指針(エイジフレンドリー指針)を策定しました』)。これにもとづく指針が令和8年2月10日に公示され、2026年(令和8年)4月1日から適用されています(厚生労働省『高年齢者の労働災害防止のための指針(エイジフレンドリー指針)』)。エイジフレンドリー指針と呼ばれています。エイジフレンドリーは、年齢に配慮したという意味です。
罰則のある義務ではありません。ただ、努力義務が入った後に事故が起きれば、会社が何をしていたかを聞かれます。60歳以上を採るときは、作業手順と健康確認の段取りを見直しておくことになります。

割合は全産業より低く、発生率は年齢とともに上がります
令和7年、建設業で休業4日以上のけがをした人は13,437人でした。うち60歳以上は3,354人で25.0%です。年齢別の内訳は60〜64歳が1,204人、65〜69歳が998人、70〜74歳が732人、75歳以上が420人です。
死傷者(休業4日以上)に占める60歳以上の割合(令和7年)
| 区分 | 死傷者の数 | うち60歳以上 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 13,437人 | 3,354人 | 25.0% |
| 全産業 | 135,333人 | 42,318人 | 31.3% |
建設業の25.0%は、全産業の31.3%より低い数字です。「建設業は高齢者の労災が特に多い」という説明は、この数字からは出てきません。
ただし、年齢が上がるとけがをしやすくなること自体は変わりません。
令和6年、全産業でみた60歳以上の死傷度数率は2.41、死傷千人率は4.00です。度数率は100万延べ実労働時間あたりの死傷者数、千人率は労働者1,000人あたり1年間の死傷者数を表します。
災害の型で見ると、「墜落・転落」と「転倒による骨折等」は加齢に応じて発生率が著しく上昇します。墜落・転落は、全産業の男性で60歳以上が平均0.48、20代が平均0.13で、約3.6倍の差です(厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」)。
同じ資料では、全産業の雇用者に占める60歳以上が19.1%、死傷者に占める60歳以上が30.0%です(いずれも令和6年)。働いている人の割合より、けがをした人の割合のほうが高い形です。
建設業だけを年齢別に取り出した発生率は、この資料には載っていません。ただし加齢に応じて発生率が上がる傾向は建設業にも当てはまり、建設業労働災害防止協会も第9次建設業労働災害防止5か年計画で、60歳以上の死傷年千人率を令和4年と比べて令和9年までに減少へ転じさせる目標を掲げています(建設業労働災害防止協会『令和6年度 建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策のあり方検討委員会 報告書』令和7年3月)。
令和7年の建設業の死亡者は214人で、前年より18人・7.8%減りました。全産業は700人です(厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」)。年齢別の内訳が公表されているのは死傷者のほうで、死亡者については年代別の話はできません。
割合と発生率は別の指標です。分けて社内に伝えてください。
現場ではどう運用されているか
建災防の報告書にある元請36社の自由記述には、次のような答えがありました。
新規入場者教育にて60歳以上は閉眼片足立ちを実施し、70歳以上は6秒以内は入場禁止、7秒以上は所長面談の上判断
60歳以上は黄色ネーム、65歳以上は自社の高齢者(識別)
自分の健康状態、既往症、服薬状況等は、自分からは説明しない労働者が多い
技能を有する高齢者を技能伝承者として手当面で処遇し活躍を期待
(いずれも建設業労働災害防止協会『令和6年度 建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策のあり方検討委員会 報告書』令和7年3月)
3つ目が採用の実務にいちばん響きます。健康状態を自分から言わない人が多い前提で、仕組みを作ることになります。健康診断の結果を見て、服薬の有無を書面で確認し、体力の確認は全員一律の手順で行います。個人を疑う形にしないことが要点です。
4つ目は処遇の話です。技能を伝える役割に手当をつけ、名前を与えている例です。安全への配慮と処遇の設計は、別々の話に見えて、実際は同じ現場で一緒に決めることになります。
採用の段階でそろえておくこと
どの現場に入るか、元請の入場制限に当たらないか、高所作業を含むか、健康診断と服薬の確認をいつ行うか。ここを募集前に決めておかないと、内定を出した後に現場へ入れないと分かる、という順番になります。
安全の確認まで決まっていれば、面接で聞かれたことにその場で答えられます。ここが空いたまま募集を始めると、応募が来てから社内で止まります。
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無料で相談する募集の実務|60歳以上に限定した求人は出せます
求人に年齢の制限をつけることは、労働施策総合推進法で原則として禁止されています。「35歳以下」「40歳まで」と書けないのは、この法律によるものです。
ただし例外があります。労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第3号ニは、60歳以上の高年齢者など、雇用を促進する施策の対象となる人に限定して募集・採用する場合を例外として認めています。
つまり「60歳以上」に限定した求人は出せます。
気をつけたいのは上限です。「60歳以上63歳未満」のように上限をつけることはできません。高年齢者の就業機会を狭めることになり、例外を認めた趣旨に反するためです。下限を60歳より上に置く形、たとえば「65歳以上」は例外に含まれます(ハローワークインターネットサービス『年齢制限該当事由について』、厚生労働省『労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A』)。
