高卒求人は4.12倍。建設業に来ているのは10人に1人です

令和8年3月に高校を卒業する生徒への求人は、498,722人分ありました。

これに対して仕事を探している生徒は121,175人です。求人倍率は4.12倍で、前年より0.02ポイント上がりました。就職内定率は98.9%です(厚生労働省『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』令和8年3月末現在)。

生徒1人に対して、4社が手を挙げている状態です。

では建設業に何人来ているのでしょうか。

令和4年3月に高校を卒業して就職した人は、調査の対象となった産業の合計で137,458人でした。このうち建設業に入ったのは14,102人です。原表の人数から計算すると10.3%になります(厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)』)。

高卒で就職する10人のうち、建設業に来るのは1人です。

建設業の就業者は令和7年で478万人。ピークだった平成9年の685万人から200万人以上減りました。55歳以上が36.6%を占め、29歳以下は11.9%にとどまります。新規学卒者の建設業への入職は近年4万人前後で、入職者全体に占める割合は5〜6%で推移しています(国土交通省『建設業を取り巻く環境について』令和8年4月3日)。

結論から言うと、高卒採用は中途採用とは別の段取りで動かす仕事です。

求人を出せる月が決まっています。応募してくるのは生徒本人ではなく、学校です。この2つを知らないまま6月を過ぎると、その年はもう動けません。


中途採用とはルールが違います — 6月1日から始まる年間の流れ

高卒採用の年間スケジュール(令和8年3月卒の例)

時期会社がやること学校・生徒の動き
6月1日以降ハローワークに求人を申し込むまだ生徒に求人は出ない
7月1日以降求人が公開される。学校へ求人票を届け、学校訪問を始める先生と生徒が求人票を見始める
9月5日以降応募書類の到着を待つ学校から会社へ応募書類が届く
9月16日以降選考を始め、内定を出す生徒が選考を受ける

厚生労働省 東京労働局 ハローワーク木場(事業主の方へ)、厚生労働省『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』より作成

この日程は、国や学校の団体などによる申し合わせで決まっています。中途採用のように、人が足りなくなった月に求人を出すことはできません。

中途採用と大きく違う仕組みが、ほかに2つあります。

ひとつが学校推薦です。生徒が自分で応募先を決めて履歴書を送るのではなく、校内で話し合ったうえで、学校が生徒を会社へ推薦します。応募書類は学校から届きます。

もうひとつが一人一社制です。選考が始まる時期まで、生徒が応募できるのは原則として1社だけという運用になっています。生徒は1社を選んで受け、そこで決まればそこに入ります。

複数の会社に応募できるようになる時期は、都道府県によって運用が違います。管轄の労働局・ハローワークに確認してください。

会社の側から見ると、意味は1つです。7月から9月4日までの間に、先生と生徒に「この会社を1社目に選ぼう」と思ってもらう必要があります。

応募前の職場見学も、この期間に入ります。生徒が応募先を決める前に、会社や現場を見に来る機会のことです。応募書類の提出が9月5日以降ですから、見学を受け入れるならそれより前になります。

7月から9月上旬までの2か月ほどで、来年の採用が決まります。ここに人を割けるかどうかが、高卒採用の分かれ目になります。

建設現場で使う金属メッシュの足場材を間近でとらえた様子
写真: Mark Stebnicki / Pexels

工業高校だけを見ていると、応募が集まりません

高卒採用と聞いて、まず工業高校を思い浮かべる会社は多いと思います。土木科や建築科の生徒なら、現場の話が通じます。

ただ、同じことを地域の同業他社も考えています。

佐賀県の令和8年3月卒業予定者について、令和7年7月末時点の求人は総数4,257人、求人倍率2.22倍でした。就職を希望している生徒は1,914人です。産業別では製造業の1,367人に次いで、建設業が935人で2位です。構成比は22.0%です。建設業の求人数は、前年の同じ時期より26人増えています(厚生労働省 佐賀労働局『令和8年3月新規高卒者の求人・求職状況について』令和7年8月29日)。

県内の高卒求人の5件に1件が建設業です。工業高校の土木科・建築科の生徒を、地域の建設会社が取り合う形になります。

地域による差も大きいです。

京浜は10.54倍、南九州は2.14倍です。首都圏で募集する会社は、生徒1人に10社が並ぶ市場で選ばれることになります。

工業高校への働きかけを続けても、それだけでは人数が足りません。実際に、続けてきた団体が方針を変えています。

関西鉄筋工業協同組合は、15年ほど前から工業高校などへの出前授業を実施していました。ところが「参加対象者の高校生は進路等が決まっていることが多く、人材確保につながりにくかった」という結果になり、小学生や保護者への働きかけを新たに始めています(国土交通省・建設産業人材確保・育成推進協議会『建設産業×広報 事例集』)。

