大卒求人倍率8.55倍、建設業に入る人のうち新卒は14.5%

2026年卒の建設業の大卒求人倍率は8.55倍です。全体の平均は1.66倍ですから、5倍以上の開きがあります(リクルートワークス研究所『大卒求人倍率調査(2026年卒)』)。

一方で、建設業に入ってくる人のうち、学校を出たばかりの新卒は14.5%にとどまります。転職して入ってくる人が71.7%です(令和6年・厚生労働省『建設労働をめぐる情勢について』令和7年10月、原データは雇用動向調査)。

学校に求人票を出しても応募が来ない。説明会を開いても学生が来ない。内定を出しても辞退される。新卒採用は、建設会社の経営者・人事の方からいただくご相談のなかでも、行き詰まり感の強いテーマです。

結論から言うと、建設業の新卒採用は1つの打ち手だけでは決まりません。学校との付き合い、インターンと現場体験、採用ホームページとSNS、内定者フォロー、入社後3年の定着。この5つを年間の予定表に載せて回す形が基本になります。

採用全体の地図は建設業の採用戦略ガイド、新卒と採用代行の組み合わせは採用代行で建設業の新卒採用を動かすもあわせてご覧ください。


建設業の新卒採用が難しい構造的な理由

大卒8.55倍、全体平均は1.66倍

リクルートワークス研究所の調査では、2026年卒の建設業の大卒求人倍率は8.55倍でした。全体の平均は1.66倍です。

業種を問わず、従業員300人未満の企業で見ると8.98倍になります(2026年卒・全業種)。建設業の中小企業だけを取り出した数字は公表されていません。

この業種別・規模別の公表は、2027年卒の調査から取りやめになりました。8.55倍は最新の値であり、最後の公表値でもあります。

2027年卒では建設業の求人数だけが分かります。12.8万人で前年より16.3%増えました。6つの業種区分のうち求人数が増えたのは建設業と金融業だけで、伸び幅は建設業のほうが大きくなっています。全体の求人倍率は1.62倍です(リクルートワークス研究所『第43回 ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)』)。

求人だけが増えて、学生の数は増えていません。応募が来ない理由の半分は、会社の側ではなく市場の側にあります。

入ってくる人の7割は転職組

建設業への入職者に占める新規学卒者は14.5%、転職してきた人は71.7%です。全産業では新規学卒者16.1%、転職者65.8%ですから、建設業のほうが中途に寄っています(令和6年・厚生労働省『建設労働をめぐる情勢について』)。

裏を返すと、新卒で人を採れている会社は業界の中でも少数です。うちだけ採れないと落ち込む話ではありません。

ただ、7割を中途に頼る構造のままでは、10年後に現場を任せる年代が空きます。新卒は少数でも毎年入れておく、という考え方が要ります。

若手が少なく、ベテランが多い

建設業で働く人は478万人です。ピークだった平成9年の685万人から、およそ3割減りました。現場で手を動かす技能者は296万人です。

年齢の内訳を見ると、29歳以下が11.9%、55歳以上が36.6%(2025年平均)。全産業は29歳以下が17.0%、55歳以上が32.8%ですから、建設業は若手が少なくベテランが多い形になっています(国土交通省『参考資料集』(総務省「労働力調査」暦年平均をもとに作成))。

日本建設業連合会は2025年7月に『建設業の長期ビジョン2.0』を出しました。2035年度の建設投資額84.3兆円に対して必要な技能労働者は393万人、これに対する予測は264万人で、129万人が足りないという見通しです。この129万人は現場で手を動かす技能労働者の話で、施工管理などの技術者は含みません。

同じ資料で、業界としての目標も掲げられています。年平均7%以上の賃上げを続ける、40代で平均年収1,000万円を超える、女性の就業者を100万人にする、すべての現場で土日祝に一斉に閉所する、という4つです(日本建設業連合会『建設業の長期ビジョン2.0(要約版)』2025年7月)。