制度を外に見せると、他社を定年退職した人が来ます
長野県の土木工事業(従業員69名)では、定年等の引上げによって、他社で定年退職した人材が入社を希望するケースも増加したとしています(JEED 令和7年度高年齢者活躍企業コンテスト事例)。
60歳で定年を迎えた経験者は、毎年どこかの会社から出ています。その人にとって、あと10年働ける会社は探す価値があります。
制度は社内規程にしまわずに、求人票と会社案内へ書いてください。「定年65歳、希望者は70歳まで、その後も相談」と1行あるかないかで、応募の入り方が変わります。
定年を引き上げるときに使える助成金
65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース・令和8年度制度)の支給額
| 措置の内容 | 対象被保険者1〜3人 | 同10人以上 |
|---|---|---|
| 65歳への定年引上げ | 15万円 | 30万円 |
| 66〜69歳への定年引上げ(引上げ幅5歳未満) | 25万円 | 46万円 |
| 66〜69歳への定年引上げ(引上げ幅5歳以上) | 40万円 | 135万円 |
| 70歳以上への定年引上げ | 45万円 | 140万円 |
| 定年の廃止 | 60万円 | 240万円 |
| 66歳以上の継続雇用制度の導入 | 22万円 | 130万円 |
金額を目的に制度を変える話ではありません。ただ、就業規則の改定には社会保険労務士への費用もかかります。その費用を埋める足しになります。
60歳以上を採用したときに使える助成金
特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースは、就職が難しい人を、ハローワークなどの紹介を通じて継続して雇う事業主に支給される制度です。
高年齢者(60歳以上)で短時間労働者以外を雇い入れた場合、支給額は60万円です(大企業は50万円)。助成の対象期間は1年で、30万円を2期に分けて受け取ります。短時間労働者の場合は40万円で、20万円を2期に分ける形です(厚生労働省『特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)』)。
令和8年5月1日から対象が変わりました。現在は、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている高年齢者(60歳以上)が対象で、紹介の時点で対象労働者である旨の明示が必要です。
紹介の時点で明示が要るため、求人を出す段階からハローワークとやり取りしておくことになります。採用を決めてから探し始めると間に合いません。
建設業で使える採用・育成の助成金は他にもあります。支給額と申請の流れは建設業の助成金ガイドにまとめました。

シニアだけでは埋まりません|若手採用と組み合わせる
60歳以上の技能者77.4万人について、国土交通省の資料は「10年後にはその大半が引退することが見込まれる」としています。29歳以下は35.2万人で11.7%です。入ってくる人の数が、出ていく人の数に届いていません。
職業別の有効求人倍率(令和8年3月・常用/パートタイムを含む)
出典: 厚生労働省『一般職業紹介状況』令和8年3月 参考統計表より作成
建設躯体工事従事者は、新規求人倍率でみると10.34倍です。シニアの継続雇用でできるのは、引退までの時間を延ばすことと、その間に技能を渡すことです。人数の穴は別に埋めることになります。
技能の受け渡しは、仕組みがないと進みません。教える時間を工程に入れます。教える役割に手当をつけます。若手側の到達目標を決めます。この3つがないと、ベテランが横にいるだけで終わります。育成の進め方は建設業の人材育成で扱っています。
職種ごとに手段が変わります
有資格者を採るなら、人材紹介が主力になります。使うこと自体は正しい判断で、あとは上手く使えるかどうかです。
手数料の水準は知っておいてください。弊社が建設業の採用支援で見ている範囲では、全業界の平均が理論年収の30〜35%程度、建設業の施工管理は45%が主流です。1級を持つ所長クラスや急ぎの希少人材では、60〜70%まで上がることもあります。
高いから使わない、という話ではありません。登録したまま推薦が来ない状態が続くほうが痛手になります。要件を1枚の文章にまとめて渡します。推薦が来たら当日中に返します。見送るときは理由を伝えます。この往復の質で、来る人が変わります。
技能者のほうは、求人媒体と自社の採用ホームページ、社員からの紹介を同時に回します。60歳以上に限定した求人、若手向けの求人、有資格者の紹介依頼。動かす数が増えると、社内の手が足りなくなります。
採用代行の使い方
専任の採用担当を置くかどうかを考える前に、建設特化の採用代行と組んだうえで、社内にどこまで人を割くかを決める順番をおすすめしています。採用の手法や媒体は移り変わりが速く、本業の合間に追いかけるには量が多いです。
求める人物像と採用要件の詰めは、社内と採用代行で一緒に決めます。現場を知っている社内の知見が要る部分です。面接と最終判断、内定承諾の最後のひと押しは社内が担います。
求人票の作成と改訂、媒体の運用、スカウトの送信、応募者への返信、日程調整、紹介会社のとりまとめは採用代行が受けます。採用代行は人材紹介の代わりではなく、紹介も含めた採用活動全体をまとめて動かす立ち位置です。
弊社は月額20万円(税別)〜+媒体費です。求人媒体の掲載費は、採用代行を入れても別にかかります。
契約で約束できるのは工数です。スカウトの送信通数、求人票の作成本数、レポートの提出日、応募者への返信時間。採用人数を書面で約束する業者は業務委託の枠を超えていますから、後で揉めやすくなります。
シニアの採用では、入場できる現場の確認から、健康診断と服薬の確認の段取り、任せる役割と手当の設計まで決めることになります。一緒に詰める相手がいると、内定から初出勤までの手戻りが減ります。
よくある質問
建設現場は何歳まで働けますか?