高校3年生に会いに行った時点で、進路はおおむね決まっているということです。

だとすれば、見る先を広げることになります。

ひとつは学年を下げることです。1年生・2年生のうちに会社を知ってもらいます。中学生を現場見学に呼ぶのも手です。効果が出るまで時間はかかりますが、3年生だけを追いかけるより応募してくる人数は増えます。

もうひとつが普通科です。就職を選ぶ普通科の生徒は、資格も実習経験も持っていません。その代わり、まだ業種を決めていない生徒がいます。工業高校の土木科・建築科より、入り込む余地は大きいです。

未経験者を採ると決めるなら、入社後の教育に手をかけることになります。育て方は建設業の人材育成ガイドにまとめました。


推薦を出すのは、生徒ではなく進路指導の先生です

学校推薦の仕組みがある以上、会社が向き合う相手は進路指導の先生です。先生が建設業をどう見ているかで、推薦が出るかどうかが変わります。

長野県建設業協会は、令和6年から新任の高校教員向け説明会を始めました。東信地区の11校から、初任者教員20名が参加しました。この11校には普通科高校や商業高校が含まれます。背景にあったのは「進路指導にあたる教員が、建設業の実態を十分に理解していない」という問題意識でした。

参加した教員の声が残っています。

災害時に真っ先に現場に向かうのは建設業の方々であるということを知らなかったので、このお話が最も印象に残った
想像していた以上に働き方改革が進んでいることが分かった

進路を左右する立場の先生が、この状態だったということです。求人票を届けるだけでは、ここは埋まりません。

北海道帯広市の宮坂建設工業は、地域住民が参加する防災訓練を令和6年度で32回目まで続けています。市内の高校や小学校などから、約500人の学生が参加しました。地元の高校生・中学生のインターン受け入れや現場見学会でできた繋がりから、多くの学校が参加しているそうです。

同社は「会社の防災に対する意識の高さは強みであり、リクルートに関しては同じ思いを持つ学生から毎年、多数の応募をいただいている」と話しています。

山形県建設業協会の取り組みは、地元工業高校との意見交換から始まりました。「そもそも土木科志望生徒も減少しており、より裾野広く魅力発信していく必要がある」という話が出たことから、中学生を対象にした建設現場見学ツアーを始めています。

参加した保護者からは、こんな感想が出ました。

建設業は「力仕事」というイメージだったがICT化が進んでおり昔のイメージと大きく変わった

(3件とも国土交通省・建設産業人材確保・育成推進協議会『建設産業×広報 事例集』)

高卒採用で会社を選ぶのは、生徒だけではありません。先生が推薦を出し、保護者が背中を押します。この3者が持っているイメージを、それぞれ更新する必要があります。

黒い台の上に並べられたスパナやボルト、ワッシャーなどの工具一式
写真: Miguel Á. Padriñán / Pexels

自社で全部を抱えるのは大変です。近隣の協会や組合が説明会や見学会をやっているなら、そこに乗るほうが早いです。

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辞めるのは1年目です。離職率・初任給・教育費の実際

令和4年3月に高校を卒業して建設業に就職した14,102人のうち、3年以内に離職したのは5,838人でした。原表の人数から計算すると41.4%です。

高卒就職者の離職状況(令和4年3月卒・建設業)

区分離職した人数14,102人に対する割合
1年目までに離職2,670人18.9%
2年目までに離職4,567人32.4%
3年目までに離職(3年以内計)5,838人41.4%
参考:調査産業計の3年以内52,129人/137,458人37.9%

厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)』の産業別の人数から計算

建設業の41.4%と、調査産業計の37.9%。差は3.5ポイントです。建設業だけが突出して辞められているわけではありません。

見てほしいのは内訳のほうです。3年以内に辞めた5,838人のうち、2,670人が1年目です。辞める人の半分近くが、最初の1年で出ていきます。

18歳で入って、慣れない現場に立ちます。朝は早く、飛んでくる指示の言葉も強いです。そこで支える人がいるかどうかで、その後の3年が変わります。

数字の読み方には注意が要ります。この41.4%は建設業全体の平均です。会社の規模や職種、地域によって実際の数字は上下します。自社の過去5年の入社者と、いま残っている人数を数えてみてください。そちらが本当の数字です。

初任給は全産業でも上がっています

令和7年の高校卒の初任給は、男女計で20万7,300円でした。前年比5.0%増です。男が21万100円、女が20万2,900円になります(厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査の概況』)。

参考までに、専門学校卒が23万700円、高専・短大卒が23万5,500円、大学卒が26万2,300円です。

この調査から建設業だけを取り出した高卒初任給は分かりません。ただ、全産業の平均が1年で5.0%上がっている以上、去年と同じ金額で求人票を出せば、相対的には下がったことになります。先生も生徒も、複数社の求人票を並べて見ています。