この見通しが当たるかどうかは別の話です。それでも、現場で手を動かす人が足りなくなる流れははっきりしています。いま若手を1人も入れていない会社は、その流れのなかで一番苦しい側に回ります。

夕焼け空にそびえる建設中の高層ビルと、複数のタワークレーンのシルエット
写真: Jiyoung Kim / Pexels

「3K」のイメージと、働き方の情報が古いまま

学生が建設業に持つイメージは、いまも「きつい・汚い・危険」の3Kが中心です。

労働時間の実績を見ると、令和7年度の建設業は年1,972時間、調査産業計(調査対象の全産業をならした数字)は年1,928時間で、差は44時間でした。これは事業所規模5人以上で、パートタイムを除いた一般労働者どうしの比較です(厚生労働省『毎月勤労統計調査 2025(令和7)年度分結果確報』)。

44時間という差は、月あたりにすると3〜4時間です。思ったより小さいと感じるかもしれません。

ただし、パートタイムで働く人も含めた平均と比べると、差はもっと開きます。施工管理の職種や、繁忙期の現場は、この平均よりも長く働いているのが実態です。

2024年4月からは、月45時間・年360時間という残業の上限が建設業にも適用されました(厚生労働省『建設業の時間外労働の上限規制』)。

ただし、災害が起きたあとの復旧・復興の工事には例外が残っています。この工事では「1か月100時間未満」「複数月の平均80時間以内」という上限が適用されません。

休日や残業は改善が進んでいます。それでも、自社の採用情報が数年前のまま止まっている会社では、改善した中身が学生に届きません。

入社後の離職も見込んで考える

建設業の新卒3年以内離職率は、大卒30.7%、高卒43.2%です(令和3年3月卒・厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況』)。

同じ令和3年3月卒で、大学卒の全体は34.9%です。建設業の大卒30.7%は、全体より4.2ポイント低い水準になります。建設業の大卒は、世間で思われているほど辞めていません。

問題は高卒のほうです。高校卒の全体は38.4%で、建設業の43.2%はこれより約5ポイント高くなっています。

採って終わりにすると、高卒で入った若手の4割強が3年以内に抜けます。入口だけ整えても数字は埋まりません。


新卒採用を成功させる5つの戦略

  1. 戦略1|採用スケジュールを年間で前倒しする
  2. 戦略2|学校との付き合いを深める
  3. 戦略3|採用ホームページ・インターン・SNSで接点を増やす
  4. 戦略4|内定者フォローで辞退を防ぐ
  5. 戦略5|3年以内の定着まで含めて考える

順番にも意味があります。スケジュール(戦略1)と学校との付き合い(戦略2)で応募の入口を作り、採用ホームページとインターンとSNS(戦略3)で会社の中身を見せます。内定者フォロー(戦略4)で辞退を抑え、3年の定着(戦略5)で投資を回収する、という流れです。

入口だけ整えても、出口で辞められたら投資はゼロになります。


戦略1|採用スケジュールを年間で前倒しする

新卒採用で最初に詰まる原因は、動き出しの遅さです。

新卒採用の年間スケジュール(2027年3月卒の場合)

時期高卒採用大卒採用社内でやること
2025年6〜8月訪問する学校の一覧を作るインターンの企画・採用ホームページの見直し採用人数と予算を決める
2025年9〜12月合同説明会・出張授業秋冬のインターン受け入れ現場見学と先輩座談会の素材を撮る
2026年1〜3月学校への挨拶を切らさない3月から広報活動・春のインターン動画とSNSの素材をそろえる
2026年4〜5月求人票を5月中に仕上げる6月からの選考に向けて面接の担当を決める会社案内とキャリアパス資料を作り直す
2026年6〜8月6月1日 ハローワークの受付開始/7月1日 学校への求人提示/夏に学校訪問6月から選考開始・内々定応募前職場見学の受け入れ
2026年9〜12月9月5日 学校からの推薦開始/9月16日 選考開始・内定内定式・配属の面談内定者フォローを始める
2027年1〜3月卒業前研修卒業前研修・配属の内示受け入れ体制をそろえる