法令上の上限はありません。ただし元請ごとの運用があります。全国基礎工事業団体連合会のガイドラインは「65歳以上、67歳以上、70歳以上に事実上入場制限を設けている元請等の存在が確認されている」としています。元請本社36社への調査では、特別に対策が必要な年齢を65歳以上とした会社が22社で最多でした。
定年を65歳に引き上げると、人件費はどれくらい増えますか?
各社の賃金制度によって変わるため、一律の答えはありません。統計でみると、建設業の所定内給与は60〜64歳が55〜59歳の87.1%です。一方、定年前の約85%を維持している会社も、据え置いている会社もあります。引上げには65歳超雇用推進助成金が使えます。65歳への引上げなら、対象被保険者1〜3人で15万円、10人以上で30万円です。
「60歳以上のみ募集」と書いた求人は出せますか?
出せます。労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第3号ニの例外に当たります。ただし「60歳以上63歳未満」のように上限をつけることはできません。「65歳以上」のように下限だけを示す形なら出せます。
高齢の社員が増えると労災も増えますか?
令和7年の建設業の死傷者13,437人のうち60歳以上は25.0%で、全産業の31.3%より低い割合です。ただし墜落・転落と転倒による骨折等は、加齢に応じて発生率が上がります。墜落・転落は、全産業の男性で60歳以上が20代の約3.6倍です。割合が低いことと、加齢で起きやすくなることは別の話として扱ってください。
健康状態はどう確認すればいいですか?
建災防の調査では、元請から「自分の健康状態、既往症、服薬状況等は、自分からは説明しない労働者が多い」という声が出ています。本人の申告に頼らない形にしておくほうが安全です。新規入場者教育の中で60歳以上に体力の確認を行い、基準を下回る場合は所長面談で判断する、という運用をしている元請もあります。
まとめ|処遇と役割と安全を決めてから、60歳以上を採る
建設現場の技能者のうち、60歳以上は77.4万人で25.8%、29歳以下は11.7%です。国土交通省の資料は、60歳以上の大半が10年後には引退すると見込んでいます。
人件費の節約策として見ないほうがよい理由は、現場の答えに出ています。高齢者を活用するメリットの最下位は「人件費が安くて済む」で3.2%、1位は「技術・技能の伝承ができる」で73.2%でした。建設業の所定内給与は60〜64歳で55〜59歳の87.1%と、産業計の83.1%より下げ幅が小さいです。
働ける年齢に法令上の上限はありません。ただし65歳以上、67歳以上、70歳以上に事実上の入場制限を設けている元請がある、と業界団体のガイドラインが書いています。法律の話と元請の運用は分けてください。定年は60歳が62.2%でまだ多数派で、70歳までの就業確保措置を実施した企業は34.8%にとどまります。
採る前に決めるのは、定年の置き方、賃金の決め方、任せる役割の3つです。下げ幅を決める場合も、資格や役割に応じた手当は年齢にかかわりなく支給します。教える相手と到達目標を決めて、その役割に手当をつけます。この形にしている会社が、実際に70代・80代まで雇い続けています。
2026年4月から、高年齢の働き手に配慮した作業環境づくりが事業者の努力義務になりました。死傷者に占める60歳以上の割合は全産業より低いものの、全産業の統計では墜落・転落と転倒の発生率が加齢とともに上がります。健康状態を自分から話さない人が多い前提で、確認の手順を決めてください。募集では「60歳以上」に限定した求人が出せます。定年引上げには65歳超雇用推進助成金、60歳以上の雇入れには特定求職者雇用開発助成金が使えます。
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