教育の費用は助成金で一部を戻せます

未経験の高卒者を採ると、資格取得や技能講習の費用が出ていきます。ここには助成金があります。

人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースは、技能実習を受けさせた中小建設事業主などを支援する制度です。助成率は、雇用保険に入っている従業員の人数と、受講する人の年齢によって変わります(厚生労働省『建設事業主等に対する助成金』)。

助成率や上限額は年度ごとに改正されるため、申請前に最新の要件を確認してください。建設業で使える採用・育成の助成金は建設業の助成金ガイドに載せています。

夕焼け空を背景に立つ建設用クレーンのシルエット
写真: Kedar Bhave / Pexels

「無料」の高卒採用に、実際はいくら払っているのか

高卒採用は、ハローワークに求人を申し込むところから始まります。掲載料はかかりません。人材紹介の手数料も発生しません。

ここだけを見れば、建設業でいちばん安い採用手段です。

ただ、6月の求人申込から翌年3月の卒業まで、社内の手はおよそ10か月動き続けます。求人票を書き、学校を回り、見学を受け入れ、内定後も卒業まで連絡を取り続けます。

学校訪問は1校1回では終わりません。先生が入れ替われば、また説明からです。夏休みの見学対応は現場の職長に頼むことになります。内定から入社まで半年あるので、その間のフォローも要ります。

この工数を誰が持つか。ここが決まっていない会社は、6月に求人を申し込んだまま7月以降が止まります。求人票は公開されているのに、学校に届いていない状態です。

そして高卒だけでは、人数の穴は埋まりません。建設業の29歳以下は11.9%で、新規学卒者の入職は4万人前後にとどまっています。中途や、学校を出て数年以内に転職する第二新卒と合わせて、年間の採用計画を立てることになります。

有資格者は人材紹介が主力になります

施工管理技士のような資格を持った人を採るなら、人材紹介が主力の手段です。学校経由では採れない層で、使うこと自体は正しい判断になります。

手数料の水準は知っておいてください。弊社が建設業の採用支援で見ている範囲では、全業界の平均が、採用した人の想定年収(月給と賞与から計算した年収の見込み額)の30〜35%程度です。建設業の施工管理は主流45%になります。1級を持つ所長クラスや、急ぎで探す希少な人材では60〜70%まで上振れることもあります。

高いから避ける、という話ではありません。使い方しだいで効き方が変わります。

要件を1枚の文章にまとめて渡す。推薦が来たら当日中に返す。見送るときは理由を伝える。この往復の質で、送られてくる人が変わります。登録したまま推薦が来ない状態が半年続くほうが、会社にとっては痛手です。

高卒の学校回りと、有資格者の紹介会社とのやり取り。この2つを同じ担当者が兼ねると、夏場にどちらかが止まります。

採用代行の使い方

専任の採用担当を置くかどうかを考える前に、建設特化の採用代行と組んだうえで、社内にどこまで人を割くかを決める順番をおすすめしています。採用の手法も媒体も移り変わりが速く、本業の合間に追いかけるには量が多いからです。

求める人物像と採用要件の詰めは、社内と採用代行で一緒に決めます。どんな現場に配属して、何年で何を任せたいか。ここは現場を知っている社内の知見が要ります。

面接と最終判断、それに内定承諾の最後のひと押しは社内が担います。社長が会って話す、現場のリーダーが食事に誘う。高卒の生徒と保護者に対しては、ここが効きます。

求人票の作成と改訂、媒体の運用、スカウトの送信、応募者への返信、日程調整、紹介会社のとりまとめは採用代行が受けます。採用代行は人材紹介の代わりではなく、紹介も求人広告もスカウトも含めた採用活動全体に伴走する立ち位置です。

弊社は月額20万円(税別)〜+媒体費です。求人媒体の掲載費は、採用代行を入れても別にかかります。

料金体系を選ぶなら、建設業では月額固定型をおすすめします。成果報酬型は、決まらなければ業者の売上になりません。難易度の高い建設業の案件は後回しになりやすく、契約したのに動いてもらえないという話になります。月額固定なら、毎月の売上が見える顧客として優先度が保たれます。

契約で約束できるのは工数です。スカウトの送信通数、求人票の作成本数、レポートの提出日、応募者への返信時間。採用人数を書面で約束する業者は業務委託の枠を超えていますから、後で揉めやすくなります。

高卒採用は、6月に始まって翌年3月まで続きます。新卒全体の進め方は建設業の新卒採用を成功させる5つの戦略で扱っています。1年に1回しか回せない採用なので、今年の夏を落とすと、次は1年後です。

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