文部科学省・厚生労働省『令和9年3月新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について(通知)』と弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

6月以降に「そろそろ来年の新卒をどうしよう」と動き出す会社は、すべての打ち手が後手に回ります。卒業の2年前の夏、つまり表でいう2025年6〜8月の段階で、採用人数・予算・訪問する学校まで決めておく形が基本です。

高卒採用は日程が決まっている

高校新卒者向けのハローワーク求人のうち、建設業は92,980人でした(令和8年3月卒向け・3月末時点)。前の年より2.5%増えていて、全産業498,722人の18.6%を占め、製造業に次ぐ2位です。全体が横ばいから微減のなかで、建設業は増えています。

高校新卒全体の求人倍率は4.12倍です(厚生労働省『令和7年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(3月末現在)』)。なお、産業別の求人倍率は公表されていません。建設業だけの倍率は分からない、という前提で見てください。

求人数が2位ということは、それだけ同業他社と競合します。日程で出遅れると、その年はほぼ取り返せません。

令和9年3月卒(2027年3月卒)の日程は次のとおりです。

  • 2026年6月1日: ハローワークでの求人申込書の受付が始まる
  • 7月1日: 学校での求人申込みの受理、学校への求人提示が始まる
  • 9月5日: 学校から企業への推薦(応募書類)が始まる。沖縄県のみ8月30日
  • 9月16日: 選考開始・採用内定の開始

(文部科学省・厚生労働省『令和9年3月新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について(通知)』)

実務で押さえたいのは6月1日です。ハローワークの受付がここから始まるので、求人票は5月中に仕上げておかないと、7月1日のスタートに間に合いません。

応募前職場見学についても通知に記載があります。この見学を採用選考の場にしてはいけない、という内容です。現場を見せる場であって、面接の代わりに使うものではありません。

1人1社制は、都道府県ごとに違う

高卒採用には、一度に1社しか応募できない「1人1社制」があります。ただし、いまの運用は都道府県ごとに違います。

令和9年3月卒では、期間を通じて1人1社としている県は47都道府県のうち0県です。

  • 当初から複数応募ができる: 7府県(秋田・茨城・埼玉・愛知・大阪・和歌山・沖縄)
  • 一定の期日を過ぎると複数応募ができる: 40都道府県

40都道府県のうち最も多いのは、9月中は1社まで、10月1日以降は2社までという運用です(厚生労働省 高卒就職情報WEB提供サービス『都道府県高等学校就職問題検討会議における申し合わせ等』)。

条件は都道府県ごとに異なります。自社の所在する都道府県の申合せを確認してから動いてください。

実務で押さえておきたいのは、10月に入ると生徒が2社目に動けるという点です。1社目に選ばれた会社は、9月中に内定を出せるか、そのあと連絡を絶やさずにいられるかで結果が変わります。


戦略2|学校との付き合いを深める

応募者を集める手段のなかで、投資に対する見返りが大きいのは学校ルートです。1校との関係ができると、毎年の応募が安定します。

学校種別ごとの付き合い方

学校種別主な対象職種付き合い方の要点かかる費用の目安
工業高校技能職・現場補助年2〜3回の訪問、求人票の早期提出、就職指導の先生との面談低い(交通費と資料の印刷代)
高専施工管理候補・設計補助学科の教員との関係づくり、インターンの受け入れ中くらい(インターン受け入れの手間)
建築・土木系の大学施工管理・設計・営業研究室訪問、学内の合同説明会、卒業生の派遣中〜高(説明会の出展料を含む)
建築系の専門学校施工管理・CAD・設計補助就職課への定期訪問、卒業生の派遣低い〜中くらい

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

年1回の挨拶だけでは、推薦は動きません。年2〜3回の定期訪問と、就職指導の先生との関係づくりが土台になります。そこに自社で働く卒業生を連れて行けるようになると、学校から声がかかり始めます。

訪問時に持っていきたい3点セット

  • 会社案内(写真が多く、現場の空気が伝わるもの)
  • キャリアパス資料(年次×役職×年収のモデル)
  • 入社後3年の研修と資格取得支援の説明書

口頭の説明だけだと、忙しい就職指導の先生は学生に勧めにくくなります。紙に落としておけば、先生から学生へそのまま渡してもらえます。

次は中途採用の求人票を直したときのケースですが、学校に出す求人票や先生に渡す資料でも同じことが言えます。

3回書き直してようやく応募が動いた(東京・内装工事会社/従業員18名規模)

内装の現場監督を採用したい会社です。最初の求人票は「内装施工管理/月給28万円〜/賞与年2回/週休2日制」という、よくある構成でした。Indeed・ビズリーチ・人材紹介の3つの窓口に出していましたが、応募ゼロが2ヶ月続きました。

1回目の書き換えで、給与の年収例を入れて、1日の流れを時間軸で示しました。応募は月1〜2件まで動きました。ただ、選考に進む人は出ません。

2回目で、職種名を「現場代理人候補」に変えました。あわせてキャリアパスを年次×役職×年収のモデルで示し、「直行直帰可」「マイカー通勤可」「資格取得支援あり(受験費用全額会社負担)」を加えています。ここで応募が月3〜5件に増え、面接まで進む人が出始めました。

3回目で現場の写真と先輩社員のコメントを足し、会社の強みを「都内の中規模オフィス改装に特化、深夜工事なし」の1つに絞りました。応募は月8件で安定し、年間4名の採用に届いています。

書き直しはここまでで3回です。1回出して応募が来なかった時点でやめていたら、この会社は年間4名には届いていません。

なお、求人票だけで解決したわけではありません。紹介会社への要件シートを出し直し、面接設定を48時間以内に行うルールも同時に入れています。

学校に出す求人票も同じです。1年出して応募が来なかったから、その学校はダメだと切るのは早すぎます。

先生が学生に勧めやすい形になっているか。年収の例は載っているか。3年後に何ができるようになるかが書いてあるか。この3点を毎年直していくと、2年目・3年目で反応が変わってきます。

求人票の直し方は建設業の求人票の書き方、採用全体の組み立ては建設業の採用戦略ガイドに5つのステップでまとめています。


戦略3|採用ホームページ・インターン・SNSで接点を増やす

学校を通じて関心を持ってもらった学生に、会社の中身を見てもらう段階です。ここが薄いと、説明会の手前で他社に流れます。

採用ホームページに最低限載せるもの

  • 1日の流れ(7:30〜18:00を時間軸で)
  • 先輩社員の声(年代別・職種別に3〜5名)
  • キャリアパス(年次×役職×年収のモデル)
  • 福利厚生・休日・資格取得支援の金額と日数
  • 募集要項と応募フォーム(履歴書なしのWeb応募、LINEからの応募)

会社のホームページに採用ページを1枚足しただけでは、もう通用しません。学生は何十社も同時に見比べています。中身の薄いページは、その場で候補から外れます。

採用ホームページと求人媒体の使い分けは建設業の採用サイトおすすめ12選で職種別の選び方を扱っています。

三脚に据え付けられた黄色い測量用のオートレベルと、背景に広がる草地の現場
写真: Muharrem Alper / Pexels

インターンシップは4つの類型に分かれた

2022年6月に国のルールが変わり、学生向けのプログラムは4つの類型に整理されました。文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省による申し合わせです。

学生向けプログラムの4類型

正式名称就業体験期間・時期の要件採用選考への情報の活用
オープン・カンパニー(タイプ1)必須ではない単日が基本・通年できない。「インターンシップ」と名乗れない
キャリア教育(タイプ2)任意プログラム次第・通年できない。「インターンシップ」と名乗れない
汎用的能力・専門活用型インターンシップ(タイプ3)必須。期間の半分を超える日数を就業体験にあてる汎用的能力活用型は5日間以上/専門能力活用型は2週間以上。学部3・4年、修士1・2年の長期休暇中できる。広報活動は3月以降、採用選考活動は6月以降
高度専門型インターンシップ(タイプ4・試行)必須大学院生が研究に長く参加する形などできる

文部科学省・厚生労働省・経済産業省『インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方』(令和4年6月13日一部改正)より作成

ここが多くの建設会社にとっての落とし穴です。

これまで各社がやってきた「1日だけの仕事体験」は、仕事そのものを体験する時間がないので、オープン・カンパニーにあたります。この形では「インターンシップ」と名乗れません。そこで得た学生の情報は、広報にも選考にも使えないルールです。

3日間のプログラムも同じ扱いになります。汎用的能力活用型(職種を限定せず、仕事の進め方全般を体験させる型)の「5日間以上」という条件を満たさないからです。

5日間にできるかどうかが分かれ目

逆に言えば、5日間以上にして長期休暇中に実施し、社員が指導して感想を返す形にすれば、そこで知った学生の情報を採用選考に活かせます。中小の建設会社にとっては、ここで扱いが変わります。

汎用的能力活用型として認められるには、次の5つを満たす必要があります。

  • 仕事そのものを体験させる。期間の半分を超える日数を現場や実務にあてる
  • 社員が指導役につき、終わったあとに本人へ感想と評価を返す
  • 5日間以上の日数を確保する(専門能力活用型は2週間以上)
  • 学部3年・4年、修士1年・2年の長期休暇期間中に実施する
  • 募集要項に、期間・時期・就業体験の内容・指導体制・活用方針を書いて公開する

5日間と聞くと、中小の会社では重く感じるはずです。ただ、現場が1か所あれば組めます。1日目に安全教育と会社説明、2〜4日目に現場で先輩について回る、5日目に本人の発表と講評、という形が現実的です。

どの類型であっても、学生は採用選考が始まる時期になってから、あらためて応募する必要があります。インターンに来たからそのまま内定、という流れにはなりません。

SNSは「動画と現場の人」で見せる

InstagramとTikTokで、現場の動画と若手社員の声を出す会社が増えています。ドローンを使った測量や、図面を立体で扱う仕組み(BIM/CIM)の映像は、3Kのイメージとの落差が大きく、学生の目に留まりやすい素材です。

作り込む必要はありません。スマホで撮った現場の短い動画を週1〜2本、半年続けると、学生のフォロワーが少しずつ増えます。SNSで見つけてインターンに来た学生が、採用ホームページを見て応募する、という流れが作れます。

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戦略4|内定者フォローで辞退を防ぐ

応募と選考が回り始めると、次に詰まるのが内定者フォローです。

内定辞退が起きる典型パターン

  • 内定を出したあと、入社まで連絡がほとんどない。学生の中で会社の優先順位が下がる
  • 配属先や勤務地が直前まで分からない。不安が積み上がる
  • 同期や先輩との接点がない。ひとりで抱え込む
  • 大手から追加の内定が出て気持ちが揺れる。条件の比較で負ける

建設業の新卒は、他業界とも取り合いになります。内定を出したあとの半年から1年が、辞退を防ぐ勝負どころです。

内定者フォローの設計例(10月内定〜翌4月入社)

時期やること狙い
10月(内定式)内定通知書を渡し、配属の候補を説明する会社への気持ちをつなぎ止める
11〜12月先輩社員との懇親会・現場見学入社後の姿を思い描いてもらう
1〜2月資格の学習課題・同期のグループ連絡学ぶ機会と、同期のつながりを作る
3月卒業前研修・配属の面談入社直前の不安を取り除く
4月入社・初期研修・担当の先輩を指名受け入れ体制で早期離職を抑える

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

効き目が大きいのは、内定を出した直後に年齢の近い先輩を1人、担当としてつけることです。月1回の連絡をその先輩の仕事として決めておくと、内定者の不安や迷いを早い段階で拾えます。

社長が面談するより、3つ上の先輩が現場の写真を送るほうが届くこともあります。学生が知りたいのは、自分が来年ここで何をしているかです。


戦略5|3年以内の定着まで含めて考える

新卒採用は、3年以内の定着で勝ち負けが決まります。高卒43.2%、大卒30.7%という3年以内離職率を下げない限り、毎年の採用が穴埋めで終わります。

入社後3年で効く打ち手

  • 先輩が1人担当につく仕組み: 年齢の近い先輩をつけ、月1〜2回の面談を就業時間の中に入れる
  • 研修の道筋: 1か月の集中研修 → 半年の現場同行 → 1年で独り立ち、という段取りを紙にする
  • 資格取得支援: 受験費用を全額会社が負担し、合格したときの祝い金を出す
  • 節目の面談: 3か月・6か月・1年・2年の時点で、本人と上司の見立てをすり合わせる
  • 初任給・残業・休日の見直し: 数字を直したうえで、その実績を社内外に出す

初任給の水準は高い。止まりかけているのは上げ続ける動き

2026年4月入社の大卒初任給は、全体の平均が23.7万円で、4年続けて増えました。

建設業は24.9万円です。2025年4月入社は23.9万円、2024年4月入社は22.6万円でしたから、前の年より4.2%増えました。全体の平均を1.2万円上回る水準です。

ほかの業種と並べても、建設業は上のほうにいます。不動産業25.2万円、金融・保険業24.7万円、情報通信業24.6万円、卸売業24.4万円、機械器具製造業24.2万円、機械以外の製造業23.7万円、小売業22.9万円、医療・福祉21.2万円という並びです(集計の対象は、各年4月入社の新卒採用を行い、大卒初任給の月額を答えた企業。2026年4月入社は1,762社)。

金額では負けていません。気になるのは、上げ続ける動きのほうです。

「前の年より初任給が増える」と答えた企業の割合を業種別に見ると、建設業は54.7%でした。6つの業種区分のうち、前の年より割合が下がったのは建設業だけです(2025年4月入社59.2% → 2026年4月入社54.7%)。ほかの5区分と全体は、いずれも前の年より上がっています(リクルートワークス研究所『第43回 ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)』)。

水準は高いのに、上げ続ける動きが止まりかけています。これが2026年4月入社の時点での建設業の姿です。

学生は何十社も同時に見比べます。ほかの業種が毎年上げ続けるなかで自社だけ据え置くと、2年後、3年後には金額でも抜かれます。24.9万円という数字に安心しないでください。

自社で初任給を上げたなら、その事実を「2026年4月に月給を◯万円引き上げました」と採用情報に載せてください。上げていないなら、手当と資格取得支援と休日で差をつける形になります。

3年たって定着した若手は、後輩を連れてきてくれます。新卒採用は単年の勝負ではなく、3年かけて回収する投資として考えてください。

定着の打ち手は建設業の離職率を下げる定着施策5選、育て方は建設業の人材育成ガイドに具体例を置いています。


従業員規模ごとの新卒採用の進め方

新卒採用でやるべきことは、会社の規模で変わります。従業員15名の会社が採用ホームページの全面刷新と5校の訪問を同時に始めると、手が足りずに途中で止まります。

従業員規模ごとの新卒採用の進め方

従業員数まず手を付けること次に足すこと
10〜30名近隣の工業高校か高専を1〜2校に絞る。求人票を5月中に仕上げ、年収例と1日の流れを載せる会社案内とキャリアパス資料を紙で作る。現場見学を年1回受け入れる
30〜80名学校訪問の担当者を決め、年2〜3回の訪問時期を予定表に入れる。採用ホームページに先輩の声を3〜5名分載せる長期休暇に5日間以上のインターンを組む。内定者フォローを月単位の予定表にする
80名以上高校・高専・大学で担当を分け、学校ごとの訪問回数を決める。採用ホームページを作り直すSNSの発信を週1〜2本続ける。入社3年目までの研修と資格取得の日程を紙にする

弊社の建設業採用支援の実務をもとに作成

人数の少ない会社ほど、絞ることが効きます。1〜2校に集中して、その学校の先生に顔と名前を覚えてもらってください。2〜3年続ければ、年1名の応募が出るところまでは届きます。

30名を超えたあたりから、担当者と時期を決める作業が要ります。誰がいつどの学校に行くかを予定表に落としておかないと、繁忙期に後回しになります。

80名を超えると、SNSの発信や学校ごとの担当制など、時間のかかる打ち手も回せるようになります。それでもどの規模でも、社内の手だけで新卒と中途の両方を抱えるのは荷が重い話です。

採用の手法も媒体も、毎年のように移り変わります。建設業に特化した採用代行と組むのを基本線に置いて、そのうえで社内にどれだけ人を割くかを決めてください。

役割の分け方は次のとおりです。

  • 社内と採用代行で一緒に: 求める人物像と採用要件をまとめる。現場を知っているのは社内だから
  • 社内だけで: 面接、最終判断、内定を承諾してもらう最後のひと押し
  • 採用代行が引き受ける: 求人票の作成、媒体の運用、学校への連絡の段取り、応募者への返信、日程の調整

建設特化の採用代行の目安は月額20万〜30万円で、これとは別に求人広告やスカウト媒体の費用がかかります。

新卒だけで採用計画を埋めるのは、どの規模でも難しい話です。建設業に入ってくる人の71.7%は転職組でした。人材紹介を使って中途を確保しながら、新卒は毎年1〜2名を細く続ける形が、多くの会社にとって回しやすい組み方になります。

人材紹介の手数料は、施工管理で45%が主流です。1級を持つ所長クラスや急ぎの募集では、60〜70%まで上がることもあります。高いから避ける、という話ではありません。要件の伝え方、返信の速さ、見送った理由の返し方で、紹介会社から出てくる人の質は変わります。

古い木板の上に並べて置かれた差し金と、目盛り付きのレーザー水平器
写真: Antoni Shkraba / Pexels

他社がどう動いたかは建設業の採用成功事例5選に載せています。


自社で回すか、採用代行に任せるか

新卒採用は、年間を通じてやることの多い仕事です。学校訪問、説明会、インターンの企画、採用ホームページの更新、SNSの発信、選考の日程調整、内定者フォロー。専任の担当が1人いても、全部を回しきるのは厳しい量になります。

採用代行(RPO)は、こうした運用を外部の採用チームが引き受けるサービスです。求人広告や人材紹介の代わりに使うものではありません。求人広告や人材紹介と並走して、採用の段取り全体をとりまとめる立ち位置です。

建設特化なら月額20万円〜の最小構成から、新卒採用の一部だけを切り出して始められます。

契約の形は月額固定をおすすめします。成果報酬型は、決まらなければ業者の売上にならない契約です。難易度の高い建設業の案件は後回しにされやすく、契約したのに動いてもらえない、という事態が起きます。

あわせて、採用人数を書面で約束する業者には気をつけてください。採用代行は業務委託契約なので、採用の結果そのものを保証する契約にはできません。書面にできるのは、スカウトの送信数、求人票の改訂本数、応募者への返信の速さといった作業の量です。

新卒と採用代行の組み合わせ方は採用代行で建設業の新卒採用を動かす、採用代行そのものの仕組みは採用代行(RPO)とは?に詳しく書いています。


よくある質問

Q. 中小の建設会社でも新卒は採れますか?

採れます。ただし、学校との付き合い・採用ホームページの中身・インターンの日数という3つを最低限そろえる必要があります。従業員15名前後の規模なら、近隣の1〜2校に絞って2〜3年かけて関係を作る形が回しやすいです。1年目に応募が来なくても、求人票と資料を毎年直しながら訪問を続けてください。反応が出るのは2年目から3年目です。

Q. 新卒1名の採用コストはいくらくらいですか?

業種別に採れる数少ないデータでは、建設業の新卒は1名あたり69.4万円、中途は97.8万円です。全体の平均は新卒72.6万円・中途84.8万円、従業員300人未満に絞ると新卒65.2万円でした(リクルートキャリア 就職みらい研究所『就職白書2019』)。

ただし、これは2018年度の実績で、数字としては古いものです。就職白書は2021年版以降、採用コストの公表を取りやめました。これより新しい建設業限定の採用単価は、2026年9月の時点で公表されていません。金額の水準ではなく、新卒のほうが中途より安く済むという傾向を読む材料として見てください。

Q. インターンは何日やればいいですか?

5日間以上です。2022年6月に国のルールが変わり、5日間以上で長期休暇中に実施し、社員が指導して感想を返す形でないと、そこで知った学生の情報を採用選考に使えなくなりました。これまで多かった1日や3日のプログラムは「オープン・カンパニー」にあたり、「インターンシップ」と名乗ることもできません。1日のプログラムをやめる話ではなく、興味を持った学生を5日間の枠に誘導する二段構えにしてください。

Q. 内定辞退を防ぐのに一番効くのは何ですか?

年齢の近い先輩を1人、担当として指名することです。内定式の翌月から、月1回の連絡をその先輩に担当してもらいます。社長や人事からの連絡より、年の近い先輩からの短い連絡のほうが本音を引き出せます。不安や迷いを早い段階で拾える体制があるかどうかで、辞退率が変わります。

Q. 新卒と中途、どちらを優先すべきですか?

建設業に入ってくる人のうち、新卒は14.5%、転職者は71.7%です(令和6年)。人数を早く埋めたいなら中途が主軸になります。ただし、中途だけに寄せると10年後に現場を任せる年代が空きます。中途を主軸にしながら、新卒は近隣1〜2校との関係を細く長く保って年1〜2名を続ける形が、多くの中小建設会社に合います。中途の打ち手は建設業の中途採用を成功させる5つの戦略に載せています。


まとめ|新卒採用は10年後の現場への投資

  • 2026年卒の建設業の大卒求人倍率は8.55倍、全体平均は1.66倍。業種別の公表は2027年卒から取りやめになった
  • 建設業に入ってくる人のうち新卒は14.5%、転職者は71.7%。新卒で採れている会社は業界でも少数
  • 高卒採用は日程が決まっている。2026年6月1日にハローワークの受付が始まるので、求人票は5月中に仕上げる
  • 1人1社制の運用は都道府県ごとに違う。期間を通じて1社に限る県は0県になった
  • インターンは5日間以上・長期休暇中・社員の指導つきでないと、学生の情報を選考に使えない
  • 大卒初任給は建設業24.9万円で全体平均23.7万円より高い。ただし「前の年より上げる」と答えた企業の割合が下がったのは、6区分で建設業だけ
  • 内定者フォローは、年齢の近い先輩を1人つけて月1回の連絡を回す形が基本
  • 高卒3年以内離職率43.2%は高卒全体の38.4%より約5ポイント高い。定着まで含めて考える

新卒採用は短期の人数合わせではなく、10年後に現場が回るかどうかへの投資です。学校との関係も、採用ホームページも、定着の仕組みも、今年動き始めて3年後に成果が出る前提で組み立ててください。

次の一歩として、採用全体の地図は建設業の採用戦略ガイド、求人票の直し方は建設業の求人票の書き方、定着は建設業の離職率を下げる定着施策5選、育成は建設業の人材育成ガイドもあわせてご覧ください。

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